ダイキン工業の株価はなぜ下落した?5つの理由と今後の株価予想




株価下落の5つの理由まとめ
  1. 四半期業績が悪化・・・2四半期連続で減益、利益率も低下
  2. 中国事業が悪化予想・・・中国景気悪化で空調需要低下の恐れ。関連株も売られている
  3. 金利の上昇・・・負債増のタイミングで金利が上がり利払いが増加
  4. 欧州での販売減速・・・天然ガス価格下落でダイキン製品の優位性が低下
  5. 成長期待の反動 ・・・成長期待で株価3万円超えも、反動で急落

エアコンで世界トップ級を誇るダイキン工業が急落しています。

一時は株価30,000円を突破したものの、その後は急落が続き、20,000円台にまで売られてしまいました。

中国と欧州の景気減速の影響を受けた上、金利上昇による利払い増加で利益が押し下げられました。

その結果、業績は過去最高を更新したものの、市場の期待には届かずに株価は急落しています。

しかし、長期的な成長期待は不変ですので、長期的には買い時かもしれません。

本記事では、ダイキンの株価が下落した5つの理由をまとめた上で、今後の株価予想について解説します。

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株価が下落した5つの理由

理由① 四半期業績が悪化

2024年2月6日に発表した第3四半期決算が市場期待に届きませんでした。

そのため、失望した機関投資家が一斉に売りに出し、株価急落を招きました。

決算前は2万3,000円付近でしたが、決算翌日は2万1,000円付近まで下げています。

2月6日に第3四半期決算を発表し、翌日は急落した。

では、問題となった業績はどうだったのでしょうか。

四半期業績の推移を見てみましょう。

2Q、3Qと連続で減益となった。
2Q、3Qの業績詳細

2Q、3Q連続で前年比減益となりました。

特に、3Qは前年比-22%と減益率が拡大しています。

しかも、通期の純利益予想(2,640億円)に対して73%しか進捗しておらず、4Qで残り27%を埋めるのは難しいと予想されます。

そのため、投資家は失望して一斉に売りに回ってしまいました。

理由② 中国事業の悪化予想

現時点では中国事業は堅調です。

しかし、中国の景気は悪化していると言われており、これから中国事業が悪化する恐れがあります。

直近の中国事業は堅調となっている。出典:2024年3月期 決算説明資料

特に、ニデック(6594)やオムロン(6645)など、中国関連の機械銘柄の業績が急悪化しているのが気がかりです。

オムロンについてはストップ安となり、その日はダイキンも-4%ほど連れ安しました。

また、空調機器は不動産市況に大きく影響されます。

中国では不動産価格が急落しており、住宅着工件数も低迷していると見られます。

そのため、これから空調機器が売れなくなることが懸念されます。

理由③ 金利の上昇

ダイキンは新興国への事業展開を急いだため、有利子負債を多く抱えています。

近年は世界的に金利が上昇しており、利払いが増加しました。

その結果、本業は好調でも純利益が低下しています。

次の画像が有利子負債の1年ごとの推移です。

有利子負債の推移。新工場の立ち上げで負債が増加した。出典:IR BANK

2023年3月末時点で7,606億円まで増加しています。

一方、金利は世界的に上昇しており、有利子負債の増加を超えるペースで金利負担が増えています。

2023年度の第3四半期まででは利払いが323億円に達しており、前年比で約2.5倍にも増加しました。

2024年3月期3Qの損益計算書。支払利息が前年比で急増している。

これにより、営業利益段階では増益でも、経常利益以下が減益となってしまいました。

理由④ 欧州での販売減速

2023年初頭までは欧州でダイキンのエアコンが絶好調でした。

理由は、天然ガス価格の高騰です。

欧州では天然ガスを利用した暖房が主流ですが、価格高騰によりヒートポンプ式のエアコンへの置き換えが進みました。

以下のグラフが欧州での天然ガス価格の推移ですが、2023年初頭まで高止まりしていたことが分かります。

天然ガス価格の2021年以降の推移。2023年から価格が落ち着いた。出典:世界経済のネタ帳

しかし、2023年3月以降は価格が下落し、下落とともにヒートポンプ式エアコンも売れなくなりました。

その結果、欧州での販売減速を招いています。

省エネ対策として今後も需要は続きますが、以前ほどの勢いはなく、株価下落の一因となってしまいました。

理由⑤ 成長期待の反動

ダイキンは空調機器のトップメーカーとして成長が期待されており、株価も期待先行で上昇していた側面があります。

しかし、株価30,000円までハイペースで上昇したことで、株価反落を招きました。

2023年4月から期待先行で株価が急騰し、一時31,000円を超えた。

急騰した理由は、エアコンの生産能力を大幅に引き上げたことです。

それまでは年間865万台でしたが、これを一気に1,200万台に拡大する計画を打ち出しました。

しかも、新興国を中心に新工場を次々立ち上げる計画となっており、海外での売上増加が期待されました。

ところが、金利上昇や天然ガス価格の下落、中国の不動産価格下落など、懸念材料が複数出てきました。

そのため、割高になった株価が一気に是正され、25,000円付近まで急落してしまいました。

下落後の株価は買い時か?

株価指標は平均並みに低下

株価下落により株価指標は低下しました。

2024年2月8日時点での予想PERは23.5倍となっています。

これまでは30倍前後で推移してきましたので、かなり割安になった印象です。

株価下落によってPERは2019年時点の水準まで低下している。

PER23倍というのは、成長期待が高まる2020年以前の水準です。

逆に言えば、成長期待が剥落した結果だと言えるでしょう。

しかし、インドをはじめ新興国での成長期待は健在なので、20倍台前半のPERは割安に映ります。

2年後の業績予想に対しては割安

現在の株価指標は例年並みですが、2年後の業績を見越すと、今の株価は明確に割安です。

2026年3月期の業績予想は次のようになっています。

2026年3月期の業績予想(SBI証券より)
  • 売上高 ・・・5兆2,000億円
  • 営業利益・・・5,400億円
  • 1株利益・・・1,255円

1株利益が1,255円なので、現在株価(21,000円)で予想PERを計算すると約16.7倍となります。

一方、2019年以降でPER17倍を下回ったことはなく、16.7倍は明確に割安水準です。

過去5年間のPER最低値は17.5倍だった。

そのため、適正水準まで株価が上昇することになるでしょう。

PER20倍としても株価2万5,000円、PER25倍とすれば3万1,000円超えとなります。

成長期待は不変

株価が急落したものの、長期的な成長期待は不変です。

ヒートポンプ式エアコンはCO2排出量が少ない上、ボイラー式と比べて2割弱の光熱費節約になるという試算があります。

そのため、2035年あたりにはほとんどの家庭用暖房がヒートポンプ式に置き換わると予想されています(ダイキンによる予想)。

ヒートポンプ式への置き換わりが進むにつれ、ダイキンの売り上げ拡大が期待できます。

また、インドなどの新興国でもエアコンの利用が拡大しており、海外売上の増加が期待されています。

株価20,000円前後は買い時

以上を踏まえると、ダイキンの成長期待はまだまだ高い上、株価20,000円は割安であると考えられます。

したがって、急落後の株価は買い時だと言えるでしょう。

長期的には株価2万5,000円や3万円超えが狙える状況にあり、20,000円台は魅力的な水準です。

一方、短期的には目標株価の引き下げなどで株価が下がりやすい状況になります。

そのため、下落が落ち着いてから買いを検討するべきでしょう。

ダイキン工業が注目される理由

管理人

株価が下落している時だからこそ、ダイキンが長期で注目されている理由を再確認しておきましょう。

データセンター増加が追い風

ダイキンの空調機器はデータセンターに多く採用されています。

そのため、世界的なデータセンター増加がダイキンにとって追い風です。

データセンターの市場規模は、世界で年間+11%という急成長が予想されています。

この成長は2030年まで続くため、ダイキンのデータセンター向け空調機器の売上も年々増加していくでしょう。

参考

STRAITS RESEARCH「データセンター市場

ちなみに、直近の決算でもデータセンター向け空調機器は絶好調です。

円安の恩恵

ダイキンは海外売上が8割を占めるため、円安で利益が増加します。

具体的には、ドルに対して1円円安で22億円の利益増加、ユーロに対して1円円安で9億円の利益増加となります。

通貨為替感応度
ドル+22億円
ユーロ+9億円

直近では1ドル150円付近まで円安が進んでおり、業績にプラスに働きます。

今後も円安基調が続く見通しなので、為替が業績の追い風となるでしょう。

脱炭素関連銘柄

脱炭素という切り口でもダイキンは関連銘柄です。

ヒートポンプ式エアコンは化石燃料を使わないため、二酸化炭素排出量が少ない空調機器と言われます。

しかも、ダイキンのエアコンは特に消費電力が少ないという特徴があります。

CO2排出削減は世界的に求められていることから、企業を中心にダイキンのエアコンが採用されていくでしょう。

また、株式市場でも脱炭素関連銘柄として投資資金を呼び込むことができそうです。

今後の業績予想

2026年までの業績予想

今後の株価を見通す前提として、業績予想を確認しておきましょう。

以下が2026年3月期までの3年分の業績予想です(SBI証券より)。

決算期売上高営業利益
2023/03(実)3兆9,815億円3,770億円
2024/034兆3,000億円4,000億円
2025/034兆7,000億円4,700億円
2026/035兆2,000億円5,400億円

増収増益の見通し

2026年3月期まで増収増益の見通しとなっています。

売上は年10%程度、営業利益は15%ほどの伸びが見込まれます。

純利益についても年15%ほど伸びますので、株価も年々上昇していくと考えるのが自然です。

3つのリスク要因

今後の業績には主に3つのリスク要因があります。

ダイキンの主なリスク要因
  1. 原材料価格・・・空調機器の原価率に影響
  2. 為替(円安or円高)・・・海外利益の増加or減少に影響
  3. 金利変動・・・有利子負債の利払いに影響。また、住宅需要に影響。

これらの変動によって、業績予想に対して上振れたり下振れたりするでしょう。

また、株価には先に織り込まれることになるので、上の3つが株価変動の要因にもなります。

今後の株価予想

PER25倍で計算

ダイキンの直近5年間のPERは30倍が目安でした。

しかし、利益率が低下したため若干下方修正する必要があるでしょう。

株価を予想する上では、PER25倍を前提に計算していきます。

2026年までの予想株価

今後の1株利益予想にPER25倍をかけた結果が次の表です。

決算期1株利益予想株価
2024/03902円2万2,600円
2025/031,079円2万7,000円
2026/031,255円3万1,400円

株価3万円回復を予想

2026年3月期の1株利益をベースにすると、予想株価は3万1,400円となりました。

つまり、2年後には株価3万円を回復していると予想します。

PER20倍としても株価2万5,000円ですので、株価上昇の確度は高いと言えるでしょう。

リスク要因の動向に注意

上の予想株価はSBIの業績予想を前提としました。

しかし、リスク要因次第ではこの前提が崩れる可能性があります。

例えば、原油価格が再び高騰して金属価格が上昇すれば、原材料費が上がって利益の低下を招きます。

逆に、米国などで利下げがスタートすれば、有利子負債の負担が減って利益が上がります。

リスク要因の動向次第で業績予想と株価が変動することに留意しておきましょう。

まとめ

ダイキン工業の株価が下落した理由と、今後の株価予想について考察しました。

売上は伸びているものの利益率が低下しており、短期的に株価が下落するのは仕方のないところです。

しかし、長期的な成長ストーリーが崩れたわけではありません。

これから新興国で新工場が稼働し、海外の売上がさらに拡大するでしょう。

データセンターの増加、CO2排出量削減の動きなども追い風となり、長期目線では成長余地が大きいと考えられます。

それを踏まえると、株価20,000円台前半は安く、買い時であると考えています。