住友電気工業の株価が大きく上昇している。
2026年3月期の業績が過去最高を更新したことに加え、AIデータセンター向け製品の需要が急拡大していることが要因だ。
これまでの住友電工は、自動車部品や電力ケーブルを主力とする景気敏感株として見られてきた。
しかし、データセンター向け製品の利益が急増したことで、AIインフラ関連株としての評価が高まっている。
さらに、2028年度に売上高6兆円、営業利益6,000億円を目指す強気な中期経営計画を掲げており、今後の業績拡大の期待も高い。
本記事では、住友電工の業績拡大とAI需要の恩恵を整理したうえで、中期計画の実現性、理論株価、今後のリスクについて分析する。
目次
株価上昇は1年で3倍に上昇
売上高・利益ともに過去最高
住友電工の業績は大きく拡大している。
2026年3月期の売上高は前期比+9.2%の5兆1,102億円となり、初めて5兆円を突破した。
営業利益は+30.4%の4,182億円で、売上・利益ともに過去最高を更新している。

データセンター向け製品の需要が大きく伸びたほか、自動車用ワイヤーハーネス、電力ケーブル、受変電設備も堅調だった。
営業利益率が上昇し、稼ぐ力が改善
注目すべきは、売上高以上に利益が伸びている点だ。
営業利益率は前期の6.9%から8.2%へ上昇した。
売上高が9.2%増だったのに対し、営業利益は30.4%増となっており、事業の収益性が大きく改善していることが分かる。

理由は、高採算製品の構成比上昇、生産性の改善、コスト削減、販売価格の見直しなどの経営体質改善だ。
政策保有株の圧縮も進み、ROICは前期の9.3%から14.7%へ上昇した。
利益額、利益率、資本効率がそろって改善しており、良好な決算内容だった。
株価は1,000円割れ→3,000円超に上昇
売上増加、体質改善という好決算を背景に、株価は1年で大きく上昇した。
2025年7月時点では1,000円割れだった株価は、直近高値で3,500円まで買われた。
1年で3倍を超える上昇率である。

また、AIデータセンター関連株として注目が高まったことも大きな上昇要因だ。
住友電工は、光ファイバーや光ケーブル、光コネクター、光デバイスなど、高速通信に必要な製品を幅広く展開している。
生成AIの普及によってデータセンター投資が拡大し、こうした製品を扱う銘柄は軒並み買われている。
さらに、住友電工は2028年度に売上高6兆円、営業利益6,000億円を目指す中期経営計画を公表した。
足元の好業績に強気の成長計画が加わり、さらにAIインフラ関連株として短期資金も向かった結果、株価上昇につながったのである。

AIデータセンター関連として見られる理由

住友電工がAI関連として見られる理由を詳しく解説します。
生成AIの普及でデータ通信量が急増
住友電工が成長企業として注目される最大の理由が、AIデータセンター市場の拡大だ。
生成AIの学習や推論では、多数のGPUを同時に動かし、膨大なデータを高速でやり取りする必要がある。
AIの性能が向上するほど必要な計算量も増え、データセンター内を流れる通信量はさらに拡大する。
住友電工によれば、AIの普及によるデータ処理需要は従来の予想を上回るペースで増加しており、データセンター市場の成長は2026年以降も続く見通しである。
この通信量の増加が、光ファイバーや光通信部品を手掛ける住友電工の追い風となっている。

光ファイバーから光半導体まで幅広く展開
AIサーバーが増えると、GPUやネットワーク機器をつなぐ通信回線も増設する必要がある。
通信速度が高まるほど、伝送距離や消費電力の面で有利な光通信の重要性が高まる。
住友電工は、光ファイバーや光ケーブルだけでなく、光コネクター、光デバイス、通信用の半導体レーザーなども展開している。
データセンター内の配線から建物間の接続まで、光通信に必要な製品を幅広く供給できることが強みである。
単一製品の需要に依存せず、AIデータセンターの光通信網全体から成長を取り込める事業構造となっている。
データセンター内から海底ケーブルまで対応
AIの普及によって増えるのは、データセンター内部の通信だけではない。
複数のデータセンターを結ぶ都市間通信や、国をまたぐ国際通信のデータ量も増加する。
住友電工は、データセンター内の高密度配線、建物間を結ぶ光ケーブル、都市間の長距離通信、海底ケーブル向け光ファイバーまで幅広く展開している。

実際に、東京、神奈川、千葉のデータセンター群を結ぶ広域通信網にも、同社の低損失光ファイバーケーブルが採用された。
AI需要の恩恵がデータセンター内にとどまらず、通信インフラ全体へ広がる点は大きな強みである。
CPOとマルチコアファイバーにも先行投資
住友電工は、現在の光通信製品だけでなく、次世代技術の開発にも力を入れている。
その一つが、光通信部品を半導体の近くに配置し、高速化と省電力化を図るCPOである。
AIデータセンターでは通信量と消費電力が急増するため、CPOの採用拡大が期待されている。
また、1本の中に複数の光の通り道を持たせるマルチコアファイバーの開発も進めている。

2026年には複数の光ファイバーメーカーと共同で、AIデータセンター向けマルチコアファイバーの仕様策定を開始した。
これらが普及すれば、住友電工に新たな成長市場が生まれる可能性がある。
情報通信と電力インフラが新たな成長エンジンに
情報通信事業の営業利益が急拡大
住友電工の成長を最も強くけん引しているのが、情報通信事業である。
2025年度の売上高は、前期の2,233億円から3,266億円へ増加した。
さらに、営業利益は199億円から774億円へ拡大し、1年間で約3.9倍となった。

背景には、光ファイバーや光ケーブルに加え、データセンター向けの光デバイスや接続部品が大きく伸びたことがある。
また、販売数量の増加によって設備の稼働率が上昇し、利益率の改善にもつながったと考えられる。
その結果、2026年度は売上高5,000億円、営業利益1,300億円を計画している。
情報通信事業は、全社の増益を支える中心的な存在になりつつある。
情報通信事業を最大の成長分野へ
住友電工は、情報通信事業の成長を一時的な需要増とは見ていない。
実際に、中期経営計画では2028年度に売上高9,700億円、営業利益2,400億円を目指している。
これは、営業利益を2025年度の774億円から約3.1倍へ増やす強気な計画である。

その実現に向けて、北米の大規模データセンター市場でシェアを高めるため、光配線製品や光デバイスの供給能力を増強する方針である。
さらに、需要の大きい高付加価値製品へ経営資源を集中し、利益率の向上も狙っている。
仮に目標を達成すれば、情報通信事業の営業利益は2025年度の自動車事業を上回る規模となる。
つまり、情報通信事業は住友電工の利益構造そのものを変える可能性がある。
AIデータセンターの増加で電力需要も拡大
AIデータセンターの建設は、光通信製品だけでなく電力設備の需要も押し上げる。
なぜなら、多数のGPUを稼働させるには大量の電力が必要であり、送配電設備や受変電設備の増強が欠かせないためである。
住友電工は、電力ケーブル、配電機器、架空送電線、受変電設備などを幅広く展開している。
そのため、データセンターの新設が進めば、情報通信事業だけでなく環境エネルギー事業にも需要が波及する。

実際に、2025年度の環境エネルギー事業は売上高1兆1,788億円、営業利益906億円となった。
今後は、AI向け通信量の増加に加えて、消費電力の増大も住友電工の成長を支える要因となる。
超高圧電力ケーブルや海底ケーブルが成長
電力インフラ分野では、超高圧電力ケーブルや海底送電ケーブルが成長を支えている。
特に、再生可能エネルギーの普及には、発電した電力を需要地まで運ぶ送電網の整備が必要である。
そこで重要になるのが、長距離送電に使われる超高圧ケーブルや、洋上風力発電所から陸上へ電力を運ぶ海底ケーブルである。
住友電工は、こうした高難度の電力ケーブルに加え、敷設や接続工事まで対応できる体制を持つ。

また、中期経営計画では、海外で製造能力と施工能力を増強し、受注拡大を目指す方針を示している。
電力ケーブルは製造だけでなく現地施工の実績も重要であるため、技術力と工事能力が参入障壁になりやすい。
したがって、電力インフラ事業は情報通信に続く第2の成長軸として注目すべき分野である。
2028年度に売上高6兆円・営業利益6,000億円
中期経営計画の数値目標
住友電工は、2026年度から2028年度までの3年間を対象とする中期経営計画を発表した。
目標は、2028年度に売上高6兆円、営業利益6,000億円、営業利益率10%を達成することである。
2025年度の売上高は5兆1,102億円であるため、3年間で約9,000億円を上積みする計画となる。

一方、営業利益は4,182億円から6,000億円へ約44%増やす必要がある。
つまり、売上高を増やすだけでなく、高収益事業の比率を高めることが重要になる。
さらに、3年間で1兆円の設備投資を行い、税引前ROIC15%以上を維持する方針である。
成長を支える主要製品・事業
中期経営計画では、「デジタル・AI」「エネルギー」「モビリティ」の3分野を成長の柱に位置付けている。
デジタル・AI分野では、データセンター向けの光通信製品を拡大し、特に北米市場でのシェア向上を目指す。

また、エネルギー分野では、電力ケーブルの製造・施工能力を増強し、再生可能エネルギーや送電網更新の需要を取り込む方針である。
一方、モビリティ分野では、ワイヤーハーネスを収益基盤としながら、電動車向け高電圧製品や高速通信部品を伸ばす。
このように、既存事業を維持しながら成長市場へ投資する計画となっている。
情報通信事業が最大の利益源になる可能性
中期経営計画の中で、特に大きな成長が期待されているのが情報通信事業である。
同事業の営業利益は、2025年度の774億円から2028年度には2,400億円へ拡大する計画である。
3年間で約3.1倍となる強気な目標であり、全社の利益成長をけん引する役割を担う。

参考までに、2025年度の自動車事業の営業利益は1,797億円であった。
したがって、情報通信事業が目標を達成すれば、現在の自動車事業を上回る利益規模となる。
住友電工の利益構成が、自動車中心からAIインフラ中心へ変化する可能性がある。
中期経営計画は達成可能か
営業利益6,000億円の達成には、2025年度から1,818億円の増益が必要である。
一方、情報通信事業の営業利益は、同じ期間に1,626億円増える計画となっている。
単純計算では、全社で必要となる増益額の約9割を情報通信事業だけで賄うことになる。

そのため、AIデータセンター需要が計画どおり拡大すれば、営業利益6,000億円は十分に視野に入る。
ただし、増産設備の立ち上げが遅れたり、AI投資が減速したりすれば、計画への影響は大きい。
中期計画の実現性は、情報通信事業の成長速度に大きく左右されるのである。
今後の株価見通し
現在のPERは割高なのか
2026年7月17日の終値は2,249円である。
会社予想の1株利益は102.57円であるため、予想PERは約21.9倍となる。


従来の電線・自動車部品株として考えれば、決して割安とはいえない水準である。
しかし、現在の住友電工には、AIデータセンター向け情報通信事業が急成長するという新たな材料がある。
そのため、過去のPERだけを基準に割高と判断するのは適切ではない。
一方で、現在の株価には中期経営計画の達成もある程度織り込まれていると考えられる。
今後は、期待だけでなく実際の利益成長によって、PERの高さを正当化できるかが重要になる。
2028年度の利益を基に理論株価を試算
住友電工は、2028年度に営業利益6,000億円を目指している。
そこで、中期経営計画を達成した場合の理論株価を試算する。
2027年3月期の会社予想は、営業利益4,250億円、純利益3,200億円、1株利益102.57円である。
営業利益と純利益が同じ割合で増えると仮定すると、営業利益6,000億円達成時の純利益は約4,518億円となる。
この場合、1株利益は約145円となる計算である。
PER15倍なら理論株価は約2,170円、PER20倍なら約2,900円、PER25倍なら約3,620円となる。

現在の株価と比べると、PER20倍のケースで約29%、PER25倍のケースで約61%の上昇余地がある。
ただし、この試算は中期計画の達成と現在の利益構造の維持を前提とした単純計算である。
株価を左右する3つのポイント
今後の株価を左右するポイントは、大きく3つある。

第1は、情報通信事業が会社計画どおりに成長するかである。
AIデータセンター向け需要が続き、増産した製品を高い利益率で販売できれば、業績はさらに上振れる可能性がある。
第2は、電力インフラと自動車事業が安定して利益を稼げるかである。
情報通信が伸びても、既存事業が減益となれば全社の利益成長は鈍化する。
そして第3は、営業利益6,000億円の達成確度である。
四半期決算で中期目標への進捗が確認されれば株価は上昇しやすい。
反対に、AI需要の減速や増産の遅れが明らかになれば、現在の高い評価が修正される可能性もある。
住友電工株に投資する際のリスク
AIデータセンター投資が減速するリスク

住友電工の成長期待を支えているのが、AIデータセンター向け情報通信事業である。
しかし、大手IT企業の設備投資が減速すれば、光デバイスや光配線製品の需要も弱まる可能性がある。
AI市場が長期的に拡大するとしても、短期的には顧客の在庫調整や投資計画の延期が起こり得る。
また、同社自身も、顧客の購買政策や設備投資判断の変化が業績に影響すると説明している。
情報通信事業への期待が株価に強く織り込まれているため、成長率が市場予想を下回った場合の株価下落には注意が必要である。
増産投資が計画どおり進まないリスク

住友電工は、中期経営計画の3年間で合計1兆円の設備投資を予定している。
特に情報通信分野では、急増するデータセンター需要に対応するため、生産能力を大幅に増強する方針である。
しかし、新工場や生産設備の立ち上げが遅れれば、需要が強くても製品を十分に供給できない。
一方、設備投資を先行させた後に需要が減速すれば、減価償却費や固定費が利益を圧迫する可能性もある。
そのため、設備投資額だけでなく、販売数量、設備稼働率、営業利益率が計画どおり伸びているかを確認する必要がある。
競争激化と供給過剰のリスク

AIデータセンター市場の拡大を見込み、競合する光通信メーカーも設備投資を増やす可能性がある。
その結果、市場の成長を上回るペースで供給能力が増えれば、製品価格の下落や設備稼働率の低下につながる。
また、光通信分野は技術革新が速く、新しい規格や製品への切り替えによって、既存製品の寿命が短くなる可能性もある。
住友電工は幅広い製品群を持つものの、価格競争や技術競争を完全に避けることはできない。
したがって、売上高の成長だけでなく、高い利益率と市場シェアを維持できるかが重要である。
自動車生産が減少するリスク

情報通信事業が急成長している一方、住友電工の最大事業は依然として自動車関連である。
2025年度の自動車事業の売上高は約2兆9,372億円であり、連結売上高の半分以上を占めている。
そのため、世界的な自動車生産の減少や、主要顧客の販売不振が起これば、全社業績への影響は大きい。
さらに、米国の関税政策や各国の輸出入規制が変更されれば、販売数量の減少や製造コストの上昇につながる可能性がある。
情報通信事業が成長しても、自動車事業の減益によって増益効果が相殺されるリスクには注意が必要である。
為替・銅価格・原材料価格の変動

住友電工は世界各地で製造と販売を行っているため、為替変動の影響を受ける。
短期的な変動には為替予約などで対応しているが、中長期的な円高が進めば、海外子会社の利益を円換算する際の金額が減少する。
また、電線やケーブルの主要原材料である銅については、多くの製品で価格変動を販売価格に反映している。
しかし、急激な銅価格の上昇や価格転嫁の遅れが発生すれば、利益率が悪化する可能性がある。
加えて、半導体、非鉄金属、鉄鋼、石油化学製品の供給不足や価格高騰も業績の下押し要因となる。
中期経営計画を達成できないリスク

住友電工は、2028年度に売上高6兆円、営業利益6,000億円を目指している。
ただし、この目標を達成するには、情報通信、電力、自動車の各事業がそろって成長する必要がある。
なかでも、情報通信事業には全社の増益額の大部分を担うことが期待されており、計画に占める重要度は高い。
そのため、AI需要の減速、増産の遅れ、価格競争の激化が重なれば、営業利益6,000億円の達成は難しくなる。
株価が中期計画の実現を先取りして上昇している場合、目標の下方修正や達成時期の延期が大きな売り材料になる可能性がある。
まとめ
住友電工は、自動車用ワイヤーハーネスを主力とする大手部品メーカーである。
一方で、足元ではAIデータセンター向けの光通信製品が急成長しており、従来の電線・自動車部品株からAIインフラ関連株へ評価が変化しつつある。
2026年3月期は売上高5兆1,102億円、営業利益4,182億円となり、いずれも過去最高を更新した。
さらに、情報通信事業の営業利益は前期から約3.9倍に拡大しており、全社の増益をけん引している。
加えて、AIデータセンターの増加は光通信だけでなく、電力ケーブルや受変電設備の需要拡大にもつながる。
住友電工は、2028年度に売上高6兆円、営業利益6,000億円を目指している。
計画を達成すれば、情報通信事業が自動車事業を上回る最大の利益源となる可能性がある。
その場合、住友電工の企業価値は現在よりも大きく高まるだろう。
ただし、現在の株価にはAI需要の拡大や中期経営計画の達成期待も織り込まれている。
AI投資の減速、増産設備の立ち上げ遅れ、自動車生産の減少が起これば、業績や株価が下振れる可能性もある。
したがって、今後は情報通信事業の利益成長と、営業利益6,000億円に向けた進捗を継続的に確認する必要がある。
住友電工は大きな成長余地を持つ一方、期待どおりの利益成長を実現できるかが株価上昇の鍵を握る銘柄である。

















まずは株価上昇の背景について簡単に説明します。