タイムバンクがスキルシェアサービスに本格参入!大手スキルシェア会社と比較した強みは




タイムバンクは”憧れのあの有名人と直接「会える・話せる」アプリ”をキャッチコピーに事業を展開してきた。

時間の価値が需要と供給によって変動し、売買によって差益を得ることができる点も注目され、20〜30代の若い個人投資家層を中心にユーザーが広がった。また、芸能関連の他社との業務提携を行い、芸人やアイドルを専門家として登用。アイドルグループとのコラボイベントを行うなど、画期的な取り組みが話題となった。

しかし、タイムバンクの「時間売買」というのが新しい仕組みであるが故、新規ユーザーがとっつきにくかった感は否めない。

新規ユーザー取り込みに苦戦しているようにも見えていたタイムバンクだが、ここにきて新機能を実装した。『出品』機能である。

今回は、タイムバンクが本格的に参入しようとするスキルシェアサービスの現状を踏まえ、タイムバンクの強みや今後の展開を考える。

『出品』機能は他社と競合?

『出品』と言っても、物を販売するわけではない。個人の時間を30分単位で販売することができるのである。このコンセプト自体は既存スキルシェアの「TimeTicket」「ANYTIMES」と同じで、さらに言えば業界大手の「ストアカ」や「ココナラ」と競合する領域である。

大手の牙城をどう切り崩すのか

「大手の牙城を切り崩す」というと果てしないチャレンジのように感じるが、スキルシェアサービスについて言えば、そもそも顧客を奪い取る必要はない。なぜなら、ユーザーにとって一つのスキルシェアだけを使い続けるより、複数のサービスを併用して利用する方が合理的だからである。

もちろん、サービスを立ち上げたからと言って大手ユーザーが無条件で流入してくれるわけではない。類似サービスとはいえ、新規会員登録や情報の入力、インターフェースの違い、レビュー数など、障壁や差が存在する。それらを越えるほどのインセンティブをサービスに用意できるかどうかが、後発組スキルシェアサービスの課題となる。

ユーザー流入のためには?

それでは「ストアカ」や「ココナラ」からユーザーを呼び寄せるにはどうするべきなのか?一つ言えることは、スキル販売の仕組みやユーザーインターフェースを似せてしまうことである。

これはまさに、直近のタイムバンクのインターフェース刷新で片鱗が見られている。『出品』は上に書いた通り大手と同じ仕組みであるし、これまで「秒」で表示されていた利用条件が金額ベースに変更された。何より、専門家として登録する必要なく、誰でもスキルを販売できるようになった。

おそらく、タイムバンクは今後さらに大手サービスの仕組みやインターフェースに寄せてくると予想される。スキルシェア業界はまだ発展途上の「共存共栄」であるから、やるからには独自の新規ユーザーを獲得するよりもユーザーを”シェア”してしまえば良いのである。

タイムバンクの強みは?

スキルシェア業界でユーザーを”シェア”することの重要性を書いたが、独自の強みがなければユーザーはタイムバンクを利用する障壁を超えてくれない。タイムバンクの強みとはなんだろうか?

タイムバンクの強み①:有名人が登録している

初期のコンセプト”憧れのあの有名人と直接「会える・話せる」アプリ”は一旦取り下げたものの、多くの著名人の時間を購入してサービスを依頼できることには変わりない。これは大手スキルシェアサービスにはない強みである。

ただし、これはオンリーワンのコンセプトではなく、サイバーエージェントが2018年6月から開始した「REQU」も著名人のスキルを販売している。「REQU」を軽く覗いてみたが、こちらも一部を除いてまだあまり利用されていない印象だ。

タイムバンクの強み②:購入した時間を売ることができる

タイムバンクの最大の特徴の一つが、購入だけでなく売却もできる点だ。

この特徴は他のスキルシェアサービスには無く、そして非常に魅力的である。敢えて言うなら「VALU」も売買が可能であるが、こちらはスキルシェアとは異なるサービスなので今回は考えないことにする。

売ることができることから、買った時と売った時の差額から利益を得ることができる(もちろん、損失を被る場合もある)。

数字が動くことによるゲーム性は個人投資家はもちろん、投資に興味が無い層でも楽しむことができるだろう。近年は個人投資の機運が高まっていることも後押ししそうだ。売買にまつわるイベントをアプリ内で開催しているのも、他にはない特徴である。

タイムバンクの強み③:資金がある

実は、タイムバンクの資本金は他社と比較すると一番多い。

タイムバンク株式会社(タイムバンク):資本金3.5億円
ストリートアカデミー株式会社(ストアカ):資本金1.7億円
株式会社ココナラ(ココナラ):資本金0.9億円
株式会社ビザスク(ビザスク):資本金3.3億円
グローバルウェイ株式会社(TimeTicket):資本金0.5億円

各社資金調達を行なっているので資本金の比較はあまり意味がないが、少なくとも多くの可能性があることは確かである。また、様子を見ながら少しずつスケールするのではなく、一気に市場を取りに行くタイミングを見計らっていると思われる。

タイムバンクの強み④:技術力がある

あまり表には出ないが、優秀な技術者は得難いものである。

タイムバンクはブロックチェーンによる仕組みの構築も着手していて、売買金額によって配布される「TBMトークン」はその最初の例だ。AIに関する知見もある。ブロックチェーンやAIに関する技術者が開発に加わっているのは、優れた仕組みを作る上で大きな強みである。ただし、タイムバンクのサービスでブロックチェーンやAIをどう活用するかは筆者が想像できる範囲を超えるので、そこは経営者の手腕に期待したいところだ。

タイムバンクの今後の展開を予想

ここまで、他のスキルシェアサービスを「共存共栄」を目指すべきであるという事と、その中でのタイムバンクの強みを考えた。

次に、タイムバンクの今後の展開を予想したいと思う。

今後の展開予想①:シェアリングサービス全てを内包する”メタ”シェアリングサービスを目指す

リニューアルされたタイムバンクのWEBページを見て驚いた方も多いのではないだろうか。

これまでは「専門領域の相談」「デザインの依頼」「講演会の依頼」などは専門家が提供いたが、「家事代行」や「会議室の利用」、「会議室の利用」などは利用できなかった。これらがタイムバンクでシェアリングが可能になれば、もはやシェアリングできる物・事全てを内包した「”メタ”シェアリングサービス」となりそうだ。

次の図は三菱UFGの「スキルシェアリングサービスの動向整理」から借りてきた図である。タイムバンクのシェアリング内容は、この全てを含んでいることが分かる。

タイムバンクのシェア対象は全てを含んでいる

今後の展開予想②:他社との提携

上記の幅広いシェアリングサービスの業態は、タイムバンク単独では難しい。実際に物・人が動き、シェア対象特有のトラブルも起こるわけだから、短期的に展開するならサービス毎に得意とする会社と提携することになりそうだ。

例えば、MBOこそされたものの、タイムバンクを傘下におさめていたメタップスは民泊事業を展開している(VSbias)。その子会社と提携することは十分にあり得るだろう。

これまでも、インスタグラマーネットワークを持つ「タグピク」との資本業務提携や、エンターテイメント大手のエイベックスとの合弁会社設立などを行なってきた。今後もさらなる提携が期待される。

[blogcard url=”https://www.metaps.com/press/ja/434-metaps-avex-timebank”] [blogcard url=”https://tagpic.jp/news/pressrelease/5261/”]

今後の展開予想③:時間の「先行販売」の仕組みがどうなるか

タイムバンクの特徴の一つに、時間を「先行販売」できるという事がある。

「先行販売」というのは、例えば先に5時間分(18,000秒)の時間を売ってしまい、サービスを行う前に対価を得ることができる仕組みである。1秒10円で販売すれば、販売者は先に18万円を手にすることができる。

先行販売された時間は、買ったユーザーが使用してサービスを受けることもできるし、他のユーザーに売却することもできる。

「先行販売」に「出品」の仕組みが加わった

これまでは「先行販売」の仕組みだけであったが、ここに「出品」という別の仕組みが加わった。この二つの仕組みがどのように展開して行くのか、タイムバンクを利用していた多くのユーザーが疑問に思ったはずだ。

少なくとも言えることは、「出品」機能でスキルシェアのユーザー層が増加するであろうという事と、それに伴ってタイムバンク内の総残高が増加するであろうという事である。なぜなら、スキルシェアで得られた報酬はアカウント残高に付与されるからだ。

アカウント残高に付与された報酬は、そのほとんどがタイムバンク内に残ると思われる。その資金は、別の出品を購入したり、あるいは「先行販売」の買付余力となるだろう。

タイムバンクは、メルカリが物を売買する「メルカリ経済圏」を構築したのと同様に、シェアリングの経済圏を作り出そうとしている。「先行販売」と「出品」は別の仕組みではあるが、それらは「タイムバンク経済圏」の二本柱となるのではないだろうか。

まとめ

大手スキルシェアサービスとの簡単な比較と、タイムバンクとしての強みを考えてみた。今後の展開はあくまで想像の域を出ないが、スピード感あふれるタイムバンクの事業展開ならあり得なくはないだろう。

シェアリング業界の市場規模は2016年度で500億円。2021年度にはその倍である1,000億円に拡大するとの予測がある。このシェアリングサービス拡大期の波に乗れるかどうかが、タイムバンクの命運を左右することになりそうだ。今後の進展に期待したい。




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