AI関連の代表格となったキオクシアだが、株価は乱高下が続いている。
SSD需要拡大とNAND価格の上昇を追い風に、今期は営業利益6兆円という驚異的な利益を上げる見通しだ。
強気な見通しを背景に、株価は2026年前半にテンバガーを達成した。
一方、上場来高値を付けた後は半値以下まで急落するなど、激しい値動きが続いている。
今後の焦点は、好業績が一過性にものにとどまらず、米ビッグテックとの長期契約などによって高水準の業績が続くかどうかである。
本記事では、キオクシアがAI需要の恩恵を受ける理由、業績と株価の見通し、投資する際のリスクを詳しく分析する。
株価急騰と急落の理由
AI需要で株価10倍超に急騰
キオクシアの株価は2026年に入ってから急騰し、わずか半年ほどで10倍以上に上昇した。
株価が短期間で10倍になる「テンバガー」を達成ことになる。
その背景にあるのは、AIデータセンター向けメモリー需要の拡大と、NAND型フラッシュメモリー価格の急上昇がある。


驚異的な利益拡大によって、キオクシアはメモリー市況に連動する敏感株ではなく、AIインフラの成長を支える企業として評価されるようになった。
一方、期待が急速に高まりすぎた結果、上場来高値を付けた後は株価が大幅に下落している。
まずは、キオクシアの株価推移を振り返っていこう。
メモリー需要拡大で価格高騰
キオクシアが急騰した最大の理由は、AIデータセンター向けメモリー需要の拡大期待である。
AIの利用者が増加し、学習だけでなく推論処理が拡大すれば、保存されるデータ量も急速に増えていく。
そこで、大手テクノロジー企業はAIサーバーやデータセンターへの巨額投資を続けている。
このため、SSDに使われるNAND型フラッシュメモリーの需要が長期的に拡大するとの期待が高まった。

キオクシアはNAND型フラッシュメモリーで世界有数のシェアを持ち、AI向けSSD需要の拡大による恩恵を直接受ける企業である。
従来はスマートフォン向けメモリーの市況に左右される企業として見られていたが、AIデータセンター関連株として再評価されたことが、株価上昇につながった。
48倍の純利益予想が株価上昇を加速

AI需要への期待を現実の業績として示したのが、キオクシアの利益予想だ。
キオクシアは2026年5月、2026年4~6月期の純利益が前年同期比48倍の8,690億円になるとの見通しを発表した。
利益48倍になるという予想は、市場に衝撃を与えた。
AIデータセンター向けSSDの需要が増加していることに加え、NAND型フラッシュメモリーの供給が不足し、販売価格が大幅に上昇しているためである。
この発表をきっかけに国内外の投資資金が流入し、株価上昇の勢いがさらに強まった。
時価総額でトヨタ自動車を上回る

株価急騰によって時価総額も急速に拡大した。
2026年6月12日には、時価総額が一時トヨタ自動車を上回り、国内上場企業で首位となった。
日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車を、上場から間もない半導体メモリー企業が時価総額で上回ったことは、象徴的な出来事である。
海外投資家や短期資金の流入によって売買代金も膨らみ、株価上昇が新たな買いを呼ぶ展開となった。
こうしてキオクシア株は、2026年1月~6月にかけて10倍以上に上昇し、テンバガーを達成した。
上場来高値から半値以下まで急落
急騰を続けてきたキオクシアだが、2026年6月22日に上場来高値の11万2,700円を付けた後は急落した。
7月27日には一時5万400円まで売られ、高値からの下落率は約55%に達した。

株価が急落した背景には、短期間で上昇しすぎた反動がある。
株価にはAI需要の拡大やNAND価格の上昇だけでなく、将来の大幅な利益成長まで織り込まれていた。
そのため、AIデータセンターへの投資が過剰ではないかとの懸念や、競合メーカーの増産によってメモリーが供給過剰になるとの見方が広がると、利益確定売りが一気に増加した。
株価下落局面で押し目買いを行った投資家も多く、信用買い残が積み上がったことも株価の重荷となっている。
キオクシア株はテンバガーを達成したものの、その後は高値から半値以下まで下落するなど、値動きの非常に激しい銘柄となっている。
過去最高益を支えるNAND価格の上昇
NAND価格の上昇で業績拡大

キオクシアの業績は、NAND型フラッシュメモリー価格の上昇によって急速に改善している。
メモリー事業は製品価格の変動が利益に与える影響が大きく、販売価格が上昇すると売上高以上のペースで利益が拡大しやすい。
足元では、需要の増加に対して供給能力の拡大が追いつかず、NANDの需給が逼迫している。
この結果、キオクシアは2026年3月期に過去最高の売上・利益を達成し、2027年3月期もさらなる利益拡大が期待されている。
2026年3月期は売上・利益とも過去最高
2026年3月期の売上収益は2兆3,376億円となり、前期比で37.0%増加した。
営業利益は8,704億円となり、前期比で92.7%もの増加率である。
売上収益、営業利益、純利益はいずれも過去最高となり、営業利益率は37.2%まで上昇した。
特に2026年1~3月期は、NAND価格の上昇が一段と進み、四半期ベースの利益が急拡大した。

NAND価格の上昇で利益率が急改善
メモリー生産には工場に巨額投資が必要で、減価償却費や人件費などの多額の固定費が発生する。
そのため、需要が弱く製品価格が下落すると、売上高の減少以上に利益が悪化しやすい。
反対に、需要が増加して工場の稼働率が上昇し、製品価格も上がると、利益は急速に拡大する。
現在のキオクシアは、販売数量の増加、工場稼働率の改善、NAND価格の上昇という3つの追い風を受けている。
これが営業利益の増加につながった。

ただし、現在の高い利益率は、NAND価格が高水準にあることを前提としている。
製品価格が下落へ転じれば、利益率も急速に低下する可能性がある。
2027年3月期はさらに利益拡大へ

2027年3月期は、2026年3月期を上回る大幅な利益拡大が予想されている。
背景にあるのは、AIデータセンター向けSSD需要の増加と、NAND価格の高止まりだ。
生成AIの利用が広がるほど、AIモデルが扱うデータ量や保存する情報量も増加する。
特にAI推論の利用回数が増えれば、短期的な計算能力だけでなく、大量のデータを高速で読み書きする記憶装置が必要となる。
2027年3月期は、こうした需要に対応する高速・大容量SSDの販売を拡大する方針である。
NANDの供給不足が続けば、販売数量の増加と価格上昇の両方が利益を押し上げるだろう。
NANDの供給不足は2027~2028年まで続く

NAND価格の上昇が続いている理由の一つは、競合メーカーが生産能力増強に慎重であるためだ。
半導体メモリー各社は、AIサーバーで使用されるHBMなどのDRAM製品への投資を優先している。
その結果、NAND向けの新工場や製造装置への投資は、需要の伸びに対して限定的となっている。
AIデータセンター向けSSDの需要が増加しても、NANDの供給能力を短期間で増やすことは難しい。
市場では、NANDの需給逼迫が少なくとも2027年ごろまで続き、新工場による本格的な供給増加も2028年までは限定的になるとの見方がある。
そのため、キオクシアは高い製品価格と利益率を維持できることが期待されている。
メモリー価格は3~5年周期で変動する
NAND型フラッシュメモリーの価格は、これまで3~5年程度の周期で上昇と下落を繰り返してきた。

現在は、AIデータセンター向け需要の拡大と供給不足によって、価格上昇局面にあると考えられる。
しかも、今後はAIの急速な進化によってメモリー不足が常態化し、価格が高止まりする「スーパーサイクル」に突入しているとの見方もある。
スーパーサイクルが実現すれば、キオクシアは中長期にわたって高水準の業績を維持するだろう。
ただし、AI需要が想定より弱まった場合や、競合各社の増産が早まった場合には、メモリー価格が下落へ転じる可能性がある。
キオクシアが従来のメモリーサイクルを乗り越え、安定した成長を実現できるかが、今後の企業価値を左右することになるだろう。
キオクシアがAI需要の恩恵を受ける理由
AI市場が学習から推論へ移行
生成AI市場では、これまで大規模なAIモデルを開発するための「学習」が注目されてきた。
学習には大量のGPUや高性能メモリーが必要となり、HBMを手掛ける半導体メーカーが恩恵を受ける。
一方、今後は学習だけでなく「推論」の重要性が高まる。

推論とは、学習済みのAIモデルが利用者からの質問を受け取り、文章や画像などの回答を生成する処理である。
企業が生成AIを業務へ導入し、資料作成やプログラム開発などに活用するほど、必要な計算量と保存データ量は拡大する。
このため、キオクシアが得意とするNAND型フラッシュメモリーやSSDの需要が増加すると期待されている。
SSDがGPUメモリーの拡張領域になる

AIサーバーでは、GPUに搭載される高性能メモリーに必要なデータを保存する。
しかし、GPUメモリーは価格が高く、保存できる容量にも限界がある。
そこで注目されているのが、SSDをGPUメモリーの拡張領域として利用する仕組みだ。
頻繁に使用するデータはGPUメモリーへ保存し、すぐに使用しないデータや大容量の情報はSSDへ移すことで、システム全体のコストを抑えられる。
AIサーバーにおけるSSDの役割が、単なるデータ保存から、GPUの処理を支える重要部品へ変わりつつあるということだ。
これがキオクシアにとって次の大きな成長機会となることが期待されている。
高速・大容量SSDの需要が拡大

AIでは、大量のデータを低コストで保存する用途と、推論時に高速で読み書きする用途の両方が必要となる。
その点、キオクシアは用途に応じて複数のSSD製品を展開している点が強みだ。
TLC方式の「CMシリーズ」は、性能と耐久性のバランスに優れ、企業向けサーバーやデータセンターで利用される。
QLC方式の「LCシリーズ」は大容量化に適しており、最大245TBの製品によって、ハードディスクからSSDへの置き換え需要を狙う。
さらに、XL-FLASHを搭載した「GPシリーズ」は、高速な読み書きを重視した製品である。
このように、キオクシアは容量、速度、コストの異なる需要に対応できる製品群を持つ。
AIデータセンターでSSDの容量と性能が同時に高まれば、NAND型フラッシュメモリーを主力とするキオクシアの成長機会も広がる。
データセンター向け売上比率を60%以上へ

キオクシアは、データセンター・エンタープライズ向け製品の売上比率を中長期的に60%以上へ引き上げる方針である。
従来のNAND市場では、スマートフォンやパソコン向けの需要が大きな割合を占めてきた。
一方、AIデータセンター向けSSDは、生成AIの普及によって中長期的な需要拡大が期待されている。
データセンターでは1台のサーバーに搭載されるSSD容量が大きく、AIモデルの大規模化によって必要な記憶容量も増加している。
また、企業向けSSDは性能や信頼性への要求が高く、一般消費者向け製品よりも付加価値を付けやすい。
データセンター向け売上比率が高まれば、販売数量の拡大だけでなく、製品構成の改善によって利益率がさらに上昇するだろう。
NAND市場で世界第3位のシェア
キオクシアは、NAND型フラッシュメモリー市場で世界第3位のシェアを持つため、市場拡大の恩恵を受けやすい企業だ。
2026年1~3月期の市場シェアは13.9%で、Samsung Electronics、SK hynixグループに次ぐ3位を維持した。

さらに、キオクシアの製品競争力は、第10世代BiCS FLASHの投入によって強化される見込みだ。
第10世代製品は332層構造を採用し、第8世代と比べてビット密度を59%、インターフェース速度を33%改善している。
同じ面積から生産できる記憶容量が増えれば製造コストを抑えやすくなり、高速化と省電力化はAIデータセンター向けSSDの競争力につながる。

ただし、キオクシアが競合を明確に引き離しているとまではいえない。
Samsung ElectronicsとSK hynixグループは依然としてキオクシアを上回る市場シェアを持ち、資金力や生産規模でも強力な競合である。
中国メーカーの技術向上も進んでおり、将来的には価格競争が激しくなる可能性がある。
成長を支える設備投資と長期契約
AI向け需要を取り込むため投資を拡大

SSDの需要拡大を業績成長につなげるためには、供給能力と技術力を同時に高める必要がある。
しかし、NAND型フラッシュメモリーは、短期間で生産量を増やせる製品ではない。
新しい製造棟の建設や半導体製造装置の導入には、巨額の資金と長い準備期間が必要だ。
そのため、キオクシアは今後3年間、設備投資と研究開発を積極的に進め、AIデータセンター向け製品の成長を取り込む方針である。
年間4,700億円の設備投資を計画

キオクシアは今後3年間、年間約4,700億円の設備投資を計画している。
これは2025年3月期の設備投資額と比べて、60%も多い水準だ。
投資の中心となるのは、四日市工場と北上工場における次世代NAND型フラッシュメモリーの生産設備である。
また、製造装置を増やすだけでなく、1枚の半導体ウエハーから生産できる記憶容量を高める施策も進めていく。
製造技術の世代交代を進めながら、生産能力とコスト競争力の両方を高める方針だ。
ただし、年間約4,700億円の設備投資は、業績が悪化した場合にも減価償却費として負担が残る。
NAND価格が高い時期に増産を進め、その後に市況が悪化するという従来のメモリーサイクルが繰り返されると、投資が裏目に出る恐れもある。
第10世代BiCS FLASHの生産を開始
キオクシアは、最先端の第10世代BiCS FLASHの生産を開始している。
BiCS FLASHは、記憶素子を縦方向に積み重ねることで、半導体の面積を大きく変えずに記憶容量を増やす技術である。
第10世代製品では332層構造を採用し、第8世代と比べてビット密度を59%高めている。
データ転送速度も向上しており、インターフェース速度は最大4.8Gbpsとなる。
また、書き込み時の電力効率は18%、読み出し時は30%改善したとしている。

AIデータセンターでは大量のSSDが常時稼働するため、消費電力の小さな差でも施設全体では大きな電力削減につながる。
AIサーバーの消費電力が増加するなか、省電力性能はSSDを選定するうえで重要な条件となる。
第10世代製品を安定して量産し、高速・大容量SSDの販売拡大につなげられれば、キオクシアの競争力向上が期待できる。
研究開発に年間約2,300億円を投入

キオクシアは今後3年間、研究開発費として年間約2,300億円を投入する方針である。
NAND市場では、記憶容量、処理速度、消費電力、耐久性を同時に改善する競争が続き、単に積層数を増やすだけでは競合他社に勝つことはできない。
AIデータセンター向けでは、低価格で大容量のSSDと、高速な読み書きに対応するSSDの両方が必要となる。
キオクシアは、TLCやQLCを採用した大容量製品に加え、高速処理に適したXL-FLASHの開発も進めている。
用途ごとに異なる製品をそろえることで、データ保存からAI推論まで幅広い需要を取り込む狙いだ。
年間約2,300億円の研究開発投資によって、競合他社との差別化を実現できるかが今後の成長を左右する。

年間2,300億円は大規模ですが、競合他社と比べると数分の1の水準です。
米ビッグテックとの複数年契約がカギ

キオクシア株が再び上昇基調へ転じるための重要な材料として、米ビッグテックとの複数年契約が挙げられる。
NAND型フラッシュメモリーは需要が強い時期には価格が上昇して利益が急拡大するが、供給過剰になると価格と利益が急速に落ち込む。
これが、メモリーメーカーが低いPERで評価されやすい理由の1つである。
しかし、大手クラウド事業者と複数年契約を結べば、将来の販売数量と価格が安定する。
会社側も、複数年契約によって業績変動のリスクを軽減し、より安定した経営が可能になるとの認識を示している。
NAND需給が逼迫している間に米ビッグテックとの長期契約を拡大できれば、2029年3月期ごろまで高水準の業績が続く確度も高まるだろう。
今後の株価見通し
業績拡大で株価10万円台も視野

キオクシア株は、2026年6月22日に上場来高値となる11万2,700円を付けた後、短期間で半値以下まで下落した。
一方で、AIデータセンター向けSSDの需要拡大やNAND価格の上昇を背景に、業績は高水準で推移している。
今後の株価は、今の高い利益水準を維持できるかによって大きく変わるだろう。
現在の利益が一時的なメモリー市況の好転によるものと判断されれば、株価は低いPERで評価されやすい。
一方、AI向けSSDの販売拡大や米ビッグテックとの複数年契約によって、利益が安定すると評価されれば、株価の見直し余地は大きい。
中長期的な利益成長の確度を示す材料が出れば、株価は10万円台を回復し、上場来高値更新も視野に入るだろう。
好決算でも株価が上昇するとは限らない

キオクシアに投資するうえで注意したいのは、業績が良ければ必ず株価が上昇するわけではないことだ。
株価は単純な増益率だけでなく、市場の事前予想との比較によって動く。
会社予想を達成したとしても、市場予想を下回れば、期待外れと判断されて株価が下落する可能性があるということだ。
反対に、市場予想を上回る利益に加え、次の四半期や通期について強い見通しが示されれば、株価が反発する材料となる。
特に注目されるのは、販売数量、NAND価格、データセンター向けSSDの売上、設備投資の進捗である。
キオクシアを買うなら、これらの要因にも注意を払う必要があるだろう。
PER9倍でも単純に割安とはいえない

キオクシアの予想PERは、株価が調整したことで9倍台まで低下している。
一般的な成長企業と比べると低い水準であり、表面的には割安に見える。
しかし、メモリー企業のPERを判断する際には一般論は当てにならない。
もし、メモリー価格が下落して純利益が半分になれば、株価が変わらなくてもPERは2倍に上昇する。

そのため、低いPERだけを理由に割安であると判断するのは危険だ。
重要なのは、現在の利益を一時的なピーク利益と見るか、AI需要によって維持できる利益と見るかである。
現在はPERが低く、株式市場は業績がピークアウトすると考えているようだ。
逆に、メモリー価格が高止まりして好業績が続けば、株価には再評価の余地が多く残されている。
2028年3月期の予想株価は約11万5,000円

2028年3月期の業績予想では、売上高8兆7,000億円、営業利益6兆1,000億円、純利益4兆2,000億円が見込まれている。
1株当たり利益は7,688円の予想である。
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | 1株益 |
|---|---|---|---|---|
| 2026.3 | 2兆3,376億円 | 8,703億円 | 5,544億円 | 1,024円 |
| 2027.3予 | 7兆8,000億円 | 5兆6,000億円 | 3兆8,500億円 | 7,047円 |
| 2028.3予 | 8兆7,000億円 | 6兆1,000億円 | 4兆2,000億円 | 7,688円 |
この1株当たり利益にPER15倍を適用すると、予想株価は次のようになる。
予想株価=7,688円×15倍=11万5,320円
したがって、2028年3月期の業績予想を達成し、株式市場からPER15倍で評価された場合、キオクシアの株価は約11万5,000円となる。
ただし、PER15倍は、現在の9~10倍程度と比べると高い評価である。
この評価を得るためには、NAND価格の高騰による一時的な利益ではなく、AIデータセンター向けSSDの成長によって高水準の利益が続く必要がある。
また、米ビッグテックとの複数年契約が拡大し、高水準の利益を維持できると判断されれば、PER15倍で評価される可能性はある。
予想株価約11万5,000円は、高水準の業績が安定して続くことを前提とした強気の試算である。

この間つけた上場来高値11万2,700円は業績を先取りしすぎてしまった感じですね。
株価反転に必要な4つの条件
キオクシア株が下落局面を終え、再び上昇基調へ転じるためには、4つの条件が重要となる。

短期的には、①市場予想を上回る業績を発表すること が重要となる。
アナリストの予想を超えることで、投資家は安心して買いを入れることができるようになる。
長期的に効いてくるのが②米ビッグテックとの複数年契約を獲得することだ。
長期契約によって将来の販売数量を確保できれば、メモリー市況による業績変動を抑えられる。
業績が高水準で安定する見通しが立てば、PERの目線が切り上がり、株価上昇は投資家にとって既定路線となる。
好業績、長期契約、NAND価格、株式需給の4つがそろえば、キオクシア株が上場来高値を奪還できる可能性は高まるだろう。
キオクシア株に投資する際のリスク
過去最高益でも投資リスク大

キオクシアは、AIデータセンター向けSSDの需要拡大とNAND価格の上昇によって、過去最高水準の利益を上げている。
一方、半導体メモリーは需要と供給の変化によって価格が大きく変動するため注意が必要だ。
市況の変化によっては、現在の好業績が長期間続くとは限らない。
AI関連株としての期待が高いほど、業績が市場予想を下回った場合の株価下落も大きくなりやすい。
また、巨額の設備投資、競合メーカーの増産、特定顧客への依存、大株主による株式売却など、事業面と株式需給の両方に注意が必要である。
NAND価格が下落するリスク

キオクシアの業績を左右する最大の要因は、NAND型フラッシュメモリーの販売価格である。
現在は需要拡大と供給不足によってNAND価格が上昇し、売上高の増加を上回るペースで営業利益が拡大している。
しかし、NAND価格が下落へ転じれば、利益が急速に縮小する可能性がある。
半導体メモリーは製造工場や設備にかかる固定費が大きく、販売価格が低下しても製造コストをすぐに減らすことは難しい。
価格下落と工場稼働率の低下が同時に進めば、利益率は短期間で大幅に悪化する。
NAND価格はこれまでにも、需要増加、設備投資の拡大、供給過剰、価格下落というサイクルを繰り返してきた。
スーパーサイクル突入の思惑が外れれば、利益の大幅悪化に直面する可能性がある。
AIデータセンター投資が減速するリスク

キオクシアの成長期待は、米国の大手テクノロジー企業によるAIデータセンター投資が続くことを前提としている。
しかし、ハイパースケーラーによるAI投資は巨額であり、投資に見合う収益を確保できるか不透明だ。
AIサービスの利用料収入が設備投資額に追いつかなければ、ビッグテックがデータセンター投資を縮小する可能性がある。
また、AIモデルの効率化によって、同じ処理をより少ない計算資源や記憶容量で実行できるようになることもリスクとなる。
AI需要が拡大しているかだけでなく、ビッグテックの設備投資額やデータセンターの稼働状況も確認する必要がある。
増産によって供給過剰になるリスク

NAND価格が上昇して利益率が改善すると、キオクシアを含むメモリーメーカーは設備投資を拡大する。
キオクシアも今後3年間、年間平均約4,700億円の設備投資を計画している。
しかし、競合各社が同じ時期に増産へ動けば、数年後にNANDの供給量が急増する可能性がある。
生産が供給に追いつき、供給過剰になると、各社は在庫を減らすために販売価格を引き下げる。
価格競争が激しくなれば、販売数量が増えても利益が減少する可能性がある。
キオクシアが従来のメモリーサイクルを繰り返さないためには、長期契約で需要を確保しながら、過剰な増産を避ける必要がある。
信用買い残と大株主売却のリスク

キオクシア株は、信用買い残と大株主による売却によって、業績が好調でも上値が重くなる可能性がある。
株価の下落局面で押し目買いが増え、信用買い残が積み上がると、反発時には含み損を抱えた投資家の戻り売りが出やすくなるためである。
さらに、株価が下落すれば、追加証拠金を避けるための売却が増え、下落が加速する場合もある。
ベインキャピタル系ファンドなどの大株主が保有株を売却した場合も、株式需給の悪化につながる。
したがって、キオクシア株を判断する際は、信用買い残、信用倍率、大株主の保有比率も確認する必要がある。
まとめ
キオクシア株は乱高下しつつも、業績は過去最高水準を更新し続け絶好調だ。
さらに、世界第3位の生産規模や第10世代BiCS FLASH、積極的な設備投資は、中長期の成長を支える材料である。
期待と失望で株価変動は激しいが、今後のAIの発展を踏まえれば、株価が再び10万円を突破するシナリオは十分考えられる。
具体的には、2028年3月期の予想1株利益7,688円にPER15倍を適用し、11万5,000円の株価を予想している。
ただし、この試算には高水準の利益が安定して続くことが必要である。
NAND価格の下落、AI投資の減速、供給過剰、信用買い残などにより、株価が大きく下落しうる材料は多い。
今後は短期的な決算だけでなく、AI向けSSDの販売拡大、NAND需給、米ビッグテックとの長期契約を確認し、成長の持続性を見極めることが重要である。
















