株主優待を新設した西部ガスホールディングス(以下、西部ガスHD)が注目銘柄として浮上した。
200株の保有で年間12,000円相当の優待を受けることができ、利回りは約3%に達する。
もともとの配当利回りも約3%あり、合計6%もの利回りが取れる銘柄となった。
優待新設を受けて株価は急騰したが、過去5年間ではまだまだ安値圏にあり、個人投資家は買いを検討するべき銘柄である。
本記事では、株主優待の内容や実質的なリターンを検討した上で、今後の業績・株価見通しについて考察していく。
新設された優待内容
200株で年間12,000円相当の優待
まずは株主優待の内容を確認していこう。
以下が概要だ。
Amazonギフト券にも交換可能
ベースとなっているのは多くの優待銘柄が活用しているプレミアム優待クラブだ。
付与されたポイントはプレミアム優待クラブ内で、ネットショッピングのように商品と交換できる。
中にはAmazonギフト券もあり、1ポイント=1円と言っても差し支えないだろう。
優待サイトの公開は、優待の権利確定後の2026年5月で予定されています。
優待廃止・改悪のリスクは?
株主優待の導入で株価が上がった反面、今後は優待廃止(または改悪)のリスクが生じる。
では、優待廃止・改悪のリスクはどの程度あるだろうか。
優待廃止・改悪の原因となるのは、優待コストが過度に重くなることが考えられる。
現状、西部ガスHDの株主数は1万2,000人程度であり、優待コストは最低でも1億5,000万円と想定される。
株主数1.2万人、1人当たり1.2万円で、1.2万人×1.2万円=1億4,400万円となります。実際には400株以上保有の投資家もいるため、1億5,000万円は下らないでしょう。
一方、西部ガスHDの年間純利益は70億円(2026年3月期)ある。
純利益に対する優待コストは十分小さく、これから個人投資家が数割増加しても、優待廃止や改悪に追い込まれる可能性は低そうだ。

個人株主数が2倍、3倍になってくると優待コストが過剰になりそうですが、その時は十分に株価が上がっているでしょうから、心配無用です。
「配当+優待」の総合利回り
総合利回りは約6%
もともと西部ガスHDの配当利回りは3%ほどで、そこそこの水準だった。
しかし、今回優待が追加されたことで利回りはほぼ倍となっている。
配当が1株70円、優待が1株60円であるため、配当+優待の総合利回りは5.8%となる。
総合利回り=[70円(1株配当)+60円(1株優待)]÷2,239円(株価)×100%≒5.81%
上の計算は2026年1月5日終値で計算しており、優待発表後の株価上昇を織り込んだ数字だ。
トップ級の高利回り
換金性の高い優待で総合利回り5.8%というのは国内トップ級の利回りである。
優待ポイントはAmazonのポイントに交換できるため、個人投資家にとっては配当利回り5.8%とほぼ同義である。
優待は配当と違って課税されないというメリットすらあります。
これほどの利回りの銘柄で、かつ西部ガスHDと同等以上の事業基盤を持っている銘柄は挙げることが難しい。
株価上昇で利回り低下を予想
非常に魅力的な利回りであることから、このまま放置されるとは考えにくい。
個人投資家の買いによって株価が上昇し、利回りが低下していくのが自然な動きだ。
特に、近年は個人投資家も株式市場で無視できない存在となってきており、上昇の原動力になりうる。
早めに買っておけば、優待+配当の高利回りに加え、株価上昇による含み益も得られる可能性がある。
これまでの株価推移
優待発表で3年ぶり高値
利回りが高まったとはいえ、高値で買うのは怖い面もある。
実際、優待新設によって株価は急騰し、約3年ぶりの高値を更新した。
以下が過去3年間の株価推移だ。

株価2,000円付近で伸び悩んでいたところ、優待発表により2,200円まで上昇した。
過去3年間では2023年6月の2,184円が高値だった。
長期では安値水準
一方、長期チャートで見ると印象が変わってくる。
以下が過去10年間の値動きだ。

優待新設で急騰したものの、2,200円台は2022年当時の水準にすぎない。
2022年以前は株価2,500円が値動きの中心であった。
そのため、3年ぶりの高値であっても、高値掴みを過度に心配する必要はないだろう。
これまで安かった原因
とはいえ、これまで株価が安かった原因は把握しておくべきだろう。
2022年以降、西部ガスHDの株価が低迷した原因は、2022年2月に始まったウクライナ戦争に起因する。
西部ガスHDは原料であるLNGを、ロシアの「サハリン2」から調達していた。
サハリン2とは、ロシア主導で運営されているLNGプラントです。利益の一部はロシアに入り、ウクライナ戦争の原資とされています。
ところが、戦争が始まったことでサハリン2からのLNG調達可否が不透明となった。
調達不可となった場合、代替先から高値で調達せざるを得なくなり、業績悪化が危惧されたのだ。
さらに、世界的にLNG価格が上昇したことで、仕入れコストが増加し業績を圧迫した。
これらの懸念が株価に織り込まれ、株価低迷につながったのだ。
株価はまだ割安か?
PER11倍、PBR0.76倍で割安
株価が急騰したとはいえ、株価はまだ割安な印象だ。
今期の予想PERは11倍、PBRは0.76倍にとどまる。
西部ガスHDは不動産会社という側面もあり、PBR0.76倍というのは魅力的な水準だ。
また、インフレ関連であるにも関わらずPER11倍台というのも割安感が強い。
同業他社との比較
同業他社との比較でも、割安感が際立っている。
下表は国内ガス会社との主要指標を比較したものだ。
| 銘柄名 | 予想PER (倍) | 実績PBR (倍) | 予想配当利回り (%) | ROE (%) |
|---|---|---|---|---|
| 西部ガスHLD | 11.76 | 0.75 | 3.16 | 6.12 |
| 東京ガス | 12.10 | 1.37 | 1.58 | 4.29 |
| 大阪ガス | 15.27 | 1.27 | 2.20 | 7.95 |
| 東邦ガス | 17.83 | 1.01 | 1.83 | 5.67 |
PER・PBRともに西部ガスHDが群を抜いて割安である。
配当利回りも高く、しかも優待利回りまで考慮すれば、他社の2倍以上の利回りが得られる計算だ。
ROEは他社と同程度であることから、西部ガスHDの割安感が際立っている。

同業他社3社のうち、東邦ガスのみ優待を実施していますが、それを考慮しても西部ガスHDの総合利回りは2倍を超えます。
+30%の上昇余地
株価指標の割安感と、高い総合利回りを踏まえると、西部ガスHDの株価は+30%以上の上昇余地があると見られる。
現在の株価から30%上昇すると、株価指標は次のようになる。
予想PER15倍、実質PBR0.98倍というのは、株式市場の平均的な数字だ。
それでも、総合利回りは4.48%と高く、個人投資家にとってはなお魅力的な水準である。
したがって、現在株価から+30%の上昇余地は十分にあると考えられる。
業績の見通し
若干の増収増益の見通し
今後の業績を見通す上で、まずは四季報の業績予想を確認しておこう。
以下が2027年3月期までの業績予想だ。
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | 1株益(円) |
|---|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 254,442 | 10,530 | 6,362 | 171.8 |
| 2026年3月期(予) | 256,000 | 10,500 | 7,000 | 193.5 |
| 2027年3月期(予) | 260,000 | 11,500 | 7,700 | 212.8 |
売上高は微増だが、利益の増加率が顕著だ。
純利益は年間+10%程度の伸びが予想されており、良好な業績見通しと言えるだろう。
この見通しを支えているのが、現在試運転中の「ひびき発電所」だ。
2026年3月からの営業運転が予定されており、減価償却費の負担が減ることに加え、売電が始まることで業績に寄与する。
LNG調達にも現状は不透明感がなく、事業環境は良好が続く見通しだ。

営業利益135億円が目標
西部ガスHD自身も業績目標に言及している。
2027年度を最終年度とする中期経営計画では、2027年度(2028年3月期)の目標として、営業利益135億円が設定された。

この場合、純利益は100億円に到達するだろう。
1株利益換算では270円の利益で、現在株価(2,214円)から計算したPERは8.2倍となる。
あくまで目標だが、実現した場合は現在株価は非常に割安であり、株価上昇が期待される。
様々なリスク要因も存在
一方、今後の業績に対してはリスク要因も多い。
リスクの筆頭はLNGの調達についてだ。
ロシア産LNGは主に米国から調達中止を迫られており、調達が不可となれば、代替先から調達せざるを得ない。
その場合、より高い価格で購入せざるを得なくなり、コスト増加による業績下押し圧力となる。
また、LNG調達先で生産トラブルが発生した場合も同様だ。
実際、2021年にはマレーシアのLNGプラントでトラブルが起こり、業績予想の下方修正に追い込まれた。
日本経済新聞「西部ガスHDが一時7%安 LNG生産トラブルで下方修正」
他にも、為替リスク(円安なら調達コスト増)や戦争リスク(LNG海上輸送が滞る)も現実に起こり得るリスクだ。
これらのリスクを踏まえた上で投資に臨むべきだろう。
今後の株価見通し
個人投資家による株価押上げに期待
今後の株価については、個人投資家がカギを握るだろう。
西部ガスHDの出来高は比較的小さく、1日当たり10万株(1,000単元)未満が通常だ。
そのため、個人投資家の影響力が大きい。
利回りの高さに着目した買いにより需給が改善し、株価が上昇していくシナリオが描ける。
短期的には、優待新設で急騰したことで利益確定売りも出やすいが、売り一巡後は上昇トレンドに転じることが期待できる。
不動産関連としても注目される
西部ガスHDは不動産企業という側面もある。
全体の業績のうち、主力のガス事業が営業利益を最も稼いでいるが、その次に稼いでいるのが不動産事業だ。
2026年3月期2Q累計(下図)では、ガスの営業利益が25億円だった一方、不動産は22億円だった。
主力のガスに迫る利益を不動産で生み出しているのである。

さらに、不動産の含み益も相当あるだろう。。
西部ガスHDの不動産含み益は開示されていないが、含み益の多さで注目された企業は、売却益の思惑から株価が上がりやすくなる。
下図のように不動産含み益が開示や取材を通じて明らかになった企業もあり、国内企業の不動産含み益はたびたび買い材料となっている。

今後、西部ガスHDの不動産事業が注目されれば、株価の一段高もあり得るだろう。
株価3,000円が上昇目途
上でも計算した通り、株価2,900円でも株価指標は一般的な水準であり、配当+優待の利回りは4%台半ばを維持する。
上昇トレンドに乗れば、株価3,000円も現実的だろう。
3,000円からさらに上がるかどうかは、業績や株主還元の具合にもよるだろうが、現状でも株価3,000円は目指せる実力があると考えている。
現在株価が2,200円台であることを踏まえると、下落リスクよりも上昇余地に魅力があると言えるだろう。
まとめ
西部ガスHDは、優待新設で総合利回り約6%という国内トップ級の高利回り銘柄となった。
個人投資家にとって非常に魅力的な銘柄へ変貌したと言える。
株価は優待発表後に急騰したものの、長期的には依然として割安圏だ。
業績面でも発電所稼働や安定した不動産収益が追い風となり、緩やかな成長が見込まれることから、投資リスクは限定的である。
現在の株価水準では下落リスクよりも上昇余地が大きく、中長期で注目に値する高利回り銘柄であると考えている。

















