サイバーエージェントは買い時か?株価が急落した理由と、今後の予想株価を考察




サイバーエージェントの2022年9月期1Q決算は営業利益が2.8倍という素晴らしい決算でした。

しかし、株価は逆に急落するという意外な結果となっています。

急落によっておよそ1年3ヵ月ぶりの安値となりましたが、そこまで悲観するほどの悪材料は見当たらず、急落後の株価は買い時かもしれません。

本記事では、サイバーエージェントが急落した理由について解説し、さらに重要トピックについて確認した上で、今後の予想株価について考察していきます。

管理人

今回の株価急落は良いタイミングだと思い、100株を打診買いしてみました。今後の株価反発に期待しています。

サイバーエージェントが急落した理由

1年3ヵ月ぶりの安値に急落

サイバーエージェントの株価は2021年12月中旬から下げ基調となり、2022年1月に-16%を超える急落となりました。

2022年1月28日の終値は1,400円。2020年9月以来、およそ1年3ヵ月ぶりの安値水準です。

それまで2,000円超えで推移していたサイバーエージェントに何があったのでしょうか。

サイバーエージェントの6ヵ月チャート。2022年1月27日に窓を空けて急落した。出典:日本経済新聞
株価1,400円は2020年9月以来、およそ1年3か月ぶりの安値水準となる。出典:日本経済新聞

1Q決算での失望売りが原因

急落の直接の原因となったのは、2022年9月期の第1四半期決算です。

決算内容は、売上高1,710億円で前年比+30.6%、営業利益198億円で前年比2.8倍という素晴らしい結果でした。

しかし、株式市場は好決算は既に織り込みどころか、営業利益258億円を予想していたことから、期待未満の決算として失望売りとなってしまったのです。

管理人

株価は業績予想をベースに動きますので、好業績が予想されていれば決算前に株価が上昇して織り込まれます。今回は市場の過度な期待が失望売りにつながってしまいました。

販売管理費の増加が要因

市場の予想と差が出てしまったのは、販売管理費が想定以上に嵩んだためです。

2021年1Qは289億円だったのに対し、2022年1Qは346億円に増加しています。

前年度と同程度であれば営業利益は+60億円ほど加算され、市場予想の258億円とほぼ一致していたはずです。

2022年1Qは販売管理費が前年より+57億円増加し、利益を押し下げた。出典:2022年9月期 第1四半期決算説明資料

株価急落で割安水準に突入

株価下落で予想PERは17倍に

株価が急落した反動で、株価指標は割安といえる水準まで切り下がっています。

代表的な株価指標であるPER(株価収益率)を見てみましょう。

PERは【株価÷1株利益(EPS)】で計算され、東証1部全体の目安は15倍程度、サイバーエージェントのようなグロース株は20~30倍が目安となります。

2022年9月期の業績予想ではEPS=82円程度となっており、予想PERは次のように計算されます。

予想PER=1,400円(2022年1月28日終値)÷82円(予想EPS)=17倍

グロース株としては割安水準

PER 17倍というのは、東証1部全体では比較的高い方です。

しかし、年間10%以上の売上成長であるグロース株としては割安水準だと言えるます。

期待外れの決算を受けて業績予想が多少下方修正されるかもしれませんが、それでも予想PERが20倍まで上がる可能性は低いでしょう。

株価が上昇しない限りは割安水準は不変と予想されます。

管理人

サイバーエージェントの過去5年間の売上成長率は平均+16.5%であることからグロース株に分類されます。

過去5年間で最も割安な水準

上で計算したPER17倍と、サイバーエージェントの過去のPER推移を照らしてみましょう。

次のグラフは過去5年間のPER推移を表しています。

過去5年間のPER推移。PER17倍は最低水準にあたる。出典:マネックス証券

かなり変動が激しいですが、過去5年間の最小PERは24.1倍となっており、17倍というPERは過去5年間で最も割安な水準です。

もしPERが24倍くらいまで上昇するなら、株価は4割上昇する計算です。

PBR的にも最も割安

PBR(株価純資産倍率)の観点からも過去最安水準です。

2022年9月期の1Q通過時点でのBPS(1株純資産)は387.3円。株価1,400円でのPBRは3.61倍です。

一方、過去5年間のPBR推移では最小値が4.85倍となっており、現在のPBRは過去最小をさらに下回る安値水準であることが分かります。

過去5年間のPBR推移。株価急落によって3.61倍まで低下し、過去5年間で最も割安な水準となった。出典:マネックス証券

「ウマ娘 プリティーダービー」が業績を牽引

2021年2月にリリースし大ヒット

サイバーエージェントの業績を大きく押し上げたのは、2021年2月にリリースし大ヒットを記録しているスマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」 です。

リリースからわずか10ヵ月で1,200万ダウンロード突破という勢いを見せ、”競馬”というテーマから幅広い年代から支持されて課金も好調のようです。

ウマ娘はリリースから10ヶ月で1,200万ダウンロードを記録した。出典:2022年9月期 第1四半期決算説明資料

ゲーム事業の利益は3.2倍に拡大

ウマ娘のヒットによりゲーム事業は急成長を遂げました。

2020年9月期の営業利益が303億円だったのに対し、2021年9月期は964億円と約3.2倍に拡大。

サイバーエージェントの営業利益は例年300億円ほどでしたが、ゲーム事業の貢献によって、初の1,000億円超えを達成しました。

ゲーム事業の営業利益が964億円に達し、全体の営業利益は初の1,000億円超えを記録した。出典:2021年9月期 決算説明資料

+1,000円程度の株価押し上げ効果

ウマ娘によって営業利益は+660億円の増益となりましたが、これは1株利益(EPS)換算で+65円程度です。

PERを15倍としても、その株価押し上げ効果は65円×15倍=975円にもなります。

ウマ娘の株価押し上げ効果はざっくり+1,000円くらいだと言って良いでしょう。

管理人

逆に言えば、ウマ娘がコケれば株価が−1,000円くらい下がる可能性があるということです。

「ウマ娘」好調は一時的?

大ヒットでも短命に終わるゲームが大多数

一般的に、ヒット作と言われるゲームでも長命となる確率は高くありません。

リリースから5年後もDLランキング100位以内を維持できたゲームはたった12%しか無いそうです。

ゲームは次々と新作がリリースされる一方、ユーザー側の可処分時間は変わらないため、時が経つにつれ次のヒット作にプレイ時間が奪われてしまいます。

ゲーム業界はそのような厳しい競争にさらされており、ウマ娘も短命で終わる可能性は否定できません。

利益剥落で株価は割高に

仮に、ウマ娘の利益貢献が+100億円程度に落ち込んだらどうなるでしょうか。

その場合、サイバーエージェント全体の営業利益は+400億円程度となるでしょう。

1株利益(EPS)は激減し、良くて20円くらいになると予想されます。

株価1,400円を正当化するにはPER70倍が必要になりますが、これはあまりに割高と言わざるを得ません。

PER50倍、株価1,000円くらいがせいぜいでしょう。

長命タイトルに成長する可能性も

悲観シナリオでは厳しい株価となりそうですが、幸い、ウマ娘は長命タイトルになる要素が揃っているように思います。

ウマ娘が長命タイトルになりそうな理由
  1. 全国500万と言われる競馬ファンに支持されている
  2. 一般的なヒットゲームとはユーザー層が異なる
  3. アニメは2018年4月から放送されており、メディアミックスとしては既に4年近いヒット作となっている

ウマ娘は現実の競走馬をモチーフにしており、名馬の名シーンをゲーム中に再現するなど、コアな競馬ファンにも支持されています。

独自性が高く、ユーザー層が他のゲームと異なるという点は強みです。

また、アニメの放送開始から4年ほど経過し、メディアミックスプロジェクトとしては既に長期のヒット作となっていることから、ゲームもロングヒットとなる可能性は高いように思われます。

ABEMA TVは赤字継続

2021年9月期は−151億円の赤字

インターネットテレビ「ABEMA TV」は中長期の成長の柱として位置づけられ、番組数の増加、ユーザー数拡大が積極的に進められています。

しかし、現時点ではまだ先行投資段階です。

収益以上の投資を実行していることから、2016年の開局以来、赤字が続いています。

2021年9月期は営業利益-151億円の損失となり、業績を押し下げる要因となっています。

2021年9月期のメディア事業は−151億円の赤字を計上し、業績下押し要因となった。出典:2021年9月期 決算説明資料

赤字は改善傾向

これまでは-170~180億円くらいの赤字が続いてきましたが、2021年9月期は+30億円ほど改善しました。

前年度比では業績改善に貢献し好印象です。

藤田社長は「メディア事業は損益改善のフェーズに入ってきた」と発言しており、赤字を縮小していくことへの自信が伺えます。

2021年9月期の赤字幅は開局以来最低となり、今後の収支改善が期待される。出典:2021年9月期 決算説明資料

ちなみに、メディア事業全体の売上は強い成長が続いています。

年間の増収ペースは例年+30%ほど、2021年9月期に限っては+45%の成長率でした。

この成長率が続けば赤字縮小は必然的でしょう。

メディア事業の売上高は急成長が続いている。出典:2021年9月期 決算説明資料

厳しい競争環境で、黒字化は不透明

ただ、動画配信サービスは厳しい競争環境にあり、黒字化は不透明と言わざるを得ません。

ABEMAの競争相手はネットフリックスやアマゾンプライムですが、国内シェアで見ると、ABEMAは劣勢に立たされています。

メディア国内シェア
ネットフリックス19.5%
アマゾンプライム12.6%
ABEMA TV2.4%

上位2社以外にも、U-NEXT、DAZN、Hulu、dTVなど有力メディアがシェアを競っており、その中でシェアを奪っていくのは容易ではないでしょう。

現在の成長速度をキープできる保証も無く、黒字化の時期が見通せない状況が続きそうです。

インターネット広告事業は堅調

サイバーエージェントの安定収益源

サイバーエージェントの3事業のうち、インターネット広告事業は安定して利益を稼ぐ屋台骨です。

売上高は過去5年間で一貫して成長し続けており、2021年9月期には3,000億円の大台に乗せ、営業利益は225.7億円に達しました。

利益成長率は年間数パーセントが定着し、成長率としては物足りないですが、業績の安定化に貢献しています。

インターネット広告事業の売上は順調に増加し、営業利益も堅調に推移している。出典:2021年9月期 決算説明資料

堅調な成長を予想、2023年には営業利益300億円

インターネット広告事業は今後も安定的な成長が予想されています。

JPモルガンの予想によると、2023年には営業利益が300億円に達するとされており、営業利益の底上げが期待できそうです。

これまでは利益率が低下傾向で、売上の成長に対して利益成長が遅れていました。

今後は利益率改善が改善し、利益成長の遅れが取り戻せる見通しです。

決算期広告事業 営業利益利益率
2021/09225.7億円7.0%
2022/09285億円7.7%
2023/09312億円7.7%

アナリスト評価は「やや強気」

レーティングは3.50の「やや強気」

サイバーエージェントは12名のアナリストにカバーされています。

投資スタンスの分布を見ると、強気が4名、中立が7名、弱気が1名となっており、それらを平均したレーティングは3.50と”やや強気”の水準です。

アナリスト評価はばらつきがあるものの、平均では”やや強気”と判定されている。出典:マネックス証券

目標株価は2,188円、現在株価の1.5倍以上

また、各アナリストの目標株価を平均した目標株価コンセンサスは2,188円です。

現在株価(1,400円)からは50%以上乖離しており、目標株価との比較では、株価下落が行き過ぎていると判断できそうです。

ただし、下落局面の銘柄が早々に目標株価まで回復することは滅多にないため、この目標株価コンセンサスは参考程度にするべきでしょう。

目標株価コンセンサスは2,188円と、現在株価から56%乖離している。出典:マネックス証券

目標株価の引き下げが相次ぐ

収益が想定を下回ったことから、目標株価の下方修正が相次いでいます。

弱気派のいちよし証券は従来の1,400円から1,100円に引き下げ、さらなる株価下落を予想しました。

中立派の岩井コスモ証券とジェフリーズ証券は2,000円台前半から1,000円台に引き下げています。

強気派も下方修正を余儀なくされましたが、2,000円以上に回復するというスタンスは崩していません。

証券会社投資スタンス目標株価(変更前→変更後)
いちよし弱気1400円 → 1100円
岩井コスモ中立2200円 → 1700円
大和強気2900円 → 2500円
マッコーリー強気3200円 → 2900円
ジェフリーズ中立2130円 → 1810円

今後の株価はどうなる?

ゲーム事業の収益がカギ

サイバーエージェントの3つの事業のうち、今後はゲーム事業の利益変動が激しくなると予想されます。

そのため、株価はゲーム事業の実績に左右される状況が続くでしょう。

ゲーム事業は「ウマ娘」リリース以降、最初の四半期は232億円、次の四半期では442.4億円、さらに次の四半期では281.3億円を稼ぎ出しました。

しかし、直近の2022年9月期1Qでは171.3億円に急減速しています。

2Q決算の業績が焦点

リリース直後は高収益を記録し、その後一旦減速するのはよくある事です。

焦点となるのは、2Q決算で1Qの営業利益を上回れるかどうかです。

1Qの営業利益である171.3億円を上回ることができれば、今後も成長が期待できるとして、株価はポジティブに反応するでしょう。

一方、2Qも引き続き減速するのであれば、前年度の好決算は一時的だったとみなされ、株価は下値を探る展開になることが予想されます。

株価反発がメインシナリオ

ウマ娘に対するユーザーの評価を踏まえれば、今後は株価反発に向かうというのがメインシナリオです。

ウマ娘のゲームは現実の競走馬をモチーフとしており、ビジュアルだけでなく癖や逸話までこだわって再現されているようです。

アニメーションやシステムも完成度が高く、コアな競馬ファンだけでなく、競馬について興味のなかったユーザーも取り込むことに成功しています。

これらの評判から、2Q以降も人気を維持する可能性が高いと判断して良いでしょう。

1,700円台回復が想定線

回復後の株価水準は1,700円台を予想しています。

中立スタンスで最も弱気な岩井コスモ証券が目標株価1,700円を設定していることから、ここまで回復する確度は高そうです。

株価1,700円はEPS 82円でPER20.7倍の水準です。

これくらいの株価指標であれば十分許容範囲だと思われます。

2Q決算に向けて1,700円台回復を期待。チャート的には窓埋めの動きにもなる。出典:日本経済新聞

短期的には市場動向に左右される展開

ただし、米国を始めとした金利の上昇や、ウクライナ情勢が短期的な株価を左右することになるでしょう。

特にサイバーエージェントのようなグロース株は市場リスクが高まった時に影響を受けやすい傾向にあります。

金利が想定以上に上がるようであれば株価は下落するでしょう。

また、ウクライナでの軍事衝突の危険が高まれば、やはり株価は下落する展開が予想されます。

まとめ

好決算にも関わらず急落したサイバーエージェントについて、急落した理由から今後の株価予想まで解説しました。

今回の株価急落は決算への期待が高まり過ぎた反動だと考えられ、あくまで短期的な下落に終わりそうです。

ウマ娘への期待が継続していることによる株価反発がメインシナリオと予想されます。

本記事では1,700円までの反発は堅いと予想しましたが、短期的には金利動向や軍事衝突への懸念が先行し、下落が深堀りする可能性も十分あります。

成長期待は高いため、100〜200株程度を長期保有し、大きな利益を狙いたい銘柄だと考えています。