これまで注目度の低かった大林組ですが、大幅増配を発表して人気化しています。
配当方針をDOE(自己資本配当率)3%から5%に引き上げ、配当額を実質1.7倍に増配しました。
さらに、自己資本の目標額を1兆円と定めたことで、1兆円を超えた分については自社株買いで還元されることが期待されています。
株主還元を一気に拡大したことで株価はストップ高の急騰となりました。
それでも配当利回りは約4%と高く、自社株買いの期待もあることから、株価はさらに上昇すると予想しています。
本記事では、大林組の配当と自社株買いについてまとめた上で、今後の予想株価を考察します。
目次
大林組の株価推移
過去10年の株価チャート
まずはこれまでの株価推移を振り返りましょう。
以下が過去10年間の株価チャートです。
日経平均株価には採用されているものの、出来高は比較的少ない銘柄です。
そのため、値動きも少なく、これまで800~1,200円のレンジ相場となっていました。
直近では1,800円台まで一気に上昇しています。
株価は長期低迷
大林組の株価は2017年に1,600円をつけてから低迷していました。
リニア関連の談合事件や、働き方改革による労務費増加が悪材料となりました。
また、新型コロナ以降は人件費・原材料費高騰による利益率低下が問題となっています。
その結果、株価は1,000円前後で低迷しました。
資本政策見直しで急騰
転機となったのは資本政策の見直しです。
細かい内容は後述しますが、見直しによって配当額が急増し、さらに自社株買いの可能性が高まりました。
スーパーゼネコンとしては異例の株主還元拡大です。
これが株式市場に好感され、発表翌日はストップ高になるほどの急騰ぶりとなりました。
その後の株価も底堅く推移しています。
大林組IR「資本政策の見直しについて」
資本政策見直しの中身
株主還元の方針を変更
大林組の株価は株主還元の方針を変更したことで急騰しました。
では、具体的にどのように変更されたのでしょうか。
変更内容は次の3点にまとめることができます。
- 配当目安・・・自己資本配当率(DOE)3%から5%に引き上げ
- 自己資本・・・健全性指標を、自己資本比率40%から1兆円に変更
- 自己資本利益率(ROE)・・・”中期的に8%以上”から、”2026年までに10%以上”に変更
いずれも投資家目線でポジティブな内容です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
配当額が1.7倍に
即効性がある変更点は、配当目安をDOE3%から5%に引き上げたことです。
大林組の自己資本はおよそ1兆円なので、従来方針では配当額300億円(1兆円の3%)だったのが、新方針では500億円に拡大します。
つまり、配当額がおよそ1.7倍に増加するということです。
その結果、2024年3月期の期末配当が1株21円から51円に拡大され、配当利回りが急上昇しました。
自己資本1兆円の超過分が株主還元
さらに、自己資本の健全性指標が1兆円と決め打ちになったことも還元拡大につながります。
つまり、1兆円を超過した分が自社株買いに充てられる可能性が高まったわけです。
2024年3月期の場合、期末での自己資本額が1兆697億円になると予想されていますので、余剰の697億円が自社株買いに回されることが期待されています。
来年以降も、自己資本の余剰分が自社株買いに回され、継続的な株価上昇につながることが期待されます。
ROE10%達成なら株価押し上げ効果
ROE10%というのは、自己資本1兆円を維持しつつ、純利益を1,000億円に拡大することを意味します。
直近の純利益は590億円なので、1,000億円まで拡大できれば約1.7倍です。
株価は基本的に純利益に比例するため、+70%程度の株価上昇が見込めます。
また、ROEが高いほど株式評価が高まりますので、増益率を上回る株価上昇となる可能性もあります。
今後の配当見通し
配当額は年間500億円
自己資本は1兆円が目安ですので、自己資本配当率(DOE)5%のもとでは、500億円が配当に回されます。
配当総額=1兆円(自己資本)×5%(DOE)=500億円
この500億円を発行済株式数で割った数値が、1株配当となります。
現在の発行済株式数で計算した結果がこちらです。
1株配当=500億円(配当総額)÷7億1,696万株=69.7円
これは2024年3月期の配当予想(72円)とほぼ一致します。
徐々に増配の見通し
配当総額は500億円前後で一定となりますが、自社株買いによって発行済株式数は減少していくでしょう。
したがって、配当は徐々に増配されていく見通しです。
年間200億円の自社株買いが実施されるとすると、発行済株式数は毎年1.5%ほど減少します。
株式数が減少すれば、それだけ1株あたりの配当が増えるというわけです。
業績に応じて自社株買い
自社株買いの金額は業績に依存することになります。
なぜなら、純利益から配当額500億円を差し引いた金額が自社株買い余力となるためです。
仮に1,000億円の純利益であれば、最大500億円規模の自社株買いが期待できます。
逆に、純利益が500億円以下であれば、その年の自社株買いは見送られることになります。
自社株買いが継続して実施されるかは業績次第ですが、今後は増収増益が予想されており、毎年自社株買いが行われる可能性が高いでしょう。
今後の株価予想
高配当株として人気化
大幅増配によって配当利回りは4%程度まで上昇しました。
業績安定かつ配当利回り4%の銘柄は希少なので、高配当株として人気化しそうです。
実際、増配によってストップ高となりましたが、その後も反落せずに底堅く推移しています。
新NISAで個人投資家層が厚くなっていることも追い風です。
自社株買いでさらに上昇か
今後は自社株買いが実施され、株価を下支えすることが予想されます。
自社株買いは現在値より下の指値注文が基本なので、株価を積極的に上昇させることはありませんが、下がりにくくする効果はあります。
また、下がりにくくなることを好感した投資家からの買いも期待できます。
したがって、自社株買いが株価上昇の支援材料となるでしょう。
株価2,000円突破も妥当
株主還元の拡大によって株価2,000円も見えてきました。
2,000円まで上昇しても、配当利回りは3.6%と高水準です。
また、株価指標面でもPER20倍ほどですので、割高感はありません。
業績好調が続けば、2,000円からさらに上が目指せると考えています。
中長期では株価2,800円も
大林組は2026年度までにROE10%を掲げます。
言い換えると、2026年度には純利益1,000億円を目指すということです。
その場合、1株利益は140円に拡大し、PERを20倍とすれば株価は2,800円となります。
現在株価(2024年3月19日時点)は1,800円なので、およそ+1,000円の株価上昇が見込めます。
つまり、100株の保有でも、中長期なら10万円以上の売却益が狙えるでしょう。
高配当かつ株価上昇が狙えることが大きな魅力です。
まとめ
大林組の株主還元拡大についてと、今後の株価見通しについて解説しました。
高配当を選好する個人投資家が増えている中、大幅増配に踏み切ったことは株価に大きなプラスです。
さらに、自社株買いが発表されれば株価下落の懸念が小さくなり、より買いやすい銘柄になるでしょう。
中長期では高配当を獲得しつつ株価上昇が狙える銘柄だと考えています。
詳細は後述していますが、業績目標を達成した場合の株価2,800円までの上昇が見込めます。