リクシルの株価は2021年以降、大幅に下落しています。
2021年9月には3,200円を超えたものの、以降は2年近い下落トレンドが続き、2,000円割れまで下落しました。
下落した理由は次の4点です。
- 住宅着工数の減少・・・住宅設備の需要も減少
- 原材料価格の高騰・・・原価率が高まり利益が悪化
- 海外事業での苦戦・・・ゼロコロナで中国が悪化、金利上昇で米国も悪化
- 2024年3月期は3割減益・・・税負担上昇で減益予想に
住宅着工数が減少したことで、住宅設備の需要も落ち込み、業績が悪化しました。
さらに、原材料価格が高騰したことで利益が減り、海外事業でも苦戦続きです。
今期(2024年3月期)は3割減益というネガティブな予想も発表されています。
本記事では、これらの下落理由について詳しく解説していきます。

記事の最後では、四季報の業績予想をもとに、予想株価2,000円を算出しました。詳しい計算は本文をご覧ください。
リクシルの株価推移
堅調な住宅需要で、株価3倍に上昇
リクシルの株価は2020年以降は上昇トレンドでした。
2020年は一時1,000円台まで下落したものの、翌年には3,000円台まで上昇。
わずか1年で株価は3倍になっています。
上昇の理由は、住宅需要が堅調だったためです。
住宅販売が伸びれば、必然的に水回りやサッシなどの販売も伸びるため、新築物件の活況を手掛かりにリクシルの株価は上昇しました。

利上げなどで2021年後半から下落トレンド
しかし、2021年後半からは下落トレンドが続いています。
2022~2023年は一貫して下げ続け、2023年には2,000円を割り込むまでに下落しました。
住宅着工戸数が減少したほか、原材料高の高騰も続いています。
さらに、海外では利上げの影響で住宅需要が減少しています。
その結果、2022年度は業績が大幅に悪化し、株価急落を招きました。

次の章から株価が下落した具体的な理由を解説していきます。
下落理由① 住宅着工戸数が減少
月5,500件まで大幅減少
2022年10月以降、国内の住宅着工戸数が減少に転じました。
それまでは月6,000件以上をキープしていましたが、2022年11月に6,000件を割り込み、2023年4月には5,500件ほどに落ち込んでいます。
以下が国土交通省のデータをグラフ化したものです。

長期的にも減少が続く
野村総合研究所によると、2040年までに住宅着工戸数が年間49万戸にまで減少すると予想されています。
2021年度が87万戸でしたので、40%を超える減少率です。
短期・中期的にも、原材料価格の高騰や金利上昇の懸念があり、需要は弱いと予想されます。
そのため、住宅着工戸数という面では株価の重荷となっていくでしょう。
下落理由② 原材料価格の高騰
-475億円の利益減少
住宅設備は銅やアルミを多用しますが、これらの価格が高止まりしており、原価率が上昇しています。
2022年度は、「原材料・資材費・物流費の高騰」として-475億円の営業減益になりました。

銅価格は2倍に高騰
銅は住宅の配管に多く使われます。
リクシルは水回りを得意とするため、銅価格が業績に大きく影響しますが、銅価格は2020年以降高騰しました。
2020年は1kgあたり600円前後だったのに対し、2023年は1,200円程度まで上昇しています。

アルミ価格は1.5倍超で高止まり
アルミニウムは錆びにくいため、住宅のあらゆる場所で使用されます。
リクシルの場合、キッチン設備、サッシ、配管が主な使用用途です。
アルミニウムの価格も2020年以降で高騰しており、2020年は1kgあたり200円以下だったのが、2023年は300円以上で推移しています。
2022年初頭の400円からは下がったものの、高止まりしている状況です。

下落理由③ 海外事業で苦戦
ゼロコロナ政策で中国事業が悪化
中国の不動産業界はゼロコロナ政策で大打撃を受けました。
不動産取引が縮小し、住宅設備の販売も低調です。
次のグラフは中国における新築住宅販売の推移ですが、2021年7月以降、取引面積が縮小していることが分かります。
最新のデータでは、2023年4月は前月比27%の減少、5月は前月比10%という減少率でした。

不動産取引が縮小したことで、住宅設備の需要も減り、中国での売上げは-15%も悪化しました。
リクシルの見通しでは、2024年3月末あたりまでは中国事業の不振を予測しています。

利上げで米国事業も悪化
米国事業も金利上昇の影響で冴えません。
新築住宅の取引件数は2022年に入ってから減少し、月あたり60万件を下回るまでに悪化しました。
2022年中頃を境に回復してきていますが、まだコロナ前の70万件までは回復していません。

水回りの売上は-4%の減少率でした。
ただし、円安進行だったため円ベースでは増収となっています。
今後はリフォームなどで利益回復を図りつつ、住宅需要回復を待つ計画です。

ロシア物流拠点が停止
ロシアによるウクライナ進行を受け、ロシア国内の物流拠点が停止しました。
それにより、サプライチェーンが絶たれ、欧州での業績が悪化しました。
ロシアにあった物流機能は2022年度中にドイツ・ドバイへ移管したため、2023年度からは正常化しています。
2022年は業績に悪影響が出たものの、2023年からは業績回復が期待できそうです。
下落理由④ 2024年3月期は3割減益
リクシルの業績予想
今期(2024年3月期)は業績悪化が予想されています。
以下がリクシル自身による業績予想です。
項目 | 2023年3月期 実績 | 2024年3月期 会社予想 |
---|---|---|
売上高 | 1兆4,960億円 | 1兆5,300億円 |
営業利益 | 249億円 | 280億円 |
当期利益 | 160億円 | 110億円 |
一株利益(円) | 55.54円 | 38.32円 |
3割減益で投資家心理悪化
売上高と営業利益は好調ですが、純利益(当期利益)は減益になります。
160億円から110億円に悪化するので、3割超の減益率です。
事前の市場予想は純利益373億だったことから、この業績予想は投資家心理を悪化させ、株価急落につながりました。
減益は税金負担が理由
とはいえ、減益の理由は税金支払いが膨らむためです。
2022年度の税金費用が29億円だったのに対し、2022年度は99億円に増加します。
仮に税金負担が前年と同じだったら、純利益は180億円で増益でした。
本業は増収増益であるため、悲観する必要はないでしょう。

今後の株価予想
2025年までの業績予想
株価予想の前提として、2025年3月期までの業績予想を記載します。
この予想は四季報より引用しました。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | 1株利益 |
---|---|---|---|---|
2023/03(実) | 1兆4,959億円 | 249億円 | 159億円 | 55.5円 |
2024/03 | 1兆5,300億円 | 280億円 | 110億円 | 38.3円 |
2025/03 | 1兆6,200億円 | 490億円 | 286億円 | 99.6円 |
2024年3月期は純利益が落ち込むものの、2025年3月期には急回復する予想となっています。
そのため、株価上昇をメインシナリオとして想定しています。
PER20倍で株価を計算
上の予想の1株利益にPERをかければ予想株価を算出できます。
リクシルのPER推移を見てみると、およそ20~30倍で推移してきました。

同業他社の予想PERは、TOTOが20倍、リンナイが17倍くらいです。
今回はTOTOと同じPER20倍として予想株価を算出します。
2025年株価は最低でも2,000円
以上の前提をもとに、2025年3月期の業績予想から予想株価を計算します。
2025年予想株価=99.6円(1株利益)×20倍(PER)=1,992円
およそ2,000円という結果になりました。
PER20倍はリクシルにとって最低ラインなので、株価2,000円以上には上がると予想できます。
まとめ
リクシルの株価が下落した理由について詳しく解説しました。
金利上昇や原材料費の高騰など、外部要因が下落の主な理由です。
個別リスクで下落したわけではないので、事業環境が改善すれば、株価は自然と回復するでしょう。
ただ、2025年3月期の業績予想はそこそこという印象なので、大きな株価上昇は狙いにくそうです。
株価2,000円は固いと見ていますので、4%超えの配当を得つつ、気長に保有するには良い銘柄だと思います。