【株投資】私が「伊藤忠商事」に投資する理由 – 総合商社No.1の純利益に裏打ちされた高配当が魅力

私が伊藤忠商事に投資する理由




高配当の優良銘柄として人気の高い伊藤忠商事。

日本の5大総合商社の一角を占め、年3%を超える配当、5年連続増配の実績、過去2年での2000億円の自社株買い、年5000億円を超える純利益が、投資対象として大きな魅力をもたらしています。

160年の歴史を持つ伊藤忠は強固な収益基盤を誇りますが、型にはまらず機動的にビジネスを展開する強みも持ち合わせ、近年ではフィンテック・ビッグデータ・IoT・越境EC・カーシェア/ライドシェア・再生医療などにも乗り出し、大手総合商社No.1の地位すら通過点と思えるほどの成長余地を示しています。

今回は、伊藤忠商事に積極投資をしている私が、伊藤忠商事の魅力と投資理由について解説していきます。

伊藤忠商事株の概要

まずは、伊藤忠商事の株式の概要をご覧ください。

伊藤忠商事株の概要
  • ・株価:2604円(2020年2月5日)
  • ・配当:年85円(上期42.5円、下期42.5円)
  • ・配当利回り:3.26%
  • ・株主優待:無し
  • ・目標株価:2650円
  • ・アナリストレーティング:4 (1〜5)

伊藤忠商事の特徴としてまず挙げられるのが「高配当」。配当利回りは長期投資を前提として買うに値する3.26%を誇り、過去10年以上に渡り減配したことがありません。

5大商社の第3位に位置する有力企業ですが、業績の安定性は随一であり、証券アナリストから5段階中4の高評価を得ています。

2020年は純利益ベースで5大商社トップの座を奪還する好業績が予想されます。

株価推移 – 1年間で30%の上昇

伊藤忠商事の株価は2019年後半以降、大きく伸びています。

2019年前半は2000円以下で推移していましたが、自社株買い発表を機に上昇に転じ、半年以上に渡って最高値を更新し続けました。1年間の上昇率は約30%にもなります。

株価上昇の理由としては次のことが挙げられます。

  • ・2000億円、1億株にも及ぶ自社株買い
  • ・3年連続で最高純利益を更新し、5000億円に到達
  • ・今後の増配を確約
  • ・米中貿易摩擦の懸念後退

伊藤忠商事の安定した収益は、食料やアパレル、金属、金融事業など多種多様な事業ポートフォリオから生み出されます。

近年は特に成長著しく、節目である純利益5000億円を突破。

自社株買いや配当性向引き上げなど株主還元にも力を入れ、さらに懸念されていた米中貿易摩擦が解決に向かったことで、伊藤忠商事の株価は力強く上昇しています。

伊藤忠の株価は過去1年で大きく伸びた

伊藤忠商事の株の魅力は「配当利回り」と「安定した業績」

高い配当利回り

伊藤忠商事は高配当銘柄として人気が高く、配当利回りは年間3.26%です。

約26万円の投資により年間8500円の配当を得ることができます(2019年度の場合)。

この利回りでも十分な魅力ですが、今後の配当性向引き上げにより、現在の85円から100円あたりまで増配されることが期待され、実現した場合は配当利回りが4%近くまで上昇します。

5年間連続増配の実績と、余力十分な配当性向から減配の可能性は低く、配当目的の投資先として十分なポテンシャルを持っていると言えるでしょう。

そくほう
伊藤忠の2019年度の配当は1株85円ですので、配当利回りは【85円÷2604円(株価)】で計算できます。配当性向とは、1株あたりの純利益(334円)に対する配当額(85円)の割合です。

2014年以降の配当金は次の通り。数年で2倍近い配当額を達成していますが、これでも純利益に対して余力があり、今後のさらなる増配も期待できます。

伊藤忠商事の年間配当実績
  • 2014年:46円/年
  • 2015年:50円/年
  • 2016年:55円/年
  • 2017年:70円/年
  • 2018年:83円/年
  • 2019年:85円/年

右肩上がりの安定した業績

伊藤忠商事は赤字転落した1990年代以降、着実に利益を積み上げ、リーマンショックの影響が一巡した2011年以降の成長は特に顕著です。

2016年~2018年は4年連続で過去最高益を達成し、2019年度も5000億円の純利益を達成する見込みです。

純利益は総じて右肩上がりで推移してきている

2年間で2000億円の自社株買いを実施

伊藤忠商事は2018年末~2020年にかけて2000億円もの自社株買いを発表しました。買付け量は発行済み株式の6.75%にあたります。

伊藤忠商事は自社株買いを重要な株主還元策として位置づけ、今後も積極的に自社株買いが行われるとの見通しです。

自社株買いは1株当たりの価値を高めると同時に、取引市場での買い支えにより株価が下落しづらくなり、長期保有をより魅力的なものにしています。

こちらが自社株買いの実績です。

取得期間取得株式数量取得総額
2019年6月12日~2020年6月11日4000万株700億円
2019年2月6日~6月3日約5000万株1000億円
2018年12月5日~2019年1月4日約1500万株300億円

ほとんど期間を開けずに実施しており、現在の自社株買いが終了する2020年6月以降も自社株買いが発表される可能性があります。

伊藤忠商事の事業内容

伊藤忠は7つの事業セグメントから成る

伊藤忠商事の事業内容は非常に多岐に渡り、主に7つのセグメントに分けられます。

2018年の決算から全体の構成と比率をまとめました。

事業セグメント収益収益割合純利益
繊維5936億円5.3%298億円
機械1兆2228億円10.8%476億円
金属4364億円3.9%792億円
エネルギー・化学品3兆1244億円27.7%806億円
食料4兆2908億円38.0%2079億円
住生活8901億円7.9%629億円
情報・金融7280億円6.5%684億円

伊藤忠商事は多種類の事業を営む、いわゆる「コングロマリット企業」です。

複雑な業態ゆえに理解するには一筋縄ではありませんが、一つ一つの事業を簡単に見ていきましょう。

セグメント①:繊維カンパニー

繊維は伊藤忠商事の祖業として位置づけられ、その歴史は160年にも及びます。

取扱商品は原料である繊維にはじまり、ファッション衣料品の企画・製造・販売、OEM・ODM生産、そしてブランド戦略という一貫した体制を築いています。

さらに、ネット販売率の上昇や、企画提案作・や生産予測・流行予測を行うAIエンジンの開発など、事業の近代化にも積極的に取り組んでいます。

身近なブランドではジーンズの「エドウイン」が有名ですが、多くの企業から委託製造を請け負っており、あなたが今来ている服も伊藤忠商事が作ったものかも知れません。

セグメント②:機械カンパニー

機械カンパニーでは、プラント・電力・船舶・航空・自動車・建設機械・産業機械・医療機器を扱っています。

産業寄りの事業なので消費者には馴染みが薄いですが、現代の生活を支える重要なインフラを担います。

CMで有名な「いすゞ自動車」は伊藤忠商事傘下。

機械カンパニーでは稼ぎ頭である自動車販売とプラント・電力に注力し、特に次世代モビリティ(電気自動車、ライドシェア)への取り組みがが今後の注目トピックとなるでしょう。

セグメント③:金属カンパニー

金属カンパニーは、金属はもちろん、鉱物資源全般や、燃料、リサイクル事業を手掛けます。

事業展開は海外がメイン。資源採掘・加工・販売・リサイクルを一貫して手掛け、資源の安定供給と持続可能な社会構築をミッションに掲げます。

近年は金属・鉱物資源、金属原料の世界的な需要回復を捉え、収益を伸ばすことに成功しました。

セグメント④:エネルギー・化学品カンパニー

エネルギー開発と化学品事業を柱とするエネルギー・化学品カンパニーは、上流から下流までカバーする事業ポートフォリオを構築し、世界中の販売ネットワークを構築しています。

特に化学品事業の利益が大きく、今後の成長が見込まれるライフサイエンス事業へ注力する姿勢を明確にしています。

セグメント⑤:食料カンパニー

食料カンパニーは売上4兆円、純利益2000億円を計上する伊藤忠の稼ぎ頭。

2018年にコンビニ業界2位のファミリーマートを傘下に収め、伊藤忠が得意とするブランド戦略と物流により効率化を進めます。

その他、プリマハムやDoleなど一般消費者になじみ深いブランドを持つほか、酒類・砂糖・醤油・食肉・清涼飲料水など、主要な24の子会社で幅広い食料品を取り扱っています。

セグメント⑥:住生活カンパニー

住生活カンパニーでは、木材・建材をはじめ、住宅に関わる材料や物流、サービス運営を手掛けています。

事業展開のメインは日本であり、子会社である「センチュリー21」「大建工業」が有名です。

海外では北米と中国に力を入れている一方、発展途上国にも進出し、生活水準向上に伴う不動産需要の増加に狙いをつけています。

セグメント⑧:情報・金融カンパニー

情報・金融カンパニーは情報・通信・金融・保険事業から成います。

子会社であるファミリーマートを起点にリテール金融事業の拡大を狙っており、「ファミマTカード」を発行するポケットマネーへの出資比率を高めました。

クレジットカード事業は決済範囲の拡大が見込まれることから伊藤忠の注力事業に位置付けられ、決済情報のビッグデータを活用することでさらなる事業創出を目指します。

伊藤忠商事の歴史

ここで視点を変えて、伊藤忠商事がどのような企業かを見ていきましょう。

“持ち下り”の実績から呉服商店を開業したのがはじまり

伊藤忠商事は、1858年(安政5年)に近江(現在の滋賀県)で創業しました。

当時15歳だった初代伊藤忠兵衛が麻布(麻で織った布)の”持ち下り”を始めたことが最初の事業とされています。

”持ち下り”とは、当時の商業の中心だった関西から全国各地へ商品を運び、売り歩くことです。車も飛行機もない時代、徒歩による物流網として重要な役割を担いました。売ったお金で地域の特産を仕入れて関西で販売することも行い、初めての持ち下りでは7両(現代の約100万円相当)もの純利益が出たそうです。

次第に持ち下りの販路を広げ、近江から九州地区にまで進出し、その利益を元手に1872年に大阪で呉服太物商「紅忠(べんちゅう)」を開業しました。

ちなみに、「紅忠」の「紅」は伊藤忠商事と同じく5大商社の一つとして数えられる「丸紅」の社名の由来です。丸紅は伊藤忠商事との分割で設立された会社で、両社の創業者はともに伊藤忠兵衛とされ、根幹を同じくしています。

現代のCSR活動を当時から実践

伊藤忠兵衛は「紅忠」創立と同時に、店員の権利と義務を明らかにした「店法」を定め、また、従業員を含めた会議制度を導入しました。

「店法」は経営理念、経営方針、就業規則などを合わせたもので、利益三分主義が特徴です。利益三分主義は店の純利益を本家納め・本店積立金・店員配当を5:3:2で配分するもので、店員に通常の給料とは別に配当を出す、現代の「ボーナス」に相当する仕組みです。

さらに会議制度により従業員の意見を取り入れ、経営の民主化を行いました。

この取り組みはワンマン経営が常識であった当時としては画期的であり、店主だけでなく、従業員、客、仕入先までを含めた全ての関係者のために事業を行うという、現代のCSR(=企業の社会的責任)を実践したものでした。

合理的経営で成長し、貿易により世界展開

店主と従業員の相互信頼を築き、それぞれの持つ能力を引き出すことに努める合理的経営は紅忠を着実に成長させました。

1884年(明治17年)に「伊藤本店」と改称し、さらに翌年1885年には海外と直接貿易を行う「伊藤外海組」を設立、1893年(明治26年)には綿糸の卸売を行う「伊藤糸店」を創業しました。伊藤糸店が伊藤忠商事の原点となる店であることから、伊藤忠商事の祖業は繊維とされています。

1896年(明治29年)には日東合資会社を作り、中国綿の輸入と日本綿糸の輸出を行いました。綿糸の貿易をきっかけに、伊藤忠商事は中国を拠点に事業を拡大し、現在では中国最大の外資系企業集団に成長しており、中国政府や顧客の信頼を築き上げています。

まとめ:伊藤忠商事の将来

伊藤忠商事は将来のさらなる成長に向けて「次世代型成長モデル」の構築を目指しています。

次世代型成長モデルとは、現在の縦割り事業を融合し、「点」から「面」に発展させる事業戦略を指します。

具体的な施策として、ビッグデータの活用が挙げられます。ビジネスの川上から川下まで手がけている強みを生かし、デジタル化とデータ活用によってさらなる価値創出を目指します。

そのための新会社「第8カンパニー」が2019年6月に設立されました。第8カンパニー設立には、既存7カンパニーを横断して新ビジネスを創出する狙いが秘められています。

経営方針の原点である「三方よし」を掲げ、総合商社唯一の非資源分野を強みとする伊藤忠商事は、世界中のビジネスパートナーとの提携を強め、さらに成長を続けることでしょう。