三菱UFJ株は、金利上昇を追い風に業績拡大が続いている。
かつては低金利によって成長性の無い銘柄とみられていたが、日銀の金融政策正常化を受け、株価は2020年の安値380円から大幅に上昇している。
国内の貸出利ざや改善に加え、モルガン・スタンレーの好調や手数料収入の増加によって、2026年3月期は過去最高益を更新した。
さらに、三菱UFJはROE約12%を目標に掲げ、増配や自社株買い、政策保有株式の売却、アジア事業への投資を進めている。
本記事では、これまでの株価推移と利益成長の理由を整理し、国内金利が2.0%へ上昇した場合の業績と予想株価を試算する。
あわせて、三菱UFJ株へ投資する際に注意すべきリスクについても解説する。
三菱UFJの株価推移
6年間で株価10倍に上昇
三菱UFJの株価は、2020年の安値380円から2026年には一時3,813円まで上昇した。
約6年間で株価は10倍となり、国内を代表する大型株の中でも大きな上昇を記録している。

株価が上昇した最大の理由は、日銀の金融政策が正常化へ向かい、銀行の収益環境が改善したためである。
さらに、過去最高益の更新や増配、自社株買いが続いたことで、三菱UFJに対する投資家の評価は大きく変化した。
2020年には安値380円まで下落

三菱UFJの株価は、2020年に長期低迷の底を迎えた。
当時は日銀のマイナス金利政策が続き、銀行が貸出によって十分な利ざやを確保しにくい環境にあった。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大によって景気が悪化し、企業の倒産や貸倒れが増加することも懸念された。
そのため、2020年の株価は年初の584.8円から一時380円まで下落し、年末も456.1円にとどまった。
年間の株価下落率は23.1%となり、銀行株は成長が期待しにくい業種とみられていた。
金融政策の修正を受けて株価が上昇

三菱UFJの株価は、日銀が金融政策の修正を始めたことで上昇局面へ入った。
2022年12月、日銀は10年国債金利の変動幅を従来のプラスマイナス0.25%程度から、プラスマイナス0.5%程度へ拡大した。
市場では、長期間続いた大規模な金融緩和が将来的に終了するとの期待が高まった。
金利が上昇すれば、銀行は貸出金利を引き上げやすくなり、預金金利との差である利ざやの改善が期待できる。
三菱UFJの年末株価は、2021年の600円から2022年には900円、2023年には1,200円まで上昇した。
金融政策の正常化を見越した買いが、株価上昇を支えたと考えられる。
マイナス金利解除で上昇が加速

三菱UFJ株の評価が大きく変わった転換点は、2024年3月のマイナス金利政策解除である。
日銀はマイナス金利政策と長短金利操作を終了し、短期金利を主な政策手段とする金融政策へ移行した。
さらに、2024年7月と2025年1月にも政策金利を引き上げ、2025年1月には0.5%程度となった。

国内金利が実際に上昇したことで、三菱UFJの収益改善は期待から現実へ変わった。
2024年の株価は年間で52.4%上昇し、年末には1,846円となった。
2025年も上昇が続き、年末株価は2,493円まで上昇した。
過去最高益と増配が株価を押し上げた

2025年以降の株価上昇を支えたのは、金利上昇への期待だけではない。
三菱UFJの業績は実際に拡大し、2026年3月期の親会社株主純利益は前期比30.3%増の2兆4,272億円となった。
円金利上昇による収益増加や国内外の利ざや改善、手数料収入の増加などが業績を押し上げた。

年間配当も2024年3月期の41円から、2025年3月期は64円、2026年3月期は86円へ増加した。
2027年3月期は年間96円への増配が予想されている。
業績拡大と株主還元の強化を受け、2026年の株価は一時3,813円まで上昇した。
2020年の安値380円と比較すると、株価は約10倍となっている。
三菱UFJ株は、低金利で低迷する銀行株から、金利上昇と利益成長の恩恵を受ける銘柄へ変化したのである。
過去最高益を更新した理由
国内金利上昇で貸出金利が改善

三菱UFJの利益を押し上げた最大の要因は、国内金利の上昇である。
銀行は貸出金利と預金金利の差から収益を得ているため、金利上昇局面では貸出金利を引き上げることで利ざやを拡大しやすい。

日銀による利上げの効果が本格的に表れたことで、三菱UFJの純金利収益は前期の2兆8,765億円から3兆62億円へ増加した。
リテール・デジタル事業の貸出・預金収益は前期比681億円増加し、法人・ウェルスマネジメント事業でも1,059億円増加している。
長期間にわたって銀行の利益を圧迫してきた低金利環境が終わり、国内銀行事業の収益力は大きく改善したのである。
貸出残高と手数料収入も増加

三菱UFJの増益は、金利上昇だけに支えられたものではない。
企業向け融資や海外融資が増加したことで、2026年3月末の貸出金残高は前期末から約12.4兆円増加し、133.8兆円となった。

貸出金利が上昇するなかで融資残高も増えたため、金利収入を拡大する効果が大きくなった。
さらに、投資商品の販売、資産運用、M&A、デリバティブ、法人向けソリューションなどの手数料収入も伸びている。
信託報酬と役務取引等利益の合計は、前期比2,997億円増の2兆3,899億円となった。
貸出による金利収入と、金利に左右されにくい手数料収入の両方が成長したことが、過去最高益につながった。
モルガン・スタンレーが利益を押し上げる

モルガン・スタンレーの好調も、三菱UFJの利益を大きく押し上げた。
三菱UFJはモルガン・スタンレーへ出資しており、同社の利益の一部を持分法投資損益として取り込んでいる。

2026年3月期の持分法投資損益は、前期比2,485億円増の8,455億円となった。
三菱UFJ全体の純利益の増加額は5,642億円であるため、持分法投資損益の増加は全体の増益額の約4割に相当する。
国内銀行事業だけでなく、米国の投資銀行やウェルスマネジメント事業の成長を取り込めることが、三菱UFJの強みである。
モルガン・スタンレーは、三菱UFJにとって国内金利上昇と並ぶ重要な収益源となっている。
経費率改善で利益成長が加速

経費率の改善も好業績の理由である。
2026年3月期の営業経費は、インフレ、海外企業の買収などによって3,391億円増加した。
一方、業務粗利益は前期比1兆1,251億円増の5兆9,444億円となり、経費の増加を大きく上回った。
その結果、経費率は前期の66.9%から60.0%へ改善している。
売上に相当する業務粗利益が増える一方、経費の増加を一定範囲に抑えられたことで、増収分が利益へ結び付きやすくなったのである。
ROE12%への成長戦略と株主還元
ROE目標を約12%へ引き上げ

三菱UFJは、2027年3月期のROE目標を従来の約9%から約12%へ引き上げた。
2025年3月期に当初のROE目標を前倒しで達成し、その後も利益が想定を上回っているためである。
2026年3月期のROEは11.3%まで上昇しており、2027年3月期は純利益2兆7,000億円とROE約12%を目標としている。

三菱UFJは、利益の拡大、経費率の改善、収益性の低い資産から高い資産への入れ替えを、ROE向上の3つの柱としている。
単純に資産を増やすのではなく、限られた自己資本からより多くの利益を生み出す経営へ転換しようとしているのである。
増配と自社株買いを継続

三菱UFJは、利益成長に合わせて株主還元を拡大している。
年間配当は、2026年3月期の1株86円から、2027年3月期は96円へ10円増配する計画だ。
配当性向は40%を目安としており、利益が増加すれば配当も継続的に増やす方針を示している。

さらに、2027年3月期上期に設定した上限1,000億円の自社株買いは、2026年6月までに完了した。
買い付けた株式数は約3,197万株で、取得総額はほぼ1,000億円となった。
自社株買いは株価を下支えし、さらに発行済株式数を減らすことで1株利益を押し上げる効果がある。
利益成長と株主還元の両方が続くことは、三菱UFJ株の中長期的な評価を支える要因となる。
政策保有株式の売却を進める

近年は資本効率を高めるために政策保有株式の削減を進めている。
政策保有株式は企業との取引関係を維持する目的で保有されるが、株価変動リスクを抱える一方、必ずしも十分な収益を生み出すとは限らない。
三菱UFJは、2025年3月期から2027年3月期までの3年間で、取得原価7,000億円分を売却する目標を掲げている。

2026年3月期は約1,660億円を売却し、政策保有株式の時価残高が連結純資産に占める割合は18.0%まで低下した。
上場株式の保有銘柄数も、2023年3月末の1,110銘柄から2026年3月末には773銘柄まで減少している。
株式の売却によって生まれた資本を、成長投資や自社株買いへ振り向けることができれば、ROEと1株利益の改善につながる。
ウェルスマネジメントを新たな収益源に

「貯蓄から投資へ」という資金の流れを取り込むべく、ウェルスマネジメントが国内事業の重要な成長分野に位置付けられた。
日本では家計金融資産の多くが現金・預金に偏っており、今後は投資信託、株式、相続、資産承継などの需要拡大が期待される。
三菱UFJが抱える個人顧客の金融資産残高は、2024年3月期の125兆円から2026年3月期には135兆円へ増加した。
新規口座数も拡大しており、2026年3月期の証券口座開設数は前期の7.7倍にも拡大している。
ウェルスマネジメント事業が成長することで、金利動向に左右されにくい手数料収入が増え、利益の安定性も高まるだろう。
アジア事業への投資を拡大

海外成長の次の柱として、アジア事業への投資も拡大している。
2026年4月には、インドの大手ノンバンクであるシュリラム・ファイナンスの株式20%を約44億ドルで取得した。
シュリラム・ファイナンスは、2023年3月期から2026年3月期までの純利益成長率が年平均19%、ROEが16.5%となっており、高い成長性と収益性を持つ。
また、インドネシアではバンクダナモンと三菱UFJ銀行ジャカルタ支店の統合を計画し、事業基盤の拡大を目指している。
国内金利が将来上昇を終えた後もROE12%を維持するには、アジア事業を次の利益成長源へ育てる必要がある。
今後の株価見通し
国内金利は2028年7月に2.0%へ到達

日本の政策金利は2028年7月に2.0%へ到達すると予想する。
日銀は2026年6月に政策金利を0.75%から1.0%へ引き上げ、7月の金融政策決定会合では1.0%に据え置いた。
一方、7月会合では追加利上げの必要性を主張する意見も出ている。
また、6月会合の「主な意見」では、中立金利が2%程度である可能性も指摘されている。

これは政策委員の一つの意見であるものの、政策金利2.0%は現実的な水準となりつつあるようだ。
したがって、今後はおおむね半年ごとに0.25%の利上げを行うと想定できる。
具体的には、2027年1月に1.25%、2027年7月に1.5%、2028年1月に1.75%、2028年7月に2.0%へ引き上げる想定である。
この場合、政策金利2.0%へ到達する決算期は、2029年3月期となる。
金利2.0%で純利益3.2兆円へ拡大

政策金利が2.0%まで上昇すれば、三菱UFJの親会社株主純利益は約3.2兆円へ拡大すると予想する。
三菱UFJは、政策金利を約1.0%とする前提で、2027年3月期の親会社株主純利益目標を2兆7,000億円としている。
また、円金利が0.25%上昇した場合、年間純金利収益は約1,800億円増加する。
すべての利上げ効果(1.0%→2.0%で+1%分)が完全に反映された場合、純金利収益の増加額は年間約7,200億円(1,800億円×4)となる計算だ。
利上げ効果が業績に遅れて反映されることを踏まえ、2029年3月期に表れる純金利収益の増加額は約5,000億円と試算した。
法人税などを差し引いた純利益への影響を約3,500億円とし、金利上昇以外の事業が2年間で約1,600億円成長すると仮定する。
一方、経費や与信費用の増加による約500億円の減益も織り込む。
2027年3月期の純利益目標2兆7,000億円にこれらを加えると、2029年3月期の純利益は約3兆1,600億円となる。
端数を丸めて、2029年3月期の親会社株主純利益を約3.2兆円と予想する。
1株利益は約290円まで増加

純利益が3.2兆円まで拡大すれば、1株利益は約290円まで増加する。
純利益3.2兆円を110億株で割ると、予想EPSは約291円となる。
したがって、2029年3月期の予想EPSは、端数を丸めて約290円とする。
加えて、自社株買いによる株式数の減少が続けば、1株当たりの利益はさらに増加することとなり、1株利益300円到達の可能性もある。
PER12倍で予想株価は3,500円

2029年3月期の予想EPS約290円にPER12倍を適用すると、予想株価は約3,500円となる。
予想株価=290円×12倍=3,480円
端数を丸めた三菱UFJの予想株価は、3,500円である。
PER12倍は、景気や金利、市場環境によって業績が変動しやすい銀行株であることを考慮した水準である。
金利上昇による利益成長が確認され、ROE12%前後を維持できれば、従来より高い株価評価が定着する可能性もある。

PER12倍はかなり保守的な数字なので、実際の株価はさらに上振れることも期待できます。
金利2.0%の定着で株価4,000円も視野

政策金利2.0%が定着すれば、株価4,000円も視野に入る。
政策金利2.0%の効果が通期で表れる2030年3月期には、純金利収益が2029年3月期からさらに増加することになる。
純利益は約3.3兆円まで増加すると予想され、株式数110億株を前提としたEPSは約300円となる。
また、金利安定によって業績変動も小さくなり、PERは13倍が適用できると考えられる。
したがって、政策金利2.0%が通期で業績に反映された段階では、4,000円前後が株価の上値目安となる。
予想株価=300円×13倍=3,900円

自社株買いで将来的に株式数が減ることはほぼ間違いないので、上に切り上げて予想株価は4,000円としました。
三菱UFJ株に投資する際のリスク
日銀の利上げが停止するリスク

最大のリスクは、日銀の利上げが想定より早く停止することだ。
三菱UFJの株価上昇には、国内金利が今後も上昇し、貸出金利が改善するとの期待が大きく影響している。
しかし、景気が悪化した場合や、物価上昇率が2%を下回った場合、日銀は追加利上げを見送る可能性がある。
仮に政策金利が1%台前半で上昇を終えれば、本記事で想定した政策金利2.0%と純利益3.2兆円の達成は難しくなる。
また、景気後退によって日銀が利下げへ転じれば、貸出金利の低下によって利益が減少する可能性もある。
三菱UFJ株へ投資する際は、現在の利益だけでなく、物価や賃金、景気動向から追加利上げの余地を確認する必要がある。
預金金利の上昇で利ざやが縮小するリスク

政策金利が上昇しても、三菱UFJの利益が同じ割合で増えるとは限らない。
利益を左右するのは貸出金利の水準だけではなく、貸出金利と預金金利の差である。
金利上昇の初期段階では、貸出金利が預金金利より早く上昇するため、銀行の利ざやは拡大しやすい。
しかし、金利がさらに上昇すると、銀行間の預金獲得競争が激しくなるだろう。
預金金利が大幅に引き上げられれば、想定ほど利ざやが改善しない可能性があり、今後のリスク要因だ。
モルガン・スタンレーの利益が減少するリスク

モルガン・スタンレーの業績悪化は、三菱UFJの利益を大きく押し下げる可能性がある。
三菱UFJはモルガン・スタンレーへ出資しており、同社の利益の一部を持分法投資損益として取り込んでいる。
モルガン・スタンレーの好調は過去最高益の大きな要因となった一方、三菱UFJの利益が米国の金融市場に左右されやすくなったことも意味する。
株式市場が下落した場合や、M&A、IPO、社債発行などの案件が減少した場合、投資銀行部門の収益は悪化しやすい。
また、資産価格の下落によって顧客の運用資産が減少すれば、ウェルスマネジメント部門の手数料収入も減少する可能性がある。
景気悪化で与信費用が増えるリスク

国内外の景気が悪化すれば、与信費用が増加して利益を圧迫する可能性がある。
銀行は企業や個人へ融資を行っているため、取引先の経営が悪化すると、融資を回収できなくなる恐れが強まるためだ。

与信費用とは、お金を貸した相手が返せなくなるリスクに備える費用のことです。返済されない可能性や見込みに応じて先に損失を計上します。
特に、金利上昇によって企業の利払い負担が増えれば、倒産や返済遅延が増える恐れがある。
貸出残高の増加は金利収入を押し上げる一方、景気後退時には損失額を拡大させる要因となる点は注意が必要だ。。
円高・金利上昇で評価損が発生するリスク

円高や急激な市場金利の上昇も業績と株価を押し下げる要因となる。
三菱UFJは海外事業から多くの利益を得ているため、円高になると外貨建て利益を円へ換算した金額が減少する。
また、市場金利が急激に上昇すると、三菱UFJが保有する国債や外国債券の価格が下落し、評価損が発生する。
保有債券の満期を短くすることで影響を抑えることはできるが、金利が短期間で大幅に上昇した場合、損失を完全に避けることは難しい。
急激な金利上昇は債券損失や景気悪化を招く可能性があるため、今後の利上げの速度にも注意が必要である。
まとめ
三菱UFJは、国内金利の上昇や米国事業の好調を追い風に、過去最高益を更新している。
本記事では、政策金利が2028年7月に2.0%へ到達し、2029年3月期の純利益が3.2兆円、EPSが約290円へ拡大すると予想した。
PER12倍では株価3,500円、金利2.0%が定着してPER13倍が適用される場合は、2030年3月期に4,000円も視野に入る。
一方、利上げ停止や利ざや縮小、与信費用の増加などには注意が必要である。
現在株価は将来の業績拡大を織り込みつつあり、見通しが悪化したとたんに急激な売りに見舞われる可能性もある。
今後は、期待感が株価にどの程度織り込まれているかを測りつつ、さらなる株価上昇をにらんで買い進める方針が有力だろう。


















予想EPS=3兆2,000億円÷110億株=約291円