株価上昇が続くソニーグループですが、上昇し続けているだけに買い時が難しい銘柄です。
下手なタイミングで買えば急落に巻き込まれる可能性がある一方、躊躇っているうちにさらに上昇してしまう恐れもあります。
このような場合に重要なのは、現在株価が割高なのか割安なのかを知る事と、業績の好調が続くのかという事、そして最悪いくらまで下落する可能性があるのかを知っておくことです。
また、証券アナリストの目標株価を参考に、上手くいった場合はどれだけのリターンが発生するか考えておくことも大切です。
本記事では、それらのトピックについて一つずつ考察し、ソニーグループの買い時について考えてみました。
目次
ソニーの株価は割安or割高?
PERは同業他社より若干割高
今のソニーグループが買い時かを判定するために、現在株価が割安なのか、それとも割高なのかを考えてみましょう。
株価の割安・割高を判定する代表的な指数が、PER(株価収益率)です。
PER(株価収益率)とは?
株価が1株あたり純利益の何倍かを示す株価指標。計算式は【株価÷1株あたり純利益】で、株価は現在株価、1株あたり純利益は当期の業績予想の数値を使用するのが一般的です。
PERは15倍が目安とされ、数字が小さいほど割安、大きいほど割高と言われます。
また、業種によっても基準となるPERは異なり、ソニーグループが属する業種「電機機器」の平均PERは20倍程度と、一般的な目安よりも高いPERが許容されています。
つまり、同じ業績でも「電機機器」の銘柄はより高い株価になる傾向があるということです。
では、ソニーグループの現在のPERはいくつでしょうか?以下が計算式と現在のPERです。
ソニーグループのPER=12,815円(現在株価)÷564.9円(2021年度の1株利益)=22.7倍
22.7倍ということが分かりました。
22.7倍というのは、「電機機器」の業種の中では平均より少し高く、割安というよりも少し割高な方向です。
過去のPER推移でも高水準
もう1つの見方で検証してみましょう。
現在のPERが割高かどうかは、過去のPER推移と比較することでも判定することができます。
許容されるPERは銘柄によって変化するため、過去のPERよりも低ければ割安である可能性が高いです(業績悪化につながるような悪材料が出た場合を除く)。
それでは、ソニーグループの過去3年間のPER推移を見てみましょう。
過去3年間の平均PERは15.2倍で、最大PERが23倍です。
22.7倍というPERは、過去のPER推移と照らしてかなり高い水準のようです。
ソニーの株価指標は割高傾向
つまり、ソニーグループ自身のPER推移と比べても、現在のPERは割高な方向であることが分かりました。
結論としては、業種内は若干割高、過去のPER推移と比べても割高方向であることから、ソニーの現在株価はどちらかと言えば割高だと判断できます。
株価上昇は続くか?反落の可能性は?
業績好調で急落の可能性は低い
株価指標的には若干割高のようですので、株価は今後下落してしまうのでしょうか?
断定はできませんが、今後の業績予想を見る限り、急落の可能性は低そうです。
PERが割高だからといって、必ずしも株価が下落するとは限りません。重要となるのは、業績が順調に成長するかどうかです。
業績が成長している企業は、今後の成長を見越した買いが入るため、今年度の業績をもとにしたPERは高くなる傾向があります。
したがって、今後株価が下落するのか、株価上昇が続くのかは、これからの業績次第ということになります。
2023年度までの業績予想
では、今後の業績予想はどうなっているでしょうか?
以下の表が2023年度までの業績予想です。証券大手 JPモルガンのレポートから引用しています。
2020年度(実績) | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|---|
売上高 | 8兆9,900億円 | 9兆9200億円 | 10兆6500億円 | 11兆100億円 |
営業利益 | 9700億円 | 1兆5800億円 | 1兆1400億円 | 1兆2300億円 |
純利益 | 1兆1700億円 | 7700億円 | 8400億円 | 9100億円 |
EPS | 948円 | 623円 | 677円 | 730円 |
数字だけだと分かりにくいので、グラフに置き換えました。
売上高については、2020年度~2023年度まで順調に拡大していく予想となっています。
純利益については、2020年度は過去最高の1兆1,717億円を達成したものの、2021年度は7,700億円に落ち込み、以降は年10%程度の成長になる見通しです。
2020年度は税金の減額で+2,200億円程度の一時的な利益があったのと、新型コロナによる巣籠り需要が寄与したため、一時的に純利益が跳ね上がっています。
今後の業績については、総じて順調な見通しのようです。
上昇トレンド継続がメインシナリオ
この業績予想を受けて、株価はどうなるでしょうか?
2021年度~2023年度にかけて年間10%もの成長予想となっていることから、これからも上昇トレンドを維持する、というのが市場のメインシナリオです。
また、2021年4月には2,000億円の自社株買いを発表しました。規模は発行済株式数の2.02%に当たり、株価の下支えになることが期待できます。
半導体不足が懸念材料
では、株価下落の可能性が非常に低いかというと、そうでもありません。
大企業なので小さな懸念点を挙げればキリがないですが、最も大きな懸念材料は、半導体不足による業績悪化です。
ソニーが製造・販売しているゲーム機やカメラ、レンズ、には半導体が必須です。業績の大部分が半導体に関わる事業ですので、世界的な半導体不足によって製造ができなくなれば、売上高の減少が業績に直撃する恐れがあります。
もっとも、業績への影響が大きいゲーム機(PlayStation5)の半導体については、2021年分は確保済みと発表されています。また、カメラ・レンズについては業績の比率で言えば小さい方です。
いきなり業績が急悪化することはないと思われますが、半導体不足が想定以上に長引けば、株価の下落要因となりかねません。
半導体については、世界最大手のTSMCがソニーと共同で新工場を建設すると報道され(ニュースはこちら)、今後の安定供給につながる期待があります。操業開始予定の2024年以降は半導体懸念は払拭されるでしょう。
アナリスト評価と目標株価まとめ
大半が強気予想、目標株価コンセンサス15,000円
ソニーグループに対するアナリスト評価は非常に高いです。
ソニーグループをカバーしているアナリストは計16名ですが、そのうち12名が強気という投資判断を公表しています。
残りは、1名がやや強気、3名が中立という投資判断です。
大半が強気判断であることから、目標株価コンセンサス(全アナリストの目標株価平均)も高く、2021年10月現在は15,188円となっています。
現在株価が13,000円前後ですので、ここから16%近く上昇する可能性があるということです。
各証券会社の投資スタンスまとめ
より具体的に、各証券会社の投資スタンスを見てみましょう。
過去3ヶ月間のレーティング情報から、14社の投資スタンスをまとめました。
証券会社 | 判断 | 目標株価 |
---|---|---|
みずほ | 強気 | 18500円 |
クレディスイス | 強気 | 15700円 |
JPモルガン | 強気 | 18000円 |
SBI | 強気 | 14700円 |
マッコーリー | 中立 | 11800円 |
三菱UFJMS | 強気 | 14400円 |
大和 | 強気 | 16700円 |
野村 | 中立 | 11500円(最安値) |
水戸 | 中立 | 13400円 |
岩井コスモ | 中立 | 13000円 |
ジェフリーズ | 強気 | 20100円(最高値) |
モルガンS | 強気 | 16000円 |
東海東京 | 強気 | 14000円 |
メリル | 強気 | 15600円 |
14社中10社が強気判断、4社が中立という判断です。
下落余地よりも上昇余地が大きい
最も高い目標株価は、ジェフリーズ証券が掲げている20100円、その次がみずほ証券の18500円です。
逆に、最も低い目標株価が、野村証券の11500円、その次がマッコーリー証券の11800円です。
かなりの開きがありますが、現在株価が13000円であることを考えると、下落余地よりも上昇余地が高いように見えます。
下がっても−1500円、上がれば+7100円であるなら、利益になる可能性の方が高そうです。
過去のチャートを見ると13000円というのは高値圏に見えますが、まだまだ買い頃なのかもしれませんね。
今後の株価推移を考察
パターン① 上昇トレンドが継続する
株価推移を予想するのは難しいですが、想定されるパターンを考察したいと思います。
可能性が高そうなのは、上昇トレンドが継続し、目標株価コンセンサスである15,000円付近まで上昇するパターンです。
ところどころで調整を挟みつつ、以下のようなレンジで上昇していきそうです。
この上昇トレンドは年間+3,000円くらいの上昇率ですので、2022年後半には15,000円付近に達するでしょう。
買い時としては、株価が調整して下限ラインに接触したタイミングが良さそうです。
2021年10月現在は、上限ラインに接触しそうですので、買い時である可能性は低いと見ています。一旦調整を待ちたいところです。
パターン② 下落トレンド入り
もう一つ考えられるパターンは、上昇トレンドが終わり、下落トレンドに入るパターンです。
いつか下落トレンドに入ることは間違いありませんが、現在株価(約13,000円)から反落するパターンを想定してみましょう。
反落した場合の下値ラインとしては、直近の安値水準が意識されやすいです。
直近の安値は2020年5月の9,989円。したがって、価格的にも節目である10,000円までは落ちる可能性が考えられます。
株価指標的にも、10,000円まで落ちれば割安感が出てくるため、下げ止まりやすそうです。
もう一つの大きな節目は、2020年の最安値水準である6,000円前後です。
ここまで下げることはそうそう無いとは思いますが、今後の業績に悪影響を及ぼすような悪材料が出た場合、下値ラインとして意識されそうです。
また、中間的な節目として、8,000円付近も意識されます。
2020年9月の上昇時にもここで一旦調整していることから、下落時にも8,000円付近は節目となるでしょう。
結論:上昇トレンド押し目が買い時。反落狙いなら1万円前後
直近は12,000円台が買い時
買い時として最も有力なのは、上昇トレンドの押し目だと考えられます。
過去8年間、調整を挟みつつも上昇トレンドを維持しているため、トレンドに乗るのが正解でしょう。
業績は好調が続くと予想されていることから、上昇トレンドが続く可能性が高そうです。
具体的な株価で言えば、2021年内は12,000円台、2022年前半は13,000円付近が買い時となりそうです。
逆張り狙いなら10,000円付近が狙い目
一方、下落を狙った逆張りではいくらが買い時でしょうか。
最も有力なのは、大きな節目である10,000円付近です。2021年5月の急落時にも10,000円で切り返していることから、今後急落が発生した場合、10,000円付近で切り返すことが期待できます。
ただ、チャート的には微妙な位置取りです。悪材料がある場合は8,000円付近まで突っ込むことも想定するべきでしょう。
逆張り狙いなら、リスク承知で10,000円で買うか、チャンスを逃す覚悟で8,000円まで待つか、という考え方が有力だと考えています。
まとめ
ソニーグループの買い時について、株価指標、業績、そしてテクニカル的な面から考察しました。
きれいな上昇トレンドを描いているだけに、いつ買ってもそれなりのリターンが見込める優良銘柄です。
一方、いつ反落するかは分かりませんので、高値掴みになる可能性は常にあるのが怖いところ。
現在株価が割安なのか、割高なのか、証券アナリストによる評価はどうなのかをチェックしつつ、買い時を逃さずに買っておきたい銘柄ですね。
純利益予想が落ち込んだことで株価は一時下落しましたが、その後は再び上昇基調に転じています。