エーザイの株価が下落した理由と株価20,000円突破を予想する根拠




エーザイの株価は認知症治療薬で急騰と急落を繰り返しています。

2018年までは株価6,000円ほどでしたが、認知症治療薬により10,000円まで急騰しました。

以降、好材料と悪材料が出るたびに、6,000円台まで下落しては10,000円まで再上昇するということを繰り返しています。

最近ではレカネマブの登場により高値で安定してきましたが、それでも2度の急落に見舞われています。

本記事では、これまでにエーザイの株価が下落した理由についてまとめた上で、将来的に株価が20,000円を突破すると予想する根拠について解説します。

エーザイの株価推移

過去10年間の騰落理由

まず、これまでのエーザイの株価推移を振り返りましょう。

以下は過去10年間の株価チャートに、主な急落・急騰理由を記載したものです。

認知症治療薬が登場して以降、開発成否に関わる材料が出るたびに急騰・急落を繰り返した。

認知症治療薬で株価が急変動

2018年以降、エーザイの株価は認知症治療薬の成否に振られる展開となっています。

理由は、認知症は罹患者が多い上に根治薬が無く、開発に成功すれば兆単位の売上が期待できるためです。

また、2026年にがん治療薬「レンビマ」の特許切れが迫っているというのも背景にあります。

まさに、認知症治療薬の開発に成功すれば天国、失敗すれば地獄という状況でした。

アデュカヌマブで急落、レカネマブで再上昇

2018年に認知症治療薬「アデュカヌマブ」の期待から株価は動意づきました。

ところが、2019年には治験中止が発表されて株価は急落。

そこから一転、データ解析手法を変えたことで有効性が判明し、薬事承認まで獲得して株価は反転急騰しました。

しかし、結局は利用が広がらずに株価は再び急落します。

2022年に入ると、新たな認知症治療薬「レカネマブ」が登場し、無事に薬事承認を獲得して再上昇したのが今の状況です。

レカネマブ登場以降も2度の急落

レカネマブ登場によって株価は持ち直しましたが、それでも度々急落しています。

最初の急落は2022年末で、治験患者の3人目の死亡が確認されたことがきっかけです。

さらに、2023年6月には薬事承認が確定的となりましたが、材料出尽くしとして逆に急落するという事態になりました。

以下が急落局面の株価チャートです。

レカネマブの治験が成功した以降も、2度の急落局面が訪れた。

管理人

次の章から、これまでエーザイの株価が急落した理由について詳細に解説していきます。

急落理由① 認知症治療薬「アデュカヌマブ」の治験中止

9,000円から6,000円に急落

アデュカヌマブの治験中止はエーザイにとって過去最大の株価急落です。

アデュカヌマブは史上初の認知症の根治薬として期待され、2018年には株価10,000円突破の原動力になりました。

しかし、2019年3月21日に治験中止が発表されると、それまでの期待が売り圧力に反転。

2連続のストップ安を経て、株価は9,000円から6,000円に急落しました。

以下が治験中止発表付近の株価チャートです。

認知症治療薬の開発失敗の可能性が高まり、株価は急落した。

治験中止により開発失敗がほぼ確定

治験中止の理由は、最終治験において有効性が示せなかったためです。

確定ではなかったものの、失敗の可能性が高まったことで中止という判断になりました。

一般的に、治験の中止は高確率で開発失敗です。

最終治験で期待が高まっていた反動もあり、株価はわずか1週間ほどで3割も下落しました。

別の認知症治療薬も治験中止に

株価に追い打ちとなったのが、別の認知症治療薬「エレンベセスタット」の治験中止です。

当時、エレンベセスタットも最終治験まで進んでいました。

しかし、2019年9月13日に突然治験中止が発表されます。

これにより、わずかに残っていた認知症治療薬の期待が完全に剥落し、株価下落に拍車がかかりました。

証券会社によっては、エーザイの認知症治療薬の成功率を0%とし、失敗に終わったと結論づけたほどです。

目標株価が大幅引き下げ

認知症治療薬が立て続けに失敗したことで、エーザイの目標株価は大幅に引き下げられました。

UBS証券は従来の目標株価1万2,500円を4,600円に引き下げ、大和証券は6,600円から3,400円に引き下げました。

比較的強気だった野村證券でも5,500円に引き下げざるを得ませんでした。

証券会社が総じて目標株価を引き下げたことで、2019年9月には株価5,200円まで落ち込みました。

急落理由② アデュカヌマブの販売に失敗

治験中断から異例の復活

アデュカヌマブはその後復活を遂げます。

解析方法を変えて治験データを再検証したところ、高容量を投与した患者で有効性が認められました。

治験を中断した医薬品が復活するのは異例のことです。

そのため、2020年に承認申請を行うという発表はポジティブサプライズとなり、株価は5,000円台から8,000円台に急回復しました。

その後、紆余曲折あったものの承認申請まで獲得し、株価は一時12,000円まで上昇しました。

承認取得でも費用対効果に疑問符

新薬としての承認を獲得したものの、そこまでの紆余曲折がその後の販売に影を落とします。

まず、新薬承認に向けた諮問委員会が承認に否定的でした。

理由は、2つの最終治験のうち片方では効果が見られなかったためです。

諮問委員会は効果を確認するための再治験が必要だと主張しました。

それにも関わらずFDA(アメリカ食品医薬品局、新薬承認の主体)が承認に踏み切ったことで、諮問委員の3名が辞任するという事態になっていました。

また、年間600万円超という高い薬剤費も批判の的になり、次第にネガティブな面が報道されるようになりました。

販売拡大に失敗

費用対効果に疑問符がついたことが痛手となりました。

まず、米国の大手病院がアデュカヌマブの使用見送りを発表しました。

さらに、欧州、日本では承認が見送りとなり、米国以外での販売が絶望的となりました。

普及失敗の決定打となったのが米保険大手が保険適用を見送ったことです。

保険適用外となったことで、アデュカヌマブを使用する患者は年間600万円超の医療費を支払うこととなり、富裕層以外への販売は絶望的となりました。

その後は価格を半額にしたものの販売促進は限定的でした。

結果、アデュカヌマブの年間売上げは数億円が頭打ちとなり、販売戦略は完全に失敗しました。

急落理由③ レカネマブの治験患者が死亡

承認取得で株価は回復

エーザイの認知症治療薬候補は3つありましたが、そのうち2つは失敗に終わりました。

しかし、最後のレカネマブは治験で文句なしの有効性を示し、成功を収めそうです。

アデュカヌマブの販売失敗でエーザイの株価は再び5,000円台に下落したものの、レカネマブの承認取得で株価は回復に向かっています。

治験患者が3人も死亡

レカネマブは成功しそうですが、それでも売上が立つまでは不安が拭えません。

承認判断を目前に控えた2022年12月には、治験患者の3人目の死亡事例が発表されました。

それにより、安全性に対する疑念が生じました。

正式承認に影響を及ぼす可能性から、死亡事例発表の翌日の株価は7%安となりました。

悪材料懸念から株価7,000円に下落

その後も死亡事例が続くのではという懸念から株価は下落トレンド入りします。

アデュカヌマブの失敗もあり、投資家は認知症治療薬に対して慎重になっている側面もあったようです。

下落トレンドは3ヵ月間続き、2023年3月には7,000円台前半まで下落しました。

治験患者の3人目の死亡をきっかけに株価は下落トレンドとなった。

急落理由④ 材料出尽くしで業績相場へ

承認取得でも株価急落

レカネマブは2023年7月に無事承認を取得しました。

アデュカヌマブでは得られなかった保険収載も獲得できる見通しとなり、承認直前には株価10,000円を回復しました。

しかし、承認取得後の株価は冴えません。

期待先行で株価が上昇していたため、承認取得によって材料出尽くしとなったのです。

承認取得を発表した翌日から利益確定が先行し、株価は11,000円から8,500円まで急落しました。

承認がほぼ確実になって以降は利益確定に押されて株価は下落した。

業績相場へ移行

薬事承認という一大イベントを通過したため、後は業績への貢献を待つだけです。

日本や欧州ではまだ正式承認されていませんが、承認が既定路線なので、承認を獲得しても株価上昇は限定的でしょう。

これからは、レカネマブの売上がいつ、どれほどになるかが重要となります。

つまり、期待先行の相場から、地に足ついた業績相場へ移行していくでしょう。

2025年以降が再上昇フェーズ

レカネマブの売上は2025年から急増する見通しです。

エーザイによると、2025年までに米国で10万人の投与を予想しています。

2025年の投与患者数を5万人とすると、薬価が日本円で300万円ほどになりますので、年間売上は1,500億円です。

エーザイの主力薬品「レンビマ」が年間2,000億円ほどの売上であることを踏まえると、1,500億円の売上は相当なインパクトになります。

エーザイの想定通り進めば、株価は2025年あたりから再上昇のフェーズに入りそうです。

今後の株価予想

しばらく9,000円前後で推移

認知症治療薬の売上が業績に表れるのは2024年3月期からです。

そのため、しばらくはヨコヨコの株価推移となるでしょう。

チャート的にも三角保ち合いのような形になっており、9,000円付近で株価変動率が低くなっています。

利益確定の売りとレカネマブ期待の買いが一段落し、株価変動率は低下している。

2025年に株価13,000円突破

レカネマブの投与数が順調に伸びれば売上1,000億円を超えます。

投与拡大が軌道乗り、投資家の期待値が高まるでしょう。

エーザイにとって過去最大の成長となりますので、上場来高値を更新するのが妥当です。

したがって、2025年あたりには株価13,000円を突破するでしょう。

2030年には株価20,000円に到達

2030年にはレカネマブの売上が1兆円に達すると予想されています(参考「エーザイ、認知症薬レカネマブ「30年度に1兆円」」)。

レカネマブ単体での利益率を25%とすると、営業利益は2,500億円です。

したがって、純利益としては2,000億円は確保できるでしょう。

1株利益に換算すると約700円となり、PERを30倍とすれば株価は21,000円にもなります。

2030年の予想株価

予想株価=700円(EPS)×30倍(PER)=21,000円

まとめ

エーザイの株価が急落した理由について解説しました。

ここ5年ほどは認知症治療薬に関する材料が主な変動要因です。

最初のアデュカヌマブは失敗に終わりましたが、レカネマブでは逆転を果たし、最終的に株価は高止まりしています。

順調にいけば、2025年には上場来高値を更新するでしょう。

さらに、2030年に売上1兆円という予想が達成されれば、株価20,000円突破を現実的になります。

株価10,000円未満は将来の期待が織り込まれたとは言えず、買い時である可能性が高いと考えています。