ネットショップ開設サービスを展開するBASE(4477)が株価下落に見舞われています。
最高値からおよそ10分の1の水準にまで落ち込んでしまいました。
2020年5月以降から保有している投資家は全員が損失となっている状態です。
急成長が期待されていたBASEに何が行ったのでしょうか。
本記事では、BASEの株価が急落した5つの原因について解説します。
理由① EC需要の減少懸念
コロナ禍でEC市場が急拡大
BASEは個人向けネットショップ作成サービス「BASE」が主力です。
したがって、EC(ElectricCommerce≒ネットショッピング)市場の成長度合いが株価に大きく影響します。
ECの市場規模は2020年に過去最高の成長率、+8.08%を記録しました(参照:経済産業省 令和2年度 電子商取引に関する市場調査)。
市場の急成長により、BASEでの取引総額(GMV)が2倍弱に伸び、株価が急伸した経緯があります。

EC急成長は一時的に終わった
BASEの株価が急騰したのは、EC市場の急成長が続くという期待があったためです。
しかし、実際には、BASEの取引総額が急成長したのは2020年度第2四半期のみ。
第3四半期はむしろマイナス成長となってしまい、急成長は一時的という懸念が強まりました。

ちなみに、EC業界トップである楽天も、2020年2Q以降は低成長が続いています。
急成長が一時的だったのはEC業界全体の傾向のようです。

EC需要減少懸念で株価は40%急落
2020年度第3四半期のマイナス成長を受け、翌日からBASEの株価は急落しました。
発表直前にはおよそ2,500円あった株価は、1ヵ月も経たずに1,500円まで下落。
およそ-40%という急落に見舞われました。
株価のコアである業績が振るわないため、その後も株価が上がりにくい状態が続いています。

理由② 株価上昇の行き過ぎ
PBRが約90倍、PSRが40倍にまで上昇
そもそも、BASEの株価上昇は行き過ぎだったという事も急落原因の一つです。
BASEの最高値は3,448円(株式分割考慮後)でしたが、当時のPBR(株価純資産倍率)は88.9倍、PSR(株価売上高倍率)は43.4倍にまで高まっていました。
一般的に見て、これは明らかに割高水準です。
他銘柄と比べて明らかに割高
参考までに、他銘柄の株価指標を見てみましょう。
東証マザーズでの株価指標の目安は、高くてもPBRで10~20倍、PSRは20倍が限度。
他銘柄と比べ、BASEの株価指標は明らかに割高だったと言えます。
東証マザーズの主力銘柄のPBR(本記事執筆時点)をまとめました。
直近の株価下落もあってどの銘柄も10倍未満です。
突出して高かったメルカリでさえ、最高値付近でのPBRは28倍でした。
PBRが88.9倍というのは明らかに異常値であることが分かります。
妥当な株価まで急落
異常な水準に達した株価指標は、株価下落という形で是正されることになります。
最高値で3,448円をつけた株価は、2022年5月までに336円まで下落。
この株価下落によってPBRとPSRは妥当な水準まで切り下がりました。
ただし、PBR2.48倍、PSR3.78倍というのは、むしろ安すぎる水準まで下がりすぎた感があります。
一定の株価反発は期待できそうです。
理由③ 業績が市場予想を下回った
2021年12月期が期待に届かず
2022年2月に発表された2021年12月期決算が追い討ちをかけました。
業績が市場の期待に届かず、株価下落に拍車がかかったのです。
以下が2021年12月期の実績と市場予想(QUICKコンセンサス)の対比です。
売上高は1億円、営業利益は1億2,300万円市場予想に届かず、投資家の失望を招きました。
2021/12月期実績 | 市場予想 | |
---|---|---|
売上高 | 99億円 | 100億円 |
営業利益 | −9億7,700万円 | −8億5,400万円 |
株価は480円→350円に下落
この決算が発表されたのが2022年2月9日。
翌日は一時10%上昇する局面もありましたが、結局は売りが優勢となり、3.4%安まで下落しました。
以降、チャートは下落トレンドを描き、2月後半には350円まで下落しました。

赤字転落も失望要因
また、黒字から赤字転落となったことも投資家心理を冷やした一因でしょう。
2021年は利益よりも先行投資を優先し、広告宣伝費や開発人員の採用で出費が嵩みました。
それにより、利益水準は2017年のレベルまで逆戻りしています。

理由④ 米金利の上昇による理論株価低下
米国の長期金利が急上昇
新興株全般に言えることですが、米国の金利上昇が強烈な下落圧力となっています。
金利上昇は成長途上にある銘柄にとって特に悪材料です。
- 理論株価の低下
- 債権への資金流出
- 資金調達コストの増加
- 有利子負債の利払い増加
以下のチャートが米国債10年物の金利推移です。
2020年後半から上昇が続き、2022年5月には3.0%を突破するに至っています。

金利上昇で新興株に売り
金利上昇を受けて新興株は軒並み下落局面に入りました。
BASEの株価推移を見ても、金利上昇に従って下落していっていることが分かります。

金利上昇による売りが全てではありませんが、売られるきっかけになったのは確かでしょう。
理由⑤ 大株主による株式大量売却
サイバーエージェントが売抜け
株価が高水準だった2020年11月、大株主のサイバーエージェント(4571)が株式売却を発表しました。
売却数は45万1,000株(分割考慮すると225万5,000株)で、発行済株式数のおよそ2%にあたります。
株価が割高であると判断して利益確定に動いたのでしょう。
ちなみに、この売却によってサイバーエージェントは営業利益41.37億円を計上しています(IR資料)。
需給悪化懸念で株価は下落
サイバーエージェントが保有していた株価が放出されたことで需給の悪化が懸念されました。
株を買い取った投資家が利益確定に動き、2%分の売り圧力に襲われる可能性があるためです。
また、残りの45万株も売却するのではという懸念も残りました。
残り45万株が未売却
サイバーエージェントはまだ2%の株式を保有しています。
BASEの株価がこれだけ低迷しては売るに売れないはずですが、株価が持ち直した際に売却に動く可能性があります。
今後の懸念材料だと言えるでしょう。

まとめ
BASEが急落した5つの要因について解説しました。
2020年に新型コロナ恩恵銘柄として急騰したものの、結局は「行って来い」で元の株価に戻ってしまいました。
結局、2020年当時の成長期待が大きすぎたということでしょう。
とは言え、BASEの業績はここ2年で着実に成長しています。
株価が2年前に逆戻りした今、案外買い時なのかもしれませんね。