- 2021年6月11日:2020年度通期決算の情報を追記
株主優待で人気のオリックスが新型コロナの影響で大幅な減益となりました。
2021年3月期の決算は前年比-36.4%の減益に陥り、リーマンショック以降の減益幅を記録しています。
オリックスは利回りが10%に迫る「高利回り銘柄」として注目されていますが、株主還元コストをまかなえるだけの利益を上げられるのか疑問符が付きます。
業績悪化により利益が減少すれば、株主優待廃止も考えられるでしょう。
株主優待の原資は純利益ですので、この純利益が低下すれば廃止は必然。株を保有することによるリターンが少なくなり、株価も下落することから、長期目線の投資家にとって深刻な事態です。
本記事では、オリックス株主優待の存続可否について考察していきます。
オリックスが負担している優待費用や、その計算過程も記載しています。裏側の数字を把握しておけば、いざ業績が悪化した場合でも冷静に対処することができますよ。
目次
オリックスの株主優待について復習
優待存続について考える前に、株主優待の内容について整理しておきます。
オリックスの株主優待は「ふるさと優待」と呼ばれるカタログギフトです。
100株の保有でBコース(5,000円相当)がもらえ、100株を3年以上保有している場合はAコース(10,000円相当)にランクアップします。
5,000円相当のBコースでも優待利回りは3.8%。配当と合わせた利回りは9.7%となり、株式市場全体でも破格の利回りとなっています。
また、オリックスグループのサービスを割引価格で利用できる「株主カード」もありますが、こちらはオリックス側の原資は不要な優待ですので、今回は議論の対象外としたいと思います。
オリックスの株主優待は廃止されるか?
オリックスの株主優待に必要な原資は「約100億円」
手厚い株主優待が人気である反面、優待を維持するために支払っている原資は多額です。
その額はおよそ100億円と計算されました。
オリックスの株主優待の場合は自社製品・サービスとは無関係な優待ですので、単純に費用としてこれだけの金額がのしかかっています。
- 2020年3月末時点の個人投資家株数:1億8,800万株
- →優待カタログの発行数:最大で188万
- →平均コスト7,000円とすると、約132億円
- →200株以上保有している場合を考慮してディスカウントし、約100億円
純利益で100億円は相当な額ですが、業績が悪化しているオリックスはその費用を捻出できるのでしょうか。
2020年度は純利益3,000億円を確保
優待維持に必要な100億円に対し、2020年度の純利益は3,027億円。
割合としては3.3%ですので相当余裕があります。
しかし、純利益というのは変動しやすく、売り上げが数パーセント落ちるだけでも純利益が数十パーセント飛ぶ場合もあり、油断できません。
次に、2021年3月期の業績予想を見てみましょう。
2021年3月期は純利益800億円程度の可能性
オリックスは2021年3月期の業績予想を開示していませんが、決算説明資料の中で純利益予想を出しています。
新型コロナ収束シナリオによって、純利益予想が次の通り試算されています。
- 2021年度第3四半期までに緩やかに回復→純利益1,800〜2,000億円
- 2021年度末まで継続→純利益800〜1,200億円
仮に800億円となった場合の1株利益は62円程度。
2020年度の配当は76円でしたので、利益で配当を賄うことができず、最悪の場合は減配となる可能性が出てくるでしょう。
追記:2021年3月期は純利益1,924億円で着地
決算が出ましたので追記です。
2021年3月期は純利益1,924億円の着地となり、回復シナリオでした。
新型コロナによる優待改悪・廃止の可能性はほぼゼロになったと言えます。
株主優待廃止の可能性は低い
ワーストシナリオでは配当も十分に出せないということが分かりましたが、株主優待はどうなるでしょうか。
結論としては、廃止の可能性は非常に低いと考えられます。
新型コロナによる業績悪化は一時的なものですので、新型コロナを理由に株主優待廃止にまで至ることは無いでしょう。
オリックスの株主構成で個人投資家の比率は14.2%と低く、優待費用が100億円程度と抑えられているということも、優待維持を予想する大きな理由です。
優待見送り・改悪の可能性は?
改悪の可能性は十分考えられます。
優待条件が100株から200株に引き上げられたり、5,000円相当の優待が3,000円相当に引き下げられる、などです。
現在の優待利回りは3.8%もありますので、多少改悪しても他の株主優待より利回りは高く、大きな株価下落とはならないでしょう。
株主優待で人気の すかいらーくグループも2020年に優待改悪を実施しましたが、株価下落は一時的で、その後は元の株価に戻っています。
また、今年度に限り優待実施を見送るという手もあります。しかし、優待見送りはオリックス経営陣が先行きを不安視していることの表れとして見られるため、株価下落を招く可能性があります。
そういう意味では、優待見送りはリスクのある判断です。
オリックス株はいつ、何円で買うべきか
ワーストシナリオでの理論株価
ワーストシナリオでは1株利益が62円程度となりますが、その場合の株価はいくらでしょうか。
業績が安定している時のオリックスのPERは約7倍で推移してきましたので、それを適用すると株価434円となります。
434円ではPBR=0.2倍以下となりますので考えにくいですが、仮にPER14倍を前提としても868円です。
理論株価を計算する前提次第では、株価1,000円未満は正当化されるでしょう。
つまり、現在株価(約1,300円)も決して割安とは言い切れません。
オリックスの買い時は?
買って間違いないタイミングだと言えるのは、ワーストシナリオ回避の可能性が高くなったとき、つまり四半期決算で良い数字が出た時です。
2021年度で緩やかに回復した場合は純利益1,800億円が試算されています。
このシナリオでは1株利益140円となり、配当+優待を予定通り出してもなお利益が残る計算です。
以降、業績が回復するという見通しとなれば、1,300円という水準は非常に割安ですので、買って間違いないと言えるでしょう。
ただし、決算で数値が出る前に新型コロナ収束の雰囲気となっているはず。
決算より先んじて、感染者数の減少や、ワクチン開発の進捗を手掛かりに買うことで株価上昇の恩恵も得られる可能性が高まるでしょう。
結果的に、2021年8月には株価2,000円を突破しました。1,300円台はまさに買い時だったようです。
オリックス優待廃止の可能性まとめ
会社予想のワーストシナリオでも株主優待廃止の可能性は小さく、過度に心配する必要はなさそうです。
四半期決算次第では株価回復も十分あり得るでしょう。
新型コロナの影響はまだ不透明ではありますが、長期保有を前提とすれば1,300円代は割安な水準だと考えます。