東レは炭素繊維で世界首位の、日本が誇る化学メーカーです。
しかし、ここ5年間は株価が冴えません。
2017年末の株価は1,200円に達していましたが、2023年1月時点の株価は700円台です。
また、新型コロナが発生した2020年には一時400円を割り込み、リーマンショック以来の安値を付けました。
本記事では、東レの株価が下落した理由について解説します。
本記事を読むことで、東レの株価がどのような要因で変動するのかを知ることができるでしょう。
- 航空需要の減少・・・炭素繊維の需要が減少
- 暖冬・・・ヒートテックなどの衣類向け繊維が不調
- 樹脂製品の検査不正・・・ガバナンス(企業統治)の緩みが露呈
目次
理由① 航空需要の減少
ボーイング787へ炭素繊維を独占供給
東レは航空産業と深いつながりがあります。
2006年、ボーイング787の炭素繊維を独占供給する契約を結びました。
炭素繊維は機体重量の50%を占める主要材料です。
ボーイング787はこれまでに1,000機が生産され、東レは独占供給契約で業績を大きく伸ばしました。
その反面、航空機への需要が東レの株価に影響するようになりました。
新型コロナで旅行が減少
新型コロナにより旅行需要は大きく減り、飛行機が飛ぶ機会も減少しました。
それにより、2020年以降は飛行機の生産も低調です。
ボーイングは787の生産を大幅に減らすことを決め、従来の月間14機から月間7機に引き下げています。
それにより、東レの炭素繊維複合材料事業は大幅に悪化。
2020年度は純利益-75億円の赤字に転落しました。
2020年中頃には米子会社でレイオフを実施し、25%もの従業員を解雇しています。
株価は700円→400円に
新型コロナにより航空需要が消滅する恐れが出たため、2020年3月は株価が急落しました。
2020年1月までは750円あった株価が、3月中旬には400円まで下落。
5月に発表された決算は予想通り悪く、その後の株価は低迷しました。
航空産業の復活がカギ
東レにとって、炭素繊維事業は重要な成長セグメントです。
炭素繊維がコケれば東レは成長機会を失い、株価も低迷するでしょう。
したがって、航空産業の復活が東レの復活の鍵を握ります。
理由② 暖冬
ユニクロと協業関係
東レはユニクロに高機能繊維を供給しています。
代表的なのはヒートテックですが、他にも、フリースやウルトラライトダウン、エアリズムなど、数々のヒット商品を陰で支えているのが東レです。
したがって、ユニクロの売れ行きが東レの業績に影響を与えます。
暖冬で売上減少
東レが関わっている製品は冬物が多く、冬の気温が売れ行きを左右します。
しかし、2019年〜2020年の冬、2020年〜2021年の冬は記録的な暖冬となりました。
寒くなければ冬物衣類の売上は落ちるのがアパレル業界の常識で、実際、2019年〜2020年の冬は5.3%もの売上減少となったようです。
新型コロナと重なったためあまり注目されませんでしたが、東レの株価が下がった一因です。
暖冬による連想売りに注意
ユニクロと東レの協業は有名なので、ユニクロが不調なら東レにも売りが波及します。
実際、年間2,000億円以上もの取引額に達しているようです。
つまり、暖冬なら東レの株価に対する下落圧力が強まることになるでしょう。
理由③ 樹脂製品の検査不正
難燃検査でサンプルのすり替え
近年は企業ぐるみの不正で株価が急落する例が多いですが、東レも例外ではありません。
2022年1月31日、販売している樹脂製品の検査に不正があったことを発表しました。
不正があったのは、樹脂の難燃性を測る検査で、本来の製品とは異なる検査対策のサンプルを作成して検査を受けていました。
本来の製品で再試験した結果、難燃性能が規格に達していなかったようです。
株価は10%下落
不正検査の発表後、株価は720円から650円に下落しました。
ただ、業績への影響は軽微でしたので、すぐに下げ止まっています。
今後も不正発覚の懸念
一度不正が明らかになった企業は、二度目、三度目がある恐れがあります。
実際、三菱電機や日野自動車は不正発覚が複数回にわたり、株価が暴落しました。
東レも同じでないとは言い切れないので、今後も不正発覚を警戒する必要がありそうです。
ちなみに、2020年12月には中国の輸出未許可の企業に炭素繊維が流出した事案がありました。
やはり、ガバナンス面で緩みが生じているようです。
まとめ
東レの株価が下落した3つの理由を解説しました。
繊維という材料を扱っているため、他社への供給が売り上げのメインなので、客先の業績が悪化すれば東レも連れ安になってしまいます。
新型コロナではボーイングに連れ安し、暖冬ではファーストリテイリング(ユニクロ)に連れ安しました。
しかし、長期的には株価上昇を期待しています。
炭素繊維は軽くて丈夫なため、航空機などのエネルギー効率が良くなり、脱炭素につながります。
そのため、今後世界的に需要が高まり、東レの業績も拡大していくでしょう。
ガバナンスの緩みは気になるものの、長期投資としては魅力的な銘柄だと考えています。