三井物産の株価を急騰させる「5つの好材料」まとめ




大手総合商社の一角である三井物産が好決算を発表しました。

新型コロナで減収減益は確実視されていたものの、純利益は前年比-14.3%で踏ん張り、大手総合商社の中では最も小さい落ち込み幅です。

また、来期見通しは純利益4,600億円を発表しました。過去15年間で最高益を見込み、今後も好調が続くことが予想されています。

決算を受けて株価は大きく上昇。年初来高値を更新し、市場から注目を集めています。

本記事では、三井物産の株価上昇に寄与する5つの好材料についてまとめた上で、具体的な株価予想まで言及していきます。

三井物産に100株・3年の投資で+8万7千円の利益になる根拠を解説

三井物産の「5つの好材料」

好材料① 純利益予想4,600億円のサプライズ

2021年3月期の決算では、新型コロナの影響もあり減収減益は織り込み済みでした。

注目されていたのは”コロナ後”となる来年度の通期見通し。そこで、三井物産は「純利益4,600億円」というサプライズ予想を発表しました。

来年度の業績は市場予想平均(QUICKコンセンサス)で4,418億円と予想されていましたが、この予想には相当な業績回復が前提となっていました。

ハードルが上がった感があったものの、三井物産の見通しがそれを上回ったことで、株価上昇につながりました。

会社予想QUICKコンセンサス
売上高6兆9,269億円
経常利益5,847億円
当期利益4,600億円4,418億円
一株利益(円)277.49円264.82円
一株配当(円)90円88.45円
2022年3月期の業績見通し比較。会社予想はQUICKコンセンサスを上回る4,600億円となり株価上昇につながった。

ちなみに、4,600億円という純利益は過去15年間で最大です。以下、三井物産の業績推移を抜粋しました。

三井物産の業績推移。2022年3月期は過去15年間で最大の利益となる見通し。

好材料② 新型コロナの影響は純利益−14.3%で踏み止まる

2021年3月期決算では減収減益は織り込み済みで、どの程度のダメージであるかが焦点となりました。

結果は、前期比-14.3%の純利益減。同業他社と比較して最もマイナス幅が小さく、三井物産の強さを確認することができました。

以下が他総合商社との比較です(丸紅は前期赤字のため比較から除外)。

同業他社前期比純利益
三菱商事-67.8%
伊藤忠商事-19.9%
住友商事赤字転落
三井物産-14.3%

日本の総合商社へ投資する際、選択肢としては5大総合商社となりますが、三井物産が有力な選択肢となることで、投資資金の流入が期待できます。

好材料③ 500億円の自社株買い

2021年4月30日の決算発表と合わせて、自社株買いが発表されました。

自社株買いは市場買付けによって行われるため、株価の下支え要因です。

発表された自社株買いの概要をまとめました。

自社株買いの概要
  • 買付総額:500億円
  • 取得上限:3,000万株(発行済株式総数の1.8%)
  • 取得期間:2021年5月6日~2021年6月23日
  • 取得方法:東京証券取引所における市場買付

公式リリース:自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ

株主還元姿勢を評価

買付総額500億円というのは「物足りない金額」という声もありますが、新型コロナで不透明な状況では仕方無いでしょう。

むしろ、株主還元に積極的な姿勢が評価される結果となっています。総合商社大手の中で自社株買いを発表したのは三井物産のみです。

実際には2,000万株程度の取得になる見込み

取得上限3,000万株というのは、あくまで”上限”であって、実際には2,000万株程度になると予想されます。

500億円で3,000万株を取得しようとした場合、株価1,667円以下が前提となりますが、好決算によって株価は2,500円前後で推移しています。

したがって、500億円÷2,500円/株=2,000万株くらいが実際の取得株数になる見込みです。

最低でも1.2%の株価上昇要因

2,000万株というのは発行済株式数のおよそ1.2%に当たります。

したがって、今回の自社株買いによる株価押し上げ効果は1.2%以上が見込まれます。

実際には、市場買い付けによって需要押上げ効果もありますので、1.2%以上の株価上昇をもたらすことになるでしょう。

好材料④ 連続増配を発表

良好な決算を背景に、2021年3月期の配当は80円→85円に増配されました。

さらに、2022年3月期の配当予想は90円が発表され、連続増配が予定されています。

従来の予想では、配当は据え置き、最悪減配もあり得るというほどでしたので、2021年、2022年と続けて増配となるのはサプライズです。

三井物産の配当推移。2021年3月期、2022年3月期は連続増配を見込む。

また、2023年3月期までは配当下限を90円となりましたので、少なくとも2年間は減配リスクがありません。

配当利回りは株価の下支えとなるため、三井物産に投資するリスクが低減したと言えるでしょう。

好材料⑤ アナリストが強気予想

好調な決算を受け、証券アナリストの予想が強気に傾いています。

三井物産をカバーしているアナリストは計13名ですが、そのうち10名が強気予想を出しています。

目標株価コンセンサスも上昇傾向です。現時点で2,655円、実際の株価との乖離率は9.42%となっており、年末までの上昇余地はまだまだあるようです。

また、岩井コスモ証券では目標株価を2,500円→3,000円に引き上げ、JPモルガンは2,900円を継続しています。

証券各社の強気予想からも、今後の強い値動きが期待できると考えています。

三井物産の株価予想

予想株価は「2,912円」

予想株価の算出方法はいくつかありますが、ここではPBR-ROEモデルを採用しました。

簡単に言えば、株価純資産倍率(PBR)と利益率(ROE)から株価が決まる、という理論です。

2022年3月時点で予想されるBPSとROEはそれぞれ次のようになります。

予想BPS(1株あたり純資産)=2,600円

予想ROE(自己資本利益率) =11.2%

株主資本コスト=10.0%

理論PBR=予想ROE÷株主資本コスト=1.12倍

予想BPS・予想ROEについては、業績予想からほぼ必然的に決まるので、大きなズレは無いはずです。

株主本コストはパラメータの設定次第でかなり変動しますが、今回はJPモルガンが採用している10.0%を引用しました。

以上から、三井物産の予想株価は次のように計算されます。

三井物産の予想株価

予想株価=BPS×ROE÷株主資本コスト=2,600円×11.2%÷10.0%=2,912円

3,000円超えの期待は大きい

ROEが11.2%にも達しますので、理論PBR(ROE÷株主資本コスト)が1.0倍を超えるのは必然だと考えています。

BPSが2,600円になるとすれば、PBRが1.0倍で株価2,600円です。PBRが1.2倍程度に上振れば株価は3,000円を超えることになります。

上の株価予想では理論PBRが1.12倍と計算され、予想株価2,912円となりましたが、目線はやはり3,000円です。

中期経営計画を上方修正。達成なら株価3,500円を予想

2021年3月期の好調を受け、中期経営計画で発表した2023年3月期の純利益見通しを5,000億円に引き上げました(従来4,000億円)。

これにより、予想株価は3,500円まで上振れることになります。以下が計算です。

三井物産の予想株価

予想株価=2,800円(BPS)×12.5%(ROE)÷10.0%=3,500円

ただし、鉄鉱石や原油の価格が下落する可能性があり、長期的にはリスクも増大します。

逆に資源価格が上昇する可能性もありますが、長期になるほど不確実性が増すことは念頭におく必要があるでしょう。

従来の中期経営計画では「当期利益4,000億円」「ROE10%」が掲げられていたが、これが上方修正された。画像:三井物産「中期経営計画」より抜粋

まとめ

三井物産の5つの好材料をまとめた上で、今後の株価予想について考察しました。

ROEが10%を超える優良企業であるものの、PBRは1.0倍割れで割安水準にあります。

日本の総合商社は、いわゆる”コングロマリット・ディカウント”によって割安で放置されてきた経緯がありますが、最近はその割安性に着目した投資資金も入ってきていて、適正水準まで株価が上昇することが期待できます。

三井物産は堅調な資源価格によって好調が続く見通しです。配当利回りも高く、個人投資家にとって有力な選択肢の一つだと言えるでしょう。