VTuberビジネス会社として初の上場を果たしたANYCOLOR(エニーカラー)ですが、株価は乱高下が続いています。
上場して数日で株価9,000円を突破したものの、その後は急落が続き、現在の株価水準は6,000円前後です。
急落の背景には個人投資家の不安が透けて見えます。
過去2年間こそ凄まじい成長率ですが、成長を前提に株価が形成されており、成長鈍化によって株価が急落する危険があるためです。
本記事では、直近の業績と2024年までの業績予想を踏まえ、今後の株価がどうなるかについて考察しました。
上場以降の株価推移
2022年6月8日に上場
ANYCOLOR(エニーカラー)が東証グロース市場に上場したのは2022年6月8日のことです。
公募価格1,530円に対し、取引初日から買い注文が殺到。
初日は取引が成立しないほどの人気ぶりでした。
上場2日目になってようやく、公募価格の3.1倍となる4,810円で初値がつきました。
株価はその後も急騰を続け、6月16日には9,200円まで急騰しました。
上場直後は急騰も、その後反落
上場直後こそ急騰したものの、その後は利益確定売りに押される展開に。
9,200円の高値を付けた翌日は7,320円のストップ安まで急落し、その後も反転の手がかりが無く、株価は下落トレンド入りとなりました。
多くの個人投資家から注目を集めただけに、高値で買った個人投資家が損失を抱えて売り手に回り、上昇しづらい状況に陥っているようです。
株価は割高か?割安か?
7月4日時点の株価は5,620円ですが、この株価でのPER(株価収益率)は44.3倍となります。
44.3倍というPERは一般的に割高水準です。
この割高さを根拠に、ANYCOLORを買うのは危険、という見方もあります。
しかし、高い成長率を維持するのであれば高いPERも正当化されるのが株式市場です。
成長期待の度合いによっては50倍、70倍、時に100倍といったPERもあり得ますので、業績次第では44.3倍のPERは割安と言えるかもしれません。
では、次の項目でANYCOLORの業績を確認してみましょう。
これまでの業績推移
2年間で売上4倍、利益95倍
ANYCOLORのこれまでの業績を振り返ってみましょう。
上場したのは2022年6月ですが、データは2020年4月期からあります。
2020年4月期は売上高35億円、営業利益4,400万円でしたが、2年間で急成長を遂げ、2022年4月期は売上高142億円、営業利益42億円に拡大しました。
直近2年間の成長率は売上高が4倍、営業利益が95倍という凄まじい成長率です。
所属VTuberは徐々に増加
重要なKPI(重要指標)の一つに、所属VTuber数があります。
ANYCOLORのコアは所属VTuberの活動ですので、その数が業績を伸ばす上で重要になってきます。
以下のグラフが所属VTuber数の推移です。
4半期(3ヵ月)ごとの増加数は数人~10人程度となっています。
業績ほどの伸びでは無いため、現在は数を増やすことにはこだわらず、一人一人の質を高めている段階だと言えるでしょう。
YouTube再生時間はやや横ばい
収益に直結するYouTube再生時間は、増加率がやや衰えているように見えます。
特に、日本国内の再生時間は2022年4月期2Qを頂点に減少しています。
英語圏を対象としたNIJISANJI ENがそれをカバーし、全体としては緩やかに成長しているという状況です。
ユーザー数は顕著な伸び
ANYCOLORのユーザー数を表すANYCOLOR ID数は高い増加率を維持しています。
ユーザー数の伸びが業績拡大を支えているようです。
四半期ごとに+7万~10万の増加数を保っています。
ユーザー登録自体は無料ですが、新規登録したユーザーが有料サービスやグッズを購入することで、売上増加に寄与していることが伺えます。
販売プラットフォームとして「にじさんじオフィシャルストア」を展開しています。
2024年までの業績見通し
業績見通し詳細
2023年、2024年までの業績予想を四季報オンラインから引用しました。
比較として2022年4月期の実績値も記載しています。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2022年4月期(実績) | 142億円 | 42億円 | 28億円 |
2023年4月期 | 210億円 | 65億円 | 46億円 |
2024年4月期 | 250億円 | 80億円 | 54億円 |
営業利益は倍増予想
2024年4月期の営業利益は80億円まで拡大する見通しが示されています。
2022年4月期の実績が42億円でしたので、2年間でほぼ倍増の水準です。
驚異的な成長スピードですね。
EPSは180円まで成長
株価算出の基となる1株利益(EPS)はどうでしょうか。
以下の表が、純利益予想を1株利益(EPS)に換算した表です。
決算期 | EPS(1株利益) |
---|---|
2022年4月期(実績) | 93円 |
2023年4月期 | 153円 |
2024年4月期 | 180円 |
2022年4月期のEPSは93円でしたが、利益倍増に伴い、2024年4月期は180円まで増加する予想です。
180円というEPSに何倍のPERを適用するかによって株価予想を立てることができます。
仮にPER60倍が許容されるとすれば、株価10,000円超えもあり得るでしょう。
今後の株価予想
業績予想を踏まえると、株価6,000円は割安
2022年7月時点の株価は6,000円前後で推移していますが、この株価は割安だと言えそうです。
2024年4月期の予想EPS180円を前提にすると、予想PERはおよそ33倍。
PER30倍以上は一般的に割高と言われるものの、急成長のグロース銘柄としては割安だと考えらえれます。
したがって、株価6,000円前後は買い時の水準だと言えそうです。
株価9,000円は射程圏内
株価の上昇目途は9,000円くらいだと考えています。
2024年4月期の予想EPSである180円に、PER50倍を適用して算出しました。
東証グロース市場において急成長を維持している銘柄は、低くてもPER40倍を超えています。
他銘柄の株価水準を踏まえれば、ANYCOLORにPER50倍を適用するのは妥当でしょう。
したがって、180円(予想EPS)×50倍(予想PER)=9,000円 は射程圏内だと考えられます。
10,000円突破の可能性も
成長のポテンシャルとしては株価10,000円を超えてもおかしくありません。
今後2年間で利益が倍増する見通しですが、その成長率が2026年まで続けば、EPSは360円に達します。
その場合、PERを30倍と低めに見ても、株価は10,000円を超えることになります。
この成長率を維持するのは容易ではありませんが、今後成長が見込まれるメタバース、ブロックチェーン、Web3.0といったトレンドはANYCOLORSにとって追い風となります。
今後2~3年で株価が10,000円を超えても不思議はありません。
懸念材料
所属VTuberが少数精鋭
ANYCOLORの最大の懸念材料は、所属VTuberが少数精鋭である点です。
2022年4月末時点の所属VTuber数は162名。
その中でも数名のみが登録者数100万人を突破しており、特定の配信者に依存している状態です。
ただし、キャラクターのIP(知的財産)はANYCOLORが保有するのが一般的なため、YouTuberで見られたような一斉離脱の可能性は低いという安心材料もあります。
Googleへの依存度が大きい
ANYCOLORSは5つの事業から成り立っていますが、その中の1つである「ライブストリーミング」はほぼGoogleからの収益です。
具体的には、再生回数に応じた広告収入と、YouTubeの有料サービス「YouTubeチャンネル」のサブスクリプション収入です。
これがどれくらいの割合かというと、売上げ全体の最大2割ほど。
YouTuberビズネスを行うUUUM(3990)ほどの依存度ではありませんが、売上の2割というのは、1社に依存する割合としてはかなり大きいと言えます。
YouTube側が広告費に関する規約を変更した場合、収益が大きく減少するリスクを孕みます。
ヒットの再現性が低い
人気VTuberを多く抱えるものの、ヒットする必勝法は見つかっていないのが現状です。
必勝法が不明という事はヒットの再現性が低いという事であり、事業の不確実性が高い事とイコールです。
ANYCOLORの経営陣も業績の見通しが難しいようで、2023年4月期の業績予想は一定のレンジで公表されています。
事業の不確実性については決算発表資料で次のように記載されています。
新規デビューを含める当社VTuberグループに対するファンの方々からの熱量を定量的に予想することは困難であること、及び、特に営業市場におけるVTuber市場はまだ黎明期であることを総合的に考慮の上で当社業績予想については一定のレンジにおいて予想を策定。
引用:2022年4月期 通期決算説明資料
ヒットに恵まれないタイミングが発生すれば成長がストップする恐れがあります。
株価は成長前提で高値を維持しているため、四半期決算で成長鈍化が見られれば、株価が急落することになるでしょう。
まとめ
VTuber関連として唯一の銘柄、ANYCOLORについて考察しました。
直近で高い成長率を見せており、今後の急成長が期待できる希少な銘柄です。
今後の成長を前提にするなら、株価6,000円割れは安い水準だと言えるでしょう。
しかし、所属VTuberのタレント性に依存している事や、新人の掘り起こしの成否が成長に直結するなど、不確実性を多分に孕みます。
一定のリスクを覚悟しつつ、大きく下げたタイミングで買っておきたい銘柄ですね、
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