NTTの株価が下落した3つの理由と、2027年に株価300円超えを予想する根拠




日本電信電話(NTT)は株式の25分割で買いやすい銘柄になりました。

もともとの最低投資金額は40万円台だったのが、分割後は1万8,000円程度となっており、投資初心者でも買いやすい価格帯です。

しかし、分割後の株価は冴えません。

分割の直前・直後は180円台まで上昇しましたが、その後の株価は横ばいで、2024年4月時点で170円台に留まっています。

株式分割前後の株価チャート。170円台で横ばいが続いている。

株式分割は好材料だったはずですが、なぜ株価は冴えないのでしょうか。

本記事では、NTTの株価が下落してしまった3つの理由について解説します。

また、記事の最後では今後の株価予想についても考察しました。

理由① 政府による株式売却

財源確保案として浮上

日本政府はNTT株の33.3%を保有する大株主です。

しかし、国の財源確保のため、この株式を売却する案が浮上しました。

全て売却すればおよそ5兆円もの財源が確保できます。

財源確保の目的は、国の防衛力強化のための防衛費です。

防衛費増額の4兆円のうち、3兆円は財源が確保できていますが、残り1兆円が確保できていないため、NTT株の売却案が浮上したというわけです。

防衛費増額に必要な4兆円のうち、1兆円分の財源が不足している。出典:NHK

発表翌日から株価急落

政府の株が大量放出される懸念から、報道の直後から株価は急落しました。

売却案が報道されたのが7月25日でしたが、この日だけで株価は169円から163円に急落しています。

その後も下落トレンドとなり、一時は150円台まで売られました。

以下が売却案の発表タイミング付近の株価チャートです。

7月後半に政府の売却案が報道され、株価急落を招いた。

実際の影響は?

懸念先行で株価が下落しましたが、実際の影響はどうなるでしょうか。

もし売却することが決まったとしても株価への影響は限定的だと思われます。

理由は次の2つです。

株価への影響が限定的な理由
  1. 年間2,000億円×25年間 で分割して売却される見通し
  2. 売却先はNTT自身あるいは大手法人などの安定株主で、市場には放出されない

市場に放出されなければ、需給への影響は実質ゼロです。

また、25年間に分けて売却されるので影響はさらに少なくなります。

買い時の可能性が高い

したがって、懸念先行で下落している今は買い時である可能性が高いです。

しかも、長期的には経営の自由度が増して業績拡大の可能性が高まります。

業績が拡大するフェーズに入れば、今の割安な株価指標に見直しが入り、株価数倍も期待できるほどです。

理由② 信用買いの増加

分割を機に信用買いが急増

25分割という異例の分割数によって、NTTは一躍注目銘柄となりました。

しかし、分かりやすい好材料のため信用買いが増加しています。

以下のグラフはNTTの信用残高の推移ですが、分割発表直後から信用買いが急増している様子が分かります。

NTT株の信用買い残高の推移。5月から8月までで3倍以上に増加した。

2023年5月(分割発表)時点では4,000万株程度の信用買いでしたが、8月までに1億5,000万株まで増加しています。

(追記)信用買いはその後も増加し、2024年4月時点で2億株に迫っています。

信用倍率は50倍に

信用買いが急増した結果、信用倍率は上昇しました。

2023年8月時点で50倍を超えています。

下図が信用倍率の推移です。

信用倍率は3か月間で5倍から50倍に上昇し、上値を抑える原因となっている。

(追記)2024年4月時点で信用倍率は120倍まで上昇しています。

しばらく上値の重い展開

積み上がった信用買いは将来的に売り圧力となります。

信用取引の買越し額は240億円です。

つまり、240億円もの売りをこなさないと本格的な株価上昇は難しいでしょう。

すでに信用倍率は収縮に向かっており、最近の株価下落の一因となっています。

信用買いが減るまではしばらく上値の重い展開が続きそうです。

(追記)買い残はさらに増加

2023年末にかけて信用買い残はいったん整理されましたが、2024年に入り再び増加しています。

そのため、引き続き返済売りに注意する必要があるでしょう。

管理人

2024年4月時点で約335億円の買い越しとなっており、今後の売り圧力となります。

今後も増えたり減ったりを繰り返すと思われますので、NTTを買う場合、信用残高がどの程度かチェックすることをおすすめします。

理由③ 「NTT法」による経営の縛り

政府が全株式の3割を握る

NTTは1985年まで国営だったこともあり、今でも日本政府が3割の株式を保有する筆頭株主です。

そのため、基本的に政府の意向に反する経営は行えません。

また、何をするにしても政府との調整が必要なため、意思決定が遅いというデメリットがあります。

この縛りがあるため、NTTの株価は安値にとどまっているのです。

No.大株主名持株比率(%)
1財務大臣32.25
2日本マスタートラスト信託(信託口)10.80
3日本電信電話5.84
4日本カストディ銀行(信託口)4.76
5トヨタ自動車2.23
NTTの大株主TOP5。国の財務大臣が32.25%を保有している。

研究成果は全公開の法律

さらに、NTT法の3条に「研究の推進及びその成果の普及」があります。

この法律により、NTTは研究成果を公開する義務を負っています。

つまり、革新的な技術を開発しても、それを無償で公開しなければならず、独自技術で競争力をつけることができないのです。

また、新技術を公開されるリスクから、NTTとの共同開発に他企業は及び腰です。

義務の固定電話が赤字

NTTは固定電話サービスを提供する義務を負いますが、今や完全にお荷物事業です。

固定電話の利用者はピーク時から80%も減っている一方、通信網は維持しなければなりません。

そのため、年間の赤字額は500億円にも達しています。

赤字事業に経営リソースが割かれる上、今後も赤字額が増加することから、株価の下押し要因となっています。

今後の株価予想

短期的には株価横ばい

政府による売却案が固まるまで株価の急上昇は難しいでしょう。

また、信用買いが整理されるまでにも時間が必要です。

したがって、短期的には株価は横ばいになると予想しています。

具体的には、160~170円を中心としたレンジ相場となるでしょう。

長期では株価上昇を予想

長期的には株価上昇が期待できます。

NTTが公表している中期経営計画によると、2027年までにEBITDA(営業利益+減価償却費)を+20%増加させることを目指します。

中期経営計画によると、2027年度までにEBITDAを+20%増加させることを目指す。出典:新中期経営戦略について

これが実現すれば、1株利益が増加し、株価上昇につながるでしょう。

2027年の予想株価は336円

2027年までに20%増益し、かつPERが20倍まで上昇する前提で予想株価を計算してみます。

まず、2027年度の1株利益は2022年度の1.2倍ですので、16.8円(14円×1.2倍)となります。

2027年度の1株利益=14円(2022年度1株利益)×1.2倍=16.8円

これに20倍をかけることで2027年度の株価を予想できます。

その計算が次の通りです。

2027年度の予想株価

予想株価=16.8円(1株利益)×20倍=336円

前提としたPER20倍ですが、今のPERは10倍程度のため、20倍はやや強気の設定です。

しかし、GAFAに対抗できるようになれば、PER30倍もあり得ます。

そのため、PER20倍でも決して過大評価ではないと考えています。

まとめ

NTTの株価が下落した理由と、今後の株価予想について考察しました。

政府による株式売却という悪材料と、株式分割発表後に増えた信用買いが株価を抑えている要因です。

また、法律による縛りもNTTが買われない原因となっています。

しかし、長期的にはこれらの悪材料は解消されるでしょう。

政府による売却は株価に影響しないよう工夫されるはずですし、信用買いのいずれは解消されます。

法律による縛りも解消する方向で議論が進んでいます。

したがって、長期的には株価上昇となり、2027年あたりには株価300円超えが期待できると考えています。