株価急落のテルモ(4543)は買いか?今後の株価材料と株価予想まとめ




コロナショックから順調に回復を見せてきたテルモですが、2022年早々、株価急落に見舞われました。

きっかけとなったのはみずほ証券による投資判断引き下げです。「買い」から「中立」に変更し、目標株価も6,400円→4,700円に下方修正したことが売りを誘いました。

他の証券会社も追随するようであれば、下落トレンドに転換する可能性も出てくるでしょう。

ただ、テルモは2022年3月期に過去最高業績を更新する見通しであるなど、業績自体は好調そのもの。

短期的な下落にとどまる可能性は十分あり、過去10年間、一貫して株価上昇してきたことからも、押し目買いの好機であるという見方もできます。

本記事では、テルモに関する重要トピックをまとめた上で、今後の株価推移について考察していきます。

株価が4,000円台前半まで急落

みずほ証券の投資判断引き下げで急落

テルモの株価が急落するきっかけとなったのは、みずほ証券による投資判断引き下げです。

投資判断を「買い」から「中立」に変更し、さらに目標株価を6,400円→4,700円に下方修正したことが悪材料とされ、1日で6%安という暴落に沈みました。

それにより、2021年8月以来、およそ4ヵ月ぶりの安値となっています。

みずほ証券の投資判断引き下げによって、年初早々6%安という暴落となった。出典:日本経済新聞

長期チャートでは上昇トレンド継続

6%の暴落とは言え、長期チャートで俯瞰して見ると景色が変わってきます。

テルモは過去10年間、一貫して上昇トレンドを描いてきており、6%安を受けてもトレンドが崩れたようには見えません。

見方によっては押し目買いの好機と捉えることもできそうです。

テルモの10年チャート。短期的には急落したが、長期的には上昇トレンドの範囲内にいる。出典:日本経済新聞

ただし、下落トレンド入りの可能性も

過去10年間上昇トレンドだったとは言え、これから下落トレンドに転じる可能性も無くはありません。

業績の伸びに対して株価の伸びが速かったこともあり、株価指標は割高水準。

株価がさらに下落し、割高感が是正される、というシナリオも十分に考えられそうです。

業績は右肩上がりの好調

2022年3月期は過去最高業績

直近の株価は冴えない反面、業績は好調です。

2022年3月期の業績予想は、売上高6,850億円、営業利益920億円と、前年度比2桁の伸びで過去最高業績を見込みます。

出典:マネックス証券

上下を伴いつつも過去10年間は増収増益傾向であり、今後もその傾向は続くと見られています。

新型コロナで落ち込んだ手術件数が回復

最高業績の更新の背景には、前年度に落ち込んだ手術件数の回復があります。

テルモは医療機器大手として心臓・血管領域の高度医療機器を得意としていますが、医療機関が新型コロナ対策を優先する中、緊急性の低い手術は先送りされてきました。

2021年後半から感染者数が減少し、先延ばしされてきた手術などが再開されてきたことが業績急回復の一因と見られます。

新型コロナによって国内の手術件数は大幅に減少した。出典:CBnewsマネジメント

新型コロナ関連の業績寄与も期待

テルモは新型コロナ関連の医療機器も手掛けており、今後も業績寄与が期待できそうです。

新型コロナで注目を集めた医療機器の一つに、体外循環装置(ECMO)がありますが、テルモはこの装置の国内シェアで7割を占めています。

テルモが製造・販売するECMO「キャピオックスEBS」は新型コロナの重症患者向けに使用されている。

需要拡大を受けてECMOの販売台数は倍増。販売台数は年間300万台ほどと見られ、1台当たり1,000万円を優に超えることから、年間売上は30億円は下らないでしょう。

また、新型コロナワクチン向けの注射器も製造販売しています。

ワクチン需要は今後数年間続くでしょうから、注射器販売による業績寄与も期待できそうです。

2027年3月期には売上高1兆円に

5ヵ年計画「GS26」を策定

今後のテルモの業績を予想する上で参考になるのが、2021年12月16日に発表された5ヵ年成長戦略「GS26」です。

GS26は2023年3月期~2027年3月期の5年間を対象とし、売上高の年間成長率を1桁台後半(6~9%)、営業利益率として20%以上を目指すことが発表されました。

これが実現すれば、2027年3月期には売上高が1兆円の大台に乗り、営業利益は2,000億円を突破することになります。

2022年3月期の業績見通しと比較すると差は歴然。売上高は+46%、営業利益は+67%と、大幅に伸びることが期待されます。

決算期売上高営業利益
2022年3月期6,850億円1,200億円
2027年3月期1兆円2,000億円

計画達成で株価は最低でも「5,000円」

営業利益が2,000億円に達した場合、EPS(1株利益)は200円程度になると予想されます。

一方、テルモのPER(株価収益率)は25倍以上で推移してきているので、株価は最低でも5,000円を超えることになるでしょう。

計画達成した場合の予想株価

予想株価=200円(EPS)×25倍(PER)=5,000円

過去平均のPERは30倍程度ですので、株価6,000円を超えてもおかしくありません。

達成できるかウォッチが必要

ただし、この5ヵ年成長戦略が達成できるかは継続してウォッチしていく必要がありそうです。

というのも、2016年に発表された中期経営計画は未達のまま終わってしまったという前科があるからです。

具体的には、2016年の中期経営計画には「調整後EPS 270~300円」という目標がありました。

しかし、最終年度である2021年度のEPSは102円。目標の半分にも到達しなかったのです。

出典:中長期成長戦略説明会

以前の中期経営計画が未達だったことを踏まえると、新たに発表された5ヵ年計画も、額面通りに受け取って良いものか微妙なところです。

2023年、2024年と目標通りに業績が伸びていくかどうか、今後も確認していく必要があるでしょう。

外国人投資家による買い需要の期待

テルモは外国人投資家の保有が少ない

テルモに関する好材料として、外国人投資家の保有が少ないということがあります。

発行済み株式のうち、外国人投資家が保有する比率を同業他社と比較すると差は明らかで、テルモの32.45%に対し、オリンパスは52.11%、日本光電は45.3%、ナカニシは40.02%となっています。

銘柄外国人保有割合
テルモ(4543)32.45%
オリンパス(7733)52.11%
日本光電(6849)45.3%
ナカニシ(7716)40.02%

外国人投資家による買い需要が期待

テルモの海外売上比率はおよそ67%。3分の2が海外での売上げですので、グローバル企業として、海外投資家の投資対象となり得ます。

現時点で外国人投資家の割合が低いのは、これまで注目されてこなかったためでしょう。

しかし、世界最大規模の血漿採取ネットワークを展開するCSL Plasma社と提携するなど、海外投資家が注目する材料も出ています。

海外からの注目を集めることができれば、外国人投資家による買い需要が期待できそうです。

株価の底上げ効果は?

仮に、日本光電(6849)と同程度の45%まで外国人投資家の保有率が増えた場合、株価の底上げ効果はどれほどでしょうか。

ちょっとした計算が必要ですが、計算結果は+23%です。

つまり、外国人投資家の保有率が45%に上がるまでテルモ株を買ったとすると、株価の値上がり率としては+23%ほどが期待できるということになります。

今後の懸念材料

投資判断引き下げが連鎖する可能性

好調な業績や、外国人投資家による買いという期待材料はあるものの、目標株価の引き下げが今後の重しとなりそうです。

みずほ証券が投資判断を引き下げた理由としては以下2点が挙げられています。

みずほ証券による投資判断引き下げの理由
  1. 営業利益率の改善ペース低下
  2. M&A(合併・買収)による業績拡大期待の後退

みずほ証券の判断が全て正しいとは言えないまでも、同様の判断をする証券会社が出てきてもおかしくありません。

テルモは12名のアナリストによってカバーされており、みずほ証券以外のアナリストが投資判断を引き下げた場合、株価がさらに下落する可能性がありそうです。

生産調整による売上げ減少

新型コロナに起因する生産調整が引き続き懸念材料となりそうです。

2021年度2Q時点では、-15億円程度の利益減少要因となってしまい、営業利益を-2%程度押し下げました。

出典:「2022年3月期 第2四半期決算概要」

自社工場がある北米では、新型コロナ感染拡大によって人件費が上昇した上、人材確保自体にも支障をきたしているようです。

また、ベトナム工場も操業度の低下が発生して生産に影響が出てしまっています。

生産調整による業績下押しは今後も続くと想定されており、悪化が顕著になれば株価に影響するリスクもありそうです。

費用高騰による業績下振れリスク

新型コロナによる原材料・輸送費高騰が業績の下振れリスクとして存在します。

特に輸送費の高騰が顕著で、海上輸送費の代表的な指数 「CCFI(中国コンテナ貨物指数)」 はここ2年ほどで3~5倍に上昇しました。

出典:MacroMicro

テルモは米州・欧州・中国・アジアと世界各国で製品を販売していることから、輸送費高騰は営業利益のマイナス要因として効いてきます。

一時的な高騰で終われば良いですが、2022年度通期で高騰が続いた場合、業績の下押し要因となってしまうでしょう。

割高な株価指標

業績が好調である反面、将来の成長を見込んで株価指標が割高になってしまっているのが懸念材料です。

2022年1月7日時点での株価指標は以下の通りです。

テルモの株価指標(2021年1月10日時点)
  • PER:36.6倍
  • PBR:3.73倍

同業他社のPERは高くても30倍程度であることから、PER36.6倍は明らかに割高水準だと言えます。

もちろん、相応の成長力が株価を支えているのは間違いないのですが、将来の収益期待が剥落した場合、株価の下落は免れないでしょう。

特に懸念されるのは金利の上昇です。

金利が上昇することで、将来の収益の現在価値が縮小し、株価にはマイナスに作用してしまうのです。

管理人

株式は安全資産(国債など)とのリターンを常に比較されるため、安全資産の利回り(=金利)が上昇すると、相対的に株式の魅力が減少してしまい、株価下落につながります。

仮にPERが30倍まで是正されれば、株価の下落率は18%にも及びます。

その場合の株価はおよそ3,600円。テルモ株を現在100株保有していれば-8万円程度の損失になってしまいます。

3,600円まで落ちることはそうそう無いでしょうが、割高な株価指標がリスクの1つであることは間違いありません。

まとめ:テルモが「買い」と言える3つの理由

ここまでテルモに関する好材料と懸念材料の両方を考察しましたが、総じて、テルモ株は「買い」だと判断しています。

理由は以下の3つです。

テルモが「買い」と言える3つの理由
  1. 過去10年間にわたる上昇トレンド
  2. 直近の好調な業績と、5カ年計画「GS26」によるさらなる業績拡大
  3. 外国人投資家による買い期待

みずほ証券の投資判断引き下げて株価は急落したものの、長期にわたる下落トレンドに転換するほどの圧力となる可能性は低そうです。

一時的な投資判断引き下げより、業績実態の好調や、今後のさらなる業績拡大を重要視するべきでしょう。

とはいえ、割高な株価指標など懸念があることも事実。短期的な下落トレンドになる可能性は否定できませんので、買い時については慎重に検討するべきだと思われます。