フジクラの株価はなぜ急騰?AI関連として買われる理由と今後の株価見通しを徹底分析




フジクラは電線株の枠を超えてAI関連銘柄として躍進中だ。

株価は2025年以降に生成AIブームで急上昇し、1年余りで一時7倍にまで上昇した。

成長をけん引しているのは、GPUサーバー間の高速・大容量通信を支える光ファイバーや光配線製品である。

旺盛な需要を受けて業績は過去最高を更新し、日本と米国では最大3,000億円規模の増産投資も計画されている。

一方、株価には将来の成長期待が強く織り込まれている。

その反動もあり、直近では急落する場面もしばしばだ。

本記事では、フジクラがAI需要の恩恵を受ける理由、増産投資と中期経営計画、今後の株価見通し、投資する際のリスクを検証する。

フジクラの株価はなぜ急騰したのか

「電線株」から「AIインフラ株」へ

フジクラが急騰した最大の理由は、株式市場における評価が、電線メーカーからAIインフラ関連企業へ変化したためである。

フジクラは電線や自動車用ワイヤーハーネスなどを幅広く手掛けるが、近年は光ファイバーや光ケーブルなどの情報通信事業が成長をけん引している。

生成AIの普及によって大規模データセンターの建設が相次ぎ、光配線製品の需要が急増した。

この結果、景気に敏感な電線株ではなく、世界的なAI投資の恩恵を受ける成長株として再評価されたのだ。

生成AIブームで業績と株価が大幅上昇

フジクラの業績は右肩上がりに急成長している。出典:日本経済新聞

生成AIでは、多数のGPUサーバーを接続して膨大なデータを高速処理する必要がある。

データセンターの規模が拡大するほど、内部配線やデータセンター間通信に使用される光ファイバーの需要も増加することになる。

フジクラは、細いケーブル内に多数の光ファイバーを収納できるSWR・WTCなどに強みを持ち、データセンターの省スペース化や施工時間の短縮に貢献している。

そうした強みが、受注拡大や過去最高益として業績に表れた。

AI関連製品が実際の利益成長につながったことで、株価も大きく上昇したのである。

2025年以降に騰勢を強め、1年あまりで7倍に急騰した。出典:日本経済新聞

好業績でも株価が急落した理由

一方、フジクラ株が一時的に急落する場面もたびたびある。

2026年5月には、過去最高益を発表したにもかかわらず、翌期の業績予想や中期経営計画が市場の期待を下回り、株価が急落した。

株価には、AIデータセンター需要によって大幅な増益が続くという期待がすでに織り込まれていたためである。

その後、ハイパースケーラー向け受注の拡大などを背景に業績予想が大幅に上方修正され、株価も反発した。

2026年5月には決算発表を機に急落し、その後は軟調な展開が続いている。出典:日本経済新聞

この値動きから、現在のフジクラ株は業績の良し悪しだけでなく、市場予想を上回れるかどうかで大きく動くことが分かる。

AIデータセンター需要で過去最高益を更新

情報通信事業が業績成長をけん引

2026年3月期のフジクラは、売上高1兆1,824億円、営業利益1,887億円、純利益1,572億円となり、いずれも過去最高を更新した。

売上高は前期比20.7%増だったのに対し、営業利益は39.2%増、純利益は72.5%増となり、利益の伸びが売上高を大きく上回った。

成長をけん引したのは、光ファイバーや光配線製品を扱う情報通信事業である。

情報通信事業がデータセンター向け製品を扱っており、急成長している。出典:2025年度 決算

生成AIの普及を背景にデータセンター投資が拡大し、高付加価値製品の販売増加が全社の収益力を押し上げた。

フジクラの業績は、従来型の電線需要よりも、AIデータセンター向け需要の影響を強く受ける構造へ変化している。

光ケーブルと光コンポーネントの需要が拡大

AIデータセンターでは、多数のGPUサーバーを高速で接続するため、光ファイバーケーブルだけでなく、コネクターなどの光コンポーネントも大量に必要となる。

フジクラは、データセンター間を結ぶ幹線ケーブルから、施設内で使用される光配線部品や融着接続機まで幅広い製品を展開している。

なかでもSWR・WTCは、限られた配線スペースに多数の光ファイバーを収納できることから、データセンターの高密度化に適している。

光ケーブルと接続部品の両方で需要を取り込める製品構成が、売上高の拡大だけでなく、情報通信事業の高い収益性にもつながっている。

わずか1か月で業績予想を大幅上方修正

フジクラは2026年6月、2027年3月期の業績予想を、当初計画の発表から約1ヵ月で大幅に引き上げた。

売上高予想は1兆2,430億円から1兆4,620億円、営業利益は2,110億円から3,100億円、純利益は1,560億円から2,290億円へ修正された。

出典:2027年3月期第2四半期(中間期)及び通期連結業績予想の修正に関するお知らせ

当初計画に含まれていなかったハイパースケーラー向け光コンポーネントの受注、製品価格の上昇、水素不足による影響の緩和が主な理由である。

この上方修正により、営業利益は前期比64.3%増となる見通しで、AIデータセンター需要が会社の想定を上回る勢いで拡大していることが明らかになった。

フジクラがAI銘柄として買われる理由

GPUサーバーの増加で光通信需要が拡大

生成AIの学習や推論では、多数のGPUを連携させて膨大なデータを処理する必要がある。

GPUの台数が増えるほど、サーバー間やデータセンター間でやり取りされる通信量も拡大する。

そこで必要になるのが、フジクラが強みとする光ファイバーからケーブル、コネクター、融着接続機などだ。

従来の銅線だけでは通信速度や伝送距離、消費電力の面で対応が難しい。

そのため、高速・大容量通信に適した光ファイバーの重要性が高まっている。

特に大規模なGPUクラスターでは、計算能力だけでなく、機器同士を結ぶ通信網の性能が処理速度を左右する。

独自技術のSWR・WTCとは

フジクラの競争力を支える代表的な技術が、SWRとWTCである。

SWRは複数の光ファイバーを間欠的に接着したリボン構造で、束ねた状態では一括接続でき、ケーブル内では柔軟に形を変えられる。

WTCは、このSWRを高密度に収納することで、ケーブルの外径を抑えながら収容できる光ファイバーの本数を増やす技術である。

これらの技術を活用し、ケーブル内の隙間を減らし、より高密度な配線を実現しているのだ。

細径化、多心化、施工効率を同時に高められるため、限られた配線スペースに大量の回線を敷設するデータセンターと相性が良い。

超多心光ケーブルがデータセンターで採用される理由

フジクラは、ハイパースケールデータセンター向けに13,824心のSWR・WTCを製品化している。

同製品は外径を40ミリメートル以下に抑えながら、従来の6,912心製品と比べて2倍の光ファイバーを収納できる。

データセンターでは地下管路や建物内の配線スペースが限られるため、ケーブルを太くせずに通信容量を増やせる点が大きな利点となる。

新たな管路の建設を抑えながら回線数を増やせるため、工事費や設置期間の削減にもつながる。

さらに、多心一括融着や専用の成端部材によって施工効率も高められ、超大規模なAIインフラの構築を支える製品となっている。

最大3,000億円の増産投資と中期経営計画

旺盛な需要に対し、生産追いつかず

光ファイバー需要の急拡大を受け、フジクラは最大限の生産を行っている。

しかし、既存設備だけでは注文の増加に十分対応できていないのが現状だ。

そこで、同社は日米で光ファイバーとSWR・WTCの生産能力を、現状の最大3倍程度へ引き上げる方針を示した。

需要が強くても製品を供給できなければ、競合企業に販売機会を奪われる可能性もある。

水素などの原材料を安定的に確保し、生産能力を計画どおり増やせるかも今後の成長を左右する要点となるだろう。

日本と米国で光ファイバーの生産能力を増強

フジクラは、日本と米国で合計最大3,000億円を投じ、光ファイバーとSWR・WTCの生産体制を強化する。

国内では佐倉事業所に約400億円を投じて新工場を建設し、2030年12月に稼働を開始する予定だ。

米国では投資を推進する全額出資子会社を設立し、AIインフラ需要の中心地に近い場所で供給体制を整える。

最大3,000億円は一度に全額を投じる計画ではなく、市場動向を見ながら順次実行し、需要の持続性を確認しながら能力増強を進める方針のようだ。

2028年度に営業利益3,150億円を目指す

2026年度から2028年度を対象とする中期経営計画では、最終年度に売上高1兆6,000億円、営業利益3,150億円、営業利益率19.7%を目指す。

さらに、ROE28.5%、ROIC21.6%以上を掲げ、単に事業規模を拡大するだけでなく、高い資本効率を維持する方針である。

成長の中心に位置付けるのは、情報インフラ、情報ストレージ、情報端末の3分野だ。

日米の増産投資によってAIデータセンター需要を取り込み、売上高の拡大と高い利益率を両立させる計画となっている。

中期計画を前倒しで達成する可能性

フジクラは2027年3月期の営業利益予想を3,100億円へ上方修正しており、中期計画最終年度の目標3,150億円との差はわずか50億円となった。

現在の予想どおりに進めば、中期目標を実質的に2年前倒しで達成する可能性がある。

ただし、足元の利益にはハイパースケーラー向け大型受注や製品価格上昇の影響も含まれており、現在の収益水準がそのまま続くとは限らない。

重要なのは、増産設備の稼働後も需要と価格を維持し、3,000億円を超える営業利益を継続できるかである。

今後の株価見通し

現在のPERは割高なのか

2026年7月24日時点のフジクラ株は4,593円で、会社予想PERは33.21倍、PBRは13.57倍、時価総額は約8兆1,500億円となっている。

一般的に、PER30倍超えは割高な水準だ。

したがって、この株価には今後の成長が相当織り込まれていると考えられる。

AIデータセンター需要が拡大を続ければ、高いPERを維持できる可能性はある。

一方、受注や利益の成長率が鈍化すれば、業績が高水準でもPERが低下する余地は大きい。

2027年3月期の利益で理論株価を試算

2027年3月期の会社予想EPSは138.31円である。

このEPSにPER20倍を適用すると理論株価は約2,770円、25倍では約3,460円、30倍では約4,150円となる。

さらに、PER35倍では約4,840円、40倍では約5,530円となる。

2026年7月24日の株価4,593円は、会社予想EPSに対してPER33倍前後を織り込んだ水準である。

利益予想を達成してもPERが30倍まで低下すれば株価には下押し圧力がかかる。

一方、追加の上方修正などによって35~40倍の評価が維持されれば、現在値を上回る余地が残る。

中期計画達成時の株価シナリオ

フジクラは2028年度に営業利益3,150億円を目標としているが、2027年3月期の会社予想はすでに3,100億円まで引き上げられている。

そのため、中期計画を予定どおり達成するだけでは、新たな株価上昇材料になりにくい。

強気シナリオでは、日米の増産投資によって販売数量が拡大し、営業利益が3,500億~4,000億円へ上振れる展開が想定される。

一方、3,100億円前後で利益が伸び悩む場合は、成長期待の後退によってPERが低下する可能性がある。

今後は中期目標の達成よりも、その先の利益成長を示せるかが重要になる。

株価上昇には利益成長とPER維持が必要

フジクラ株が今後さらに上昇するには、現在の高い利益水準を維持するだけでなく、市場予想を上回る成長を続ける必要がある。

その点、足元の株価にはAIデータセンター需要の拡大が織り込まれている点が懸念材料だ。

営業利益が横ばいになれば、成長株としての評価が低下する可能性がある。

日米の増産設備を早期に稼働させ、旺盛な受注を売上へ転換できれば、利益成長と高いPERの維持が両立しやすい。

反対に、利益成長が鈍化した場合は、増益を達成しても市場の期待に届かず、PERの低下によって株価が下落するおそれがある。

好業績だけでなく、増益率の高さも重要となる。

今後の株価を左右する3つのポイント

今後の株価を左右する第一のポイントは、ハイパースケーラーによるAIデータセンター投資と、光コンポーネントの大型受注が継続するかである。

第二は、日米で計画する増産投資が予定どおり進み、供給能力の不足や水素などの原材料制約を解消できるかである。

第三は、四半期決算で会社予想をさらに上回り、中期経営計画の上方修正につながるかである。

需要、供給能力、会社予想と市場予想の差という3点を確認することで、フジクラの成長が一時的なAI特需なのか、長期的な利益拡大なのかを判断しやすくなる。

フジクラ株に投資する際のリスク

AIデータセンター投資が減速するリスク

フジクラの成長は、生成AIの普及に伴うデータセンター投資と、光ファイバー関連製品の需要拡大に強く支えられている。

大手クラウド事業者がAI投資の採算性を見直し、データセンターの建設や設備更新を延期すれば、光ケーブルや光コンポーネントの受注が減少する可能性がある。

長期的には通信量の増加が見込まれるものの、設備投資には拡大と調整の波がある。

市場全体が成長していても、短期的な発注減少によってフジクラの業績が伸び悩む可能性には注意が必要である。

増産設備の立ち上げが遅れる可能性

フジクラは、日本と米国で最大3,000億円を投じ、光ファイバーと光ケーブルの生産能力を最大3倍へ引き上げる方針である。

しかし、工場建設や製造設備の導入、歩留まりの改善、人材確保などが計画どおり進むとは限らない。

設備の立ち上げが遅れれば、需要が強くても製品を供給できず、販売機会を逃す可能性がある。

一方、設備完成後にAI投資が減速した場合は、減価償却費や人件費などの固定費が増加し、大型投資が利益率やキャッシュフローの重荷になるおそれもある。

ハイパースケーラーへの受注依存

フジクラは、当初計画に含まれていなかったハイパースケーラーからの大型案件を受注したことで、2027年3月期の業績予想を大幅に引き上げた。

これは、大規模案件の獲得が業績を急拡大させる一方、案件の有無によって短期的な売上高と利益が大きく変動し得ることを示している。

顧客側が発注時期や製品仕様を変更した場合、受注の延期や採算悪化につながる可能性がある。

大型顧客との取引拡大は成長機会であると同時に、顧客の投資判断に左右されるリスクでもある。

水素など原材料の調達リスク

光ファイバーの急激な増産では、製造に必要な水素など一部原材料の調達が、生産量の拡大に追いつかなくなる懸念が生じた。

フジクラは2027年3月期の当初予想に、水素不足による生産への影響を保守的に織り込んでいた。

その後、供給不足の影響が緩和されたことで業績予想を引き上げたが、同様の問題が再発しないとは限らない。

需要が十分にあっても、原材料の供給不足や価格上昇が起これば、生産数量の制限や製造コストの増加を通じて利益が圧迫される可能性がある。

高い成長期待が剥落するリスク

フジクラ株には、AIデータセンター需要の継続と大幅な利益成長への期待が織り込まれている。

そのため、増収増益を達成しても、会社予想や決算内容が市場の期待を下回れば、株価が大きく下落する可能性がある。

特に、中期経営計画の営業利益目標に足元の業績予想が接近しているため、今後は目標達成だけでなく、その先の成長を示すことが求められる。

受注の伸びや業績上方修正が止まれば、成長株としての評価が低下し、PERの縮小によって株価が調整するリスクがある。

まとめ

フジクラは、生成AIの普及による光通信需要の拡大を追い風に、電線メーカーからAIインフラ企業へと評価を変えた。

情報通信事業の成長で過去最高益を更新し、日米最大3,000億円の増産投資によって、さらなる需要の取り込みを目指している。

一方、株価には高い成長期待が織り込まれている。

AI投資の減速や増産の遅れ、原材料不足が起これば、大きく調整する可能性がある点には注意が必要だ。

今後は、増産を利益成長につなげ、中期計画を上回る業績を継続できるかが重要となる。