タイムバンク 市場分析【売買代金と市場規模の相関性②】




前回の結論

前回の分析から、推定売買代金の上昇と各銘柄の値上がりに強い相関があることが分かりました。

 
前回より、売買代金と市場規模の散布図と近似式です。相関係数は0.79。

今回はまず、なぜそのような結果になったのか、現在のタイムバンク市場の実情から考えてみます。

売買代金上昇と値上がりの関係は、取引板の特徴と一致

値上がりする時には売買代金が上昇し、値下がりする時には売買代金が減少する。このことは、タイムバンクの取引板の特徴に一致しています。

タイムバンクの各銘柄の取引板には共通点があり、それは「買注文より売注文が圧倒的に多い」という事です。株式市場では、買注文2に対して売注文3、ないしは買注文1に対し売注文2くらいの割合ですが、タイムバンクでは買注文1に対して売注文10~20、あるいはそれ以上と、売り注文が圧倒的に多いのが現状です。銘柄によっては買注文が存在しない場合もあります。

代表的な取引板を下記に示します。

上記取引板で、現在価格が90.5円の場合、+10円上昇させるために必要な金額は約38000円です。それに対し、-10円するために必要な売買代金は約2500円と、10分の1以下です。

+10円上昇させるために必要な金額と、-10円するために必要な売買代金を比較すると、上昇させるために必要な金額の方が非常に大きくなります。タイムバンク市場において、銘柄の価格の上昇時には、下落時に比べて大きな売買代金が発生するのです。これが、売買代金上昇と銘柄の値上がりが強い相関を持っている理由だと考えられます。

逆に言えば、売買代金上昇と銘柄の値上がりが強い相関を持っているということは、市場において売注文が優勢で、買いの勢いが無いことを表しています。さらに言えば、この相関関係は市場における買いと売りのバランスを表していると言えるかもしれません。すなわち、もしこの相関関係が弱くなり、あるいは逆の相関関係になったとき、それは市場の雰囲気の転換点である可能性があります。

「買注文より売注文が圧倒的に多い」という状態は良くないのか?

普通、相場の世界で 買い<売り が行き過ぎた環境は良くありせん。買注文が少ないと換金性が疑問視され、流動性が損なわれます。暴落もしやすくなりますね。

しかし、買注文が大いに越したことはなのですが、少なくともタイムバンクについては、売り注文が十分に存在することが非常に重要だと考えています。

というのも、ここ最近はクレジットカードを利用して購入する「簡単購入」機能や、さらにはWeb上から時間を購入するサービスまで開始されました。これらの機能・サービスは、アプリ上の売り注文から自動的に購入する仕様ですので、リワード分を買い集められるくらいに売り注文が十分に存在することが重要です。

簡単購入やWeb上での購入を利用するユーザーはほぼ全てがリワード目的になると思いますので、十分な売り注文が無いと機能不全に陥ってしまいます。

そういう意味で、タイムバンクが本来のスキルシェアサービスとして機能するためには売り注文が重要であり、取引板上での買い注文はそこまで重要ではないと考えています。

当然、アプリ上での取引活性化は流動性を確保する上でもユーザーを確保する上でも必要で、そのために買い注文が重要であることは言うまでもありません。あくまで、タイムバンクを運営する上で必須なのは売り注文である、という事です。

ただし、ここしばらくは最初に発行する18000秒も売り切れない銘柄が散見されます。十分な秒数が市場に出回らないとリワード分を集めるのが難しくなりますので、公募申込へのインセンティブを高める事が現在のタイムバンクの喫緊の課題ですね。

6月のデータがまとめて外れている件

話を戻しまして、前回の散布図を再掲します。

この図において、2018年6月の4週分のデータが上に大きく外れています。これは、2018年6月は出来高が減少したにも関わらず値下がりが限定的だったことを示しています。2018年5月までと異なる傾向ですが、これは売りが減った事で値下がりがし辛くなった、あるいは一定の買いが入り価格を維持していると考えられます。

おそらく、「一定の買い」は2018年5月末から開始されたキャンペーン「タイムクエスト」と、その報酬として一定枚数が放出され続けている「福引チケット」によるものでしょう。

タイムバンクの取引板は売注文と買注文の値幅が広いため、10秒の買いが入るだけでも価格が大きく上昇する傾向があります。また、多数のユーザーに時間が分散されたため、売り圧力が減少したと考えられます(特に、福引チケットで得た時間は含み益で計算されるため、売りが急がれない)。

タイムクエストや福引チケットで時間が分散されてもすぐに売りに出されてしまい、市場形成に影響は無いと考えていましたが、上記の散布図データから、一定の成果があった事が伺えます。

まとめ

二回に分けて「売買代金と市場規模の相関性」というテーマで書かせて頂きました。売買代金と市場規模の相関性を明らかにし、仮説ではありますが、その相関性はタイムバンクの取引板の現状を反映したものだと考えました。

取引板において売注文が圧倒的優勢であるのがタイムバンク市場の特徴ではありますが、売注文が十分に存在することはタイムバンクが適切に運営されるために必要な事である、というところまで考察しました。

各銘柄の価格上昇時には売買代金が増加するということが分かりましたので、売買代金が増加し始めたタイミングで買い入れたり、あるいは持っている銘柄を高値で売りに出すことで利益になる可能性もあります。

今後も、取引方針を決める上で参考になる分析をしていきたいと考えていますので、よろしくお願いします。最後までお読みいただき、ありがとうございました。