旅行市場の回復でHIS株は買うべきか?「買い時」と考える4つの判断基準




2023年には旅行者数が2019年を超える。そんな見通しが国際航空運送協会(IATA)発表され、旅行業会の先行きに光明が差しています。

旅行市場の回復見通しが立ったものの、HISの株価はいまだ安値水準。コロナ前には3,000円を超えていた株価は、2割安い約2,400円(2021年7月現在)で推移しています。

財務的なリスクや、新型コロナが想定以上に長引くリスクはあるものの、旅行の先送り需要が具現化すれば業績が急回復し、株価3,000円を一気に突き抜けるかもしれません。

株価の上昇余地はリスク以上に魅力的で、HISは買い時であると考えています。

本記事では、HISが買い時だと考える4つの判断基準について紹介していきます。

本記事のポイント
  1. IATAによると、2023年には2019年比105%の旅行者数まで回復する
  2. 2022年からハワイ・グアムへの旅行が可能となり、HISの業績回復が本格化すると予想
  3. 業績回復を前提とした株価指標は割安水準
  4. いくつかのリスクは考えられるものの、リスクvs期待リターン では期待リターンが上回ると考え、買い時であると予想
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投資判断① 業績と財務

2020年10月期は赤字転落

直近の通期決算である2020年10月期決算は純利益-250億円の赤字に沈みました。

主力の海外旅行の需要が消滅したことで、売上高は-46.8%と半分近い落ち込みでした。固定費は売り上げに関わらず発生するため、一気に赤字に陥ったというわけです。

しかし、これでも1Qは平常通り営業していましたので、1Q~4Q全てで赤字が予想されている2021年10月期に比べたらマシだと思われます。

HISは好調な業績を維持してきたが、2020年10月期は大赤字に沈んだ。
出典:マネックス証券

2021年10月期も赤字濃厚、2期連続赤字に

2021年10月期は新型コロナの影響をフルに受けるため、前年を超える赤字幅になることが予想されます。

事実、上半期だけで約310億円もの営業赤字を出しています(前年度は通期で312億円の営業赤字)。

旅行需要が回復しなければ、通期の営業赤字が600億円を超えることもあり得るでしょう。

HIS自身は業績予想を”未定”としています。「2022年の通期黒字化を目指す」と書かれていることから、2021年が赤字転落との見通しは間違いなさそうです。

画像:2021年10月期 第2四半期 決算説明会資料より抜粋

2021年10月期が赤字となれば、2年連続での赤字となります。

一般的に、2年連続赤字は1回の赤字とは別の意味を持ちます。金融機関から赤字が定着していると評価され、融資引上げを受ける可能性が高まるのです。

この”信用リスク”は今後の大きなリスクとなるでしょう。

財務は健全、現金1,000億円を確保

一方、HISの財務状況は健全です。

血液ともいえる現金は1,000億円を保持し、資金ショートの可能性はまずありません。

流動資産合計は1,400億円に迫る残高です。

HISの流動資産は約1,400億円あり、支払いが滞ることは無さそうだ。
画像:2021年10月期 第2四半期 決算説明会資料より抜粋

また、純資産としては870億円を確保しています。

コロナ前から1年6ヵ月で30%減少しました。このペースであれば4~5年は債務超過は避けることができそうです。

ただし、旅行需要が回復しなければ減少ペースが加速する恐れもあります。

債務超過となれば翌年には上場廃止となり、株式の価値はゼロ円となります。HISを買うべきかどうかを判断する上で、純資産は非常に重要な指標です。

画像:2021年10月期 第2四半期 決算説明会資料より抜粋

業績と財務の観点からは「ネガティブ」

業績と財務を総括すると、投資判断としてはネガティブだと考えられます。

年間の営業赤字が最大600億円になると予想しましたが、純資産額は870億円程度です。2022年の状況次第では、早々に債務超過が意識され、株価の下落要因となるでしょう。

HISを買うべきか、という問いに対して、業績と財務の観点からはノーと言うことになるでしょう。

投資判断② 旅行需要の回復時期

国内旅行は2022年7月に回復

世界最大手の会計事務所「デロイト・トーマツ」の予測によると、日本国内の旅行需要は2022年7月に回復する、とされています。

こちらが国内旅行者数を予測したグラフです。2022年7月に、新型コロナ発生前である2020年1月まで回復する予測となっています。

出典:デロイト トーマツ「COVID-19影響を踏まえた需要予測

HISは国内旅行も手掛けており、国内旅行需要の回復はHISの業績にポジティブに作用するでしょう。

ただし、HISの主力はあくまで海外旅行。国内旅行は売上全体の1割にも満たない数字です。

業績の本格回復には海外旅行の増加が欠かせません。

2019年度の国内旅行売り上げは614億円だったが、全体の売上7,224億円と比べると1割にも満たない。画像:2020年10月期 決算説明会資料より抜粋

海外旅行は2023年に回復

海外旅行の需要回復時期は、2023年になると予想されています。

予想を出しているのは国際航空運送協会(IATA)です。2021年5月26日に最新の予想を発表し、2023年には2019年比で105%まで回復する、と予想しました。

以下がIATAの予想内容です。

年度2019年比 旅客数
2020年(実績)24%
2021年52%
2022年88%
2023年105%
出典:国際航空運送協会「Optimism When Borders Reopen

HISの業績回復が本格化するのは、2022年春ごろになると予想されます。

というのも、業績に大きく影響するハワイ・グアムへの渡航再開が2022年春ごろになると予想されているためです。

ハワイ・グアムへの旅行が再開されれば、これまで先送りされてきた需要が顕在化し、HISの業績に大きなインパクトを与えることが予想されます。

旅行需要の回復時期はポジティブ予想

国内旅行の回復と、ハワイ・グアム旅行の再開が2022年に期待されるため、旅行需要の観点からはポジティブな印象です。

ひとたび業績が回復し始めれば、旅行の先送り需要が顕在化し、2024年まで右肩上がりの業績になることが期待されます。

みなさんもコロナが明けたら旅行に行きたい人が多いはず。消費者目線でも、上記の旅行の回復予想は妥当だと思っています。

投資判断③ 株価指標

現在のPERは12.6倍相当

株価指標として、代表であるPER(株価収益率)をまず考えてみましょう。

HISは業績予想を未定としているため、基本的に予想PERを算出することはできません。

ここでは、業績回復を前提に、2019年業績と現在株価からPERを算出してみましょう。

業績回復を前提としたPER

PER=2,414円(現在株価)÷191円(2019年EPS)=12.6倍

※株価は2021年7月19日現在の2,414円を採用しています。

過去のPERは14~25倍で推移

上で算出したPER12.6倍というのは、HISとしてはかなりの割安水準だと言えます。

というのも、HISのPERは14~25倍で推移してきました。こちらがPER推移を表したグラフです。

出典:マネックス証券

新型コロナ発生直前は約17倍のPERでした。

業績が回復すればPER12.6倍で放置されることは考えられませんので、株価上昇が期待できます。

17倍まで戻るとしたら、上昇幅は840円となり、100株の投資でも8万円を超える値上がり益が獲得できることになります。

PBRは割高水準

一方、PBR(株価純資産倍率)は割高方向に振れています。

非常事態宣言のタイミングではPBR1.8倍程度でしたが、現在は3倍程度まで上昇しました。

こちらがPBR推移のグラフです。

割高方向に振れた原因は、赤字による純資産減少です。

赤字を補填するために利益余剰金を削ったため、純資産が減少し、PBRを算出する分母が小さくなったのです。

HISのPBRは基本的に2倍前後で推移してきました。3倍となれば相当な割高水準です。

株価指標の観点からは若干ポジティブ

PERの視点では割安、PBRの視点では割高であるという考察結果になりました。

どちらも重要な指標であることは間違いありませんが、どちらかと言うとPERの方が株価に与えるインパクトは大きいでしょう。

資本市場は未来志向であるため、将来の収益力を表すPERがより重視される傾向にあります。

したがって、株価指標の観点からは「若干ポジティブ」という結論に達しました。

投資判断④ 今後のリスク

長期借入金345億円の強制返済

HISはシンジケートローンとして345億円の長期借入れを行っていますが、これが強制返済を迫られる可能性が浮上しています。

シンジケートローンとは?

シンジケートローンとは、お客さまの資金調達ニーズに対して、アレンジャー(幹事金融機関)がシンジケート団(融資団)を組成し、同一の契約書に基づき同一の条件で融資を行う資金調達の仕組みです。

引用:三井住友信託銀行「シンジケートローン業務

このローンには以下2つの条件があります。

  1. 期末の純資産を前期の75%以上に保つ
  2. 2期連続の経常赤字を避ける

このうち、②2期連続の経常赤字を避ける に抵触するのはほぼ確実。したがって、2021年10月期の赤字確定後、金融機関から返済を迫られる恐れがあります。

345億円の現金を失えば、預金残高は600億円台まで落ち込みます。新型コロナで厳しい状況の中で現金を失えば、投資家からの信頼を失いかねません。

シンジケートローンの返済を迫られる可能性は大きなリスクです。

旅行需要の回復鈍化

2023年には旅行需要がコロナ前に戻ると予想されていますが、これが後ろ倒しとなるリスクが考えられます。

回復が遅れる要因は、ワクチン接種率の頭打ち、新たな変異型の流行などです。

特、新たな変異型が出現し、ワクチンの効果が弱まるようなことになれば、旅行需要回復が1年以上遅れるかもしれません。

そうなった場合、HISが財務的に持つかどうか怪しくなってきます。ギリギリ持ちこたえたとしても株価急落は免れないでしょう。

証券大手による投資判断の引き下げ

証券アナリストがHISに対して弱気判断をするリスクも考えられます。

HISをカバーしているアナリストは6名。目標株価の平均値は2,767円で、現在株価(約2,400円)から上昇予想となっています。

出典:マネックス証券

この目標株価は多くの投資家が参考にしていることから、仮に投資判断が引き下げられた場合、株価も連動して下落する恐れがあります。

まとめ




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