2022年度の上期決算を機にZホールディングスの株価は急落しました。
340円まで沈み、2020年3月のコロナショック以来の安値です。
2021年末には800円を超えていただけに、多くの投資家が損失を受けています。
しかし、実のところは売上が前年比+8.6%と悪くありません。
利益が出ていないのが問題視されていますが、過去にも同じ理由で株価が急落した後、再上昇に転じました。
さらに、LINEやZOZO、PayPayを傘下に収め、それらの相乗効果が2025年に顕在化してきます。
したがって、長期的には今回の急落が買い時になると見ています。
本記事では、Zホールディングスの現状を確認し、今後の株価予想について考えていきます。
Zホールディングスの事業内容
ヤフー、LINE、PayPayなどの親会社
Zホールディングスは2019年に新設された持株会社です。
もともとはヤフーが親会社になっていましたが、組織再編でZホールディングスが親会社になる形になりました。
そのため、ZホールディングスはヤフーやLINE、ZOZOなど、多くの有力サービスを傘下に収めています。

サービス同士の連携で経済圏拡大
最近はPayPayを連結子会社に収めました。
狙いは、LINE・ヤフーとの連携です。
主要3サービスをつなげて強い経済圏を作り、業界トップの楽天に迫ろうとしています。
LINEのユーザー数は9,200万人に達していて、これを経済圏に取り込むことが大目標です。
取り込みに成功すれば、PayPayのユーザー数は2倍近くに増加し、大きな収益を生むことができるでしょう。
PayPayの収益化が課題
今後の狙いは、PayPay経済圏を拡大させることです。
現時点では単体で赤字となっており、今後の収益化が課題です。
PayPay経済圏は「3階建て」の収益化を狙っています。
- 1階部分:加盟店の決済手数料(2021年から有料化)
- 2階部分:加盟店向け営業支援サービス
- 3階部分:ユーザー向け金融サービス(クレカ・銀行・証券・保険など)
1階部分で収支をトントンまで持っていき、2階・3階部分で大きく稼ぐ戦略です。
ID連携は2023年なので、2025年あたりが急成長のタイミングになりそうです。
失望決算で株価急落
減益で-14%の急落
期待値の大きかったZホールディングスだけに、2022年11月2日の上期決算(4〜9月)は失望を招きました。
売上高は過去最高の3,943億円を達成。
しかし、営業利益は−13.8%の減益、純利益は−25.7%に沈みました。
決算を受け、翌日の株価は340円まで急落し、下落率は14.18%を記録しています。

コロナショック以来の安値水準に
株価340円は2020年3月以来の安値です。
当時はコロナショックであらゆる銘柄が急落しましたが、今のZホールディングスは単独でコロナショックを演じているような状況です。
2020年3月の最安値は281円でしたので、その辺りが下値として意識されるでしょう。
10年チャートでも低位置
過去10年間のチャートで見ても、300円割れとなっていた時期はほとんどありません。
そのため、300円付近は買い時となる可能性が高そうです。
上場以来安値は281円ですので、そこを割れる可能性は低いと考えています。

株価急落の理由
成長がストップ
株価が急落した最大の理由は、成長がストップしたことです。
Zホールディングスは「メディア」「コマース」「戦略」の3つのセグメントから成ります。
そのうち、主力の「メディア」「コマース」の成長がストップしました。
各セグメントの状況を見てみましょう。
- メディア:売上収益の四半期成長率が+81%から+5%に減速、利益は減益
- コマース:売上収益は+10.3%だったが、利益が+0.1%で横ばい
- 戦略 :売上収益は+17.7%だったが、利益は赤字
以下が会社発表の数値データです。

主力のメディア事業の売上が+5%に減速したのが打撃でした。
利益は635億円から601億円に減少しています。
戦略事業はPayPayが牽引役で+17.7%の売上げ成長でしたが、まだ利益に結びついていません。
今後もどれだけ利益を出すか不透明なので、株価の押し上げ効果は限定的です。
これらの結果、Zホールディングス全体としては成長がストップしたと見られています。
サービス間の相乗効果が不発
株価が急落したもう1つの理由は、傘下サービスの相乗効果が想定ほど得られていないことです。
ZホールディングスはLINEを傘下に収めており、利用者数は9,200万人にもなります。
したがって、LINEの利用者を別サービスに誘導することで、他のサービスも成長できるはずでした。
他にも、2019年にZOZOを傘下に収めたことで、ヤフーショッピングとの相乗効果も期待されていました。
しかし、現実にはそう上手くいっていません。
LINEとの連携は個人情報保護への対応により遅れ、ID連携は未実現です。
また、Eコマースの分野でも、ZOZO買収以降も横ばいが続いています。
買収の度にZホールディングスの株価は上昇してきましたが、現時点では期待程の相乗効果が見られていません。
PayPayが唯一の成長事業
傘下サービスのうち、急成長を維持しているのはPayPayです。
しかし、PayPayは未だ先行投資の段階にあります。
そのため、事業単体では投資額が収益を上回り、赤字の状態です。

赤字額は減ってきてはいますが、今後どの程度の利益になるのか見通しがはっきりせず、成長期待が株価へ織り込まれていません。
そのため、PayPayの成長は株価急落を止めることができませんでした。
急落後の株価は割安?
PBRは1倍未満
高値から半値未満になったことで、株価は相当割安になっています。
まず、実績PBRは目安の1倍を下回りました。
株価340円での実績PBRは0.92倍となっており、過去5年間で最も割安な水準です。

PERはやや割安
株価340円での予想PERは27.6倍となっています。
Zホールディングス自身は業績予想を開示していないので、日本経済新聞のQUICKコンセンサスから算出しました。
QUICKコンセンサスによると、今期EPS(1株利益)は12.33円と予想されています。
予想PER=340円(株価)÷12.33円(コンセンサスEPS)=27.6倍
IT大手としては一般的なPERで、特別に割安というわけではありません。
しかし、PayPayなど多くの有力サービスを傘下に収めていることから、やや割安であると考えています。
過去最安値に接近
Zホールディングスの最安値は2018年12月につけた250円です。
あと30%も下げれば250円を割り込みますので、株価水準だけ見れば相当安い印象です。
これだけ安いと、目を瞑って数百株買うのもありかもしれません。

株価は目安より65%安い
日本経済新聞の記事に、Zホールディングスの各事業の価値を計算したものがありました。
それによると、事業価値の合計は7.5兆円という結果となっています。
一方、現在のZホールディングスの時価総額は約2.6兆円です。
したがって、現在株価は事業価値の合計より65%もディスカウントされているようです。
正味価値の3分の1ならば、割安と考えてよさそうですね。
各証券会社の目標株価
9社の投資スタンス
次に、各証券会社の投資スタンスを確認しておきましょう。
弱気スタンスこそいませんが、中立とやや強気が多く、全体的に統一感がありません。
また、強気から引き下げている例が目立ちます。
証券会社 | 投資スタンス | 目標株価(変更前→変更後) |
---|---|---|
岡三 | 中立 | 480円 → 420円 |
GS | 強気 | 500円 → 490円 |
シティG | 中立 | 600円 → 460円 |
野村 | やや強気 | 430円 → 450円 |
三菱UFJMS | 中立 | 440円 → 380円 |
モルガンS | 強気 | 700円 → 600円 |
SBI | やや強気 | 430円 |
ジェフリーズ | やや強気 | 645円 → 450円 |
JPモルガン | 中立 | 670円 → 420円 |
目標株価は現在株価を上回る
目標株価は最も低くて380円、高いものでは600円となっています。
全体としては400円台の目標株価が大半です。
そのため、400円台の回復がメインシナリオと見て良いでしょう。
目標株価を見る限り、300円台は買い時だと判断できます。
Zホールディングスは買いなのか?
直近の決算内容は良くありませんでしたが、株価は割安水準にあると考えられます。
特に、個別の事業価値の合計を大きく下回っている点は注目です。
今後事業同士のシナジーが発揮できれば、大きな株価上昇が狙えます。
したがって、Zホールディングスは買い時であると見て良いでしょう。
もし、さらに株価が下落するとしても250円が下値です。
一方、上値は800円までありますので、リスク・リワードの観点でも買い判断になります。
ただし、大きなサービスを複数抱えているため、これから悪材料が出る可能性は常にあることは大前提です。
追記です。傘下のLINE・ヤフーと合併することが発表され、株価は約400円まで回復しました。しかし、まだまだ割安だと考えています。