高い優待利回りが魅力の北の達人(2930)ですが、優待廃止のリスクについて知っておかないと、思わぬ損失を被るかもしれません。
北の達人の株価は株主優待によって底上げされています。
そのため、優待廃止となれば株価急落は避けられないでしょう。
今回は、北の達人が優待を廃止する可能性と、廃止された場合の株価急落リスクについて考察します。
目次
国内株に優待廃止の波
近年、株主優待を廃止する銘柄が増えています。
株主優待を実施する企業数は、2022年7月1日時点で1,480社。
2019年の1,532社から減少傾向にあります。
特に、規模の大きな銘柄での廃止が相次ぎ、国内株に優待廃止の波を感じさせます。
有名どころでは、日本たばこ産業(2914)、オリックス(8591)、マルハニチロ(1333)、ABCマート(2670)などが優待を廃止しました。
今後も優待廃止の流れは続きそうです。
優待廃止の可能性は?
優待廃止の可能性アリ
では、北の達人が優待を廃止する可能性はあるでしょうか。
株主優待には一定の費用が発生するため、継続するには企業としてしっかり稼げていることが重要です。
その点、北の達人には不安があります。
なぜなら、2021年以降は業績が悪化しており、2020年と比べて3割ほどの純利益しか稼げていないためです。
そのため、優待を継続するための余力が乏しく、優待廃止の可能性は否定できません。
自社製品の優待は廃止されにくい
一方、優待が継続されそうな要因もいくつかあります。
北の達人の株主優待は自社製品のため、原価分しか費用がかかりません。
また、自社製品を配ることでファンを増やす効果も期待できます。
これまで優待を廃止した銘柄を見てみると、カタログギフトやギフト券など、自社サービスとは無関係の内容がほとんど。
北の達人の優待は比較的継続されやすい部類に入りますので、過度な心配は不要だと思います。
ただし、廃止になった場合のダメージは大きいため、リスクを認識しておくのは大切です。
北の達人の優待費用総額
【1人あたりの費用×株主数】で費用計算
それでは、株主優待が業績に対してどれだけ負担になっているのかを調べてみましょう。
北の達人が負担する優待費用は、【1人あたりの費用×株主数】で大まかに計算できます。
正確には、金融機関は優待を辞退することが多いようですし、外国人投資家は優待の対象外なので、実際にはそれよりも少なくなります。
しかし、それは誤差として今回は無視することにします。
1人あたりの優待費用
株主優待の内容は年によって変わる可能性がありますが、2022年2月期はまぶた特化型美容ジェル『リッドキララ』という商品でした。
リッドキララの価格は税込4,846円です。
したがって、1人あたりの優待費用は送料込みで5,000円と考えられます。
- まぶた特化型美容ジェル『リッドキララ』(10g、約1ヵ月分、定価4,864円(税込))1個を贈呈
- 毎年2月末日の株主名簿に記載または記録された、1単元(100株)以上保有の株主を対象
- 毎年5月または6月上旬の発送を予定
北の達人を保有する株主数
次に、株主優待の対象となる株主数を調べてみます。
株主数は北の達人のIR資料で公開されており、最新のデータによると、2022年2月末時点で6万7,843名です。
株主数は増加傾向ですので、2023年2月末にはさらに増加するでしょう。
したがって、株主数は7万人として優待費用を計算したいと思います。
優待費用は3.5億円
1人あたりの優待費用と、対象となる株主数が分りました。
では、北の達人が負担している優待費用の総額を計算します。
優待費用総額=5,000円×7万名=3.5億円
大まかな計算ではありますが、株主優待を実施するために年間3.5億円の費用がかかっているようです。
実際の費用は原価のみとはいえ、製品を配った分だけ売上が減少したり、転売されることでブランド価値が毀損されるという影響もあります。
したがって、年間3.5億円の費用が発生していると考えて差し支えないでしょう。
優待費用はどの程度重荷か?
3.5億円という優待費用はどれだけの重荷になっているでしょうか。
2023年2月期の業績予想と比較してみます。
- 売上高 :75.9億円
- 営業利益:10億円
- 純利益 :6.6億円
3.5億円というのは、純利益に対しておよそ半分、営業利益に対してはおよそ3分の1という数字です。
これは、優待の負担額としてはかなり重いと言えます。
株主優待を廃止すれば数億円単位で増益できる可能性があり、会社側にとって優待廃止の意義は大きそうです。
優待廃止で株価はどうなる?
株価急落の可能性大
ここまで検討した結果、業績的には優待廃止の可能性があることが分りました。
もし、北の達人が優待廃止に踏み切ったら株価はどうなるでしょうか。
北の達人の株価は株主優待に支えられているため、優待廃止となれば株価急落は避けられません。
現在株価(232円、2022年9月2日時点)での優待利回りは約20%と価格の水準です。
そのため、優待目的でバイ&ホールドする個人投資家が多くいます。
それにより、企業の実力以上に株価が高値となっているのです。
優待廃止後の妥当株価は144円
株主優待が廃止されれば、業績に対して妥当な株価まで下落するでしょう。
では、北の達人の妥当な株価はいくらでしょうか。
まず、2023年2月期の業績予想によると、1株あたりの利益は4.8円となっています。
また、適用する株価収益率(PER)としては30倍くらいが適切でしょう。
小型の成長株ならPER50倍以上でもおかしくありませんが、北の達人の業績は悪化しているので、そこまで高いバリュエーションは適用できません。
以上から、北の達人の妥当株価は次のように計算できます。
妥当株価=4.8円×30倍=144円
−40%下落するリスク
現在株価は232円ですので、仮に144円まで下落した場合、約40%の株価が失われることになります。
つまり、北の達人を買う場合、これだけのリスクが潜んでいるということです。
優待利回り20%超えは確かに魅力です。
しかし、優待の魅力が株価を底上げしているため、廃止された場合のダメージは相応に大きくなってしまうでしょう。
まとめ
北の達人が優待を廃止する可能性と、優待廃止による株価への影響について考察しました。
廃止の可能性は決して高くはないものの、廃止された場合は株価急落が予想されます。
そのため、北の達人に投資する場合は優待廃止リスクを意識するべきでしょう。
年間5,000円相当の優待がもらえるのは魅力ですが、株価下落でそれを上回る損失を被る可能性があり、投資する際は注意するべき銘柄だと言えます。