なぜタイムバンクは変わらざるを得なかったのか?時間トレードが不発に終わった「真の理由」

タイムバンクが変わった真の理由とは?




タイムバンクの時間トレードは不発に終わった。

正確にはまだ続いているし、このまま終了するとは限らないのだが、少なくとも第一ラウンドは敗北したと言えるだろう。もはや、タイムバンクの時間は”デジタルなゴミ”と言っても過言ではなくなってきている。

時間トレードが不発に終わった要因はいくつか考えられるが、実際に多くの専門家サービスを利用した実体験から、その真の理由を考えてみた。

時間トレードとは何だったのか

時間とは仕事の依頼チケット

まず、時間トレードがどのようなものかを再確認しよう。

時間トレードでは、まず最初に「専門家」と呼ばれる人物がアプリ上で時間を販売する。専門家は条件を満たせば誰でもなることが可能で、著名人から一般人まで様々だ。

専門家になると所定の時間が発行され(発行時間は18,000秒や36,000秒など場合による)、これを10秒単位でユーザーに販売することができる。購入したユーザーは、時間を消費することで専門家に仕事を依頼することが可能だ。

仕事の内容は専門家によって多岐に渡るが、イラスト制作や写真撮影、プログラミング講師などがイメージしやすいのではないだろうか。

つまり、タイムバンクの時間とは仕事を依頼できるチケットのようなもので、使うことで専門家独自の特別なサービスを受けることができる。そして、その機能が時間の「価値」を支えるのである。

ユーザー間トレードが特徴

また、販売された時間は使わずに他のユーザーに売却することもできる。人気が出れば買った時より高く売れるかもしれず、反対に人気がなくなれば安くなって損をすることもある。

仕事を依頼するために時間を購入しても良し、将来人気が出ると見込んで保有してもよし、というのがタイムバンクの時間トレードの最大の特徴だ。

以上がユーザー側からの視点だが、次に、専門家の視点で時間トレードを見てみよう。

時間トレードは専門家の価値を可視化する

タイムバンクでは時間の価格が人気によって上下するため、専門家の価値が否応無く可視化されるという特徴がある。

人気というと曖昧な言い方だが、より突っ込んで言えば、お金を使ってくれる人が多ければ価格が上がり、使ってくれる人が少なければ価格が下がるという意味だ。

お金が絡むリアルさがあるだけに、これは時間を販売した専門家にとって恐ろしいことだ。何万というフォロワー数を抱えていても、価格が下がってしまえば、お金を使うほど価値を感じているフォロワーはいない、ということが露呈してしまう。

お金を使ってくれるフォロワーがどれだけいるかという、ある意味「真の人気」が時間価格によって可視化される。

ただし、これは時間トレードが十分に多いユーザーに利用された理想状態であって、実際にはそこまで活発にはならなかった。

革新的な仕組みが敗北した理由

さて、そんな革新的な仕組みで開始された時間トレードだが、冒頭で言った通り、残念ながら不発に終わった。

不発に終わった理由はなんだろうか。仕組みが難しいから、価格が高かったから、などいろいろ考えられるが、実際に使って感じたのは次の理由だ。

真の理由は「専門家のモチベーションが低かった」

意外かも知れないが、タイムバンクに不足していたのはサービスを利用するユーザー目線ではなく、サービスを提供する「専門家目線」だったと思う。

タイムバンクでは、時間が販売され、ユーザー間でトレードされ、損得が発生するなど面白い要素がたくさんあるが、それらの土台となる最も重要な要素は、サービスを実際に提供する専門家のモチベーションだ。

時間トレードは販売された時間が価値を持って初めて成立する。時間が価値の根拠はなんだっただろうか?それは、専門家に仕事を依頼できる、という機能だ。

つまり、仕事を依頼された専門家がしっかり仕事をこなさなければ、時間の価値はなくなってしまう、ということだ。

5万円を支払って漫画の制作を依頼したにも関わらず、無視されてしまったらどうだろうか?購入した時間は返却されるかもしれないが、もう二度と、時間を購入しようとは思わないだろう。使うこともできず、売ることもできなければ、時間は無価値であり、デジタルなゴミだ。

モチベーションが下がった理由

日本人の投資経験割合は約2割という調査結果がある。

時間を販売している専門家も例外ではなく、株式などと同じ仕組みで値動きするタイムバンクは、多くの専門家にとって理解が難しかっただろう。理解できていないアプリに対してモチベーションが下がるのは想像に難くない。

また、タイムバンクでは値動きが発生する。投資の世界ではよく言われることだが、上昇することによる喜びより、下落することによる負の感情の方が人は強く感じる。

つまり、同じ価格を中心に上下するだけでも、専門家は「負の感情」をより強く感じるということだ。さらに言えば、最初の売出し価格が高すぎたため、ほとんどの専門家は価格が下落し、負の感情もそれだけ強くなったことだろう。

自身を不幸にするアプリに積極的に関わりたいと思う人はいるだろうか?この感情的な側面もモチベーションを下げた要因の一つだろう。

モチベーションが下がって何が起こったか

専門家のモチベーションが下がった結果、次のことが起こった。

  • ・専門家がタイムバンクについてSNSで投稿しなくなった
  • ・依頼された仕事をやらなくなった

専門家がタイムバンクについてSNSで投稿しなくなった

専門家が提供しているサービスの最大の顧客は、その専門家のフォロワーだ。フォロワーは興味があって専門家をフォローしているので、専門家がタイムバンクで提供するサービスを使ってくれる最大の見込み客である。

つまり、専門家がどれだけ熱心に投稿するかで時間トレードの盛り上がりが大きく異なるということだが、専門家自身がアプリを理解できない上、価格が下がっていくというストレスから、多くの専門家は時間が経つにつれタイムバンクについて投稿しなくなった。そもそも、時間販売の対価は最初にまとめて受け取るので、時間トレードが盛り上がったところで専門家には1銭も入らないという仕組み的な問題もある。

そして、最大の見込み客を失ったまま時間トレードが続けられ、サービスは使われないまま忘れ去られてしまった。

依頼された仕事をやらなくなった

全ての専門家に当てはまるわけではない、という前置きが必要だが、タイムバンクで仕事を依頼しても対応されないケースが非常に増えた。

特に2019年以降が顕著で、私自身がサービス申請をした10件中、対応されたのはたったの3件だけだった。しかもこの3件は事前に繋がりのあった専門家で、面識なしで申請した場合は100%対応されなかった。

余談だが、対応されなかったにも関わらず「完了」扱いにされてしまったため、実損5万円が生じた上、返却された時間も売ることができず、約20万円が拘束されてしまった。返却されなかった5万円分はもちろん、拘束された20万円も諦める必要がありそうだ(ただし、これは自己責任の範疇だと考えている)。

タイムバンクの最大の利点は、時間さえ購入すれば、繋がりのなかった著名人に仕事が依頼できるというところにあった。

しかし、実際にサービスを申請した結果、この仕組みが成立していないということが露呈してしまった。

運営的な対策も効果は微妙

運営側も手をこまねいていたわけではなく、専門家向けにCM出演やラジオ出演をかけたイベントを開催した。

一時的に盛り上がったものの、その後につながるような成果は見られず、効果は限定的だったようだ。

そもそもの話だが、タイムバンクの利用規約には、仕事を依頼されたらその義務を果たさなければいけない旨が明記されている。この規約がその通り運用されれば依頼が無視されるということもないのだが、現実的には難しかったようだ。

そして、時間の価値が崩壊

専門家のフォロワーが売買に参加せず、サービスの実需が喚起されなかった。そして、(一部の)専門家はサービス申請を無視するようになってしまった。

その結果、時間トレードは機能不全に陥り、時間の価値は崩壊してしまった。

今や、専門家の時間価値は当初販売価格の3割を維持していれば良い方で、1割を切っている場合も多い。サービスが問題無く使えるならあまりに破格な値段だが、現状では買ったが最後、使うこともできなければ売ることもできなくなる。

以上が、時間トレードが敗北した本当の理由なのではないだろうか。

時間トレードのこれから

時間トレードは終了する?

売買をするユーザーがほとんどいなくなってしまったが、時間トレードはこれからどうなるのだろうか?

一つ考えられるのは、一旦時間トレードのサービスを終了することだ。

現在のタイムバンクが通販アプリに方針転換したことはご存知だと思うが、時間トレードのメニューは残っており、アプリの構成が複雑化してしまっている。新規ユーザーにとってアプリのわかりやすさは重要であり、これからユーザーを拡大したいタイムバンクの現状にそぐわない。

時間トレードを一旦クローズすることで、アプリがよりシンプルになり、運営的にも経営リソースを通販事業に集中できるのではないだろうか。

ただし、その場合にはすでに販売してしまった時間をどう処理するのかが大きな問題だ。無効にしてしまえばユーザーが損失を被るし、運営が買い取るにしても相当な金額になる。

現状で時間トレードの存在が問題になっているわけではないため、無理にクローズする可能性は低そうだ。

通販事業と共存させ、チャンスを狙う

無理に終了させるより、現状維持、つまり通販事業と共存させていくことを選択する可能性が高い。

事実、通販事業を開始してから半年が経過しても時間トレード機能は残されている。クローズするのであれば早い時期にやっているはずだ。

そして、いつか通販事業が軌道に乗ったあと、満を持して時間トレード機能に再び注力してくれるのではないだろうか。

まとめ

ここまで批判的に、そして敢えてセンセーショナルな言葉を選んで書いてしまったが、個人の時間を売買できるという時間トレードの魅力は色あせていない。

むしろ、以前から叫ばれている「個人の時代」の到来が徐々に意識されていく中、個人の価値を客観的にあらわすことができるツールはより重要になっていくだろう。

数万人が使う時間売買のプラットフォームとなれば、タイムバンクがその役割を担うことができる。いつか、多くの人が自らの時間価値をタイムバンクで可視化し、上げ下げに一喜一憂したり、時間売買を通して仕事を受注したりする未来の可能性は潰えていない。

これからの時間トレードの再起に期待したい。




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