日本郵船の今後5年間の配当予想3パターン




10%超の高配当に沸く日本郵船ですが、今後の配当を予想することが難しく、減配リスクにさらされています。

日本郵船の配当はわずか2年間で40円から1,450円と30倍以上に伸びました。

しかし、好業績が一時的なものであれば、今後数年で再び40円まで落ち込む可能性があります。

そうなると株価も大暴落となるため、日本郵船に投資する上で、今後の配当がどうなるかは非常に重要なテーマです。

そこで、本記事では今後5年間の配当予想を3パターンに分けて考察しました。

強気シナリオ・中立シナリオ・弱気シナリオに分け、それぞれ5年間の配当額を計算し、どれだけの配当が獲得できるかを確認していきます。

今後の配当予想の概要

配当方針は「純利益の25%」

大前提として、日本郵船の配当方針を確認しておきましょう。

日本郵政は配当方針として「純利益の25%」を掲げています。

配当総額を純利益の25%と定めており、純利益と配当額を連動させる方針です。

具体的には、1株利益(EPS)が1,000円の場合、配当は年間250円になる、という具合です。

したがって、日本郵船の配当額は業績と完全に連動する傾向があります。

ただし、配当下限を20円と決めており、業績極端に悪化しなければ、最低でも20円の配当は出る見込みです。

減配傾向になる可能性が高い

業績と連動することから、今後の配当は減配傾向になる見通しです。

というのも、2021年度の純利益は1兆円を超え、例年と比較すると異例の純利益を叩き出しました。

新型コロナ前の純利益は300億円程度だったことから、例年の30倍を超える純利益です。

この好業績は、新型コロナを起点とした物流の混乱から輸送費が高騰したことが原因ですが、あくまで一時的な現象だと見られています。

そのため、今後は例年の業績水準に落ち着いていくというのがメインシナリオです。

したがって、今後の配当は減配傾向になると予想されます。

2019年の配当に戻る可能性も

今後の配当予想は何パターンか考えられますが、あり得るパターンの一つとして、2019年度(コロナ前)の配当水準に戻ることが予想されます。

その場合、配当は40円程度になるでしょう。

一方、2021年度の配当実績は1,450円でしたので、1,450円→40円への減配で、減配率は-97.2%にも及びます。

そうなれば、配当期待で10,000円前後に急騰していた株価も、以前の2,000円前後の水準まで下落することになりそうです。

考えられる配当予想3パターン

今回は、今後の配当推移として3パターンを予想しました。

強気予想、中立予想、弱気予想の3パターンです。

それぞれ、想定したシナリオも記載しておきます。

日本郵船の配当予想3パターン
  1. 強気予想:ある程度の減配が発生するも、海運市況の高止まりで高配当が続く
  2. 中立予想:5年かけて以前の配当水準に落ち着く
  3. 弱気予想:金利上昇によって世界的な景気後退に陥り、荷動きが減少することで赤字に転落。配当は無配転落となる。

パターン① 高水準の配当を維持

高水準を維持する場合の配当予想

最初に考えられるパターンは、ある程度の減配をしつつも、コロナ前と比べて高水準の配当を維持するシナリオです。

以下、2027年3月期までの配当予想を立てました。

2027年3月期まで純利益の減少が続きますが、純利益600億円で下げ止まり、配当は80円が継続されると想定しています。

決算期純利益1株利益1株配当
(参考)2020年3月期311億円184円40円
2023年3月期7,200億円4,262円1,050円
2024年3月期4,800億円2,841円700円
2025年3月期3,300億円1,954円480円
2026年3月期1,800億円1,066円260円
2027年3月期600億円356円80円

長期契約の値上がりで好業績が続く

2022年3月期までの好業績は、海上輸送のスポット価格が上昇したことが要因です。

一方、契約期間が年単位の長期契約については、まだ価格の上昇が限定的です。

2022年春ごろから徐々に上昇してきており、長期契約の価格がしっかり上がれば、5年先の業績も好業績が続く可能性があります。

5年間の配当合計は25万円

このシナリオでは、100株保有し続けた場合の配当合計は、5年間で25万7,000円となります。

5年目以降も、長期契約の恩恵で年間8,000円の配当が続くことになります。

この場合、投資家は十分な配当を得た上で、株価下落の損失は限定的となり、利益を確保できるはずです。

管理人

このシナリオで理論株価を計算したところ、7,389円という結果になりました。2022年7月時点では株価10,000円前後で推移していますが、本記事の強気シナリオでもこの株価は正当化できませんでした。

パターン② 2019年の水準まで下落

業績が元に戻る場合の配当予想

次に、5年後に業績が元に戻るパターンを考えてみましょう。

2024年3月期まではパターン①と同じ業績で、2025年3月期以降に悪化が加速する前提にしています。

2027年3月期の配当は、2020年3月期と同じ40円に落ち込む、というシナリオです。

決算期純利益1株利益1株配当
2023年3月期7,200億円4,262円1,050円
2024年3月期4,800億円2,841円700円
2025年3月期2,400億円1,421円350円
2026年3月期800億円474円110円
2027年3月期300億円178円40円

好業績が短期で終焉する可能性

このシナリオの前提は、2021年3月期から始まった好業績が2~3年で終焉する、というものです。

輸送費高騰はインフレ加速の一要因となっていますが、各国の中央銀行はインフレ退治に躍起となっており、輸送費は従来の水準まで下落するでしょう。

したがって、5年後にはコロナ前の業績に落ち着いているというシナリオが想定できます。

株価下落も顕著と予想

業績と配当が以前の水準まで戻れば、株価も以前の水準まで下落するでしょう。

コロナ前の日本郵船の株価は2,000円前後だったことを踏まえると、早ければ2026年頃には株価2,000円まで下落しているかもしれません。

2022年7月時点の株価は10,000円前後ですので、およそ5分の1の株価水準です。

当然、日本郵船を買った投資家は、配当利益を超える損失を被ることになります。

パターン③ 無配転落

最悪な配当シナリオ

最後にワーストシナリオを考えてみましょう。

各国の利上げによって景気後退が現実となり、海上の荷動きが減少。

輸送費が急落した上、需要拡大に備えた投資が空振りとなり、2025年3月期には赤字転落する、というシナリオです。

赤字転落の前年には危機的状況が懸念され、配当は無配とされるでしょう。

決算期純利益1株利益1株配当
2023年3月期5,000億円2,960円740円
2024年3月期1,000億円592円0円
2025年3月期(赤字転落)0円
2026年3月期(赤字転落)0円
2027年3月期300億円178円40円

世界的な景気後退で業績悪化

原油価格の高騰、食品の値上がり、人件費の値上がりなどによって、世界的なインフレが進んでいます。

インフレを鎮静化するため、世界各国では利上げが進行中です。

しかし、景気を冷やしすぎる「オーバーキル」の可能性が指摘されており、その場合、世界的な景気後退に陥ってしまう懸念があります。

景気後退に陥れば海上輸送の需要も低迷します。

そうなれば、輸送単価の下落、保有資産の減損などにより、業績が急悪化する恐れがあります。

株価は1,000円前半まで下落

赤字転落となれば、株価は1,000円台前半まで下落する可能性が高いです。

コロナショックで一時急落したタイミングでは1,091円まで下落しました。

そのあたりの株価が下値として意識される展開になるでしょう。

可能性の高い予想パターンは?

メインシナリオは「高水準の配当を維持」

現時点のメインシナリオは、パターン①の高水準の配当が維持されるシナリオです。

というのも、2022年7月時点の株価は10,000円以上をキープしていますが、10,000円越えの株価は、今後も高配当が続くという前提でなければ正当化できません。

したがって、株式市場は今後も高配当が続くというシナリオを想定していると考えられます。

弱気論は徐々に後退

2022年5月以降、日本郵船に対する目標株価は上昇傾向にあります。

つまり、各証券アナリストは強気方向に傾いているということです。

以前までは、好業績は一時的との見方が優勢でしたが、物流ひっ迫の長期化の可能性が高まり、好業績が長期化するとの予想が増えているようです。

以下、2022年5月以降に変更された目標株価を一覧にしました。

証券会社レーティング目標株価(変更前→変更後)
大和証券強気6400円 → 12000円
東海東京強気14360円 → 14410円
モルガンS強気18100円 → 19500円
三菱UFJMS強気15300円 → 14100円
JPモルガン中立11800円 → 12000円
野村證券強気16000円 → 15000円
SBI強気13870円 → 15300円
メリルリンチ中立12100円 → 12300円
岩井コスモ強気10700円 → 13000円

まとめ

日本郵船の今後の配当予想を3パターンに分けて解説しました。

海上輸送費が落ち着くに従い、減配傾向になるのはほぼ確実です。

減配がいくらで下げ止まるかによって日本郵船の株価が大きく変わってくるでしょう。

今後の配当見通しは不透明で、株価は景気見通しによって大きく振られる展開が予想されます。

株価下落の損失が配当を上回らないよう、買いのタイミングは慎重に見極めるべきだと思います。