エニーカラーが急落した2つの理由と、急落後の株価が割安である理由




  • 2023年7月30日:2分割後の株価に更新
  • 2023年12月26日:2023年度上期決算での急落について追記
  • 2024年1月15日:株価3,000円台前半は買い時と予想の章を追記
  • 2024年3月18日:3Q決算後の株価急落について追記

2024年3月15日以降の急落についてはこちらに追記しました。

株価6,900円まで上昇したエニーカラーですが、現在は半値の3,200円まで急落しています。

大きな理由の1つは、100万株が大株主から売却されたことです。

上場後のロックアップ解除直後だけあって、既存株主の「逃げ売り」のように見られてしまいました。

さらに、業績も期待ほどの成長とはならず、2022年12月の決算発表翌日は1,000円もの下落幅を記録しました。

2つの悪材料によって株価は半値に落ち込んでいます。

以降も株価は低迷し、2024年1月時点でも急落前の株価を回復できていません。

本記事では、エニーカラーが急落した2つの理由を解説し、急落後の株価が割安かどうかを調べました。

エニーカラーの株価推移。立会外分売と上方修正後は一気に3,000円以下まで急落した。

立会外分売で株価急落

100万株の売りで30%下落

エニーカラーの株価は立会外分売をきっかけに急落しました。

売りに出された株数は100万株です。

売却前の流通株数が134万株でしたので、売出によって流通株数が2倍近くに増え、需給が急悪化します。

また、1日の出来高平均は30万株くらいなので、3日分もの出来高に相当します。

今後もさらに売りに出される懸念も残り、株価急落につながってしまいました。

現在は3,400円前後で落ち着いていますが、発表前の株価からは3割ほど安い水準です。

立会外分売とは?

立会外分売とは、大株主が大量の株式をまとめて売却できる仕組みです。

市場で売却すると、需給の均衡が崩れて株価が急落してしまいます。

それに対し、立会外分売を使うと、需給に影響せず大量の株を取引することができるというメリットがあります。

今回の立会外分売は、上場後に大株主の売りが制限される「ロックアップ」解除後すぐに起こりました。

立会外分売の予定は各証券会社の取引画面で見ることができる(画像はマネックス証券)。

売値は約5,000円

100万株の売却が明らかになったのは2022年12月2日(金)で、その日の終値は5,260円でした。

売却価格は4,997円でしたので、約5%の割引です。

売却が成立した株数は不明ですが、既に下落トレンドでしたので、5%の割引では大した数量は売れてないと思われます。

実際、立会外分売に参加した人は損失を受けています。

2022年度業績が期待外れで、さらに急落

待望の上方修正が不発

エニーカラーの業績予想は保守的だったため、予想の上方修正が期待されていました。

上方修正は好材料なので基本的に株価が上昇します。

そして、2022年12月15日の上期決算と同時に、待望の上方修正が発表されました。

上方修正後の業績は、売上が225億円、純利益が53億円です。

純利益は前期比でほぼ倍となり、一見、良い上方修正のように見えます。

しかし、市場の期待はさらに上でした。

株価には市場の期待値が織り込まれていましたが、期待外れの上方修正だったため、反動で株価は急落しました。

市場の期待値に1割届かず

市場の期待値であるQUICKコンセンサスでは、売上予想が247.4億円、純利益予想が58.4億円となっています。

つまり、市場の期待値に1割ほど届きませんでした。

以下が上方修正とQUICKコンセンサスの対比です。

 上方修正後の会社予想QUICKコンセンサス
売上高225億円247.4億円
営業利益77億円83億円
経常利益77億円83億円
当期利益53億円58.4億円
一株利益(円)176.7円194.6円

株価は約500円下落

上方修正の発表翌日は3,730円から3,235円に急落しました。

下落幅は500円で、100株の投資だけでも-5万円もの損失です。

ただ、初値(2,405円)を下値と考えれば、下落余地はあまり残されていません。

2023年度上期決算でも急落

50%増益の好決算

2023年12月14日に、2023年度の上期決算が発表されました。

内容は、売上が前年比+29.4%、営業利益が+50.4%、純利益が+50.6%好調な数字です。

以下、業績サマリーから売上高・営業利益・純利益を抜粋しました。

出典:2024年4月期 第2四半期決算説明資料
出典:2024年4月期 第2四半期決算説明資料
出典:2024年4月期 第2四半期決算説明資料

しかし、市場の期待はさらに上だったようです。

1Q決算は+91%の増益となっており、2Q決算でも同程度の成長率が期待されていました。

しかし、実際には+50%の増益に鈍化したことから、投資家心理の悪化を招いています。

アナリストの営業利益予想は77億円でしたが、実際には64億円でしたので、この差が失望の原因となっています。

株価は500円の急落

失望決算になったことで株価は急落しました。

決算前は株価3,700円前後でしたが、決算発表翌日は一気に500円下落し、3,200円前後まで落ち込みました。

その後も戻りは限定的です。

決算翌日の12月15日は窓を空けて急落した。

ただし、12月に大規模イベントが開催されることから、3Q以降の業績も好調の見通しです。

そのため、株価が回復する可能性は高いと考えています。

(追記)機関投資家からの売り仕掛けで急落

3Q決算後の急落劇

2024年3月14日に第3四半期決算が発表されましたが、翌日は一時ストップ安の急落となりました。

決算前は株価3,140円でしたが、翌日はストップ安の2,440円まで売り込まれています。

決算発表翌日は3,140円から2,440円に急落した。

一体、なぜこれほどの急落となったのでしょうか。

表面的な理由は「決算が物足りない」

表面的な理由としては、決算内容が物足りないというコメントがあります。

東洋証券の安田秀樹シニアアナリストは「海外向けが想定を下回っており、このままの推移では市場の高い期待に応えることは難しそうだ」とみていた。

引用:日本経済新聞「エニーカラー株が一時ストップ安 決算「物足りない」

確かに、コンセンサス予想の営業利益が141億円であるのに対し、エニーカラーの見通しは127億円と、コンセンサスに届いていません。

そのため、失望売りが出るのは一見妥当です。

しかし、決算前の予想PERは20倍と、グロース株としては割安水準にありました。

したがって、そもそも成長期待が株価に織り込まれていなかったと考えられ、失望売りというのはこじつけ感があります。

実際は+35%の増益で好調

実際のところ、決算はとてもストップ安になるような内容ではありません。

以下が営業利益の進捗を図示したものです。

3Q累計での増益率は前年比+20%、通期では+35%を見込む。出典:2024年4月期 第3四半期決算説明資料

3Q時点ですでに前年通期の営業利益に迫っており、通期では+35%程度の増益となる確度が高まっています。

進捗率は71.2%と低いですが、4Qに大型イベントが集中していることが理由として説明されており、懸念材料としては小さいものです。

株価急落の真の理由

急落の本当の理由は、モルガンスタンレーによる売り仕掛けであると考えられます。

というのも、決算前にモルガンスタンレーは空売りを急増させていました。

決算前日と当日に空売りを増加させ、191万株(発行済株式数の3%相当)の空売り残高で3Q決算を迎えています。

モルガンスタンレーは決算直前にも関わらず空売りを増加させた。出典:karauri.net

決算後は理由をつけて売り崩し、この空売りを買い戻すのが狙いでしょう。

個人投資家の信用買いが狙われた

空売りで狙われたのは個人投資家の信用残高です。

決算直前には300万株以上の信用買いが溜まっており、急落によって損切りが多発することが予想されました。

半分も損切りが出れば191万株の大半を買い戻すことができます。

そのため、株価を急落させる口実として3Q決算が利用されたと考えるのが妥当です。

急落後の株価は割安、中長期では上昇予想

急落によって株価は2,400円台となりましたが、予想PERは16.9倍に低下しました。

グロース株としては異例の割安水準です。

エニーカラーの株価指標(株価2,451円、2024年3月15日時点)
  • 予想PER・・・16.9倍
  • 実績PBR・・・12倍

増益率20%のグロース株であればPER30倍くらいが妥当です。

それに対し、急落後の予想PERは16.9倍ですから、ここから株価2倍になっても違和感はありません。

そのため、中長期では株価回復の可能性が高いと考えています。

2024年3月15日以降の急落に関する追記は以上です。

株価3,200円は割安?

エニーカラーの株価指標

急落の結果、エニーカラーの株価は3,200円(2023年12月25日時点)まで下落しています。

この株価での株価指標は、予想PERが17.3倍、実績PBRが14.7倍です。

エニーカラーの株価指標
  • 予想PER・・・17.3倍
  • 実績PBR・・・14.7倍

予想PERは割安

予想PERについて言えば、グロース株としては割安だと考えています。

特に、エニーカラーは他に無いビジネスモデルですので、高いPERが許容されて良いはずです。

また、来期の業績予想をベースにすれば、予想PERは14倍まで低下します。

したがって、株価回復の可能性は高いと言えるでしょう。

PBRは割高だが、重要性は低い

一方、実績PBRは14.7倍と割高です。

とはいえ、VTuberタレントとの契約は資産計上されないため、PBRが割高になるのは自然なことです。

なので、エニーカラーに限って言えばPBRは重要度の低い指標だと言えます。

PBRが割高なのはあまり気にする必要が無いでしょう。

株価3,000円台前半は買い時と予想

高い成長期待、かつ割安

エニーカラーは今後も年間20%以上の利益成長が予想されています。

一方、PERについて言えば東証プライムの平均並みで、グロース銘柄とは思えない割安さです。

成長期待が高く、かつ割安であることから、株価3,000円台前半であれば買い時であると考えています。

今後の業績予想

割安であることの根拠として、2025年3月期までの業績予想を四季報より引用しておきます。

決算期売上高営業利益1株利益
2023/04(実)253億円94億円107円
2024/04370億円165億円183円
2025/04455億円205億円227円

2025年4月期のEPS(1株利益)が200円を超えてくるため、PERを20倍としても株価は4,000円を超えてきます。

この業績予想を踏まえると、株価3,000円台前半は魅力的な買い水準です。

株価6,000円突破の可能性も

2桁増益のグロース株であれば、PER30倍でも割安なくらいです。

エニーカラーにPER30倍を適用すると、2024年4月期の業績予想ベースで株価5,490円、2025年4月期の業績予想ベースなら株価6,810円となります。

したがって、長期的には株価2倍に上昇することも期待できるでしょう。

無論、何らかの原因で業績が悪化し、株価が下落する可能性もあります。

しかし、上場来の安値(2,000円)を下値と考えれば、賭けとも言えないくらい割の良い賭けなのではないでしょうか。

まとめ

エニーカラーが急落した理由について解説しました。

急落した理由のうち、一つは需給の問題、もう一つは市場の期待値の問題でした。

大株主がいる限り、大量売却の恐れは常にあります。

ただ、それはどの銘柄も抱えている懸念なので、そのうち忘れられるでしょう。

市場の期待値の問題についても、一発下げただけで織り込まれたと考えて良いはずです。

次なる上方修正が来る可能性もありますので、下げた分を取り戻す可能性もあります。

総じて、9月以降の急落はいずれ戻ると予想しています。




4件のコメント

分割後の株価で記載しています。分割考慮後の株価で2022年10月に6,895円を付けていますが、2023年10月時点で3,400円前後で推移しており、高値から半値です。

急落というのは急に落ちることなのでこれが去年の記事ならそうですね、となりますが……
今年の3月決算前に分割後の価格として2000円まで落ちてから反発し、現在は3000円〜4000円台で推移しています。
まあ、変動は激しい株ですよね。

あ、すみません、今、主旨を理解したもののコメントが消せず
去年の急落の原因の解説と、今の価格が割高か割安かっていう話だったんですね。失礼しました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です