任天堂の株式分割が株価に与える影響は?




値がさ株の代表格だった任天堂が、31年ぶりの株式分割に踏み切ります。

株式分割といえば好材料。分割後は買いを入れる個人投資家が増え、株価上昇が期待されています。

しかし、株式分割=株価上昇、とは限りません。

実は分割後にダダ下がりという例もいくつかあるので、買いは慎重に入れるべきでしょう。

本記事では、株式分割が任天堂の株価に与える影響について考察しました。

株式分割の概要

まずは株式分割の概要を確認しましょう。

公式発表資料はこちらから見ることができます。

任天堂の株式分割の概要
  • 分割数:10分割
  • 発表日:2022年5月10日
  • 実施日:2022年9月30日(取引は10月1日から)
  • 分割前の株式数:1億2,986万9,000株
  • 分割後の株式数:12億9,869万株

分割実施は約5ヵ月後

株式分割の発表日は5/10、実施日は9/30の予定。出典:日本経済新聞

発表~実施までは約5ヵ月の期間があります。

早くても2ヵ月くらい前の発表が多いので、約5ヵ月前の発表は異例です。

任天堂が株式分割を行うのは31年ぶり。誰も予想していなかったことを踏まえ、早めにアナウンスしたのでしょう。

また、決算がネガティブだったことから、好材料を同時に発表したかったという思惑もありそうです。

最低投資額が564万→56.4万円になる

株式分割によって最低投資額が小さくなります。

分割前の任天堂の株価は5万6,000円を超えていたため、100株投資するだけでも560万円以上の資金が必要でした。

10分割されることで最低投資額は約56万円まで下がります。

個人投資家でも十分買える投資額ですね。

株式分割でなぜ株価が上昇する?

一般的に株式分割を行うと株価は上昇すると言われています。

最低投資額が下がることで、買うことができる投資家が増えるためです。

560万円もの資金を1銘柄に投資できる投資家はそう多くありません。

数百億円を運用する大口投資家はともかく、個人投資家の参入はこれまで限られてきました。

56万円から投資できるようになったことで、個人投資家の参入が増え、株価にはプラスに作用します。

管理人

実際に株価が上昇するのか、過去の株式分割の例を見てみましょう。

過去に株式分割をした銘柄

過去に株式分割した5銘柄をピックアップしました。

時価総額が大きく、比較的注目された株式分割です。

過去の株式分割例
  1. トヨタ自動車(7203)
  2. TDK(6762)
  3. SCSK(9719)
  4. くら寿司(2695)
  5. 太陽ホールディングス(4626)

株式分割の発表日・分割日・分割数は次のとおりです。

この情報を元に、分割後の値動きを追ってみましょう。

銘柄発表日分割日分割数
トヨタ自動車2021/9/282021/9/305分割
TDK2021/7/282021/9/303分割
SCSK2021/7/302021/10/13分割
くら寿司2021/3/182021/4/302分割
太陽ホールディングス2021/8/22021/9/302分割

分割例① トヨタ自動車

株式分割付近のチャート

トヨタ自動車は2021年9月28日に分割を発表し、9月30日に分割を実施しました。

分割数は5分割で、10,000円台だった株価は2,000円台に下がりました。

以下が分割付近のチャートです。

トヨタ自動車の株式分割スケジュール 出典:日本経済新聞

株価は徐々に上昇

分割発表直後は大きく値下がりしています。

これは決算が悪かったためです。

しかし、その後は持ち直し、徐々に上昇するトレンドとなりました。

総じて、分割後の株価推移は良好だったようです。

分割例② TDK

株式分割付近のチャート

TDKは電子部品の大手メーカーで、スマホ向け電池なども供給しています。

2021年7月28日に株式分割を発表し、9月30日に分割を実施しました。

以下が分割付近のチャートです。

TDKの株式分割スケジュール 出典:日本経済新聞

分割発表も株価は下落

7月28日の分割発表後は株価が大きく下落しました。

同時に発表された決算が冴えなかったためです。

株の価値は結局は業績なので、業績が冴えなければ売られる運命にあるようです。

9月30日の分割実施もほぼ無視されて急落しています。

分割例③ SCSK

株式分割付近のチャート

SCSKは住友商事系の情報システム会社です。

2021年7月30日に株式分割を発表し、10月1日に実施しました。

以下が分割付近のチャートです。

SCSKの株式分割スケジュール 出典:日本経済新聞

株式分割は材料視されず

株価は分割発表後に上昇、分割実施後は緩やかに下落しています。

ただ、分割との連動性は薄いように見えます。

当時のSCSKの業績は市場予想を下回り、ネガティブな印象でした。

それにより、株式分割がほぼ材料視されなかったようです。

分割例④ くら寿司

株式分割付近のチャート

くら寿司は2021年3月18日に株式分割を発表し、4月30日に実施しました。

以下が分割付近のチャートです。

くら寿司の株式分割スケジュール 出典:日本経済新聞

株価は素直に上昇

分割発表後の株価は素直に上昇し、上昇率は10%を超えました。

一時反落したものの、分割実施で再び上昇トレンドに乗っています。

株式分割による需給改善が効いたと見て良いでしょう。

分割例⑤ 太陽ホールディングス

分割後の値動き

スマホ・PCの主要部品にプリント配線板というのがあり、これに使われる特殊なインクを手掛ける企業です。

2021年8月2日に株式分割を発表し、9月30日に実施しました。

以下が分割付近のチャートです。

太陽ホールディングスの株式分割スケジュール 出典:日本経済新聞

分割発表後は大幅高

分割発表後の株価は急騰しています。

1.5か月ほど上昇トレンドが続き、20%超の上昇率となりました。

その後は反落しましたが、分割実施後に盛り返し、再び上昇トレンドに乗っています。

株式分割が株価上昇に一役買ったと見て良さそうです。

過去の傾向から分かること

分割で株価上昇の可能性は「若干高い」

定量的に見るため、各銘柄の分割前の株価、半年後の株価をまとめました。

銘柄発表前株価半年後の株価騰落率
トヨタ自動車2,077円2,223円+7.03%
TDK4,423円4,100円-7.30%
SCSK2,193円1,923円-12.3%
くら寿司3,535円3,985円+12.7%
太陽ホールディングス2,520円3,360円+33.3%

5銘柄中、半年後に株価が上昇していたのが3銘柄、下落していたのが2銘柄という結果です。

株価上昇の可能性は若干高いと言えそうです。

結局は業績次第

株価が下落した2銘柄はどちらも決算が冴えませんでした。

分割後の株価推移は、結局は業績に左右されるということでしょう。

したがって、業績の悪い銘柄は、株式分割の発表があっても買わないのが無難です。

結局、任天堂は買うべきか?

任天堂の今期業績は冴えません。

次のグラフの通り、売上・営業利益ともに減少する見通しです。

任天堂の今期業績は冴えない。出典:日本経済新聞

過去に分割を行った銘柄の値動きを踏まえると、任天堂は買わない方が無難のように思います。

ただ、任天堂の株式分割を待ち望んでいた個人投資家も多いはず。

これまでとても買える金額ではなかった銘柄が、50万円ちょっとで買えるようになるわけですから、買いに走る個人投資家は多いでしょう。

人気の高さから分割後は大きく上げる可能性もありそうです。




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