前回の記事ではSBIホールディングスに投資した場合のリターンを中心に考察しましたが、本記事では、今後の株価予想を具体的に考えてみます。
配当利回り5%超え、PBR0.7倍と割安な一方、多くの期待材料を抱えている銘柄ですので、株価上昇の可能性が高いと言えそうです。
まずは5つの好材料を紹介した上で、株価指標をベースに妥当株価を計算していきます。
目次
SBIホールディングスの現状を確認
業績は絶好調
SBIホールディングス(以下、SBI)の直近の業績は好調そのものです。
2020年3月期は375億円の純利益でしたが、2021年3月期は倍以上となる811億円に拡大。
さらに、2022年3月期は3.5倍となる3,669億円を計上しました。
この数字には一時的な利益が含まれているものの、それを除いても1,301億円の純利益です。
新生銀行を子会社化
SBIは新生銀行に対して敵対的買収を敢行し、見事成功を収めました。
当初は新生銀行の経営陣が買収に反対し、一時は防衛策が検討されましたが、大株主である日本政府の同意が得られず防衛策は廃案に。
結局、買収提案を受け入れざるを得なくなり、SBIが47.77%の株式を取得して子会社化しました。
買収額が純資産額を下回ったことで”負ののれん”益を2,000億円ほど計上しています。
”第4のメガバンク”へ
新生銀行はSBIが以前から”第4のメガバンク”構想を提唱していますが、新生銀行を傘下に収めたことで、実現に向けて大きく前進しました。
第4のメガバンク構想は、地域金融機関を共同持ち株会社に束ね、システムや資産運用の機会を共有することで競争力を高めるという構想です。
地方銀行が苦しい中、金融機関再編の一案として注目されています。
新生銀行を地域金融機関を束ねる核とすることが買収の狙いの一つです。
既に10行以上の金融機関から参加の打診が入っているとの報道もあり、第4のメガバンク構想は実現に向けて前進しています。
株価は足踏み状態
好調な業績とは裏腹に、株価は足踏み状態が続いています。
2022年7月1日時点の株価はおよそ2,600円。
2018年に付けた3,500円は遠く、2019年の株価水準に落ち込んでいます。
しかし、逆に言えば好業績に株価が追い付いていないとも考えられます。
今後の展開次第では3,500円の上場以来高値を超えてくることも期待できそうです。
好材料① Web3.0関連銘柄
日本の成長戦略になる可能性
Web3.0(ウェブスリー)は株式の1テーマとして注目されています。
そんな中、SBIは「ブロックチェーン」「NFT」などの関連キーワードを押さえる事業を展開しており、Web3.0の関連銘柄として考えられています。
2022年2月に内閣委員会でWeb3.0が議論に登場し、日本の成長戦略に盛り込む意向が示されました。
日本の成長戦略として明記されれば関連銘柄は注目されることになるでしょう。
ブロックチェーン関連サービスを運営
Web3.0の基幹技術はブロックチェーンです。
SBIは既にブロックチェーンを活用したサービスを開始しており、暗号資産取引サービス「SBI VCトレード」や、NFTマーケットプレイス「SBINFT Market」を運営しています。
知見を有していることで、今後の先行者利益を獲得することができるでしょう。
リミックスポイントと提携
Web3.0分野でリミックスポイント(3825)と資本業務提携を行いました。
両社の知見を活かし、メタバース関連ファンドの運用を進めていきます。
どの程度の利益に結びつくかは不透明ですが、こういった取り組みが積重ねが将来の利益につながってくるでしょう。
好材料② 円安が株価の追い風
高い海外売上高比率
SBIは海外売上高比率が高く、およそ26%が海外での売上です。
規模はおよそ1,400億円に上り、最近の急激な円安によって収益が増加することが期待できます。
証券業界では海外売上比率でTOP3に入り、円安がSBIにとって好材料であることは市場に周知されています。
したがって、円安が進めば株価上昇の可能性が高まると言えます。
株主は約50%が外国人投資家
SBIの株主構成はおよそ半数が外国人投資家です。
円安になればSBIの株価はドルに対して安くなり、ドルベースで取引する外国人投資家からの買いが増えることが期待できます。
特に、ドルベースでの投資比率を決めているファンドの場合は自動的に買い増しすることになるでしょう。
以下の表がSBIの株主構成(少数特定者を除く)です。
保有者 | 保有比率 |
---|---|
外国人 | 48.58 % |
投資信託 | 10.10 % |
年金信託 | 1.77 % |
好材料③ 政府主導のベンチャー投資で恩恵
「新しい資本主義実現会議」で思惑が浮上
岸田総理が掲げる「新しい資本主義」は、実現に向けて議論が進められています。
その中で、4月12日開催の第5回の論点案ではスタートアップへの投資に言及されました。
ベンチャーキャピタルの投資を受けたスタートアップは、イノベーションに積極的である。他方、我が国のベンチャーキャピタル投資は、投資額、件数ともに小さい。これを拡大させる方法として、海外のベンチャーキャピタルの誘致も含めて、ベンチャーキャピタルへの公的資本の(有限責任投資等による)投資拡大、ベンチャーキャピタルと協調する支援の拡大及びそのための体制整備が必要ではないか。
引用:新しい資本主義実現会議(第5回)論点案
スタートアップへ投資を行うのは、SBIのようなベンチャーキャピタルです。
そこで、投資を拡大するためにベンチャーキャピタルへの公的資本注入が可能性として浮上しました。
公的資金注入の可能性
公的資本が注入されれば、SBIは低リスクで投資資金を獲得できます。
獲得した資金でスタートアップに投資を行い、IPO等で株を高値で売却できれば、投資資金の数倍~数十倍の利益を獲得することも可能です。
「国策に売り無し」と言われますが、SBIもそんな国策銘柄になり得る可能性を秘めています。
好材料④ 米国株の信用取引スタート
2022年7月に信用取引解禁
米国株の信用取引が2022年7月に解禁されました。
投資余力の2倍の金額が取引可能となり、取引が活発化することが予想されます。
国内株は半分以上が信用取引であることから、米国株の取引量も数割の単位で増加するかもしれません。
手数料収入増加の期待
取引量が増えれば増えるほど証券会社の利益になります。
米国株は特に20~30代の若年層に人気で、2019~2021年の2年間で取引量は17倍に増加しました。
米国株の信用取引を手掛けることで若年層投資家の流入が見込めます。
今後のSBIの稼ぎ頭となっていくでしょう。
今後の株価予想
PBRベースでは「株価3,500円」が妥当水準
まずはPBRベースで妥当株価を考えてみましょう。
2022年7月時点でのPBRは0.70倍です。
このPBRは過去のPBR推移と比較してどの程度の位置なのでしょうか。
以下のグラフが過去5年間のPBR推移です。
PBRのレンジは0.64~1.88倍で、0.70倍というPBRは最安値水準に接近していることが分かります。
5年間の平均PBRは1.20倍ですので、それと比べても4割ほど割安です。
少なくとも、PBR1倍程度は目指せるでしょう。
PBR0.70倍から1.00倍に回復すれば、株価は+40%程度が見込まれます。
2022年7月1日時点の株価水準(2,600円)から40%増加した株価は3,640円。
ざっくり、株価3,500円以上がSBIの妥当株価と言えそうです。
PERベースでは「株価6,000円」も射程圏内
PERをベースに考えた場合の株価はさらに上になります。
SBIの過去のPERは10倍程度で推移してきました。
株価は【PER×EPS(1株利益)】で計算されますが、2023年3月期以降に予想されるEPSは600円前後です。
これを計算式に当てはめると、10倍×600円=6,000円となります。
PER的には株価6,000円に達してもおかしくはありません。
”第4のメガバンク”実現なら「株価9,000円」も
SBIの野望である”第4のメガバンク”構想が実現すれば、株価はより高値を目指せます。
新生銀行を核に地方銀行を結集させれば、SBIの収益は飛躍的に高まります。
1株利益や1株純資産の上昇により、株価は上場来高値である9,000円を目指せるでしょう。
今後の展開が楽しみな材料ですね。
まとめ
SBIホールディングスの4つの株価材料と今後の株価予想について考察しました。
株価は過去最安水準である一方、業績は過去最高を更新、新生銀行の子会社化、web3.0など複数の好材料を抱えています。
適正水準まで是正されるなら、相当な株価上昇が期待できるでしょう。
9,000円は数年では難しそうですが、3,500円、6000円といった水準は2025年までに実現しても不思議ではありません。
今後の株価上昇に期待したい銘柄ですね。
コメントを残す