株主優待で人気のビックカメラですが、ここ最近は業績が冴えません。
これまでの家電量販店は、外国人観光客の需要によって業績が押し上げられてきました。しかし、2020年以降はその需要が消滅し、以前のような業績を取り戻すのが難しい状況です。
業績悪化は株価にも反映され、一時は株価1,000円割れにまで落ち込んでしまっています。
個人投資家にとって怖いのは、業績悪化を理由にした株主優待改悪です。1年間でもらえる額面が少なくなる上、個人投資家離れで株価が下落するというダブルパンチに見舞われる恐れがあります。
果たして、ビックカメラの株主優待が改悪されることはあるのでしょうか?
本記事では、ビックカメラの株主優待が改悪される可能性を3つのポイントから考察しました。
目次
株主優待改悪に関わる3つのポイント
ポイント① 株主優待の費用
優待改悪の可能性を考慮する上で重要になるのが、優待にかかる費用です。
業績に対して優待費用が大きすぎれば、企業側としては優待を改悪せざるを得ない、というのは当然のことでしょう。
業績については次に考えるとして、まずは優待費用を計算してみたいと思います。
ビックカメラの株主数
優待費用は、【1人あたりの優待額×株主数】で決まります。
株主数はビックカメラのIRサイトから確認することができ、2020年8月末時点での人数は25万6,030人であることが分かっています。
機関投資家は株主優待を辞退することが多いのですが、全体の数に対してはごくわずかです。
ここでは機関投資家は無視して、全員が株主優待を受け取る前提で考えていきます。。
所有株式数と人数
100株を保有している場合と、500株を保有している場合では優待額が異なりますので、所有株式数の分布を推測してみましょう。
個人の保有株数(5,898万9,000株)と全体の株主数(25万6,030人)から、保有株数の平均はおよそ230株であることが分かります。
全員が100株または500株の保有と仮定すると、その比率は3:1になり、75%の人が100株、残りの25%が500株を持つことになります。
中には優待利回りが低くなるような株数(200株など)だったり、1,000株以上を保有している人もいるでしょうが、ごく少数だと思いますので、無視しても問題ないでしょう。
したがって、保有株数と人数の関係は次のようになります。
- 500株保有の株主数:256,030人×0.25≒64,000人
- 100株保有の株主数:256,030人×0.75≒192,000人
全体の優待費用を計算
保有株数と株主数の関係がおおまかに分かりましたので、あとは単純な計算です。
保有期間を全員1年以上2年未満と仮定して、100株保有の優待額は年間4,000円、500株保有の優待額は年間6,000円で考えます。
優待費用=6.4万人×6,000円+19.2万人×4,000円=11.52億円
したがって、ビックカメラが負担する優待費用としてはおよそ11.52億円であることが分かりました。
株主側が効率よく優待を獲得する前提で計算しましたので、実際よりは若干高めに出ていると思います。当たらずとも遠からずといったところではないでしょうか。
ポイント② 直近の純利益は低調
優待が継続される前提として、純利益がしっかり確保できていること、が挙げられます。
純利益が低いと配当が下がり、経営への影響力が大きい機関投資家の利益が損なわれます。
すると、利益を引き下げている株主優待がやり玉に挙げられ、優待改悪や廃止を迫られるパターンが考えられるのです。
それでは、直近の業績はどうでしょうか。
以下が過去10年間の業績推移と、2022年8月期の業績予想をグラフ化したものです。
2019年8月期までは高水準の純利益を確保していたものの、新型コロナによって来店者数が減少。それによって2020年8月期から純利益が低下し、以降は鈍い回復に止まっています。
とはいえ、2022年8月期の純利益は88億円を確保できる見通しで、先に計算した優待費用である11.52億円と比べると十分余裕があります。
これだけの余裕があれば、費用面を理由に改悪される可能性は低そうです。
ポイント③ 外国人投資家の割合
株主優待は日本独特の制度で、外国人投資家からは廃止を提案されることがしばしばあるようです。
というのも、株主優待は数百株を保有する個人投資家のみを優遇する制度で、万株単位で保有する機関投資家にとってはメリットがほぼ無く、株主平等の原則から外れていると考えられているのです。
そのため、外国人投資家の保有比率が高い場合、株主優待の改悪や廃止の可能性が高まると考えられます。
では、ビックカメラの株主構成はどうなっているでしょうか?以下が所有者別の分布状況です。
2021年2月時点では、外国人の保有比率は7.2%であることが分かります。
この程度の保有比率なら、全外国人投資家が結束しても経営判断に決定的な影響を与えることは難しいでしょう。
したがって、外国人投資家の保有割合という観点からも、優待が改悪される可能性は低いと考えられます。
結論:株主優待改悪の可能性は低い
優待費用と業績、そして株主構成という3つのポイントについて考察した結果、いずれも優待が改悪されるような兆候は見られませんでした。
よほどの出来事がない限り、この状況が突然変わるということはないでしょう。
したがって、株主優待が改悪される可能性は現時点では低いと判断できます。
今後、優待が改悪されるとすれば、業績がさらに悪化した場合や、株主優待を廃止する流れが強まった場合などが考えられますが、いずれもそれほど心配する必要は無さそうです。
ビックカメラの買い時は?
優待が改悪されることは無さそうということで一安心ですが、いつ、いくらで株を買うべきかという点が気になるのではないでしょうか。
株価1,000円以下は利回りが魅力的
利回りの面で考えると、株価1,000円未満で買った投資家は高い利回りを得ることができます。
仮に、株価1,000円で買った場合の配当・優待利回りを確認してみましょう。
配当利回り:配当15円÷1,000円=1.5%
優待利回り(100株の場合):優待額3,000円÷100,000円=3.0%
→総合利回りは4.5%
配当利回りは1.5%と高くありませんが、優待利回りが初年度でも3.0%つきます。
優待銘柄として人気のすかいらーくグループでも優待利回りは2.5%ですので、3.0%というのは良い利回りです。
配当と優待を足した総合利回りが4.5%にもなるのは魅力的です。
また、2年目には優待額が+1,000円、3年目にはさらに+1,000円され、3年目の総合利回りは6.5%にも達します。
15年も保有すれば投資額の元が取れてしまう計算ですね。
株価1,000円未満での利回りは非常に魅力的というのが分かります。
長期トレンドから見た買い時
業績低迷によって株価は1,000円割れとなりましたが、新型コロナによる一時的な急落を除けば、これは2017年4月以降の安値水準です。
過去4年半に買った(ほぼ)誰よりも安値で買えるということですので、以前に買った投資家から見れば、これから新規買いする人は羨ましい限りです。
リスクvsリターンという面でも良い買い時です。
下値は800円に対し、上値は1,800円が想定できますので、損失リスクよりも利益期待が上回りそうだと言えます。
無論、株価が上に行くか下に行くかは業績次第ですが、外国人観光客が戻れば業績が押し上げられると予想されますので、株価上昇の可能性は十分です。
したがって、株価1,000円付近というのは、長期トレンドの位置的にも買い時であると判断できそうです。
株価1,000円未満は「買い」だと予想
株価1,000円割れというのは、業績予想が期待未満だったことによる一時的なものだと考え、株価1,000円未満は「買い」だと予想しました。
優待改悪の可能性は低い一方、優待利回りは最大5%にも上り、個人投資家からのバイ&ホールドが期待できます。
また、新型コロナの収束に伴って外国人観光客が戻り、今後は業績が上向く方向だと考えられ、株価の支援材料になるでしょう。
一定のリスクはあるものの、損失リスクvs期待リターンでは期待リターンが上回るのではないでしょうか。
まとめ
ビックカメラの優待が改悪される可能性を考察した上で、買い時の株価について予想しました。
業績は冴えないものの、優待を改悪するほどの業績悪化ではなく、外国人投資家の比率も低いことから、優待改悪の可能性は低いと考えるのが妥当でしょう。
一方、株価は一時1,000円割れにまで下落しましたので、利回りが上昇し、買い時と言える水準のように思います。年間リターンが最大6.5%というのは、日本国内の全銘柄の中でも稀です。
まだビックカメラを保有していないなら、ビックカメラに投資することを検討しても良いのではないでしょうか。