空中ディスプレイの市場予測から考える、アスカネットの予想株価




本記事のポイント
  1. 空中ディスプレイの売上が立たず、アスカネットの株価は下落傾向
  2. 長期的には2025年に空中ディスプレイの需要は4倍となり売上増加が期待される
  3. 市場調査会社の需要予測から、2025年の空中ディスプレイ売上高11億6,000万円、株価4,500円を予想

空中ディスプレイで注目されているアスカネットの株価が冴えません。

2021年7月時点の株価は900円前後。2016年以来の安値水準で、投資家からの失望感が株価に表れています。

失望の要因は、空中ディスプレイの売上が立っていない事です。量産化に成功したことで売上増が期待されていましたが、未だサンプル品・テスト品の出荷に止まっており、売上は横ばいです。

一方、研究開発費を積み増したことで利益が低下。投資家離れの主因となっています。

しかし、長期的には空中ディスプレイ市場は急拡大し、それに伴ってアスカネットの売上も増加すると見られます。市場調査会社の試算によると、2025年の空中ディスプレイ市場は4万6,543台に拡大するとされ、5年間で4倍程度の伸び率となる見込みです。

本記事では、アスカネットの現状を確認した上で、空中ディスプレイ需要予測を頼りに予想株価を算出しました。

アスカネットの株価推移

2005年に上場し、2013年から25倍に急騰

アスカネットは2005年4月に東証マザーズに上場しました。

上場当時の株価は1,000円前後。上場後しばらくは話題性に乏しく冴えない株価推移でしたが、2013年に空中ディスプレイ技術が注目されて株価が急騰しました。

空中ディスプレイとは?

ガラスや樹脂などで出来た特殊なパネルを通過させることで、実像の反対側の等距離の空中に実像を結像させる技術。デジタル広告や、タッチレスモニターとしての活用が期待されています。アスカネットが特許を保有(当時の記事:<マザーズ>アスカネットが一時ストップ高 空中結像で特許取得)。

見本市への出展や、量産化の成功などの材料で乱高下を繰り返しつつ、2014年後半には最高値4,420円まで上昇。25倍もの急騰劇を演じました。

2013年までは株価100円台で推移していたが、空中ディスプレイの期待感で急騰し、わずか1年ほどで25倍まで上昇した。

赤字が続き、株価は下落傾向

空中ディスプレイ技術への期待先行で上昇した株価ですが、収益化がうまく行かず、2015年以降は下落が続いています。

失望感が顕著に現れたのが2016年9月です。2016年5~7月だけで空中ディスプレイを扱う「エアリアルイメージング」事業が3600万円の赤字となり、いつまでも収益化しない状況に投資家が失望。株価は1日で8.4%も下落しました。

7年ぶりの安値水準に突入

その後も株価は下落傾向が続き、現在株価は900円前後です。

これは2014年以来、約7年ぶりの安値水準です。空中ディスプレイの量産化の成功で2017年は一旦上昇したものの売上げが伸びず、下落トレンドから抜け出すことはできませんでした。

売上が伸びない要因としては、大口顧客が獲得できていないことが原因です。空中ディスプレイを活用した汎用品が未だ登場しておらず、販売数量が伸ばせていません。ここ4年ほどは売上1億円弱で横ばいです。

今後、大口顧客を獲得できるかが株価を左右することになるでしょう。

過去の株価について注意点

アスカネットは2014年に1対4の株式分割を行なっているため、過去の株価と現在株価には乖離があります。本記事では、当時の株価についても分割後を想定した株価(つまり当時の株価の4分の1の株価)で記載しています。

参考記事:日本経済新聞「<マザーズ>アスカネットが大幅反発 1対4の株式分割を発表

アスカネットの業績推移

増収増益から一転、業績悪化

アスカネットは2020年4月期まで堅調に業績を伸ばしてきました。

アスカネットは空中ディスプレイ以外にも、パーソナルパブリッシングサービス、メモリアルデザインサービスの2事業を展開していて、これらの事業が順調に拡大していました。

しかし、2021年4月期は新型コロナの影響で減収減益に陥り、過去13年間で最低の利益水準まで落ち込みました。

事業セグメントの名称について注意点

2021年度から事業セグメントの名称が変更され、パーソナルパブリッシングサービスはフォトブック事業、メモリアルデザインサービスはフューネラル事業となります。

新型コロナが収益の柱に影響

アスカネットの収益の柱は、写真集を製造・販売するパーソナルパブリッシングサービスと、葬儀社向けに故人の写真を加工・印刷するメモリアルデザインサービスです。

新型コロナの影響で外出が減ったことで、個人が写真撮影をする機会が減り、写真集の販売が落ち込みました。

葬儀についても、大人数が集まって式を行うことが激減し、メモリアルデザインサービスの悪化につながっています。

以下が各事業の直近の業績と、2021年4月期の悪化率です。

パーソナルパブリッシングサービスメモリアルデザインサービス
2020年4月期 売上高39.1億円25.6億円
2020年4月期 セグメント利益9.2億円6.6億円
2021年4月期 売上高31.6億円(−19%)24.9億円(−2.5%)
2021年4月期 セグメント利益4.7億円(−49%)6.2億円(−6.7%)

2022年4月期も利益が回復せず

2022年4月期は、売上げはほぼコロナ前に戻りますが、利益は2021年4月期同様に低水準となることが予想されています。

理由は、空中ディスプレイ事業の研究開発費が嵩むことです。

2020年6月より稼働開始した技術開発センターへの投資や、主力製品「ASKA3Dプレート」の大型化研究が主な費用とされています。

空中ディスプレイ事業への研究開発費とその内訳。合計2億7,000万円の投資を計画している。

この研究開発費が重しとなり、2022年4月期の純利益は2021年4月期の純利益2.25億円よりもさらに低い、2億円が予想されています。

コロナ下よりさらに悪化したことは株価的にも痛手です。

空中ディスプレイ事業の見通し

飛躍が期待される空中ディスプレイ事業

アスカネットの3事業のうち、フォトブック事業とフューネラル事業には急激な成長は見込めません。

5倍、10倍の規模拡大が目指せるのは空中ディスプレイ事業です。競合が少なく、3Dディスプレイの利用が広まれば数十億、数百億円規模の売上が期待できます。

今後のアスカネットの株価を左右するのは空中ディスプレイ事業であると言えるでしょう。

2025年の市場規模予測は「4万6,543台」

空中ディスプレイ事業の市場規模予測は、市場調査を専門に手がける富士経済グループが発表しています。

それによると、ホビー・ゲーム向けの需要が今後大きく伸び、2025年には4万6,543台の市場規模になると予測されています。

2025年売上高「11億6,000万円」を予想

この予測の通りになった場合、アスカネットの売上高はどれくらいになるでしょうか。

主力製品「ASKA3D」の価格が1枚5万円、シェア5割になるとして、以下の通り売上高を予想しました。

ASKA3Dの売上予想(2025年
  • ・2025年空中ディスプレイ世界市場4万6,543台(国内市場3万7,000台)
  • ・ASKA3D 1枚5万円、シェア5割と予想
  • →売上高11億6,000万円

アスカネットは売上高60億円ほどの企業なので、ASKA3Dが11.6億円売れれば、20%ほどの業績拡大となります。

2030年売上高「46億5,000万円」まで拡大の期待

富士経済の予測シナリオを見ると、およそ5年で4倍の市場規模拡大が予測されています。

このペースの拡大が2030年まで続き、かつASKA3Dが1枚5万円、シェア5割を維持しているとすると、売上予想は次のようになります。

ASKA3Dの売上予想(2030年)
  • ・5年で4倍程度の市場規模拡大が続き、2030年世界市場は18万6,000台まで拡大
  • ・ASKA3D 1枚5万円、シェア5割を予想
  • →売上高46億5,000万円

かなり強気の予想に見えますが、新型コロナを機に非接触モニターの需要が高まると考えられ、世界市場18万6,000台はあり得ない数字ではありません。

公共のエレベーターや券売機などに採用されれば数百万台規模も見えてきます。

そうなった場合にASKA3Dが競争力を維持できているかという問題もありますが、期待値として2030年の売上高46億5,000万円というのは十分現実味のある数字だと考えています。

今後の予想株価

理論株価は「137円」、急落のリスクを秘める

予想株価について考える前に、アスカネットの理論株価を計算してみました。

直近の業績予想を計算式に当てはめて計算すると、理論株価は137円という結果になります。現在株価(900円前後)と比較して相当低い数値となりました。

理論株価=3.9%(ROE)÷10%(株主資本コスト)×350円(予想BPS)≒137円

この理論株価には将来の期待値が含まれませんので、参考程度の数値です。

しかし、アスカネットの実力値としては株価100円台が妥当、ということは念頭に置いておく必要があります。事実、空中ディスプレイで急騰する以前は株価140円程度でした。

期待が完全に剥落した場合、この水準の株価まで下落するリスクがあると考えられます。

2025年株価「4,500円」を予想

本題である株価予想に移りましょう。

結論から書きますと、上で予想した空中ディスプレイの売上高11億6,000万円が実現した場合、2025年株価は4,500円に達すると予想しました。

根拠の一つは、2014年当時の最高値です。2014年は見本市への出展や量産化の成功で上場来高値4,420円まで上昇した経緯があり、空中ディスプレイが軌道に乗った場合、この最高値を更新すると考えています。

したがって、4,420円よりわずかに高い4,500円を予想しました。

アスカネットは2014年に空中ディスプレイへの期待で急騰し、4,420円の最高値を付けた。

4,500円という株価は、空中ディスプレイの期待値を考えれば妥当だと考えています。

PERをベースに、妥当性を検証してみます。

株価4,500円で市場平均であるEPS 15倍となるには、1株利益(EPS)300円が必要となります。現在のアスカネットは好調時でEPS 30円ほどですので、単純に業績が10倍となれば株価4,500円が正当化されると言えます。

アスカネットの売上高は60億円ほど。空中ディスプレイの需要開拓に成功すれば、売上高600億円は十分にあり得る収益規模です。

したがって、株価4,500円は許容され得る株価だと思われます。

2022年3月までは株価低迷を予想

ヒットした場合の上昇余地は大きいとはいえ、しばらくは株価低迷が続きそうです。

株価低迷が予想される理由は次の3点です。

株価低迷が続くと予想される3つの理由
  1. 現時点で空中ディスプレイの需要が低い
  2. 将来の需要について、期待される具体的なプロダクトが無い
  3. 先行投資で利益低下

最も大きいのは、空中ディスプレイを活用した具体的なプロダクトが見当たらないことです。

広島銀行が試験的にATMに導入した実績はありますが、本格的な普及には至っていません。ゲームでも、家電でも、エレベータでも、一定数が売れる製品に組み込まれることが重要です。

量産化に成功し、売上げが期待される段階に入ったからこそ、売上が立つまでは株価低迷が続くことになりそうです。

ただし、財形新聞で「アスカネットは調整一巡、空中結像ASKA3Dプレートの中規模ロット受注目指す」と報じられている通り、今後中規模ロットの受注に成功すれば、株価反発の材料となるでしょう。

まとめ

アスカネットの2025年株価について、空中ディスプレイの需要予測に従って考察してみました。

予想の肝となるのは、2025年までに空中ディスプレイ事業が軌道に乗っている事、それによって株価は上場来高値を更新する、という事です。

逆に、2025年までに軌道に乗っていなければ、株価は理論値である137円に向かって下落していくと考えられます。

成功するか、失敗するかで株価が大きく変動するボラティリティの大きい銘柄ですが、上昇余地は大きく、投資妙味のある銘柄なのではないでしょうか。




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