楽天&日本郵政の資本提携が「好材料でない」3つの理由




以前から業務提携が発表されていた楽天と日本郵政ですが、さらに踏み込んだ「資本業務提携」に発展しました。

業務提携よりも強力な関係になることで、楽天市場の販売力と日本郵政の物流力がさらなる相乗効果を発揮することが期待されます。

しかし、今回の資本業務提携には違和感があります。

まず、一般的に資本業務提携はお互いに出資し合う対等なものですが、今回は日本郵政が一方的に出資をするという形であること。そして、その資金が全てモバイル事業に投資される、ということです。

本来、楽天と日本郵政は物流分野をメインに協業するという話でしたが、資金を全てモバイル事業に投じてしまっては、業務提携の趣旨とはずれてしまいます。

今回の資本業務提携は資金調達の意味合いが強く、実は好材料ではなく、株式が希薄化する悪材料と扱うのが正解かもしれません。

本記事では、楽天と日本郵政の資本業務提携が好材料ではない3つの理由を紹介していきます。

楽天を事業内容・株価推移・材料・株価予想の4つの視点で総まとめ

日本郵政との資本業務提携が発表され、楽天の株価急騰

提携報道で8ヵ月ぶりの高値

3月12日13:00、楽天の株価が突如として急騰しました。

きっかけは、NHKが報じた日本郵政と楽天との資本業務提携です。以前から業務提携の話は進んでいたものの、さらに踏み込んだ資本業務提携が報道されたことで期待が膨らみ、株価上昇につながりました。

資本業務提携とは

資本業務提携は、業務提携に伴い、対象会社に対して資金注入を、提携先に対して議決権を与える手法である。 資本提携により、業務提携という単なる契約関係より強固な関係性を構築することが出来る。 

引用:M&A Capital Partners「資本業務提携とは?

3月12日の楽天株価は最高値1,275円を付け、1年8ヵ月ぶりの高値となった。

資本業務提携の概要

NHKの報道では資本業務提携をするということだけが報じられ、詳しい内容は取引終了後に日本郵政・楽天双方から発表されました。

発表された資本業務提携の内容は以下の通りです。5つのカテゴリに分けられ、各カテゴリでの協業内容が示されています。

資本業務提携の概要
  • 【物流】
  • ・共同の物流拠点の構築
  • ・共同の配送システム及び受取サービスの構築
  • ・日本郵便及び楽天の両社が保有するデータの共有化
  • ・新会社設立を含む物流DXプラットフォームの共同事業化
  • ・RFC(楽天フルフィルメントセンター)の利用拡大及び日本郵便のゆうパック等の利用拡大に向けた、日本郵便・楽天両社の協力・取り組み
  • 【モバイル】
  • 郵便局内のイベントスペースを活用した楽天モバイルの申込み等カウンターの設置
  • 日本郵便の配達網を活用したマーケティング施策の実施
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)】
  • ・楽天グループから日本郵政グループに対するDXに精通する人材の派遣
  • ・楽天グループによる日本郵政グループのDX推進への協力
  • 【金融】(検討段階)
  • ・キャッシュレスペイメント分野等での協業
  • ・保険分野での協業
  • 【EC】(検討段階)
  • ・物販分野での協業

引用:日本郵政グループと楽天グループ、資本・業務提携に合意

日本郵政から1,500億円、その他900億円調達し、合計2,400億円を調達

肝心の資金調達内容ですが、日本郵政からは1,500億円、その他から900億円、合計2,400億円を調達します。

資金調達の金額と内訳
  • 日本郵政 :1,500億円
  • テンセント:657億円 (中国のIT大手)
  • ウォルマート:166億円 (世界最大のスーパーマーケットチェーン)
  • 三木谷興産:50億円 (三木谷氏の親族)
  • スピリット:50億円(三木谷氏の親族)

テンセントからの出資も話題となっています。テンセントは時価総額6兆円もの規模を誇る中国のIT大手で、エンタメやEコマースなどの分野で協業することが予定されています。

ウォルマートとは、ウォルマート参加である西友を通じ、ネットスーパーでの協業が実現しています。

2,400億円の使い道

調達した2,400億円は全額モバイル事業に投資することが発表されています。

具体的には、通信エリア拡大のための基地局整備です。1,840億円を4G基地局の整備に、310億円を5G基地局の整備に、250億円をデータセンターへの資金として活用します。

引用:第三者割当による新株式の発行及び自己株式の処分に関するお知らせ

資本業務提携が楽天の好材料ではない3つの理由

理由① モバイル事業の資金不足が明白になった

「日本郵政との資本業務提携」のインパクトで見逃されている感がありますが、調達した資金は全てモバイル事業の基地局に投入される予定です。

本来、楽天モバイルの投資資金は全て借り入れで賄う計画でした。資金計画は国に提出済みであり、当初計画の6,000億円で不足は無いはず、というのが原則です。

しかし、ここにきて2,400億円を楽天モバイルに投じるというのは、当初計画が甘かったということです。まだ足りない可能性がある上、設置数が増えれば工事が遅れる可能性も出てくるでしょう。

管理人

楽天は2月時点で「設備投資額を、当初想定の6000億円から3〜4割増やす」と明らかにしているので、設備投資増額が今に分かったことではありません。ただ、今後も”想定外”が出るかもしれないのは懸念材料です。

参考記事:楽天モバイル、基地局整備費1兆円規模に 当初想定の6000億円から大幅増 黒字化は23年度めざす

楽天モバイルへの投資が嵩むというのは、投資家にとっては悪材料です。

増資を行う場合は株式の希薄化が発生しますし、借入の場合は財務状況が悪化し、やはり株価にはマイナスです。

投資額が当初計画から増えるというのは、悪材料に他なりません。

理由② 日本郵政主導の提携、楽天のメリットが不明瞭

業務提携自体は以前から決まっていた

日本郵政と楽天は以前から業務提携を行っていました。提携内容は、物流面での効率化・利便性向上がメインです。

参考記事:日本郵便と楽天、物流領域における戦略的提携に向けて合意

当初の業務提携には出資関係は無く、完全に対等な提携です。

楽天側から出資を依頼

今回はそこに”資本”が加わった形ですが、資金使途は全てモバイル事業。本来の業務提携内容とは関連はありません。

つまり、1,500億円の出資は楽天側から依頼したもので、業務提携とは別枠と考えるのが自然です。

一応、提携内容にはモバイル事業関連の項目もあります。

「郵便局内のイベントスペースを活用した楽天モバイルの申込み等カウンターの設置」「日本郵便の配達網を活用したマーケティング施策の実施」がそれに当たりますが、資本を要する施策ではなく、1,500億円をモバイル事業に投じる事と整合性を持たせるため、後付けした印象を受けます。

新興メディア「NewsPicks」でも楽天側が依頼した体で記事が書かれている。

業務提携が日本郵政有利に変化

結果的に、出資側である日本郵政が上位に立ったと言えます。

資本業務提携はお互いに株を持ち合うことが多いですが、今回は日本郵政が一方的に楽天株を持つ形。

一方の楽天は、日本郵政側の株を保有せず、力関係が非対称です。

表面上は対等という体裁ですが、要求を通しやすいのは8%もの楽天株を保有する日本郵政側であることは間違いありません。

日本郵政にとって楽天モバイルはある意味”どうでも良い”ことで、重要なのは楽天で販売された商品が日本郵政の物流網に乗ることと、楽天のデジタルに関する知見を手に入れることです。

楽天モバイルのために日本郵政がやることは、自身の手がかからない、基地局設置場所やイベントスペースの提供程度ではないでしょうか。

管理人

契約マージンを取り、郵便局でキャリアショップ並みの対応をすることは考えられます。しかし、楽天としては顧客獲得コストが跳ね上がる上、日本郵政としては郵便局での業務がさらに煩雑になり、双方現実的では無いでしょう。

理由③ 14.8%もの希薄化が生じる

今回の資本業務提携は増資にあたり、日本郵政以外への割り当ても合わせて約2億1,166万株が新規発行されます。

現時点での発行済株式数は14億3,457万株。希薄化率としては約14.8%となります。

希薄化率の計算

211,656,500株(新規発行株数)÷1,434,573,900株(発行済株式数)≒14.8%

本第三者割当により、割当予定先に対して割当てる株式数は211,656,500株(議決権個数2,116,565個)であり、これは、2020年12月31日現在の当社株式の発行済株式総数1,434,573,900株に対して14.8%(2020年12月31日現在の総議決権数13,622,991個に対する割合15.5%)に相当し、一定の希薄化が生じます。

公式リリース:第三者割当による新株式の発行及び自己株式の処分に関するお知らせ

したがって、既存株式の価値が14.8%減少することになります。発表直前の株価1,136円を基準とすると、968円が希薄化後の株価です。

しかし、実際には発表後に急騰し、最高1,275円まで上昇。その日は高値圏である1,245円で取引を終えました。希薄化も考慮すると、実質28.6%もの上昇率(968円→1,275円)です。

株価が急騰した理由は?

希薄化にも関わらず株価が上昇したのは、「日本郵政」という名前のインパクト、そして楽天モバイルの資金調達が進んだことが安心材料となったためと考えています。

また、業務提携が深まることで物流効率化が進み、EC事業の利益が拡大するという期待も株価上昇を後押ししているでしょう。

「日本郵政」のインパクトによる一時的上昇

株価急騰はNHKが「楽天と日本郵政が資本提携する方針を固めた」と報じたことがきっかけでした。

その時点では詳細が明らかになっておらず、「日本郵政」のインパクトで期待が先行した感があります。

詳細が発表されたのは場引け後の15時過ぎ。実際の市場の反応が株価に反映されるのは3月15日以降となります。もしかしたら、12日の上昇は一時的なものに止まるかもしれません。

物流効率化によるEC事業の利益拡大

物流での協業は2020年12月時点から発表されていましたが、資本業務提携により、さらに踏み込んだ提携が期待されます。

日本郵政としても、1,500億円もの出資を行うならそれなりの成果を出さなくてはなりません。それにより、楽天の業績にも一定のインパクトがあると予想されます。

その期待によって株価が押し上げられたのでしょう。

まとめ

楽天と日本郵政という異形の資本業務提携について深掘りしてみました。

資本業務提携という形ではありますが、実質的には日本郵政から楽天への投資であり、これによって楽天モバイルが飛躍するという論調には違和感を覚えます。

楽天株価が値上がりし、配当が増えれば、日本郵政への利益にはなります。しかし、そのためにタダでさえ複雑化している郵便局業務に、単体でも複雑なスマホ契約業務を追加するようなコストはかけないでしょう。

私にとって楽天は投資先の一つなので、株価が上がるのは嬉しいのですが、今回の資本業務提携はそれほど好材料ではない、というのが個人的な考えです。




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