ヤマダHD(9831)の「自社株買い1,000億円」で株価はどこまで上がる?株価上昇効果を検証




ヤマダHDから自社株買い1,000億円というポジティブサプライズが発表されました。

発行済株式数の約24%という規模で、相当な株価上昇が期待できそうです。

しかし、実際にどの程度の株価押し上げ効果があるのでしょうか?また、この自社株買いに乗るための買い時はいつでしょうか?

本記事では、ヤマダHDの自社株買いによる株価押上げ効果について考察しました。

自社株買いの概要

まずは自社株買いの概要について押さえておきましょう。

ヤマダHDによる公式発表資料はこちらから閲覧できます。

2022年5月6日に発表された自社株買い概要
  • 株式の取得上限:2億株
  • 発行済株式数(自己株式除く)に対する割合:23.9%
  • 取得総額:1,000億円
  • 取得期間:2022年5月9日~2023年5月8日
  • 取得方法:市場買付

自社株買いは発行済株式数に対して数%〜10%程度が多いです。

今回の23.9%というのは異例の規模だと言えます。

自社株買い発表はポジティブサプライズ

自社株買いのサプライズで翌日はストップ高となった。出典:日本経済新聞

ヤマダHDによる自社株買いはおよそ1年半ぶりです。

業績も冴えない中、このタイミングで自社株買いが発表されると予想していた投資家は少ないでしょう。

しかも、1,000億円という規模は驚きです。

過去の自社株買い履歴を調査した限り、ヤマダHDにとって過去最大の自社株買いのようです。

株価上昇率は理論的に+31%

2億株という自社株買いは株価をどの程度上昇させるのでしょうか。

自社株買いによって流通する株式が減少すれば1株当たりの価値が高まります。

価値上昇率を計算することで、理論的な株価押上げ効果を計算することが可能です。

計算した結果、+31.0%という結果になりました。

1株価値の上昇率

1株価値の上昇率=8.38億株÷(8.38億株ー2億株)=31.0%

管理人

上記の計算のうち、8.38億株が流通している株式数、2億株が自社株買いの上限です。

市場買付けなので上昇効果大

実際の株価上昇効果は理論値を超えてくるでしょう。

というのも、今回の自社株買いは「市場買付け」であるためです。

市場買付けでは、ヤマダHD自身が買い注文を出して株式を買付けていきます(実際には代理人が実行します)。

それによって、需給の需要側が強くなるため、株価を押し上げる方向に作用するのです。

また、それを理解している投資家がさらに買いを入れるという好循環がさらに株価を押し上げることも期待できます。

2023年5月まで効果持続

自社株買い期間は2023年5月8日までの1年間です。

それまで断続的にヤマダHDの買い注文が入ると予想され、期間中は株価押し上げ効果が持続します。

ただし、開始直後から積極的に買い進めれば、後半資金が枯渇する可能性もあります。

進捗状況は把握するようにしておきたいですね。

自社株買いの進捗はヤマダHDのIRページに不定期に掲載されます。

管理人

2014年に実施した自社株買いでは、序盤から飛ばしすぎた結果、予定の半分の期間で取得額上限に達しました。

自社株買いで株価はどこまで上がる?

自社株買いによる上昇目処を考えてみましょう。

まず、発表資料からヤマダHD側が持っている目安の株価がわかります。

1,000億円で2億株の取得を目指しているということは、株価500円くらいの目線を持っているようです。

また、自社株買い発表前の株価(391円)に株式価値の上昇率(+31%)をかけると、目安の株価は512円となります。

さらに、需給の改善による株価上昇効果も見込めます。

従って、株価は低めに見積もって500円、上昇トレンドに乗れば600円を目指すこともできそうです。

過去の自社株買いによる値動きは?

2020年の自社株買いでは20%上昇

過去に行われた自社株買いでは、株価はどの程度上昇したのでしょうか。

まず2020年に行われた500億円の自社株買いを見てみましょう。

2020年の自社株買いでは素直に上昇した。出典:日本経済新聞

自社株買いスタートと共に株価は上昇し、およそ1.5ヶ月で20%ほど上昇しました。

株価押し上げ効果は確かなようですね。

2020年の自社株買いは新型コロナの影響もあり1.5ヶ月で中断されました。2020年5月中旬の長い陰線はそのためです。

2014年の自社株買いでは10%下落

一方、2014年に行われた自社株買いでは異なる値動きでした。

2014年5月に自社株買いをスタートしたものの、株価はむしろ下落トレンド入り。

5ヶ月後には10%の株価が失われました。

この時も500億円の規模でしたが、株価下支えのために自社株買いが急激に進み、1年の予定が5ヶ月で終了してしまっています。

自社株買い期間中でも、必ずしも株価が上がるとは限らないようですね。

出典:日本経済新聞

1,000億円全てが使われない可能性も

1,000億円というのはあくまで取得上限ですので、全てが消化されない可能性もあります。

株価が高止まりした場合などは自社株買いを控えることあるでしょう。

そのあたりはヤマダHD側の塩梅なので予測不能ですが、前回の500億円の自社株買いでは全て使い切っています。

投資家としては株価が上がるに越したことはないので、株価が高いから自社株買いが進まない、という状況はむしろ歓迎です。

株価上昇なら取得株数は減少

取得上限として2億株が設定されていますが、株価が上昇した場合、実際の取得株数は2億株より減るでしょう。

1,000億円で2億株を買うには平均取得株価が500円である必要があります。

500円を大きく超えた場合、株価押し上げ効果は弱まることになります。

ただし、自社株買い開始前の株価が391円でしたので、500円に達すれば投資家にとっては御の字です。

過去の自社株買い履歴

参考までに、ヤマダHDの過去の自社株買いをまとめました。

調査できた限りでは、2013年以降に3回の自社株買いを実施しています。

1回あたり500億円というのが直近2回の傾向です。

今回の1,000億円は異例の規模ですね。

自社株買い発表日取得金額上限取得株数上限
2020年4月1日500億円1億株
2014年5月27日500億円1億5,000万株
2013年10月15日150億円6,000万株

まとめ

ヤマダHDによる1,000億円の自社株買いについて考察しました。

1株あたりの価値が3割上昇し、しかも需給改善の効果まであるため、それなりの株価上昇が期待できそうです。

とはいえ、業績が振るわないことにはいくら自社株買いを実施しても焼石に水です。

観光客が回復し、インバウンド需要による業績改善を期待したいところですね。