日本国内にインフレの波が来ており、不動産株に追い風となっています。
インフレ下では不動産価格と賃料が上昇するため業績が拡大するのが通常です。
そのため、今後の業績拡大を見越して不動産銘柄が買われています。
過去にもインフレ期待が高まる局面がありましたが、不動産関連株は2倍や3倍という上昇率となったため、今回のインフレ局面でも株価数倍が狙えるでしょう。
特に、今回は賃上げを伴うインフレであることから、デフレを脱却し、インフレが長期化するとの見方があります。
もしそうなれば、不動産株は上場来高値を突破して青天井の領域に入ることが期待されます。
本記事では、インフレ定着によって三菱地所の株価がどこまで上昇するかを考察します。
目次
インフレ定着で株価上昇
30年ぶりのインフレ局面に突入
日本の物価上昇率は2022年に+2.5%を記録し、続く2023年には+3.2%に拡大しました。
これだけの物価上昇率が2年連続で続くのは1991年以来のことです。
2022年はコストプッシュ型(※)のインフレでしたが、徐々に賃金上昇が進み、健全なディマンドプルインフレに移行しています。
※ 主に原油価格上昇によってコストが上がり、コスト上昇分を企業が価格転嫁したことで物価が上昇した、
賃金上昇と値上げの好循環が続くことで、インフレ長期化が期待され始めたのが今の状況です。
三菱地所は年初から40%上昇
不動産株は長期のデフレに苦しめられて来ましたが、ついにデフレ脱却という局面になり、株価は急騰しています。
2024年初において株価2,000円前後だったのが、3月末には2,800円を突破しました。
わずか3ヶ月で+40%という上昇率です。
株価急騰でも割高感は無し
直近の上昇を見ると反落が怖いように思いますが、株価指標の面では割高感はありません。
2024年4月1日時点の株価指標は、PER21.7倍、PBR1.63倍となっています。
不動産銘柄は収益が安定しているため比較的高いPERも許容されます。
その意味で、PER20倍台前半は中立的な水準です。
また、過去のインフレ局面ではPER50倍を超えていたこともあり、インフレ定着が期待される今、PER21倍は割安という見方もできます。
過去のインフレ局面では「株価2倍」
過去のインフレでは2~3倍に上昇
これまでインフレ局面では、三菱地所の株価はどれほど上昇したのでしょうか。
結論から言いますと、2006~2008年のインフレでは約3倍、2013~2015年のインフレでは約2倍に上昇しました。
インフレ期間 | 上昇開始時の株価 | ピークの株価 | 上昇率 |
---|---|---|---|
2006~2008年 | 1,300円 | 4,000円 | 約3倍 |
2013~2015年 | 1,600円 | 3,300円 | 約2倍 |
2006~2008年のインフレ率と株価上昇率
まず、2006~2008年のインフレ局面について見てみましょう。
当時は7年連続で物価下落が続いていましたが、2006年に+0.26%の物価上昇に転じ、2007年は+0.05%、2008年は+1.38%と上昇が続きました。
年 | インフレ率 (%) |
---|---|
2006年 | +0.26 |
2007年 | +0.05 |
2008年 | +1.38 |
それに対し、株価は物価上昇の兆しが出た2005年中頃から上昇し始めました。
上昇前は1,300円だったのが、2007年のピーク時には一時4,000円を突破しています。
その後は物価下落の兆しが出たため反落しましたが、インフレ期間の株価上昇率は3倍にも達しました。
2013~2015年のインフレ率と株価上昇率
続けて、2013~2015年のインフレ局面を見てみましょう。
2009年のリーマンショック以降、日本はデフレに苦しみました。
しかし、2013年に物価上昇率がプラスに転じ、2014年は+2.76と23年ぶりのインフレ率を記録。
主に、日銀の黒田総裁による金融緩和が要因です。
これにより、三菱地所の株価は1,600円から3,300円付近まで上昇し、上昇率は2倍超となりました。
株価5,000円突破の可能性
2倍以上の株価上昇を予想
過去のインフレ局面では株価が2倍以上となった実績がありますので、今回のインフレでも株価2倍以上となるのが妥当です。
しかも、今回は賃上げを伴う息の長いインフレになる期待があります。
長期的なインフレとなり、業績拡大も伴えば、株価3倍や4倍も目指せる展開となるでしょう。
ここでは、過去のインフレ局面の株価指標を参考に、株価がどこまで上昇するかを予想します。
2025年予想株価は5,280円
株価予想の結論としては、株価5,000円以上が目指せると予想しています。
これは、2024年の年初(株価2,000円)から2.5倍という水準です。
過去のインフレ局面の上昇率から考えても妥当な範囲内だと言えます。
5,000円以上という株価は、1株利益132円、PER40倍を前提に計算しました。
予想株価=132円(2024年度1株利益)×40倍(PER)=5,280円
この予想の根拠として、今後の業績予想とPERについて説明します。
前提とした業績予想
今後の業績予想については四季報を参照しました。
以下が2025年3月期までの業績予想です。
期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | 1株益(円) |
---|---|---|---|---|
2023年3月期 | 1,377,827 | 296,702 | 165,343 | 125.5 |
2024年3月期 | 1,469,000 | 267,000 | 166,000 | 131.1 |
2025年3月期 | 1,580,000 | 285,000 | 167,000 | 131.9 |
これによると、1株利益はおよそ132円まで拡大します。
この業績予想には不動産価格の上昇が織り込まれていないため、上振れる可能性があります。
前提としたPER
次に適用するPERについてですが、過去のインフレ局面のデータを参考にしました。
まず、2007年のピーク時のPERは56.3倍でした(株価4,000円÷1株利益71円)。
→PER56.3倍
次に、2013年のピーク時のPERは72倍でした(株価3,300円÷1株利益46円)。
→PER72倍
これらのデータから若干ディスカウントして、PER40倍くらいが妥当です。
以上から、1株利益132円にPER40倍を掛け、予想株価は5,280円と計算できます。
最大7,500円に到達の可能性も
最大限に強気で考えると、株価7,500円という予想もできます。
不動産価格上昇により1株利益が150円に拡大し、PERが50倍に高まることを前提にした場合です。
予想株価=150円(1株利益)×50倍(PER)=7,500円
人気化して需給が偏れば、勢い7,000円超えまで上昇してもおかしくありません。
また、インフレ長期化で業績が拡大していけば、ゆくゆくは株価7,000円も妥当となってくるでしょう。
まとめ
インフレ定着を前提に三菱地所の株価を予想しました。
インフレ局面では不動産銘柄が注目される傾向にあり、過去には2倍や3倍といった上昇率を記録しています。
今回のインフレでも、順当にいけば株価5,000円突破は目指せるでしょう。
また、長期的な視野で考えれば、株価7,000円、10,000円という水準まで上がる可能性もあります。
直近で4割上昇しているので一時的な反落は怖いものの、長期保有を前提とすればかなりの売却益が狙えると考えています。