7兆円企業「美団点評」の日本版を目指すタイムバンクの未来

美団点評の日本版を目指すタイムバンクの未来とは




タイムバンクの目標は7兆円もの時価総額を持つ中国企業。

突然そんなことを言われても信じるタイムバンクユーザーは少ないかもしれませんが、ともに米国「グルーポン」を真似た共同購入サービスとしてスタートした美団点評とタイムバンクは、国は違えど源流を同じくする存在です。

2008年に誕生したグルーポンの躍進をきっかけに、そのビジネスモデルを真似たサービスは2010年以降、雨後の筍のように大量に出現しましたが、現在ではその多くは消滅するか事業を縮小しています。

先に「源流を同じくする」と表現しましたが、グルーポンの時価総額7兆円(2019年10月25日時点)に対し、タイムバンクは10億円にも満たない規模であり、その実力差は”雲泥の差”と表現してもまだ足りないほどです。

タイムバンクもその他多くと同様に消滅するのか、はたまた兆単位の大企業として成功を収めるのでしょうか。

同じ道筋で成功した中国の大企業「美団点評」に迫り、さらに生まれては消えていった共同購入サービスとタイムバンクの違いに着目し、タイムバンクの行く末を占おうと思います。

グルーポンの中国版としてスタートした「美団」

「美団点評」は2015年に二つの大手スタートアップが合併して誕生しましたが、その片割れである「美団」は2010年に共同購入サービスとして創業しました。

当時は米国の共同購入サービス「グルーポン」を真似したサービスが最大6,000近くも登場し、各社が熾烈な戦いを繰り広げた結果、現在ではほんの数社しか生き残っていません。そんな中、美団は先見性と豊富な資金力、そして強力な展開力で戦いを勝ち抜きました。

美団がライバルと水を空け始めた2010年後半。中国のクーポン市場は5,300億円に達し、美団のユーザー数は業界3位の559万人でした。

当時のオンライン共同購入サービスのユーザー数は4625万人。全ユーザーの10%以上を占める美団の売り上げは、サービス開始1年未満にして700億円を優に超えていたと思われます。

ランキング共同購入サイト月間ユニークユーザー数(万人)
1淘宝聚划算2256.6
2拉手網905.6
3美団網559.1
4糯米網517.0
524券359.3
6優享団334.5
7団宝(グルーポン)320.5
8愛幇団318.7
9F団306.8
10満座294.7

出展:「中国のオンライン共同購入市場に関する研究報告書②」の日本語版を発行~中国のオンライン共同購入市場とサイトの特性 2010年~

当時の勢いを象徴する逸話として、23%引きで出品された約210万円(当時レート)のメルセデスベンツ”Smart”が、わずか3時間で200台を完売した、というものがあります。売り上げベースで3億円にもなり、この出来事は中国全土でも話題になったそうです。

当初は「グルーポンのパクリサービス」と揶揄された美団でしたが、2013年に新天地となる外食産業(フードデリバリーサービス)に殴り込みを敢行しました。

いま日本でもウーバーイーツが浸透しつつありますが、中国ではフードデリバリーサービスが当時から都市部を中心に発展していました。すでに先行サービスが幅を利かせていた状況に美団が参入し、圧倒的な展開力を武器にわずか1年で市場シェア60%を獲得するに至りました。

2015年に「ぐるなび」のような口コミサービス「大衆点評」と合併し、時価総額1兆円を突破。既存事業でも次々と新カテゴリを開拓し、レストランのレビューからフードデリバリー、カーシェアリング事業、チケット販売まで行う、生活総合プラットフォームに成長。現在は6億人以上の利用者を抱えています。

グルーポンの模倣から始まった美団でしたが、事業の水平展開と垂直統合を繰り返し、今やグルーポンを遥かに凌ぐ巨大企業に成長しました。

美団点評のアプリ画像

美団点評のアプリには様々なサービスが並ぶ

そくほう
美団点評は「Meituan-Dianping」と書き、「メイチュアン・ディアンピン」と読みます。まだ知名度は低いですが日本にも進出しているので、読めるとドヤ顔できますよ。

「美団点評」が成功した理由

6,000社近くが凌ぎを削る熾烈な競争のなか、美団が勝ち残り、さらに発展し続けた理由は何でしょうか。

日本と中国では、インターネットの普及加速度やお国柄が大きく異なりますが、タイムバンクの今後を占う上で美団が成功した理由は大いに参考になるに違いありません。

豊富な資金を背景とした規模の拡大

共同購入サイトは出品数がものを言います。

アプリ全般に言えることですが、日ごと、週ごと、月ごとのアクティブユーザー数はダウンロード数と同じくらい重要な指標であり、共同購入サイトの場合、魅力的で豊富な出品数、そして日々更新されていくラインナップがユーザーをアプリにつなぎとめるために必要です。

そのためには人海戦術的な営業を多方面に展開することになりますが、先行して発生する費用を賄えるだけの豊富な資金が必要となります。

美団を創業した連続起業家Wang Xing(王興)氏はアリババなどから大規模な資金調達に成功しており、これが他の共同購入サイトに勝る規模の拡大が可能となりました。

中国の市場は非常に大きいものです。先に紹介したフードデリバリーサービス参入時は、先行サービスが18都市に展開していたのに対抗し、美団は30都市に展開するという力技で市場を開拓しました。もちろん数だけの単純な話ではありませんが、展開力を武器に市場を制圧した好例です。

垂直統合による総合プラットフォーム化

生活に関わるカテゴリを網羅した総合プラットフォームを目指したことも美団の勝因だと言えるでしょう。

一つのアプリでできることが多くなれば、それだけ利便性は向上し、より多くのユーザーを呼び込むことができます。

さらに、販売の仲介だけでなく、口コミ機能や決済機能、物流(主にフードデリバリー)までを自社で賄う「垂直統合」を行いワンストップ型アプリへと進化しました。

他者に依存しないことでコスト面で有利になる上、ユーザーはアプリへの接触時間が多くなり、次の購入にもつながりやすくなる利点があります。

ワンストップ体制を整えることは容易ではありませんが、それを実現した美団と戦えるスタートアップはもはや現れないだろうと言われています。

他者に先んじた事業展開

美団は共同購入サービスの黎明期にあたる2010年1月に設立され、同3月に他社に先んじてアプリをリリースしました。

2019年現在で生き残っているサービスはどれも同時期にリリースされており、わずか数ヶ月の先行者利益を守り切ることが重要だったようです。

中国のお国柄がECサイトを後押し

これは美団の勝因というより、中国で共同購入を含むECサイトが急発展した理由ですが、中国はキャッシュレス文化が以前から根付いていました。

無論、ECサイトとキャッシュレスは親和性が高く、キャッシュレスに慣れているユーザーはネット上で支払うことに対する抵抗が小さくなります。

さらに、当時は毎年3,000万人近くが新たにインターネットを利用し始めるほどインターネット普及率が爆発的に伸びたことでECサイトに対する需要も旺盛だった上、2007年頃の中国企業による食品汚染問題が自国製品とメディアへの不信感を深め、口コミが載るECサイトでの買い物が当たり前となっていったという背景があります。

タイムバンクは「美団点評」の日本版となれるか?

ここまで美団点評とはどのような企業か、そしてどのように成功したかを考えてきましたが、同じグルーポン類似サービスとして再スタートしたタイムバンクは美団と同じ成功の道をたどることができるのでしょうか。

日本の共同購入サービス事情

はじめに断っておくと、日本国内では文字通りの共同購入サービスはほとんど行われていません。

共同購入というと、販売目標人数が設定され、達成することで初めて販売されることを指しますが、実際にはサービスや物品を単に割引価格で販売する業態がほとんどです。

しかし、紛らわしいので、本記事ではグルーポンから派生したサービスは全て「共同購入サービス」と呼んでいます。

さて、日本の共同購入サービス事情ですが、中国と時を同じくして、日本でも200以上が共同購入サービスを立ち上げました

しかし、中国同様にほとんどのサービスが淘汰され、2019年現在、生き残っているサービスは7つのみで、他は事業を縮小するか完全に終了しています。

日本国内の共同購入サービス生き残りは7つのみ

出典:日経デジタルマーケティング「200社超が参戦した”グルーポン型”共同購入クーポンビジネス、今は1ケタ

中国では先行した企業が勝者となりましたが、日本の場合、最初にサービスを開始した「Piku」は撤退、生き残ったサービスも大した成果が出ておらず、まさに”全員負け”の様相です。

タイムバンクはそんな「終わった市場」に打って出たわけですが、果たして勝算はあるのでしょうか。

特化型ECなら生き残れる?

現在生き残っているのは、豊富なサービスを誇る元祖グルーポンと、レストランや映画などの特化型サイトです。

一見、特化型であれば生き残れる可能性はありそうですが、生き残っている特化型サイトは自前の販売網やブランドを活用している場合が多く、単独かつ特化型として生き残れる可能性は低そうです。

そもそも、タイムバンクは「あらゆる時間の価値を可視化する」というのが創業当初からの理念であるので、特化型は鼻から目指していないでしょう。

目指すは”サービスのAmazon”

タイムバンクが目指すのは、まさに美団点評の日本版と言える生活総合プラットフォーム。

日本にはAmazonがすでに浸透していますが、タイムバンクはいわば「サービスのAmazon」になろうとしています。

現在のところ、日本にはワンストップ型の生活総合プラットフォームは存在していません。

通信販売に特化したAmazonや楽天、グルメに特化したぐるなび。その他、ホテル予約やタクシー配車、フードデリバリー、美容室の予約など、それぞれに特化したアプリが日本ではよく使われています。

これらのサービスを統合したプラットフォームを作ることに成功すれば、美団点評の成功を日本で再現することができそうです。

タイムバンクの今後を予想

通販勝負はジリ貧

ご存知の通り、日本での通販市場はAmazon、楽天、ヤフー(+ZOZO)が不動のTOP3であり、3社でシェアの8割を占めています(参考)。

これらの企業と正面から戦いを挑むのは蟷螂の斧というもの。大規模な還元キャンペーンでユーザーを一時的に増やすことができても、キャンペーン終了後には多くのユーザーが離れてしまい、ジリ貧となってしまうのが目に見えています。

サービスへの需要を喚起できるか

そもそもタイムバンクの通販事業は一時的な戦略でしかないと思われます。

多くの人が利用経験のある通販で、まずはタイムバンクに触れてもらい、知名度を上げる。その間にサービスの出品を拡充し、次第に通販からサービス販売にシフトしていき、総合プラットフォームを目指していくのではないでしょうか。

サービスをアプリで購入する、という体験は、日本人にはあまり馴染みがありません。通販事業はその緩衝材だろうと見ています。

あとは、どこまでサービスへの需要を喚起できるかが課題です。安さだけでなく、UI設計や予約の利便性、アプリ自体の信頼性も重要になってくるでしょう。

実際にタイムバンクでサービスを使ってみましたが、予約は電話のみ、英数字混合のチケット番号を電話口で伝える必要があるなど、現状は便利とは言い難い仕様です。オンラインで予約できるようにするなど、まだまだ改善の余地があります。

タイムバンクの勝算

飲食店のチケットや美容室のチケットなど、複数の業態を一つのアプリで利用できるというのは他にはない体験です。

楽天も「楽天トラベル」や「楽天チケット」などを展開していますが、それぞれサイトが分かれています。ヤフーも同様ですね。

サービスごとにサイトが分かれていることは、サイト制作側にとってもユーザーにとっても分かりやすい反面、横断的なサービス紹介ができない(例えば、ベビーグッズを購入したユーザーに幼児歓迎の飲食店をサジェストするなど)ことや、ポイントや決済が別々になってしまう不都合があります。

それに対し、タイムムバンクでは旅行やグルメが一つのアプリにまとまっています。まとめっている事で、ホテルを予約した場合、ホテル周辺の人気飲食店をサジェストできますし、飲食店での支払いにホテル予約で得たポイントを使うなど、活用の幅が大きく広がります。

情報は”21世紀の石油”とも言われます。情報を一つのアプリに集約することに勝機があるように思います。

生活総合プラットフォームの構築は時間と労力がかかりますが、ひとたび軌道に乗せることができれば外部からの資金調達も有利となり、さらなる拡大が期待できるでしょう。

今後の展開予想

タイムバンクはマーケットプレイスでありますので、ダウンロード数はもちろん、月間アクティブユーザー数(MAU)と取引総額(GMV)が重要な指標でしょう。

「1億円ポイントバック祭」に代表される大規模キャンペーンでこの二つの指標は急激に伸びているはずですが、その反面、キャンペーン頼りとなってしまっているきらいがあり、事実、キャンペーンが終わった途端にアプリが閑散としてしまっている印象を受けます。

ですので、まずはアプリ自体の魅力を高めるため、UIの改善と出品数の拡充を継続的に行うでしょう。ユーザーが継続的に利用するためには、欲しい商品を簡単に探すことができ、そして基本的なカテゴリの商品が揃っていることが必要です。

ダウンロード数、アクティブユーザー数、取引総額などの指標について満足な結果が得られれば、第三者割当増資により資金調達を行うと予想しています。

実例として、同じようにスタートアップとして成功した「メルカリ」は、ダウンロード数150万、取引総額数億円の時点で第三者割当増資による14億円の資金調達を実施しています。以降、23億円、80億円と資金調達を繰り返し、東証マザーズへの上場で約500億円の資金調達に成功しました。

2019年9月時点でタイムバンクのダウンロード数は130万を突破していたため、メルカリの例を考えれば増資の可能性は十分ありそうです。

タイムバンクの未来

資金調達による規模拡大、そして使いやすいアプリ開発を実現できれば、3年ほどで日本中が知るアプリに成長する可能性を秘めています。

成功への道は美団点評がすでに示しています。日本と中国のギャップをうまく埋めることができれば、兆とまではいかなくても、時価総額1,000億円を超える「ユニコーン企業」として株式上場することもあり得ます。

実際にはダウンロード数が100万を超えた程度。統合プラットフォームを目指すとしても、宿泊や飲食、美容など個々のサービスには競合が存在し、利益をあげるには数々の障壁があるでしょう。

決して簡単ではありませんが、タイムバンクがいつか日本で当たり前のアプリとなる未来に期待したいと思います。

まとめ

今回は、中国の「美団点評」の成功例から、タイムバンクの勝算や今後の展開について考えてみました。

最後に今回のトピックをまとめたいと思います。

・美団点評とタイムバンクは同じくグループの派生アプリ。
・美団点評は中国で大成功し、時価総額7兆円を突破。ユーザー数は6億人。
・タイムバンクも美団と同じく「生活総合プラットフォーム」を目指すと予想。
・「生活総合プラットフォーム」が実現できれば、日本で当たり前のアプリになる未来もありうる。
そくほう
最後までお読みいただき、ありがとうございます。自分でもかなりお花畑な記事になってしまったと自覚していますが、タイムバンクが目指す未来について少しでも参考になれば幸いです。
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