原発・防衛の国策銘柄として急騰してきた三菱重工だが、ここにきて上昇にストップがかかった。
主な理由は、川崎重工業の裏金問題だ。
裏金問題の発覚を受け、同じく潜水艦を受注している三菱重工業にも調査の手が入ることになってしまった。
調査による悪材料発覚を恐れ、投資家は先手を打って売りに回った形だ。
果たして、今回の急落は一時的な調整なのだろうか。
あるいは、下落トレンドの始まりなのだろうか。
本記事では、三菱重工業の株価が急落した理由について解説した上で、今後の株価推移について予想していく。
目次
株価が急落した理由
川崎重工業の不祥事が波及
絶好調だった三菱重工業の株価がなぜ急反落したのだろうか。
急落の主因となったのは川崎重工業の不祥事だ。
三菱重工業も調査対象になり、懸念先行で下落
同業である川崎重工業が、客先にあたる自衛官に対して裏金による金品提供を行っていた問題だ。
当初は川崎重工業だけの問題だったのが、三菱重工業にも飛び火した。
なぜなら、潜水艦を防衛省から受注しているのは川崎重工と三菱重工だけであり、三菱重工も同様の金品提供が疑われたからだ。
調査の対象になったことで、問題が発覚した場合を恐れた投資家が先行して株売りに動いた結果、株価が急落した。
何かしらの問題が発覚したとしても業績への影響は限定的で、株価下落は一時的となる見通しです。
割高感も重なって急落に
問題の調査対象となった7月10日、株価2,000円から突如1,800円台前半にまで急落した。
高値からの下落率は10%超にも及ぶ。
しかし、直近の業績を踏まえれば、株価2,000円以上というのは相当高い株価水準だ。
今期予想の1株利益は68円であるため、最高値での予想PERは30倍を超えていた。
最高値時の予想PER=2,087円(最高値)÷68.4円(1株利益)=30.5倍
一方、過去の三菱重工の予想PERは12~15倍だった。
つまり、過去のPERを踏まえれば今の株価は2倍以上も割高であり、利益確定売りに押されても仕方のない状況だったと言える。
今後の株価見通し
まだ買い局面
反落したとはいえ、三菱重工業への買い意欲は強い。
ほぼ全ての証券会社が目標株価を引き上げていることから、今後も買い優勢の展開が予想される。
以下が2024年4月以降に発表された目標株価だ。
証券会社 | 投資スタンス | 目標株価 (変更前→変更後) |
---|---|---|
ジェフリーズ | 強気 | 1040円 → 2000円 |
岡三証券 | 強気 | 1340円 → 1730円 |
SMBC日興 | 強気 | 1250円 → 1800円 |
岩井コスモ | 強気 | 1200円 → 1650円 |
野村證券 | 中立 | 1140円 → 1300円 |
大和証券 | 中立 | 1500円 |
シティグループ | 中立 | 1550円 → 1540円 |
水戸証券 | 中立 | 1200円 → 1500円 |
JPモルガン | 中立 | 1200円 → 1500円 |
モルガンS | 強気 | 1050円 → 1900円 |
信用取引の需給は良好
信用売買による需給も悪くない。
株価上昇に伴い、信用売りが増加して信用買いが減少してきた。
2024年7月5日時点の取り組み倍率(信用買残÷信用売残)は3.8倍と低い。
つまり、買残の解消による売り圧力が低く、売残の解消による買い圧力が高い状況といえる。
したがって、信用残高の観点からは、まだまだ買いが続きそうだ。
日付 | 信用売残 | 信用買残 | 信用倍率 |
---|---|---|---|
2024/7/5 | 656万6,700株 | 2,495万1,700株 | 3.8倍 |
上昇後の反落に要注意
短期的には買いが強そうだが、上昇トレンド一服後は相当な下落が予想される。
株価2,000円でも今後3年間の業績拡大を織り込んだ株価であり、ここからさらに上昇した場合は割高感が意識されるだろう。
仮に、需給の影響で株価3,000円まで上げたとしても、その後の谷は深いものになりそうだ。
したがって、三菱重工を買う場合は利益確定のタイミングが重要となる。
まとめ
三菱重工業の株価が下落した理由と、今後の見通しについて解説した。
下落した理由は、金品提供問題が同社に波及したことと、株価の割高感が原因だ。
そのうち、金品提供問題については業績への影響は軽微である。
そのため、急落分は早々に戻しつつある状況だ。
一方、株価の割高感は消えていないので注意が必要である。
短期的にはこのまま上昇トレンドが続いたとしても、いずれは反落局面が来ると予想され、その下落に巻き込まれないように注意が必要だ。
三菱重工業をこれから買う場合は利益確定のタイミングに注意したい。
本記事は動画化していますので、動画の方が良ければぜひご覧ください。