「Financie」(フィナンシェ)というサービスをご存知でしょうか?
「フィナンシェ」は3月8日にβ版がリリースされた、最新技術を活用した新しいコミュニティサービスです。
個人の信用を基軸としている点について「タイムバンク」との類似点も多いのですが、一つ一つの仕組みの違いにそれぞれのサービスの特徴が如実に現れています。
今回は、話題の「フィナンシェ」と「タイムバンク」を比較して、それぞれの特徴を調べていきたいと思います。
目次
「フィナンシェ」とは?
まずはじめに、「フィナンシェ」とはどのようなサービスかをご紹介します。
フィナンシェの概要
「フィナンシェ」とは、人をカード化して売買することができるサービスです。
カードの発行者は「ヒーロー」と呼ばれ、なんらかの目標や夢を持って活動している人がヒーローとして登録することができます。
ユーザーは、ヒーローが発行した「ヒーローカード」を購入することで「フィナンシェ」内のコミュニティに参加し、ヒーローと一緒に活動することができます。
「フィナンシェ」は2019年3月8日にβ版がリリースされ、仮想通貨などでも使われている「ブロックチェーン」を活用していることでも大きな話題となっています。
「ヒーローカード」を買ってできること
ヒーローカードを購入することで何ができるかというと、
- ・カード保有者限定の投稿を閲覧できる
- ・「ミッション」に参加してユーザースコアやカードを獲得する
- ・ヒーローが用意した「リワード」を受けることができる
というのがシステム上で用意されている内容です。
具体的にどのような投稿を見ることができるか、どのようなリワードを受けることができるかなどはヒーローに委ねられていて、コミュニティが盛り上がるか閑散としてしまうかはヒーロー次第となっています。
フィナンシェ内の活動は数値化され、信頼の基盤となる
コミュニティの盛り上がり度合いは「コミュニティスコア」として数値化されています。また、各ユーザーの活発度も「ユーザースコア」として数値化され、スコアが高いとコミュニティ内で高い権限をもつ「役職」に就くこともできます。
つまり「フィナンシェ」とは、ヒーローの「夢」を共通目標としたコミュニティを作ることが可能で、その信頼性の指標として各スコアが用意され、さらに全体の信頼性を「ブロックチェーン」で担保したシステムであると言えるでしょう。
フィナンシェとタイムバンクの共通点
「フィナンシェ」と「タイムバンク」はどちらも個人の信頼を基軸としたサービスで、いくつかの共通点が挙げられます。
「個人」にフォーカスしたサービス
フィナンシェもタイムバンクも、個人の信用を土台にした「トークンエコノミー」という切り口であることが共通しています。
「信用経済」とも言われ、これまでの行動の積み重ねが数値化され、トークンを通じて売買することができる仕組みです。
フィナンシェの場合は「ヒーローカード」、タイムバンクの場合は「時間」がトークンにあたります。
ユーザー間の売買で値動きが発生する
二つ目の大きな共通点として、「ヒーローカード」も「時間」も売りと買いのバランスによって価格が変動することが挙げられます。
人気が高いと買う人が多くなり、結果として価格が上昇する。反対に、人気が無くなれば価格が下落するということです。
売買の仕組みは両サービス間で大きく異なるのですが、発行者の人気や活動実績が価格に反映されるという点においては共通しています。
タイムバンク専門家もフィナンシェに参加
両サービスに関わっている人物も共通しています。
フィナンシェのヒーローを応援する「ヒューマンキャピタリスト」として名を連ねている
- ・国光宏尚(株式会社gumi代表)
- ・佐渡島康平(株式会社コルク代表)
- ・箕輪厚介(幻冬舎編集者)
の三名はタイムバンクでも時間を販売している専門家です。
また、マッチングアプリ専門メディア「マッチアップ」編集長の伊藤早紀さんが初期ヒーローメンバーとしてヒーローカードを販売しています。
[blogcard url=”https://financie.jp/users/matchappsaki”] [blogcard url=”https://info.timebank.jp/talent/526″]フィナンシェとタイムバンクの違い
ここからは、フィナンシェとタイムバンクの違いを見ていきます。
実は、この二つのサービス、「トークンエコノミー」という切り口は同じであるものの、コンセプトから仕組みまで大きく異なります。「VALU」の方がフィナンシェの仕組みやコンセプトと似ている印象です。
ですが、違いを比較してこそ良さや欠点が分かるものですので、ここでは敢えて違いの大きいフィナンシェVSタイムバンクで比較していきます。
コンセプトの違い
フィナンシェのコンセプトは、『夢がみんなの共有財産になる、ドリームシェアリングサービス』。
ヒーローカードを保有することで、ヒーローと夢を共有し、夢の達成に向けて一緒に活動することができます。
ヒーローカードを購入した上に、さらにヒーローの夢の実現に向けてサポートするということですので、ファンでない人にとってはリターンを感じづらい仕組みかもしれません。逆に、ファンにとってはヒーローの夢を自身の夢として活動できる点が大きな魅力です。
フィナンシェでは、ヒーローの人物像に強く共感したファンが集まるという点が特徴となりそうです。
一方、タイムバンクのコンセプトは『「時間」の取引所』。
時間を消費して専門家のスキルをユーザーが利用できるため、タイムバンクの場合は専門家のファンでなくても、専門家のスキルや作品が欲しい人であれば時間を購入します。
フィナンシェは純粋な「評価経済」(人物重視)である一方、タイムバンクでは「評価経済」だけでなく「価値経済」(コンテンツ重視)の一面も取り入れている点が大きく異なります。
タイムバンクでは、コアなファンに限らず、幅広いユーザーに時間を買ってもらう事ができるのが特徴です。
販売方法の違い
フィナンシェは「ヒーローカード」、タイムバンクは「時間」を販売しますが、販売の仕組みが大きく異なります。
タイムバンクの販売方法
タイムバンクの場合は、価格・発行秒数は固定で、ユーザーの購入申込数が発行秒数を上回った場合は抽選を行います。
専門家は「価格×発行秒数」の金額を受け取ることができますが、発行秒数は固定で価格は専門家が決めることができるので、受け取る金額の目標が立てやすい仕組みです。マネタイズという面では優れていると言えるでしょう。
フィナンシェの販売方法
一方、フィナンシェの場合はカードの発行枚数のみ固定で、1枚当たりの価格が変動します。
フィナンシェのカード販売は「ダッチオークション」という方式。時間を追うごとにカード1枚あたりの価格が自動的に下がっていき、「価格×発行枚数」の金額がユーザーの申込み総額と一致した時点で販売が完了します。
購入を申し込んだユーザーは、自身の申込み金額が全体の何%かによって受け取ることができるカード枚数が変化します。200万枚の販売で申込み総額が100万円で終了した場合、1万円の購入申込をしているユーザーは1%である2万枚を受け取れるということです。
フィナンシェの仕組みの場合、カード販売側であるヒーローが受け取ることができる金額が大きく変動するため、マネタイズとしては不安定であると言えます。
ただし、集まる金額に上限が無いに等しく、人気であればあるほど多くの活動資金を得られる可能性があるのが特徴です。
ユーザー間売買の違い
ユーザー同士の取引にも大きな違いがあり、特にフィナンシェで採用している仕組みは注目を集めています。
タイムバンクのユーザー間売買
タイムバンクでは、株取引や仮想通貨取引でも採用されている「取引板」方式です。
この方式では、各ユーザーが買いたい金額、売りたい金額で自由に予約注文することができ、売買の自由度が高いのが特徴です。他ユーザーの注文も見ることができるので、非常に透明性が高いという利点もあります。
フィナンシェのユーザー間売買
一方、フィナンシェの売買はシステムが仲介していて、ユーザー間売買というよりユーザー対システムの売買と言った方が正しいでしょう。
売買が開始されたヒーローのページには「販売在庫」が表示されていて、「購入」で買うと在庫が減り、「売却」で売ると在庫が増えます。
これはヒーローカードの流動性を担保する「Bancor Protocol」というブロックチェーン上の仕組みで、売買の仲介と価格の自動決定を担っています。
「Bancor Protocol」に関する詳しい解説は省きますが、買いたい時に買え、売りたい時に売れることを担保するシステムだと理解してもらえればと思います。
興味のある方はこちらのサイトに概要が解説されているのでご覧ください。
[blogcard url=”https://medium.com/@amachino/bancor-protocol-はトークンエコノミーを支える大発明となるか-前編-9769b79f2bca”]取引制限
フィナンシェでは、最低購入額1,000円という制限があり、一方のタイムバンクでは1日の値幅制限(上限+50%、下限-25%)という制限があります。
ヒーローカードはそれほど頻繁に売買するものでは無さそうなので、1,000円という制限は特に気にならないのではないでしょうか。ブロックチェーンという仕組み上、細かい取引が頻発すると処理に時間がかかってしまう事からも、最低購入額が設定されていることは頷けます。
タイムバンクの取引制限としては、前日比+50%以下、-25%以上という値幅制限があります。極端な値動きを防止する仕組みですが、最近では流動性を損なっているように思われます。
タイムバンクのサービスを利用するにはまとまった売りが出ている必要がありますが、+50%という制限から売りが少なくなり、サービスを利用できない専門家が多く見られます。下限-25%という制限からも買いが少なくなり、売るに売れない状況を作り出してしまっています。
売買方法の優劣
フィナンシェは革新的な売買システムで流動性を確保しており、その点についてタイムバンクより優れていると言えます。
いつでも買える、いつでも売れるということは、売買に対する心理的ハードルを下げることができ、結果として流動性を向上させることができます。
売買の分かりやすさ、という点については、どちらも同じ程度でしょうか。基本的に購入量を入力して価格を確認し、実行ボタンを押すだけで購入することができます。
ただし、フィナンシェでは購入量を入力しないと価格がいくらになるか分からないため、注意が必要となります。特に、大量に買おうと(売ろうと)すればするほど現在価格から乖離した価格が提示されます。
専門家の収益性
流動性についてはフィナンシェに分がありますが、専門家の収益という点についてはタイムバンクに分がありそうです。
なぜなら、「Bancor Protocol」はシステムが売買の仲介をするために一定の準備金が必要で、この準備金はヒーローカードの売上げから手数料として差し引かれるはずだからです。流動性と収益性を交換しているイメージですね。
BancorProtocolを解説しているこちらのサイトでは準備金を2割としていますが、流動性を確保するために3-4割にしている可能性がある上、運営収益のための手数料も上乗せされているはずです(詳しくは発表されていないので、予想ですが)。
したがって、フィナンシェでは売上に対する手数料の割合が大きくなり、準備金を必要としないタイムバンクの方が専門家のマネタイズという面では優れていると言えます。
また、タイムバンクでは時間が消費されるため、追加販売による収益を見込むこともでき、消費と追加販売の循環で継続的にマネタイズできる点も大きいでしょう。
手数料について
手数料は両サービスで大きな差があります。
タイムバンクは、売買額の1.08%が手数料として差し引かれます。
一方、フィナンシェは売買額の3%+ネットワーク手数料が差し引かれます。ネットワーク手数料はネットワーク状況によって変動するようですが、私が売買した時(3月22日)は取引金額に関わらず50円でした。
したがって、売買を行う上での手数料はフィナンシェの方が高く設定されています。
リターンの違い
時間またはヒーローカードを購入することに対するリターンの設計は、両サービスの特徴が色濃く反映されています。
タイムバンクでは、基本的に時間を保有しているだけではほとんどリターンがありません。サービス変更の通知や、トークを閲覧できるなど、おまけ程度です。
時間の主な使い道は、各専門家が用意しているサービスを利用することです。サービス内容は専門分野の相談や作品のプレゼントなどさまざまですが、それにより時間が消費され、タイムバンク内での経済を回すことができる仕組みになっています。
逆に、フィナンシェではヒーローカードを保有しているだけでリターンを得ることができます。
ヒーローカードを保有するとヒーローのコミュニティに参加することができ、ヒーローが用意したリワード(イベントへの出席権利など)を受け取ることができるようです。
また、ユーザーの活動はスコア化され、スコアが高いユーザーはヒーローの指名で役職に就くことが可能となり、コミュニティ運営に関する権限が与えられます。
フィナンシェのコンセプトは『夢がみんなの共有財産になる、ドリームシェアリングサービス』ですので、ユーザーはサービスの受取り手ではなく、むしろ夢の実現に向けて積極的に動くことが期待されているようです。
というのも、フィナンシェではヒーローカードが消費されないため、ヒーローが与える側になってしまうと、収益を生まない上に手間だけかかるサービスになってしまいます。ヒーローが持っている夢をファンと共有し、夢を達成するために一丸となって活動を行うのがフィナンシェなのではないでしょうか。
ただし、フィナンシェの仕組みをどのように生かすかは各ヒーロー次第。サービスはまだ公開されたばかりなので、これからのヒーローの活動に注目です。
両サービスの課題
フィナンシェ、タイムバンクともに新しい仕組みであるが故に、共通の課題があります。
それは、主役(ヒーロー・専門家)やユーザーが仕組みを理解できず、サービスから離れてしまうことです。
特に主役がサービスの仕組みやコンセプトを理解できていないと、サービスを活用する意義を見出せませんし、主役のアクティビティが下がればファンもサービスを利用しなくなってしまうのは必然です。
ユーザーとしても、売買の仕組みやサービスの活用方法が分からなければ離れてしまうでしょう。
仕組みやコンセプトを理解してもらい、活用方法を見出してもらうことが両サービスの課題なのではないでしょうか。
まとめ
タイムバンクとフィナンシェの違いを、主に仕組みの面から考えてみました。
タイムバンクは「時間」を軸にした新しい経済を、フィナンシェはブロックチェーンを活用した新しいコミュニティのあり方を提案していて、同じ「トークンエコノミー」という切り口でありながら、二つのサービスの仕組みの違いはとても興味深いものに感じました。
フィナンシェはコミュニティの構築に優れる一方、タイムバンクは時間の消費により経済を回し、収益を得ることができます。
どちらか一方を使うのではなく、両サービスの良いところを上手く活用することで、「個人の時代」に生きる人々がより輝けるのではないでしょうか。
コメントを残す