大塚ホールディングス(以下、大塚HD)は業績悪化の可能性が高く、株価は下落気味です。
2025年以降は主力医薬品が相次いで特許切れを迎えます。
それを補う新薬が不足しており、2024年をピークに売上・利益ともに減少していくでしょう。
とはいえ、今の株価は下げ過ぎだと考えています。
安く見積もっても、2025年に株価4,600円は維持していると考えるのが妥当です。
さらに、2025年まで保有すれば、配当利益と売却益で+13万円の利益が期待できると予想しました。
本記事では、大手証券の業績予想をベースに、大塚HDの予想株価を考察していきます。
目次
大塚HDの株価推移と株価指標
上場以来の株価推移
まず、大塚HDの株価推移を簡単に振り返りましょう。
大塚HDは2010年に初値2,170円で上場しました。
上場後の株価は綺麗な上昇トレンドを描き、2018年には5,000円台後半まで上昇しました。
ところが、2018年末から急落が始まります。
2019年中頃には3,500円まで下落し、その後も株価は横ばいで低迷しています。
株価下落の直接の原因は業績悪化ですが、主力医薬品の特許切れが2025年あたりに迫っているのも、株価低迷の原因です。
2022年後半には新薬の治験失敗が発表され、株価は上がりにくい状況です。
株価指標
本記事執筆時点(2023年3月7日)の株価は4,038円です。
この株価での株価指標を計算しました。
予想PERは東証プライム平均並みの14.3倍です。
また、実績PBRは目安の1倍に近い数値です。
株価指標的には平均的な数字だと言えるでしょう。
ただし、製薬銘柄は業績が安定しており、PER20倍くらいが業界水準です。
したがって、今の株価は若干割安だと判断できます。
今後の業績予想
2032年までの業績予想
株価予想を立てる前に、今後の業績予想を確認しましょう。
JPモルガンのレポートから、2032年までの業績予想を引用しました。
決算期 | 売上 | 純利益 | 1株利益 |
---|---|---|---|
2023/12 | 1兆8,000億円 | 2,366億円 | 424円 |
2024/12 | 1兆7,700億円 | 2,328億円 | 417円 |
2025/12 | 1兆6,800億円 | 1,954億円 | 350円 |
2026/12 | 1兆6,300億円 | 1,985億円 | 356円 |
2027/12 | 1兆6,200億円 | 1,840億円 | 330円 |
2028/12 | 1兆6,300億円 | 1,911億円 | 342円 |
2029/12 | 1兆5,800億円 | 1,972億円 | 353円 |
2030/12 | 1兆4,600億円 | 1,686億円 | 302円 |
2031/12 | 1兆4,000億円 | 1,580億円 | 283円 |
2032/12 | 1兆3,400億円 | 1,362億円 | 244円 |
業績は悪化していく
今後10年間、売上と利益は減少していく見通しとなっています。
特許切れの影響を新薬で補えないためです。
2023年の売上は1兆8,000億円ですが、2028年には1兆6,300億円に、2032年には1兆3,400億円に減少する予想です。
利益も同程度の割合で下がっていきます。
今後10年間の予想株価
PER倍率法で算出
上の業績予想をもとに株価を予想していきます。
計算には、単純なPER倍率法を使用します。
この方法では、業績予想の1株利益に、妥当なPERをかけることで予想株価が算出できます。
PER倍率法
PER×EPS=株価であることから、1株利益(EPS)に妥当なPERをかけて株価を推定する方法。計算が単純というメリットの反面、PERの設定によって予想が大きく変動してしまうデメリットがある。
妥当PERは14倍
それでは、妥当なPERを設定していきます。
以下のグラフは、過去の大塚HDのPER推移です。
レンジは12倍~30倍ですが、PERが高かったのは業績懸念が無かった時期です。
将来の業績は悪化していく予想のため、PERは低めに設定するべきでしょう。
ここでは、ほぼ下限である14倍に設定したいと思います。
製薬企業のPERの目安は20倍程度のため、14倍の設定であれば、将来の業績悪化を織り込むことができます。
今後10年間の予想株価
業績予想の1株利益にPER14倍をかけて予想株価を算出しました。
決算期 | 1株利益 | 予想株価 (1株利益×14倍) |
---|---|---|
2023/12 | 424円 | 5,936円 |
2024/12 | 417円 | 5,838円 |
2025/12 | 350円 | 4,900円 |
2026/12 | 356円 | 4,984円 |
2027/12 | 330円 | 4,620円 |
2028/12 | 342円 | 4,788円 |
2029/12 | 353円 | 4,942円 |
2030/12 | 302円 | 4,228円 |
2031/12 | 283円 | 3,962円 |
2032/12 | 244円 | 3,416円 |
2023年、2024年は6,000円近い株価になっていますが、これは業績悪化前なので参考程度に見てください。
業績悪化が顕著になる2025年以降が重要です。
2025~2029年はおよそ4,000円台後半ですので、このあたりが当面の妥当株価だと考えています。
2025年予想株価は4,600円
2030年以降の業績悪化も加味し、2025年あたりの株価を4,600円と予想しました。
上で算出した株価から若干割り引いています。
というのも、新薬の治験失敗や、想定ほど売れないリスクを加味する必要があるためです。
現在株価は4,038円なので、100株の投資で+5万円くらいは取れると予想しています。
大塚HDは買い時か?
買い時である3つの理由
大塚HDは買い時だと考えています。
その理由は、
- 5年後の予想株価4,600円に対し、現在は4,000円前後
- 長期保有で配当や自社株買いで利益が取れる
- 想定ほど業績が悪化しない可能性
の3つです。
総じて、株価4,000円前後は割安と考えています。
①5年後の予想株価4,600円
本記事では、5年後の株価として4,600円を予想しました。
現在株価は4,000円前後なので、5年保有で+5万円程度の利益が取れると予想しています。
少なくとも、下がってしまう可能性は低いでしょう。
②配当や自社株買いで利益
配当利回りは2.5%ほどあります。
5年も保有すれば+12.5%となり、十分なリターンが確保できます。
また、将来的には自社株買いも行うと期待され、利益になるでしょう。
③想定ほど業績が悪化しない可能性
例えば武田薬品の場合、登場すると思われていた後発品が登場せず、好業績が続いています。
大塚HDでも、後発品が登場しないという幸運があるかもしれません。
また、新薬が期待以上に売れる、医薬品以外の事業が伸びる、ということもあり得ます。
このように、業績が想定ほど悪化しないシナリオは複数考えられますので、悲観論が多い今は買い時だと考えています。
5年投資した場合の利益見通し
5年間の配当予想
100株を5年間保有した場合の利益を考えてみます。
まず配当です。
大塚HDは配当性向40%が基本なので、今後5年間の1株利益予想に0.4をかけて配当予想を立てました。
決算期 | 1株利益 | 1株配当 |
---|---|---|
2023/12 | 424円 | 170円 |
2024/12 | 417円 | 167円 |
2025/12 | 350円 | 140円 |
2026/12 | 356円 | 140円 |
2027/12 | 330円 | 132円 |
1株配当の合計は749円です。
したがって、100株の投資で7万4,900円の配当利益になります。
5年後の売却益
次に、株価上昇による売却益です。
現在株価が4,038円なのに対し、5年後の株価として4,600円を予想しました。
したがって、売却益は5万6,200円となります。
売却益=[4,600円(5年後予想株価)-4,038円(現在株価)]×100株=5万6,200円
想定利益は13万円
配当利益と売却益を合計すると13万1,100円となります。
4,000円前後で投資すれば、およそ13万円の利益は確保できそうです。
利回りで言えば+32%(5年間)で、年平均6.4%です。
株式投資としては年+5%取れれば十分なので、年+6.4%は優れたリターンだと言えます。
まとめ
大塚ホールディングスの今後の予想株価について考察しました。
今後は業績悪化が続くため、株価は軟調となっています。
しかし、4,000円前後はさすがに安く、買い時である可能性が高いでしょう。
主力医薬品の特許切れを加味しても、2025年の株価は4,600円以上を維持していると予想されます。
そのため、配当利益を加味して2025年までに+13万円の利益が取れると予想しました。
この手の予想はなかなか当たらないですが、少なくとも、大塚HDは長期保有で利益を出しやすい銘柄なのは確かだと考えています。