マイクロ波化学が急騰していますが、株価はどこまで上がるのでしょうか。
2022年6月の上場以降、800円前後で冴えない値動きでしたが、10月に入ってから1,300円に急騰しました。
マイクロ波化学の技術は化学プラントのエネルギー効率を高めるため、脱炭素関連としても注目されています。
それに着目した大口投資家が買いに動いた可能性がありそうです。
しかし、株価1,300円での指標は超割高で、これ以上の株価上昇は厳しいようにも思えます。
本記事では、マイクロ波化学の今後の株価見通しについて考察していきます。
目次
マイクロ波化学の事業概要
電子レンジの原理をプラントに応用
マイクロ波化学の事業は、簡単に言えば「電子レンジの原理で物を加熱する」というものです。
ただ、スケールは家庭用電子レンジとは桁違いです。
出力は最大で100kWと、家庭用の1000Wと比べて100倍強力です。
この大出力を使い、化学プラントで加熱処理を行う装置を製造しています。
炭素繊維の製造プロセスでは1,000〜2,000度の加熱処理を担うほど、高温処理も行う事ができるようです。
マイクロ波で化学的な処理をすることを「マイクロ波プロセス」と呼び、マイクロ波化学が世界で初めて工業化に成功しました。
従来より消費エネルギーが小さい
マイクロ波プロセスの最大の特徴は、従来の方法と比べ、消費するエネルギー量が小さい事です。
IR資料によると、従来より3分の1程度のエネルギー量に抑える事ができるとのこと。
エネルギー量が小さくなる事で、製造プラントの光熱費を抑えられます。
さらに、脱炭素の面でもプラスとなり、二酸化炭素を大量に排出する化学プラントの問題解決につながるでしょう。
そのため、マイクロ波化学は脱炭素銘柄としても注目に値します。
また、加熱時間は従来の10分の1、用地面積は5分の1程度に抑えられるようです。
脱炭素関連銘柄としても注目
マイクロ波化学の技術を使い、かつ再生エネルギーを活用する事で、CO2排出量を90%削減できるといいます。
CO2排出量が問題視される中、この削減量は化学メーカーにとって魅力的です。
今後、設備更新を迎えた化学メーカーが、マイクロ波化学の製品を導入することが期待できそうです。
また、脱炭素銘柄として注目される事で、株価上昇の原動力となることが期待されます。
株価の推移
マイクロ波化学の株価推移を3つのポイントにまとめました。
- 2022年6月24日に新規上場
- 公募価格605円に対し、初値は550円。−9%の公募割れでスタート。
- 10月に急騰して1,300円台まで上昇
上場日は2022年6月24日で、まだ上場したばかりの銘柄です。
株式市場が不安定だったこともあり、初値は公募割れでの取引スタートとなってしまいました。
しかし、2022年10月から急騰しはじめ、10月12日時点では1,300円前後まで上昇しています。
マイクロ波化学の流通株式量は200億円程度と小さく、値動きが激しくなりやすい特徴があります。
そのため、投資リスクとしては大きい銘柄です。
10月以降は急騰していることもあり、過度なリスクテイクは禁物だと言えるでしょう。
急騰後の株価は割高か?
今期業績ベースでは超割高
株価1,300円での予想PERは390倍に達しています。
また、PBRは13倍という水準です。
いずれの株価指標も超割高だと言え、いつ株価が急落してもおかしくない状況です。
ただし、マイクロ波化学は黒字化したばかりなので、株価指標が割高になるのは当然です。
そこで、3年後の業績予想をベースに、現在株価が割高かどうかを検証してみましょう。
2025年までの業績予想
以下、2025年3月期までの業績予想を立てました。
決算期 | 売上高 | 1株利益 |
---|---|---|
2023/03 | 11.3億円 | 3.3円/株 |
2024/03 | 16億円 | 6.9円/株 |
2025/03 | 22.4億円 | 10円/株 |
2024年3月期までの予想は四季報から引用しています。
2025年3月期の予想は、前年から売上+40%を前提として算出しました。
結果、2025年3月期の1株利益は10円となりました。
3年後の業績に対しても、やはり割高
EPS10円、株価1,300円でPERを計算すると、130倍となります。
やはり割高であることには変わりないですね。
株価1,300円を妥当とするには、PERを50倍として、26円の1株利益が必要です。
EPS26円に達するには、年成長+40%としても2028年くらいになってしまいます。
2028年の業績が今の株価に織り込まれていると考えるのは無理があります。
したがって、株価1,300円は割高という結論が妥当でしょう。
今後の株価予想
業績成長は緩やか=株価上昇も緩やか
マイクロ波化学は製造業ですので、着実に成長しつつも、急激な成長は期待できません。
成長するには、人員を増やし、設備投資を行い、顧客を開拓する必要があります。
特に、マイクロ波プロセスはまだ発展途上の技術です。
そのため、最低でも数年間は顧客開拓に苦労することが予想されます。
したがって、株価上昇は基本的に緩やかなペースになるでしょう。
2025年予想株価は500円
それでは、業績予想をベースに株価を予想してみます。
上の業績予想で、2025年3月期の1株利益は10円と予想しました。
適用するPERは50倍としたいと思います。
以上から、2025年あたりの予想株価は500円(EPS10円×PER50倍)となります。
現在株価(1,300円)と比べて半値未満で、公募価格(609円)をも下回ってしまいました。
需給はタイトなので上昇しやすい
ただし、流通株式数が少ないことが株価にも影響しそうです。
マイクロ波化学の発行済株式数は1,500万株程度で、浮動株は12%ほどしかありません。
そのため、需給がタイトで、実力以上に株価が上がりやすい状況にあります。
買い需要によってはPER100倍超えが定着し、高値の株価が続くことも考えられます。
今後の株価動向は大口投資家が参入するかどうかで大きく変わることになるでしょう。
マイクロ波化学の予想株価一覧
利益が年間+40%増えることを前提に、2028年までの予想株価をPER50倍とPER100倍に分けて作りました。
以下が予想株価の一覧表です。
決算期 | 1株利益 | PER50倍での株価 | PER100倍での株価 |
---|---|---|---|
2023/03 | 3.3円 | 165円 | 330円 |
2024/03 | 6.9円 | 345円 | 690円 |
2025/03 | 10円 | 500円 | 1,000円 |
2026/03 | 14円 | 700円 | 1,400円 |
2027/03 | 19.6円 | 980円 | 1,960円 |
2028/03 | 27.4円 | 1,370円 | 2,740円 |
マイクロ波プロセスがブレークスルーを迎えれば、一気に業績が急拡大することも期待できます。
その場合、上表よりも早い株価上昇になるでしょう。
一方、マイクロ波プロセスの浸透が遅れれば、期待ほどの株価上昇にはならないかもしれません。
まとめ:マイクロ波化学の株価はどこまで上がる?
マイクロ波化学の株価について考察しましたが、3年先の業績を見越しても、株価1,300円は割高でした。
短期的にどこまで上がるかは需給次第ですが、中期的には、1,000円以上を維持するのは難しいと思われます。
したがって、「株価はどこまで上がるか」という問いに対しては、「これ以上の株価上昇は難しい」という答えになります。
ただ、業績を急拡大させるような材料が出れば話は別です。
マイクロ波プロセスが脚光を浴び、大口顧客への納入が増えれば、業績が数倍に跳ね上がる可能性を秘めています。
どこまで上がるか予想するのは難しいですが、材料次第では、株価2,000円突破もあり得なくはなさそうです。