東レが「2030年に株価3倍」まで上昇を予想する理由




東レは2030年までの経営計画として「TORAY VISION 2030」を発表しています。

この資料では、「グリーンイノベーション(GR)事業」を2013年度比で4倍、「ライフイノベーション(LI)事業」は6倍にすると明言しています。

実現した場合、他の事業と合算し、売上は3兆8,700億円に達するでしょう。

1株利益は150円に伸び、株価はPER15倍として2,250円です。

対して、2023年2月時点の株価は800円前後なので、8年ほどの投資で約3倍もの上昇が狙えるかもしれません。

本記事では、2030年に株価2,000円超を予想する理由について解説していきます。

東レの株価推移と騰落要因

過去10年間の株価チャート

まず、東レのこれまでの株価推移を振り返ってみましょう。

以下が過去10年間の株価チャートです。

東レの過去10年間の株価チャート

2017年は1,200円まで上昇

東レの業績は2018年3月期まで順調でした。

2018年3月期は売上2.2兆円、営業利益1,565億円で過去最高を更新。

株価も上場以来高値となる1,200円まで上昇しました。

過去10年間の業績推移。2018年3月期までは業績が好調だった。

米中貿易摩擦で株価下落

ところが、2018年前半から株価は下落トレンド入りします。

きっかけとなったのは米中貿易摩擦です。

東レの主要顧客は米ボーイングですが、中国向けジェット機の販売が縮小することが懸念され、米ボーイングの株価は急落しました。

それに連れ安する形で、東レの株価も急落したのです。

また、同時期に製品データの改ざんが発覚したのも下落に拍車をかけました。

新型コロナで400円まで下落

貿易摩擦で株価が低迷していたところに新型コロナが発生し、株価はさらに急落。

一時は400円を割り込むところまで下落しました。

東レの炭素繊維はジェット機の機体材料に使用されているため、新型コロナで航空需要が消滅するとの懸念から、大幅な株安を招きました。

さらに、2020年冬は記録的な暖冬となり、冬物衣料向け繊維も低調でした。

脱炭素銘柄として再注目

東レは脱炭素銘柄として今後躍進が期待されています。

そのため、相場の落ち着きとともに株価も回復中です。

特に、地球環境に貢献する「グリーンイノベーション(GR)事業」と、医療・公衆衛生に貢献する「ライフイノベーション(LI)事業」が大きく伸びると予想されています。

次の章から、2030年の業績目標を基に、今後の予想株価を計算します。

長期経営ビジョン「TORAY VISION 2030」について

成長を目指す2つの事業

東レの2030年までの戦略は「TORAY VISION 2030」という長期経営計画にまとめられています。

成長を目指すのは以下2つの事業です。

2030年までに成長させる事業
  • グリーンイノベーション(GR)事業・・・省エネ・風力発電・水処理など
  • イフイノベーション(LI)事業・・・医療用カテーテル・DNAチップ・抗体医薬品など
出典:長期経営ビジョン “TORAY VISION 2030”

数値目標

それぞれの成長目標は、2013年度比でGR事業が売上4倍、LI事業が売上6倍となっています。

つまり、2030年にはGR事業の売上を1兆8,524億円、LI事業の売上を7,176億円にするのが目標です。

出典:長期経営ビジョン “TORAY VISION 2030”

1兆2,700億円の売上増加

2022年度時点の進捗は、GR事業の売上が1兆円、LI事業の売上が3,000億円です。

したがって、これからGR事業で+8,524億円、LI事業で+4,176億円の売上増加が期待できます。

合計すると1兆2,700億円です。

これをもとに、2030年までの業績予想を立ててみましょう。

2030年までの業績予想

経営計画から業績を推定

「TORAY VISION 2030」によると、2030年までに1兆2,700億円の売上増加が期待できることが分かりました。

これをもとに、2030年の業績予想を立ててみます。

2022年度2030年 業績予想
売上2兆4,893億円3兆8,700億円
営業利益1,090億円3,500億円
純利益728億円2,400億円
1株利益49.5円150円

売上は2022年度の2兆5,000億円に、単純に1兆2,700億円を足して3兆7,700億円です。

営業利益率は会社目標の9%として3,500億円、純利益は税金等を考慮して2,400億円としました。

1株利益は発行済株式数から150円と計算されます。

管理人

GR事業とLI事業以外は業績横ばいを想定しています。

2030年までの業績予想

一定割合で成長すると仮定し、1年ごとの業績予想に落とし込みました。

2023年度までの予想については四季報とほぼ一致しています。

売上成長率は年間6%程度なので、現実的な数値です。

年度売上営業利益純利益1株利益
2022年度2兆6,000億円1,300億円910億円56円
2023年度2兆7,587億円1,517億円1,062億円65円
2024年度2兆9,175億円1,751億円1,226億円75円
2025年度3兆762億円2,000億円1,400億円86円
2026年度3兆2,350億円2,265億円1,586億円97円
2027年度3兆3,937億円2,545億円1,782億円109円
2028年度3兆5,525億円2,842億円1,989億円122円
2029年度3兆7,112億円3,155億円2,209億円136円
2030年度3兆8,700億円3,483億円2,438億円150円

2030年までの株価予想

7年後には2,000円を突破

2030年の1株利益を150円と予想しました。

予想PERとしては、過去5年間の平均である15倍を採用します。

これらの条件から、2030年の予想株価として2,250円を算出しました。

2030年の予想株価

予想株価=150円(EPS)×15倍(PER)=2,250円

つまり、2030年頃には2,000円を突破している可能性がありそうです。

ちなみに、予想PERとしては、過去5年間の平均値を採用しています。

2025年の予想株価は1,100円

中期的な目線では、2025年あたりに株価1,100円を目指せそうです。

2025年の1株利益は86円と予想しましたので、これにPER13倍をかけて、1,118円と計算できます。

2025年の予想株価

予想株価=86円(EPS)×13倍(PER)=1,118円

予想PERは2023年2月時点の値を採用しました。

東レは買い時か?

これから炭素繊維の”収穫期”

東レは1960年代から炭素繊維に投資してきました。

他企業が炭素繊維から撤退する中、2000年代に入ってようやく収益化ができ、これから脱炭素の重要素材として需要が爆発しようというところです。

特に、航空機、風力発電の風車、自動車などへの活用が期待されます。

株価が冴えない今、投資するチャンスだと言えるでしょう。

700円台は買い時と予想

東レの業績目標は高く、今後も業績拡大が期待できます。

また、四季報の業績予想も良好です。

未来の社会に必須の技術を持っていることから、基本的に株価は上昇していくと考えています。

株価700円台なら買い時である可能性が高そうです。

100株・8年間の投資で利益17万円

株価780円で100株を購入し、2031年3月末まで保有した場合の利益を計算してみます。

まず売却益です。

2030年頃の予想株価が2,250円で、購入額が780円なので、

売却益=(2,250円−780円)×100株=14.7万円

となります。

次に配当です。

配当性向を30%として、2030年度までの受取額を積み上げると、1株あたり252円となります。

したがって、配当利益は2.52万円です。

配当利益=(19.5円+22.5円+25.8円+29.1円+32.7円+36.6円+40.8円+45円)×100株=2.52万円

以上から、2031年3月末まで保有した場合の合計利益は【14.7万円+2.52万円】で、およそ17万円と計算できます。

理想的なシナリオを想定しているので、下振れる可能性はありますが、それなりの利益を確保することができるでしょう。

まとめ

東レの2030年までの予想株価について考察しました。

2030年までの長期計画を前提にしましたが、2022年時点までの進捗は良好です。

このまま目標を達成すれば、本記事の予想通り、株価2,000円突破となる可能性は高いでしょう。

長期保有を前提に投資したい銘柄だと考えています。