前回の続きです。
前回では、専門家はタイムバンク市場からお金を借りているような状態であり、返済義務が無い代わりにユーザーが保有する時間価値を保つ努力が必要である、というところまで考えました。
今回は、まずは時間が価値を持つ条件を検討し、時間価値を保つために専門家がどうするべきかを考えます。さらに、タイムバンク市場における価格変動をどう捉えるべきかを考え、最後にユーザー視点での売買基準に言及したいと思います。
時間が価値を持つ条件
タイムバンクにおいて時間が価値を持つのは、どのような条件でしょうか。以下二つが考えられます。
①現金と交換が可能
②リワードやトーク機能で利用する
それぞれ順番に見ていきましょう。
あなたがある専門家の時間を保有していて、他のユーザーがその時間を欲しいと思っているとき、保有している時間は売却することができ、現金と交換ができます。これが【①現金と交換が可能】ということです。
では、ユーザーが専門家の時間を欲しいと思うのは、どのような場合でしょうか。次の二つが考えられます。
(1)リワード・トーク機能で利用したい
(2)専門家を応援したい
②とも絡みますが、リワードやトーク機能で利用したいというのは分かりやすいと思います。では、時間を保有して「専門家を応援する」というのはどういう事か?
時間を購入する、という事は、専門家にお金を貸すようなことであると前回の記事で書きました。つまり、専門家を応援する目的で時間を買う、という事の正体は、専門家にお金を貸して支援する、という事に近い意味を持ちます。
もしかしたら、その時間は別のユーザーから購入したものかも知れませんが、時間の売買は債権の売買に近いものがあり、どのような経緯で手に入れた時間であれ、現在保有しているユーザーが専門家にお金を貸しているような状態だと言えます。
人にお金を貸すって、相当な信頼が無いとやりませんよね。ですが、金銭の実質的なやり取りを考えると、時間を買うというのはお金を貸す事に近い意味合いになり、それは専門家への相当な信頼に基づくものであり、むしろ信頼に基づくべきものなのです。
次に、【②リワードやトーク機能で利用する】についてです。
これは、株式市場や債券市場と異なり、タイムバンク独自の考え方です。
タイムバンクでは、リワードとして専門家に仕事を依頼したり、あるいは質問を閲覧するのに時間を消費します。
つまり、①と異なり、他のユーザーが欲しいと思わなくても、あなたがその専門家の仕事やトーク機能に価値を感じるなら、その時間はあなたにとって価値があると言えるのです。
補足:時間の値動きについて
ところで、すでに時間の売買をされている方ならお気づきかも知れませんが、ここでは敢えてタイムバンクの重要な機能の一つへの言及を避けています。それは、「時間の値動き」です。
時間の値動きは、タイムバンクにおいてユーザー間で資金が行き交い、損得を発生させ、感情を動かし、エンターテイメント性を加える重要な要素ではあるのですが、根本的な要素ではないのです。なぜなら、時間の値動きは、市場全体で見れば「ゼロサムゲーム」であるからです。
ここまで読んでいただけるとご理解頂けると思いますが、本記事は【専門家 vs タイムバンク市場】 という観点で書いています。つまり、タイムバンク市場においてゼロサムとなる「時間の値動き」については、ここでは言及する意味が無いのです。
では、値動きに関する問題を解決したところで、お金の借り手である専門家がどうするべきかを考えます。
専門家としての義務
「義務」と書くと大げさな気もしますが、専門家は市場からお金を借りている状態である、という前提から、敢えて「義務」と表現します。
ただし、タイムバンク各種規約や法律で定められている訳ではなく、あくまで執筆者個人の考えで、拘束力がないことはもちろん、ユーザーが専門家に要求できる事ではないことはここで確認しておきます。
専門家は返済義務が無い代わりに、時間価値を保つ努力が必要であると書きました。これは規約に言及されていなくても、専門家が事前にお金を受け取っている以上、その代償となる義務であると考えられます。
では、時間価値を保つ義務を果たすために、専門家はどうするべきでしょうか。「時間が価値を持つ条件」として、次のことを上述しました。
①現金と交換が可能
(1)リワード・トーク機能で利用したい
(2)専門家を応援したい
②リワードやトーク機能で利用する
単純に、これらの条件のいずれか、あるいは全てを満たすよう努力することが、専門家としての義務を果たすことになると考えられます。具体的には下記内容になるでしょう。
・リワードを使ってもらえるよう、具体的なリターンを示し、必要に応じて利用しやすい秒数に設定する。
・質の高いトーク内容を発信し、適切に秒数を設定する
・自身の活動を積極的に発信し、応援してもらう
・既存のファンをタイムバンクへ勧誘し、タイムバンクを通してリワード利用や応援につなげる
・専門家の収入時間単価(公募10円、手数料2割なら8円)での価格では、買い戻しを行う
・上の4つを行うために、専門家自身のタイムバンクに対する理解を深める
専門家としてタイムバンクに上場できている以上、これらは難しい事では無く、意識してやるか、やらないかという程度の問題です。
買い戻しについて
買い戻しについては、専門家自身が価格に影響を与えてしまうのですが、不正ではないと考えられます。
時間の買い戻しは、借りたお金を市場に返す行為で、むしろ当然の事だと考えています。なぜなら、専門家の収入時間単価より安値になるという事は、専門家が手にしているその収入は「値しない」という事であるからです。
買い戻さずに安値で放置することは、時間を買ってくれたユーザーに損失を転嫁し、専門家自身の収益の代わりに、ユーザーに損失を押し付ける、という構図になります。
ただし、買戻しの宣言を行っておくことは、実際に買戻しを行う可能性を小さくします。買戻しを行う価格は専門家の収入時間単価以下であると書きましたが、この価格は手数料が引かれた後の価格ですので、売るユーザーにとっては損切りとなります。
急いで現金化したい場合は損切りをしてでも売るでしょうが、買い戻されることを知っているユーザーにとっては上記【①現金と交換が可能】という確信があるので、わざわざ損切りを行う必要が無いのです。
本当に損切りをしてでも売りたいユーザーが殺到するなら、その時は諦めて買戻しをするべきでしょう。
結果的に、公募価格付近では売りが少なくなり、逆に公募割れ価格では買戻し期待から買い圧力が高まりますので、価格が安定します。これは、専門家にとっても、ユーザーにとっても望ましい状態です。
ユーザーとしての考え方
最後に、ユーザーとしてどのように考え、タイムバンクで取引するべきかを考えたいと思います。
大原則として、タイムバンクでの時間の購入は自己責任です。誰も時間の購入を強制しませんし、ユーザーは自身の判断で売買することが出来ます。
したがって、売買を通じてどのような損失が発生しようとも、他の誰も責めることはできませんし、責めてはいけません。損失補填を要求しようものなら、罪に問われる可能性すらあります。
では、売買のためにユーザーは何を判断しなければならないのか。
チャートから高値・安値を判断する、注文板から売り買いの勢いを見るなども考えられますが、タイムバンクにおいて最も重要なのは、専門家が信頼できるか、という項目です。
仮に、「タイムバンク頑張ります!」と言って上場してきた専門家がいたとします。あなたはその言葉を好感して時間を買いました。
しかし、上場して資金を手にした途端、タイムバンク上では一切音沙汰なし。時間の価格も下がる一方で、信じて持っていた時間は買った値段の10分の1に・・・。その専門家に文句は言って良いかも知れませんが、残念ながら損失は誰も補填してくれません。
上場してきた専門家が、タイムバンクにおいて活動し続ける、という点において信頼できるかどうかが最も重要な判断材料です。信頼できる専門家の時間だけを公募で買うべきであり、時間を買うという事は、お金を貸しても良いと思うくらいにその専門家を信頼したという事になるのです。
まとめ
時間の価値とは?という疑問から、タイムバンクにおいて専門家とユーザーがどのように考え、行動するべきかを検討してみました。
タイムバンクはカジュアルに取引が楽しめるアプリではありますが、ここでは敢えて「お金の貸し借り」「信頼」「義務」など、ハードルを上げるような言葉を選んで使ってみました。カジュアルに楽しむユーザーがいる一方で、取引のスキームを完全に理解し、その仕組みを率直に発信するユーザーがいるべきだと考えているからです。
多くの専門家やユーザーが取引の仕組みをしっかり理解し、タイムバンク市場が適切に発展して欲しいと思っています。
今回は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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