野村証券とラインが出資してスタートした「ライン証券」がユーザー拡大に向けて動き出しています。
ユーザー拡大に向けたキャンペーンというと、「口座開設で1,000円キャッシュバック」などが多いですが、ライン証券は「株のタイムセール」という新しいキャンペーンを打ち出し、注目を集めています。
ターゲットは、投資に対してネガティブなイメージを持つ20代~30代。この世代を投資に呼び込むために、ネガティブなイメージを払拭するほどの”儲かる”キャンペーンを実施してくると予想しています。
ラインは月間8100万人という莫大なユーザーを抱え、その1%でもライン証券に誘導できればネット証券トップ10入りすることができるほど巨大なプラットフォームです。
大きな可能性を秘めるライン証券をものにするため、今後も大きなキャンペーンを続けてくる可能性が高いでしょう。今回はその理由について考えてみました。
目次
今、ライン証券が儲かる理由
ライン証券は2019年8月20日にスタートしたばかりの投資サービスです。
スタートしたばかりのサービスはユーザーを集めるためにキャンペーンを打つものですが、ことライン証券においては比較的長期に渡ってキャンペーンを続けると考えています。
投資未経験者は始めるチャンスであり、経験者も儲けるチャンスということですね。
その理由を、ラインのユーザー層やライン証券の背景を絡めて考察していきます。
ラインユーザー世代は投資に絶望している
ラインのメインユーザーは、20代〜30代前半のいわゆる”ゆとり世代”。
この世代は、リーマンショックなどの世界的経済不況、就職氷河期、そして人生が日本の「失われた30年」に重なったことで、リスクを過剰に見る傾向があり、投資サービスへの誘導には乗りにくい世代です。
その傾向は調査結果にも表れています。
若年層10,000人を対象にした調査によると、全体の4割が個人的な投資経験があり、6割は投資未経験という結果が出ています。投資経験4割は多いように見えますが、現在やっている割合では2割ほどまで下がるようです。
投資をやらない理由として挙げられるのが「資金が減るのが嫌だから」。
投資に対してネガティブなイメージが先行している世代を投資に誘うのは一筋縄ではなく、ライン証券は難しい戦いに挑もうとしています。
リスク心理を取り除くため”儲けさせる”必要
投資では利益より損失の方が精神的ダメージが大きいため、それを回避するために投資自体に手を出さない場合が多く、食わず嫌いになりがちです。
食わず嫌いのリスク心理を取り除くには、一度自分の手で儲けてもらうのが手取り早い方法ですが、それには「鶏が先か、卵が先か」問題のように、「投資が先か、儲けるのが先か」というジレンマに陥っており、結局投資が始められないというのが現在の若年層の状況だと考えられます。
12月からライン証券でスタートした「株のタイムセール」はそのジレンマを断ち切るものでした。
「株のタイムセール」では割引で株を買えるので、資金が減る可能性は低く、リスクを恐れる若年層も投資を始めやすいという特徴があります。また、1株から買えるという手軽さから、元資金の多少に関わらず始めることができます。
月間アクティブユーザーが8000万人と言われるラインから、ほんの数%でもライン証券に呼び込むことができれば、一気にネット証券トップに躍り出ます。
非常に大きな可能性を秘めているので、ユーザーが拡大するまで、ライン証券は資金を投じてユーザーに”儲けさせる”キャンペーンを打ってくると予想しています。
投資家にとっては儲かるチャンス
ラインは既存ユーザーからの口コミによるPR効果を狙っており、既存ユーザーもキャンペーンで利益をあげることができそうです。
投資家にとっては儲かるチャンスだと言えるでしょう。
投資に関するアンケートで、口座を開設しても1度も取引しなかったユーザーは約半数にのぼり、投資を行う動機付けとしてのキャンペーンを繰り返し行うものと予想します。
LINE Payでは300億円還元キャンペーンが行われたほど。野村證券とLINEが「いける」と判断すれば、野村證券の厚い投資体力を武器に、ライン証券での大規模なキャンペーンも期待できます。
ユーザーを拡大しようとしている今がライン証券での稼ぎ時と言えます。
これまでに2度失敗。後が無い野村證券
ライン証券の49%を出資する野村證券は、ネット証券を何としても成功させたい事情があります。
1872年に創業した歴史ある野村證券。証券口座数では日本一位を誇りますが、ネット証券においては乗り遅れており、これまでに二度に渡ってネット証券にチャレンジしましたがいずれも失敗に終わりました。
- ・野村ファンドネット証券(1998年-2003年)
- ・ジョインベスト証券(2006年-2009年)
ことジョインベスト証券に至っては、トラブルの責任を回避しようとした結果、批判が殺到して金融庁からの業務改善命令を出されてしまいました。
2018年12月の決算では約1000億円の赤字を出した野村證券。利益の源泉である対面販売手数料が減り続けるなか、ネット証券へ活路を見出さなければなりません。
野村證券にとって三度目の正直となるかが注目されるLINE証券。これをモノにするために手を尽くしてくることでしょう。
今後のライン証券
ラインの月間アクティブユーザーは約8000万人ですが、この1%にあたる80万人だけでもライン証券を使うようになれば、一気にネット証券トップ10入りを果たすことができます。
将来的に5%まで拡大すれば、現在1位で460万口座を誇るSBI証券に肉薄し、10%にもなればダントツ1位に踊り出ます。
ラインは莫大なユーザー数を誇り、しかも投資未経験者が多い世代という、金融サービスにとってはまさに”金脈”です。
この金脈を掘り当てるために、これから話題性があって”儲かる”キャンペーンを何度も打ってくるのではないでしょうか。