株価急落の東京エレクトロンは買い?株価が割安である理由と今後の株価見通し




半導体銘柄として最も注目度の高い東京エレクトロンが急落した。

中国向け半導体規制、円高、米国の景気後退懸念、という3つの悪材料が一気に噴出して売られまくっている。

急落前の株価は35,000円付近だったが、わずか半月ほどで22,000円台に下落した。

東京エレクトロンは7月中旬からの日経平均急落に巻き込まれ、22,000円まで急落した。

今回の急落は、上昇トレンドの終わりを示唆しているのだろうか。

あるいは、上昇途中の押し目に過ぎないのだろうか。

本記事では、今回の株価急落で東京エレクトロンが買いなのかどうかを考察する。

そもそも、なぜ東京エレクトロンは人気化した?

世界4強の半導体銘柄として注目

まずは東京エレクトロンがなぜ買われていたのかを振り返っていこう。

東京エレクトロンは半導体製造装置を作っている会社だ。

半導体製造装置メーカーとしては世界4強に入り、複数の装置で世界トップシェアを誇っている。

主要製品と世界シェア
  • バッチ成膜・・・シェア1位
  • メタル成膜・・・シェア2位
  • 拡散炉・・・シェア1位
  • コータ/デベロッパ・・・シェア1位
  • ガスケミカルエッチング・・・シェア1位
  • プラズマエッチング・・・シェア2位
  • 洗浄装置・・・シェア2位
  • プローバ・・・シェア1位

特に、微細化において特に重要な「コータ/デベロッパ」装置においてはシェア100%とを誇る。

半導体市場は2030年までに2倍成長

半導体製造装置において圧倒的な地位を築いているため、業績は半導体市場の伸びと連動する。

では、肝心の半導体市場は今後どうなるだろうか。

市場調査機関IBSによると、半導体の市場規模は2030年までに1兆ドルに達すると予測されている。

2023年の市場規模が5,200億ドルだったので、7年で2倍に成長する計算だ。

市場の成長に伴い、半導体製造装置の需要も伸びるため、東京エレクトロンの業績はこれから飛躍すると予想されている。

2026年までの業績予想

どれほど業績が伸びるかは、2026年3月期まで具体的に予想されている。

以下が四季報の業績予想だ。

決算期売上高(前年比)営業利益(前年比)純利益(前年比)
2024/03(実)1兆8,305億円4,562億円3,640億円
2025/03(予)2兆2,000億円(+20%)5,820億円(+27%)4,450億円(+22%)
2026/03(予)2兆4,000億円(+9%)6,200億円(+6.5%)4,800億円(+8.9%)

直近の通期決算(2024年3月期)は純利益3,640億円だったが、今期は+22%増の4,450億円を見込む。

来期も好調が続いて純利益4,800億円まで伸びる見通しだ。

まとめると、今後2年間での増益率は+30%となっている。

この成長が2030年まで続くというのが中長期のストーリーとして市場関係者に認識されており、東京エレクトロンに対する強気姿勢に繋がっている。

急落後の株価は割安か?

半月で-37%の急落

東京エレクトロンは2024年7月中旬~8月頭にかけて急落し、株価35,000円から22,000円まで売られた。

わずか半月での下落率は37%にも及ぶ。

では、急落後の株価はどれほど割安になったのだろうか。

2024年8月3日時点の株価指標を確認してみよう。

東京エレクトロンの主な株価指標(2024年8月3日終値)
  • 予想PER ・・・23.0倍
  • 実績PBR ・・・5.84倍
  • 配当利回り・・・2.18%

予想PERは若干割高

まずは予想PERについて考えてみよう。

予想PER23倍というのは、一般的にはわずかに割高な数字だ。

東証プライム平均で15~16倍、業績安定の小売や医薬品銘柄で20倍が目安となる。

急落前は36.2倍あったので、それと比べると割安な感じがしてしまう。

しかし、一般的には少々割高水準であり、株価の下落余地は若干残されていると考えるべきだろう。

成長を踏まえれば割安水準

もっとも、今後の期待を踏まえればPER23倍は割安な水準だ。

年間10%以上の増益が予想されているため、将来の業績期待を加味すれば、今期PERが高くなるのは当然である。

直近の成長率(年平均+15%)を前提とすれば、PER23倍は明らかに割安であると言える。

急落時にはファンダメンタルが無視される傾向にあるため、暴落はどうしようもないが、いずれ反転上昇して割安さが是正されるだろう。

今後の株価見通し

短期的には米テック銘柄次第

短期的には、米国のテック銘柄の動向に左右されるだろう。

特に、これまで半導体銘柄のけん引役は米NVIDIAだったが、同社の株価も急落している。

主役が失速したことで他の半導体銘柄も買われにくくなってしまった。

NVIDIAの株価は今後も上値が重いと予想され、東京エレクトロンの株価も同調して上値が重くなるだろう。

日経平均上昇なら連れ高

個別銘柄としては選別されにくいが、日経平均株価の上昇は期待できる。

東京エレクトロンの寄与度は高く、日経平均株価に対して指数買いが入れば、東京エレクトロンにも一定の買いが入る仕組みだ。

したがって、日本株全体の反発が東京エレクトロンの支えになる可能性があるだろう。

中長期では上昇の可能性高い

1年以上の中長期では、株価上昇の可能性が高いと考えている。

まず、PER20倍台は割安で下落余地が限られているというのが1つの理由だ。

加えて、今後も半導体需要は伸びる見通しであり、同時に半導体製造装置の需要も伸びる。

具体的には、2030年までに2倍程度の伸びが期待され、各装置でトップシェア級の東京エレクトロンが伸びるのは必然だろう。

目標株価は4万円超え

参考として、2024年5月以降に発表された各証券会社の目標株価を確認しておこう。

証券会社投資スタンス目標株価
(変更前→変更後)
JPモルガン強気34200円 → 41000円
ジェフリーズ強気42000円 → 43000円
みずほ強気40000円 → 44000円
岡三強気45000円 → 44000円
シティG強気42000円 → 41000円
野村強気35000円 → 42000円
岩井コスモ強気40000円 → 47600円
モルガンS強気46100円 → 48500円
GS強気41000円 → 43000円
UBS中立40000円

どの証券会社も40,000円以上を目標株価としている。

それに対し、2024年8月6日終値は22,055円だ。

平均的な目標株価に対して現在株価は半値であり、ここから株価2倍になることが示唆されている。

実際のところ、米国の景気見通しが下方修正されることで、目標株価も低下するだろう。

しかし、それでも株価2万円台前半は安すぎると考えて良さそうだ。

まとめ

急落後の東京エレクトロンが買い時であるかについて考察した。

パニック売りによってバリュエーション無視で売られ、株価は明らかに割安な水準まで低下した。

今後の半導体市場の成長を考えれば、株価22,000円台は明らかに割安であり、買い時であると言えるだろう。

しかし、短期的には米国の景気後退懸念が重荷だ。

景気後退懸念によって米テック銘柄は上値が重く、連動して東京エレクトロンの上値も重くなりそうだ。

中長期目線で買い、数年で2倍程度の上昇を目指したい銘柄だと考えている。