選べるカタログギフト方式で人気のKDDI株主優待ですが、政府主導の携帯料金値下げにより純利益が圧迫される懸念が生じています。
純利益が下がれば、配当・株主優待に回せる費用も小さくなり、特に企業側の一存で決めることができる株主優待は改悪されやすい傾向にあります。
本記事では、KDDIが株主優待に支払っているコストを計算した上で、改悪になり得る純利益ラインを考察します。
目次
株主優待のコスト
まずはKDDIが株主優待に支払っているコストを計算してみましょう。
優待コスト計算の条件
優待コストを計算する上での条件は、KDDIの公式ホームページから確認できます。
公式ホームページから「所有株数別分布状況」を引用します。
1,000株未満の株主数は20万5,489人、1,000株以上の株主数合計は2万3,386人となっています。
KDDIの株主優待は、1,000株未満で3,000円相当のカタログギフト、1,000株以上で5,000円相当のカタログギフトとなっていますので、優待コストは「カタログギフト額面×株主数」で算出可能です。
ここに、送料などのその他コスト、5年以上保有者(1,000株未満では3,000→5,000円に、1,000株以上では5,000円→10,000円にランクアップ)を考慮し、1人当たりの優待コストとして以下の条件にしたいと思います。
株主優待コストを計算
条件は以上の通り整えましたので、あとは計算するだけです。
1,000株未満の株主に対する優待コスト:20万5,489人×5,000円/人=10億2745万円
1,000株以上の株主に対する優待コスト:2万3,386人×7,000円/人=1億6370万円
→合計11億9115万円
合計は約12億円という結果となりました。
1人当たりの優待コストは仮定ですので、必ずしも正確ではありませんが、低くても10億円、高くて15億円と考えて間違いないでしょう。
この優待費用が出せなくなった場合、株主優待の改悪・廃止の可能性が出てきますが、それはどのような状況なのでしょうか。次の項目で考察していきます。
株主優待を支えるKDDIの純利益
過去3年の純利益推移
株主優待費用12億円に対し、それを支える純利益はどの程度の規模なのでしょうか。
過去3年のIR資料から、純利益を抜き出してみました。
- 2020年3月期:6,397億円
- 2019年3月期:6,176億円
- 2018年3月期:5,725億円
優待費用は純利益の0.3%未満
純利益6,000億円という規模に対し、株主優待費用は多く見積もっても15億円です。
割合としては0.3%未満で、株主優待コストはほとんど負担になっていないということが分かります。
株主優待改悪の可能性は低い
純利益半減でも継続可能
仮にKDDIの純利益が3,000億円に減少したとしても、株主優待の割合は1%未満です。
減配になったとしても、株主優待に手を付ける意味は薄く、優待改悪の可能性は低いでしょう。
しかも、KDDIの純利益は年々増加傾向です。携帯料金値下げ圧力はかかっていますが、高価格帯のみの値下げですので、純利益へのインパクトはそれほど大きくありません。
純利益赤字で廃止・改悪
万が一、KDDIの純利益が赤字転落した場合、ようやく優待の廃止・改悪が見えてきます。
また、業績悪化で株価が下がることで、優待目的での保有が増え、それに応じて優待費用も増加するでしょう。
赤字転落などの大きな業績悪化が起これば、優待額を半分にする、そもそも優待を廃止するなどのコスト削減案が実行されそうです。
総じて改悪の可能性は低い
急転直下の業績悪化が起こらない限り、株主優待は現状のまま継続されるでしょう。
KDDIの企業規模に対して優待費用は非常に低く、優待を廃止することによるコストメリットより、優待廃止による株価へのインパクトの方が大きいからです。
新型コロナで多くの企業が株主優待改悪・廃止に踏み切りましたが、株主優待費用の小ささから、KDDIは例外であると考えて良さそうです。
1,000株未満:1人あたり5,000円
1,000株以上:1人当たり7,000円