ゆうちょ銀行の株価はなぜ安い?3つの理由と今後の予想株価を解説




ゆうちょ銀行は国内で最大規模の銀行ですが、株価は長期に渡って低迷しています。

2015年に上場した直後は株価1,800円まで上昇したものの、すぐに下落してしまいました。

その後は上場時の売出価格を回復できていません。

株価が安い理由は次の3つです。

株価が安い理由まとめ
  1. 日本郵政による大量売却・・・2023年に10億株を放出、2025年までにさらに3.6億株を放出予定
  2. 1,400円付近に10億株の壁・・・損失を抱えた投資家が戻り待ちの売りを狙っている
  3. アナリストの目標株価が低い・・・目標株価の平均は1,200円台と低い

低迷の背景には、日本政府の存在があります。

郵政民営化を進めるため、日本郵政(ゆうちょ銀行の親会社)を通じてゆうちょ銀行の株式売却を進めており、株式が大量放出されたことで株価が下落したのです。

今後もさらに売却を進める計画が発表されています。

また、上場時に買った個人投資家が損失を抱えているという問題もあります。

彼らが上場時の売出価格(1,450円)に近づくと売ってくるため、1,400円付近まで上昇しても跳ね返されてしまいます。

さらに、ゆうちょ銀行に対する証券アナリストの評価も低く、機関投資家からの買いも伸びません。

本記事では、これらを踏まえてゆうちょ銀行の株価が安い理由について解説します。

上場から7年間、株価は低迷

上場以来の株価チャート

まず、ゆうちょ銀行の上場以来の株価推移を見てみましょう。

ゆうちょ銀行が上場したのは2015年11月4日で、売出価格は1,450円、初値は1,680円でした。

ゆうちょ銀行の上場以来の株価推移。好調だったのは最初の2ヵ月だけで、以降は低迷している。

公募価格割れが続く

上場から2ヶ月間は株価が好調でしたが、2016年1月から急落が始まりました。

公募価格も割れたことで投げ売りが発生し、2016年2月までに1,100円台まで売られました。

その後は一時1,400円台に回復したものの、公募で買った個人の売りが強く、再び下落基調となります。

結局、2020年まで下落トレンドが続き、2020年7月には700円台まで下落しました。

2018年以降は公募価格(1,450円)を回復できておらず、損失を抱えた投資家が多いと予想されます。

(追記)2024年は日本株高の流れによって1,450円以上に回復しました。

株価は割安水準

いくつかの問題を抱えているため、株価指標としては比較的割安です。

以下がゆうちょ銀行の株価指標です。

ゆうちょ銀行の株価指標(2023年11月10日時点、株価1,379円)
  • 予想PER・・・14.7倍
  • 実績PBR・・・0.51倍
  • 配当利回り・・・3.67%

予想PERは平均並みですが、PBRは0.5倍と目安(1倍)の半分程度です。

配当利回りも3%台後半という高水準となっています。

株価が安い理由は?

株価が安い理由は、日本郵政による大量売却のほか、上場時に購入した投資家が戻り待ちの売りで構えていることが挙げられます。

価格帯別出来高だけでも1,400円付近に10億株が存在し、これが強力な壁となっています。

また、アナリストの目標株価が総じて低いという理由もあります。

次の章から、これら株価が安い理由を詳しく解説していきます。

日本郵政による大量売却

10億株が市場に放出

日本郵政による大量売却が株価上昇を阻んでいる最大の要因です。

大量売却は上場時を含め、これまでに2度実施されました。

売出し時期売却株数売却価格
2015年11月(新規上場)4.1億株1,450円
2023年3月10.9億株1,131円

2023年に売却された10.9億株が今後の売り圧力になりそうです。

買った投資家が利益確定に動けば需給が悪化する可能性があります。

売却価格も1,131円と安く、株価が上がれば利益確定で売りに出されていくでしょう。

追加で3.6億株を売却予定

今後、日本郵政はさらにゆうちょ銀行株を売却する予定です。

日本郵政は2025年までにゆうちょ銀行の保有比率を50%未満に下げる方針を打ち出しています。

現在は60%を保有していることから、あと10%を売却する予定です。

株数にして3.6億株が放出されることになります。

需給悪化懸念で上がりにくい

直近の10億株の放出に加え、3.6億株の放出が控えていることが大きな懸念材料です。

流通する株数が増えれば売り注文も増えるため、株価は上がりにくくなります。

投資家はそれを承知のため、ゆうちょ銀行は買いにくい銘柄となっているのです。

今後の株価上昇には、需給悪化を打ち返すくらいの業績、または株主還元が必要とされています。

1,400円付近に10億株の壁

株価1,450円で上場

ゆうちょ銀行は公募価格1,450円で上場しました。

すぐに売却した一部の投資家は利益確定できましたが、上場してすぐに株価が急落したため、多くの投資家が高値で掴まったままだと考えられます。

そのため、1,400円付近では戻り待ちの売りが発生しやすく、株価低迷の一因となっています。

1,400円付近に壁

価格帯別出来高でも1,400円付近に壁が見られます。

以下が上場以来の取引量をグラフ化したものです(チャート左の棒グラフ)。

ゆうちょ銀行の価格帯別出来高(左側棒グラフ)。1,400円付近に合計10億株超の出来高がある。

1,400円付近に大きな出来高があることが分かります。

数量にして10億株で、これらが売り圧力として株価を抑える要因となってしまいます。

また、公募で買われた分は含まれていないため、実際にはさらに多くの株数が1,400円付近で売り圧力となるでしょう。

1,500円到達なら青天井

本記事執筆時点で株価は1,400円に接触しています。

ここを綺麗に上抜けるがどうかが上昇トレンド維持の分水嶺となるでしょう。

1,500円まで抜けることができればその先は青天井となるため、株価上昇に弾みがつきます。

逆に、跳ね返されるようだと1,200~1,400円のレンジ相場に移行しそうです。

証券アナリストの目標株価が低い

コンセンサスは1,200円台

ゆうちょ銀行に対するアナリストの評価はいまいちです。

目標株価が低く、2023年11月10時点の目標株価コンセンサスは1,267円に止まります。

ゆうちょ銀行の目標株価コンセンサスとレーティング。レーティングは3.2、目標株価は1,267円と安い。

株価は約1,400円なので、現在株価は若干割高という判定になります。

そのため、機関投資家などから買われにくい銘柄となっています。

各証券会社の目標株価

各証券会社の目標株価を見てみましょう。

2023年6月以降に公表された投資スタンスと目標株価をまとめました。

証券会社投資スタンス目標株価
(変更前→変更後)
モルガンS中立1250円 → 1420円
シティG強気1200円 → 1700円
みずほ中立1100円 → 1250円
野村中立1080円 → 1350円
GS弱気1090円 → 1140円
BofA中立1120円 → 1200円
岡三中立1110円
大和弱気1100円
JPモルガン中立1100円

中立の投資スタンスが6社で、弱気が2社、強気が1社となっています。

目標株価は1,100~1,200円台が目立ちます。

直近で目標株価引き上げが相次いでいるのは好材料ですが、1,400円以上を妥当と見るアナリストはまだ少数のようです。

今後の予想株価

2025年までの業績予想

今後の予想株価を考える上で、2025年3月期までの業績予想を確認しておきましょう。

以下、四季報より業績予想を引用しました。

決算期売上純利益1株利益
2023/3(実)2兆642億円3,250億円86.8円
2024/32兆1,000億円3,350億円92.6円
2025/32兆500億円3,360億円92.9円

業績は2025年3月期まで横ばいが続く見通しです。

また、配当は1株50円が続きます。

1,200~1,400円のレンジ相場を予想

業績が横ばいなので、節目の1,400円を抜けるのは難しそうです。

そのため、2024年あたりまでは1,200~1,400円のレンジ相場を予想しています。

証券アナリストの目標株価もこのあたりなので、1,200~1,400円のレンジ相場が妥当な推移となります。

1,500円達成の可能性は?

場合によっては1,400円の壁を突破し、1,500円に到達する可能性もあります。

パターンとして考えられるのは次の3つです。

ゆうちょ銀行の株価が上がる3パターン
  • 日本市場全体が大きく浮上する
  • 強力な株主還元(自社株買い・増配)が行われる
  • 業績が予想以上に改善する

日本市場は世界的に注目されており、ゆうちょ銀行が連れ高する可能性があります。

また、PBR1倍回復を東証から要請されていることもあり、自社株買いや増配によって資本効率を上げることも期待されます。

さらに、法規制の緩和などで収益性が上がり、業績が予想以上に改善する可能性もあるでしょう。

日本郵政からの売却が懸念

2024年度には日本郵政から追加の売却案が発表され、株価を押し下げる要因となります。

これを株価に織り込むまでは株価は上がりにくいでしょう。

とはいえ、10%を売却する計画は既に発表されているため、半ば織り込まれているかもしれません。

売却条件が固まれば、悪材料出尽くしとして上昇トレンドの起点になることも期待されます。

ゆうちょ銀行は買いか?

高利回りが魅力

株価上昇で利益を取るのは難しそうですが、高い利回りが魅力です。

配当利回りだけで3.43%、優待利回りは0.41%ありますので、総合利回りは3.84%に達します。

株価安定でこれだけの利回りが取れる銘柄は稀です。

ゆうちょ銀行の総合利回り(2023年11月21日時点)
  • 配当利回り・・・3.43%(1株配当50円÷株価1,456円)
  • 優待利回り・・・0.41%(優待3,000円分÷500株の取得額72.8万円)

総合利回り3.84%

長期保有なら買い

配当と優待が変わらなければ、500株(約73万円)を10年間保有することで28万円の利益になります。

爆益とはいきませんが、株式投資としては十分な利益でしょう。

また、NISAを活用すれば非課税で配当を受け取れます。

したがって、長期投資を前提とするなら、ゆうちょ銀行は買いだと考えています。

業績拡大の期待も

ゆうちょ銀行の業務は郵政民営化法第110条で制限されています。

そのため、資金の多くを利益の薄い国債で運用しており、他の銀行に比べて収益力が見劣りします。

しかし、近年は新規事業も認められてきており、業容拡大が期待できそうです。

業容が拡大して利益が成長し、株価が上昇トレンドに乗る可能性があるでしょう。

その意味でも、ゆうちょ銀行は長期投資前提で保有したいところです。

まとめ

ゆうちょ銀行の株価が安い理由について解説しました。

業績は安定している優良企業ですが、大量売却が控えていることや、高値で売りに構えている投資家が多いことで株価が低迷しています。

業績も成長路線とは言い難く、微妙に買いにくい銘柄だと言えるでしょう。

ただ、需給の問題が株価下落の主因なので、比較的割安で購入することができます。

株主優待も新設されたことから、個人投資家が長期で保有するには良い銘柄でしょう。

また、日本市場全体が盛り上がれば、自然と1,400円台の壁を突破することも期待できます。

需給問題がひと段落する2025年には上場以来高値に到達している可能性もあるでしょう。